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2017年6月 4日 (日)

自筆証書遺言の内容が遺言信託であると判断された事例

東京高裁H28.10.19       
 
<事案>
株式会社である第一審被告Yの株主総会決議についての不存在確認訴訟及び取消訴訟。
第一審原告であるX1(弁護士)は、死亡した株主Aが有していたY発行の譲渡制限株式(本件A株式)についてその議決権を行使できる⇒原告適格を有すると主張。
具体的には、
①Aの自筆証書遺言により本件A株式について遺言信託が開始⇒X1は遺言信託の受託者として株主権を行使できる。
②Aの自筆証書遺言の遺言執行者としても原告適格を有する。

尚、別紙決議目録2記載の監査役選任決議の不存在確認・取消しについてX1に原告適格があることは、X1は、株主総会の時点においてYの監査役権利義務者であり、当該決議が不存在又は取消しとなる場合に監査役となる者であることについて自白が成立しており、争いがない。
X2が原告適格を有することには争いがない。

<判断>
●自筆証書遺言の解釈⇒保険A株式に関しては、信託行為(遺言信託)を内容とするものと判断(信託法2条、3条参照)。
その具体的内容は、
①信託財産が本件A株式
②受託者がX1(共益権を行使できる)
③受益者及び信託行為において指摘する残余財産帰属者(信託法182条、183条)がB(Aの孫で未成年者)
④信託行為において定める信託の終了事由(信託法163条9号)がBの成人。
⑤信託行為において指定する残余財産の帰属権利者(信託法182条)はB。

遺言の文言(株券をBにあげる。Bが成人するまで弁護士X1が信託管理し、株券の権利行使は全部X1が行使する。)は解釈が困難で、遺言自体には、信託終了事由や残余財産帰属者という用語は使用されていないが、遺言者の真意に最も近い解釈を試みた。
 
本件遺言信託はBの成人前に目的達成不能により終了し(信託法163条1号)、信託の清算(信託法175条以下)に入り、信託財産である本件A株式は信託行為において指定する残余財産帰属者である未成年者Bが取得すべきものとなったと判断(信託法182条、183条)。

①信託においても、受託者X1に譲渡制限株式が移転するには、会社の承認が必要
②本件においては、受託者X1への株式譲渡について会社の承認が得られず、受託者X1が任務(配当を受領して受益者Bに交付する・共益権を行使する等)を遂行することは困難。
③仮に受託者X1への株式譲渡について会社のみなし承認(会社法145条1項)があったと判断されるとしても、本件遺言信託は受益者全員の受益権放棄を原因としても目的達成不能により終了。 
本件A株式は信託行為において定める残余財産帰属権利者である未成年者Bが取得すべきものと判断し、本件A株式の遺言信託の受託者たる地位を根拠としては、X1の原告適格(別紙決議目録2の決議を除く)を根拠づけることはできない。 

●Aの自筆証書遺言によればX1は遺言執行者であったが、遺言執行者であることだけを理由として遺産である株式の株主権の行使はできない
⇒この観点からもX1の原告適格(別紙決議目録2記載の決議を除く。)を否定。 

同じ当事者間の先行する訴訟の確定判決の理由中にある、遺言執行者であることだけを理由として遺産である株式の株主権を行使できる(X1の原告適格を認める。)という判断については、当該判断の既判力及び争点効類似の効力をいずれも否定。

本件株主総会には手続上の瑕疵があるが、瑕疵は軽微
⇒決議取消請求を裁量棄却。

判例時報2325

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