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2017年6月 5日 (月)

警察による記者発表について、名誉毀損の国賠請求が認められた事例

東京高裁H27.11.18      
 
<事案> 
神奈川県警察は、本件書籍に関し、記者発表において、
①新薬の効果や効能に関する意思・研究者の談話及び体験者の体験談につき、これらの者の了解を得ずに氏名を使用し、
②本件書籍の記載内容はほとんどが虚偽である
と説明。

Xら(X1:発行者、X2:著者、X3:X1従業員で本件書籍の編集を行った者、X4:X1の代表取締役、X5:X1元従業員で、本件書籍を企画した者で、いずれも未承認医薬品の名称及び効果を広告したとして薬事法違反の被疑事実で通常逮捕された者)は、記者発表による事実が新聞報道されたことで名誉が毀損された
⇒Y(神奈川県)に対し、国賠法1条1項に基づき、X1につき300万円、X2~X5につき各110万円の支払を求めた。 
 
<原審>
真実性の抗弁を認め、Xらの請求を棄却。 
 
<判断>
真実性の抗弁を認めず、また、誤信相当性の抗弁も認められないとして、原判決を取り消し、X1に対して110万円、X2、X4に対して22万円、X3、X5に対して11万円を認め、その余の請求はいずれも棄却。

●医師・研究者の証言の信用性につき、
①X1から取材料が支払われて取材が存在したことを推認させる
②医学的見地に反する内容を述べたものとすると、医師らとX1との間で深刻な紛争が発生し、X1が法的責任を問われる大きな危険が生じる
③本件書籍の出版に協力する医師が複数存在している中で無断で談話を掲載するのは合理的な行為とは考え難い
④本件刑事事件の被疑事実からすれば、本件書籍への関与を否定しようとする動機をもつことがないとはいえない

X1が医師らに対して取材を行っていないとか、取材に沿った内容が記載されていないといった事実は認めることができない

体験者の証言につき、
①この証言、供述以外に、本件書籍に記載された内容が取材に沿わないものであることを裏付ける証拠はない
②本件刑事事件の被疑事実から、本件書籍への関与を否定しようとする動機を持つことがないとはいえない

X1が体験者らに対して取材を行っていないとか、取材に沿った内容が記載されていないといった事実を認めることはできない

①本件書籍には取材に沿った内容が記載されているとする者が存在
②医師、体験者らのうち、X1が取材を行っていないとの事実を認定できる者が存在しない

本件書籍の記載内容のほとんどが虚偽であるといった事実は認められず、真実性の抗弁は認められない
 
<解説>
名誉毀損による不法行為については、摘示事実の公共性、公益目的性、真実性の要件を満たすとき、違法性が阻却され、これらの要件は、名誉毀損の加害者が主張立証責任を負う(最高裁昭和58.10.20)。 

本件において、「新薬の効果、効能に関する医師・研究者の談話、体験者による体験談が取材に基づくことなくXらによって作り上げられているなど、その記載内容のほとんどが虚偽であるとの事実」について、本件書籍に登場する医師・研究者、体験者の供述を基に立証が組み立てられている。
信用性の検討に当たっては、合理的な疑いを残すことのないようにすべき。

控訴審:複数の医師・研究者の名前が挙げられているのに、本件書籍が取材に基づかずに発行されているとすると、X1と医師・研究者らとの間で法的な問題が顕在化することは明らかであって、そのような危険を冒してまで本件書籍を発行することが不合理であると指摘。

医師・研究者らの実名を挙げていることからすれば、法的危険を冒すことの意図よりも、取材が行われた事実を推認させることが通常であると考えられる。

判例時報2325

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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