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2017年7月11日 (火)

NHKの放送受信契約とその受信料(相当額)の請求

東京高裁H28.9.21      
 
<事案>
Yらが運営する各ホテルに平成26年11月以降に設置されたテレビジョン受信設備に関して、その設置後まもなく、X(NHK)が、Yらに対してそれぞれ放送受信契約締結を申し込んだ⇒Yらがこれを承諾しなかった

①主位的に、前記申込みにより放送受信契約が成立した⇒各受信設備に応じた放送受信料の支払を求める
②予備的に、Yらには放送受信契約の申込みを承諾する義務が生じた⇒Yらに対して各承諾の意思表示及び各受信設備に応じた放送受信料の支払を求めるとともに、撤去済み受信設備について不当利得が生じている⇒その支払を求める。
 
<規定>
放送法64条1項本文:
「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」

放送法施行規則23条:
「法第64条3項の契約の条項は、少なくとも次に掲げる事項を定めるものとする。」
「一 受信契約の締結方法」 
「条項」として総務大臣の認可を受けた「日本放送協会放送受信規約」3条1項は、受信機を設置した者に遅滞なく放送受信契約書を提出する義務を課し、
規約4条1項は、「放送受信契約は、受信機設置の日に成立する。」と定めているが、これ以外に、放送受信契約の成立についての規定はない。

民法 第414条(履行の強制)
2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる
 
<判断>
主位的請求をいずれも棄却する一方、予備的請求を認容。

受信設備設置者の承諾なしに申込みのみによって放送受信契約が成立すると解することはできない

受信設備設置者は、放送受信契約締結の申込みをした被控訴人(X)に対し、放送法64条1項に基づきこれを承諾する旨の意思表示をする義務を負う放送受信契約の申込みを受けた受信設備設置者がこれを承諾しない場合には、被控訴人は、民事裁判において、放送受信契約締結の承諾の意思表示をすることを求めることができる(民法414条2項ただし書)。

上記意思表示を命ずる民事裁判の判決が確定放送受信契約は、規約4条1項に基づき受信機の設置の日に遡って成立したこととされ、受信設備設置者は、被控訴人に対し同日からの放送受信料を支払う義務を負う。

口頭弁論終結前に受信機を撤去⇒その設置から撤去まで間、放送受信契約を締結すべきであったとにこれをしなかった⇒被控訴人の損失において法律上の原因なく放送受信料の支払を免れるという利益を得たものとして、被控訴人に対して当該期間の放送受信料に相当する金員を不当利得として返還する義務を負う。
 
<解説>
●法64条1項は、設置者に対して契約締結の義務を負わせたもの。

● 受信設備設置者がこれを無視し、又は承諾を拒否した場合
A:NHKが申込みをすれば、正当な理由がない限り一定の期間経過後(原則は1週間とする。)に放送受信契約が成立⇒NHKは、当該期間経過後には直ちに放送受信料を徴収できる。
←NHKの受信料の広狭的な性格(放送法15条、20条参照)を重視し、放送法64条1項の「契約をしなければならない」との文言をいわば目的論的に解釈。

B:受信設備設置者による承諾の意思表示がない限り放送受信契約は成立しない
←放送法64条1項の文言によれば、契約を成立させるためには申込みに対する承諾が必要
but
同条項が存在する以上、受信設備設置者は、承諾を義務づけられており、NHKは、放送受信料を徴収するためには承諾の意思表示を命ずる判決を得る必要がある

判例時報2330

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