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2017年6月30日 (金)

自筆証書遺言の日付の記載が故意による不実記載⇒遺言無効

東京地裁H28.3.30      

<事案>
X及びYの母であるAを遺言者とする自筆証書遺言(平成19年12月21日付)について、Xが、本件遺言書はYが偽造したものであり、本件遺言は無効である
⇒Yに対し、本件遺言が無効であること及び本件遺言書を偽造したYが相続人の地位にないことの各確認等を求める事案。
 
<規定>
民法 第968条(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
 
<判断>   
①Aの認知症に係る診断経過、
②本件遺言書の作成日付である平成19年12月21日前後からA死亡時までの間のAの財産をめぐるXとYの交渉経緯等
を認定
 
●本件遺言書の有効性:
Yは、Aの財産をめぐるXの振る舞いに対する不信感又はこれに類する情を高じさせて、平成20年4月23日より後のいずれかの時点で、本件不動産をYに取得せしめる内容の本件遺言につき、Aの他の不動産の売買の日と同じ平成19年12月21日にされた意思表示としての体裁を整えることとした上で、本件遺言書の作成に関与したものと推認するのが合理的。

①本件遺言書は、平成20年4月23日より後の日において、平成19年12月21日まで日付を意図的に遡らせて作成されたものと推認
自筆証書による遺言に際し意図的に真実の日付と異なる日付が記載された場合には、民法968条1項所定の要件の1つである自書による日付の記載があるとはいえない

本件遺言書にはついては、Yの抗弁と位置付けられる自筆証書の要件の立証がないことに帰し、有効性は認められない
 
●Yが本件遺言書を偽造したか否か 
①本件遺言書がAの自筆によるものとは断じることができず
②本件全証拠によっても、本件遺言書の作成へのYの関与の具体的な態様を認定することはできない

Yが本件遺言書を偽造したとは認められない。
 
<解説>
自筆証書遺言に日付の記載が要求されている。

遺言作成時の遺言能力の有無を確定するための基準や②互いに抵触する内容を持つ遺言書の有効性を判断するための遺言の先後を決定するための基準となる。

日付を欠く遺言は無効であり、たとえ日付の有無によって遺言の内容に疑問の生じる余地がない場合でも無効(判例・通説)。

遺言書に日付の記載はあるが、それが真実の遺言作成日と一致していないとき
(1)故意の不実記載⇒無効(通説)
(2)錯誤による誤記の場合
自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、それが①誤記であること及び②真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、遺言はそれによって無効となるものではない(最高裁昭和52.11.21)。

本判決は、本件遺言が(1)の場合に当たるとして、これを無効としたもの。

遺言無効確認訴訟では、一般に、
①遺言無能力、②遺言書の偽造(自筆証書遺言の自書性)、③方式違背、④公序良俗違反等の法律行為の一般的要件の欠如、⑤錯誤無効・詐欺取消しなど多数の無効原因が主張されるのが通常。

判例時報2328

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