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2017年6月19日 (月)

原告(未決拘禁者・死刑確定者)に対する拘置所長による自弁の書籍等に対する一部抹消処分⇒国賠法上違法(肯定)

名古屋地裁H28.8.30      
 
<事案>
平成23年4月1日までは未決拘禁者として、それ以降は死刑確定者として、拘置所に収容されているXが、
平成22年9月1日以降、差し入れられた書籍、パンフレット及び新聞の記事の一部(=死刑執行状況が具体的に記載された文書及び写真等)を抹消してXに交付した拘置所長による13回の各抹消処分が違法であり、これらによって精神的苦痛を被った
⇒Yに対して、国賠法1条1項に基づき慰謝料合計100万円及び遅延損害金の支払を求めた。 
 
<Yの主張>
本件各抹消処分当時Xの精神状態が不安定であった⇒同文書等を閲覧することにより、Xが自傷行為や器物損壊行為等に及ぶおそれがあり、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあった⇒本件各抹消処分が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律70条1項1号に基づく適法な処分
 
<判断>
本件各抹消処分当時のXの精神状態について、
幻聴を聴いていた可能性を認めつつも、その頻度や当時のXに対する精神科医の治療の有無等処遇状況を検討
Xが本件各抹消処分当時に精神的に不安定になっていたとは認められない

①Xが過去に自傷行為及び器物損壊行為を行った時期から本件各抹消処分までの間に10年以上経過
②抹消処分の対象となった文書等の一部については、Xが以前に同一の文書等を抹消処分のない状態で閲覧していたものの、その後にXが自傷行為等に及んだ事実がなかった

本件各抹消処分当時、Xが本件各抹消部分を閲覧した場合に自傷行為等に及び、拘置所内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があったと認めることはできない

拘置所長による本件各抹消処分はいずれも裁量の範囲を逸脱濫用した過失があり、国賠法上違法であると判断し、各処分につき5000円ずつの慰謝料及び遅延損害金の支払義務を認めた。
 
<解説>
●原告の刑事収容施設法:
書籍等の閲覧が憲法上の表現の自由等に関わるもの

未決拘禁者、受刑者及び死刑確定者について、その収容の事由によって区別することなく、原則として自弁の書籍等の閲覧の自由を保障(同法69条)

刑事施設の規律及び秩序の維持のためにその閲覧を禁止する場合(同法70条1項1号)であっても、その制限に当たっては、同目的を達成するために必要な限度を超えてはならない旨規定(同法73条2項)。 

本判決:
同法70条1項1号所定の「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき」の解釈に当たっては、
死刑確定の有無を問わず、当該閲覧を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず被収容者の性向、行状、刑事施設内の管理、保安の状況、当該書籍等の内容その他の具体的事情の下において、その閲覧を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は、その障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきと解するのが相当。

未決拘禁者については、監獄法下の判示ではあるが、既に同旨のの判例がある(最高裁昭和58.6.22)ところ、本判決は、刑事収容施設法の下では、死刑確定者についても同様であることを確認。

●本件各抹消処分の一部について、Xの同意を得て抹消処分をしていたことがそれらの処分の適法性を基礎付けるか? 

本判決:
Xによる一部抹消に対する同意は、一部抹消を行うことによる書籍等の財産的価値の損失に対する同意として行われたものにすぎず、本件各抹消処分そのものの適法性を基礎付ける事情とはならない。

判例時報2327

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