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2017年6月15日 (木)

養子縁組の実質的縁組意思について判断した事例

東京高裁H27.2.12      
 
<事案>
亡Aの長女である被控訴人(原審原告)Xが、Aと控訴人らY1・Y2との間の養子縁組は、縁組当時Aに意思能力がなく、Xの遺留分を減少させることだけを目的としてされたものであり、AとYらに実質的縁組意思もなかったため無効⇒養子縁組の無効確認を求めた事案。

平成22年2月、AとYらは養子縁組をし(Y2は当時11歳であったため、親権者であるCとY1が代諾した。)、同年9月、Aは死亡。
翌平成23年、Xが、AとYらとの養子縁組の無効確認を求め提訴。
 
<規定>
民法 第802条(縁組の無効) 
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき
 
<原審>
Aの財産等を巡るXとC及びAの激しい対立という本件各養子縁組の背景⇒本件各養子縁組は、Aが、Cの関与の下、もっぱらXの遺留分を減少させる目的で行ったものであると強く推認され、Aには実質的な縁組意思がなかったものと認められる。
⇒Xの請求を認め、本件各養子縁組は無効。 
 
<判断> 
●実質的縁組意思の存在を肯定し、本件各養子縁組を有効であると判断して原判決を取り消した。 
養子縁組においては、養親及び養子において、社会通念に照らし真に親子関係を生じさせようとする意思があること、すなわち、親子としての精神的つながりを形成し、親子関係から本来生ずる法律的又は社会的な効果の全部又は一部を目的とするものであることが必要であって、こうした意思を全く含まず、単に別の目的を達成するための方便として、養子縁組の形式を利用したにすぎない場合には、縁組意思を欠くものとして当該養子縁組は無効となると解される。

養子縁組に至った経緯についてのY1の供述等

AはY1(息子の妻)に老後の面倒をしっかり看て欲しいとの考えから養子縁組を決意し、
Y1はAの気持ちに応えて安心させるため養子縁組に応じたと認められる。
⇒両名とも真に親子関係を生じさせようとする意思があったものと認めるのが相当。

原判決は、Y1の供述等の信用性を否定。
but
本判決は、
①Xのような資産がある高齢者も認知症が現れたり、体力的に弱って日常生活を一人ですることが困難になれば心細い思いをするが、そのような境遇で最も頼りたいはずの娘XからFの支配権を奪うような行動に出られた状況で同居していた長男Cの嫁であるY1に最後の面倒を看てもらいたいと考え、親子関係を形成しようとすることは不自然ではない。
②親子としての情愛を有する実子や養子から人的な信頼関係に基づき生活の面倒を看てもらうことなどで得られる安心感や満足感は、ヘルパーなどの第三者から得られるそれとは全く質が異なること等。
Y1の供述等の信用性を認め、実質的縁組意思の存在を肯定
 
●AとY2(孫) の養子縁組について
①本件と同様の境遇にある高齢者が、可愛がっている孫等に自分の思いを伝え、後を託す意味で、孫等と養子縁組を結ぶことは社会的に必ずしも珍しいものではない
②Aにとって可愛い孫で同居もしていたY2を経済的に援助するとともに、将来的に自分の資産が上手くY2に承継されるのを願い、養子縁組をしようとすることは何ら否定されるべきものではない
③Y2を養子にすることは、Cの希望を叶えるとともに、生活の面倒を看てもらっているY1との関係を円滑なものとし、Y2にも役立つものであって、いわば一石三鳥を期待できた

AにY2と真の親子関係を形成しようとする意思が認められないというものではないし、Y2の法定代理人として養子縁組を承諾したCらにAとY2との間で親子関係を形成させようとする意思があったことも明らか。
 
<解説>
縁組意思を欠く養子縁組は無効(民法802条1号)。
判例・通説:真に親子となろうとする意思(実質的縁組意思)が必要

判例時報2327

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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