地方税法施行令附則の「居住の用に供するために独立的に区画された部分が100以上ある共同住宅等」の判断
最高裁H28.12.19
<事案>
土地の取得に対する不動産取得税を納付したXが、当該土地上に建築された複数棟の建物につき同税が減額されるべき住宅に該当する⇒東京都都税条例48条の4に基づき不動産取得税の還付を求める申請⇒東京都都税総合事務センター所長からこれを還付しない旨の処分⇒Y(東京都)を相手に、本件処分の取消しを求めた。
本件各建物は、Xが本件土地を取得してから3年を超えて4年以内に新築⇒本件減額規定の適用を受けるためには、施行令附則6条の17第2項の戸数要件及びやむを得ない事情に係る要件を満たす必要がある。
本件各建物はそれぞれ構造的に独立した建物(特例適用住宅)であり、その戸数はいずれも100に満たないものであった⇒戸数要件の対象となる独立区画部分が100以上ある共同住宅等につき1棟の建物ごとに判断すべきか否かが争われた。
<法令>
地税法73条の24第1項1号及び東京都税条例48条1項1号は、土地を取得した日から2年以内に当該土地の上に住宅(「特例適用住宅」)が新築された場合には、所定の方法によって算出した額の不動産取得税を減額する旨を規定。
平成11年法律第15号による改正により設けられた地税法及び本件条例の附則は、一定の期間に限って前記の新築期間を3年以内に延長し、平成16年政令第108号による改正により設けられた地税法施行令附則6条の17第2項は、
①当該特例適用住宅が居住の用に供するために独立的に区画された部分が100以上ある共同住宅等であって(「戸数要件」)
②土地を取得した日から当該共同市住宅等が新築されるまでの期間が3年を超えると見込まれることについてやむを得ない事情があると道府県(地税法1条2項により都を含む。)知事が認めた場合には、新築期間を4年以内に延長する旨を規定。
<判断>
地税法73条の14第1項は、施行令附則6条の17第2項に定める戸数要件の対象となる共同住宅等につき、「共同住宅、寄宿舎その他これらに類する多数の人の居住の用に供する住宅」と規定し、同法73条4号は、住宅につき、「人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分」と定義。
⇒施行令附則6条の17第2項の共同住宅等は家屋に含まれる。
地税法73条3号は、家屋につき、「住宅、店舗、工場、倉庫その他の建物をいう。」と定義しているところ、ここでいう建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいい、別段の定めがない限り、一棟の建物を単位として把握されるべき。
施行令附則6条の17第2項の共同住宅等に関して定められた戸数要件を充足するか否かの判断においても、別段の定めがない限り、一棟の共同住宅等を単位とすべきであるところ、これと別異に解すべきことを定めた規定や複数棟の共同住宅等を合わせて戸数要件を判断することを前提とした規定が存在しない
⇒一棟の共同住宅等ごとに判断することが予定されているというべき
本件各建物は、一棟ごとの独立区画部分がいずれも100未満であって戸数要件を満たさない⇒本件処分は違法であるとはいえない。
<解説>
● 租税法は侵害規範であり、法的安定性の要請が強く働く
⇒その解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されない(判例・学説)。
既定の文理上その意味を直ちに明らかにすることができない場合、既定の趣旨目的をどの程度考慮し得るかという点について、学説上、文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合に規定の趣旨目的に照らして意味内容を明らかにすべきとする考え方(金子)が有力。
but
論者によって規定の趣旨目的を考慮し得るとする幅は異なり、必ずしも一致している状況にない。
判例は、租税法律主義の趣旨に照らし、文理解釈を基礎とし、既定の文言や当該法令を含む関係法令全体の用語の意味内容を重視しつつ、事案に応じて、その文言の通常の意味内容から乖離しない範囲内で、既定の趣旨目的を考慮することを許容しているように思われる。
● 不動産取得税における「家屋」の範囲は、固定資産税にいう家屋又は不動産登記法上の建物の意義と同一であり、屋根及び周壁を有し、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。
⇒
地税法73条3号の家屋は一棟の建物を単位として把握すべきであり、施行令附則6条の17第2項の共同住宅等に関して定められた戸数要件を充足するか否かの判断においても、別段の定めがない限り、一棟の共同住宅等を単位とすべき。
判例時報2328
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