« 地自法251条の7に基づき辺野古湾の埋立承認取消しの取消しをしないという不作為の違法の確認を求めた事案 | トップページ | 養子縁組の実質的縁組意思について判断した事例 »

2017年6月14日 (水)

主債務者が中小企業の実体を有しない場合の信用保証協会の保証契約の意思表示の錯誤(否定)

最高裁H28.12.19      
 
<事案>
Y銀行と保証契約を締結し、同契約の保証債務の履行として代位弁済をした信用保証協会Xが、Y銀行に対し、同契約は要素の錯誤により無効であると主張して、不当利得返還請求権に基づき、代位弁済金の返還等を求めた事案。 
 
<原審>
A社が本件事業を行う中小企業者であることは、Xが本件制度を利用した保証契約を締結するための重要な要素であるところ、
A社が事業譲渡によって本件事業を行う中小企業者の実体を失っていたにもかかわらず、Xは、A社が本件事業を行う中小企業体であると誤信して本件保証契約を締結したと認められる。
⇒Xの本件保証契約の意思表示には要素の錯誤があるとして、Xの請求を認容。 
 
<判断>
原判決を破棄し、Xの請求を棄却。 
 
<解説> 
●信用保証協会法は、信用保証協会の業務を、中小企業者等が金融機関に対して負担する債務の保証等と定めており(同法20条)、信用保証協会は、主債務者が信用保証の対象となるべき中小企業者でないことがあらかじめ分かっていれば、その債務に係る保証契約を締結することはないと考えられる。

保証契約の締結後に主債務者が中小企業者でないことが判明した場合には、信用保証協会が保証契約を締結した動機に錯誤があったということができる。
 
●最高裁H28.1.12:
保証契約の主債務者が反社会的勢力であることについて信用保証協会に誤認があった事例について、信用保証協会による錯誤無効の主張を排斥。 

本判決:
平成28年最判と同様、当事者の意思解釈上、動機が法律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解すべきことを前提として、
信用保証協会の制度の趣旨及び目的や、当事者の属性に照らし、主債務者が中小企業者の実体を有しないことが事後的に判明する場合が生じうることを想定して対応をとることが可能であったが、そのような対応がされていなかった
主債務者であるA社が中小企業者の実体を有するという点に誤認があることが事後的に判明した場合に保証契約の効力を一律に否定することまでを当事者双方が前提としていたとはいえず、当事者の意思解釈上、この点についてのXの動機が保証契約の内容となっていたとはいえない

Xによる保証契約の錯誤無効の主張を排斥

一般論として、金融機関には、信用保証に関する基本契約に基づき、主債務者が中小企業者の実体を有するものであることについて、相当と認められる調査をすべき義務があるとし、Xは、Y銀行がこの義務に違反したために中小企業者の実体を有しない者を主債務者とする融資について保証契約が締結されたことを主張立証して、本件免責条項に基づき、保証債務の全部又は一部の責めを免れることができる。 


錯誤により保証契約を一律に無効とせず、調査義務違反による保証債務の全部又は一部の免責の余地を認めることにより、事案ごとの個別具体的な事情に応じて金融機関と信用保証協会との間の利益衡量を図るべきであるとの判断を示したもの。

平成28年最判は、主債務者に関する調査の程度について「その時点において一般的に行われている調査方法等に鑑みて」相当と認められるものであればよいとして、高度の調査義務を課していない。
←主債務者となる者が反社会的勢力であることを調査する方法が実際上限られている。

中小企業者の実体を有しないことについては、融資に係る通常の審査の過程においても、その兆候を把握することができる場合が少なくない
金融機関が、通常行うべき審査を懈怠したり、把握すべき徴候を看過したような場合には、信用保証協会との関係で前記の調査義務違反が認められ得るものと考えられる。

判例時報2327

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

|

« 地自法251条の7に基づき辺野古湾の埋立承認取消しの取消しをしないという不作為の違法の確認を求めた事案 | トップページ | 養子縁組の実質的縁組意思について判断した事例 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/65412024

この記事へのトラックバック一覧です: 主債務者が中小企業の実体を有しない場合の信用保証協会の保証契約の意思表示の錯誤(否定):

« 地自法251条の7に基づき辺野古湾の埋立承認取消しの取消しをしないという不作為の違法の確認を求めた事案 | トップページ | 養子縁組の実質的縁組意思について判断した事例 »