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2017年6月19日 (月)

関連会社の新規借り入れに際して担保のために行った約束手形の振出・裏書に対する無償否認(肯定)

東京地裁H28.6.6      
 
<事案>
再生債務者Aは、各種電気機械器具の製造販売等を業とする株式会社。
 
平成26年4月以降、Aの全株式をBが代表取締役を務める持株会社Cが取得し、BがAの代表取締役に就任。
Xは平成26年10月30日にCに対し1億円貸付、AはXに対し、額面3800万円の約束手形を振り出すとともに、額面6264万円のD振出の約束手形を裏書譲渡
 
平成27年2月18日、Aは東京地裁に民事再生手続開始申立て、同裁判所は同月23日午後9時付で再生手続開始決定及び管理命令を発し、Yを管財人に選任。 

Xは、手が金合計1億64万円及び利息を再生債権として届け出たが、Yは全額について認めない旨の認否⇒Xが査定の申立て⇒再生裁判所は本件再生債権の額をゼロ円と査定する旨の決定⇒再生債権査定異議の訴えとして本件訴訟を提起。
 
<規定>
民事再生法 第127条(再生債権者を害する行為の否認) 

3 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
 
<Yの主張>
①本件貸付はもっぱらCのためになされたもの⇒Aは何ら関係ないから本件各手形の原因関係は存在しない。
②本件各手形がCのXに対する債務の第三者弁済ないし代物弁済としてなされたとしても、この手形債務負担行為は無償行為否認の対象となる。 
 
<判断>
●主張①について 
A及びX代表者らの供述

本件各手形は、その実質は本件貸付における担保として、後の貸付金弁済時に買い戻すことを予定して、形式としては第三者弁済(代物弁済)の形式をとり、Xに対して振出(本件手形1)又は裏書譲渡(本件手形2)したものと認定
⇒原因関係不存在の抗弁は認められない。
 
●主張②について 
旧破産法上の無償否認行為に関する最高裁昭和62.7.3を引用し、
再生債務者が義務無くして他人のためにした担保の供与は、それが債権者の主たる債務者に対する出捐の直接的な原因をなす場合であっても、再生債務者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償否認の対象となる。

①本件貸付の債務者はCであり貸付金もCの口座に送金されている
②Aは保証料を得ていない
③以前にXに対する保証債務を負っていたものでもない
手形債務の負担によりAは直接的な利益を受けていない

①C口座からA口座への送金も見られるが、直後にCの事業協力会社への手形債務の決済に使用されている
②C口座からA口座への送金よりもA口座からC口座への送金が多くなっている
③これら送金の当時はCを親会社とするグループ全体の資金繰りが悪化した時期であり、BはAの取締役会の決議をとらずにCの債務をAに補償させていたことがあった

BはAの資産をCその他グループ会社の資金繰りのために頻繁に利用しており、本件各手形に関してもAは間接的な意味でも利益を受けていない

本件各手形の振出ないし裏書譲渡を無償否認の対象と認め、Xの主張を退けた。
 
<解説>
●民事再生法上の否認権の類型は、破産法及び会社更生法のそれと基本的に同じであり、
①支払停止発生後の危機時期またはそれに接着する時期において、無償でその責任財産を減少させたり、債務を負担する債務者の行為がきわめて詐害性の高いこと
受益者の側でも無償で利益を得ているのであるから、緩やかに否認を認めても公平に反しないこと
詐害行為否認の特殊類型として定められている。 

●債務の保証又は担保の提供の場合
XがAに対して融資を行う際、BがAのXに対する債務の保証人となったり、担保を提供したとして、Bが破産した場合の破産管財人は、債務保証や担保提供行為を否認できるか?(=Bにとって無償行為か?)
破産者の保証等が他人の既存債務についてなされた場合⇒学説の多くも無償否認を肯定。

その保証等が直接の原因となって新規の出捐がなされた場合。
A(かつての多数説):無償行為性を否定

①受益者たる債権者Xは、保証と引き換えに主債務者Aに対して融資を行っているから、受益者Xの側についてみれば無償で債務保証の利益を得たことにはならない。
②保証人は主債務者に対する求償権を取得するから、債務保証は無償行為とは言えない。

B(判例):破産者の受けた経済的利益の有無の観点から無償行為性を決している

最高裁昭和62.7.3:
同族会社の代表者で実質的な経営者でもある破産者が、同会社の債務を個人保証するとともに担保を提供した事案において、
破産者が義務無くして他人のためにした担保の供与は、それが債権者の主たる債務者に対する出捐の直接的な原因をなす場合であっても、破産者がその対価として経済的利益を受けない限り、無償否認の対象となる

最高裁H8.3.2:
会社の代表者等に対する信用保証協会の代位弁済による求償権行使の可否が争われた2つの事件において、連帯保証人がすでに包括的債務保証により金融機関に対して会社の金融機関に対する一切の取引上の債務を返済すべき義務を負っていた⇒無償否認を否定。

判例時報2327

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