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2017年6月 1日 (木)

離婚訴訟で父親を親権者(一審)⇒監護者である母親を親権者に(控訴審)

東京高裁H29.1.26      
 
<請求>
Xは、YのXに対する身体的・経済的・精神的・性的暴力により婚姻関係は破綻したとしてYに対し離婚と慰謝料500万円の支払を求め、
附帯処分として養育費月額10万円及び年金分割を求め、

Yは離婚について請求棄却を求め、
予備的にA親権者としてYを指定することを希望し、
その場合の附帯処分として別紙共同養育計画案に基づきXとAの面会交流の時期・方法等を定めることを求めた。 

<原審>
離婚は認容。
X(母親)の慰謝料請求は否定。
Y(父親)をAの親権者に指定。
本判決確定後直ちにAをYに引き渡すことをXに命じる。

面会交流を認め、Yが前記条項に基づく面会交流に応じない場合は、それが親権者変更事由になることを認める旨の条項を付加。 
①XはYの了解を得ることなくAを連れ出し、以来今日まで約5年10か月Aを連れ出し、以来今日まで約5年10か月間Aを監護し、その間Y・A間の面会交流を合計で6回程度しか認めておらず、今後も一定の条件の下で月1回程度の頻度とすることを希望
②YはAが連れ出された直後から取り戻しについての数々の法的手段に訴えたが奏功せず、爾来今日までAとの生活を切望しながら果たせずに来ており、それが実現した場合は整った環境で周到に監護する計画と意欲を持っており、XとAの交流に関しては、親密な親子関係の継続を重視して、年間100日に及ぶ面会交流の計画を提示

Aが両親の愛情を受けて健全に成長することを可能にするためには、YをAの親権者に指定し、本判決確定後直ちにAをYに引き渡すことをXに命ずるのが相当。
 
<控訴の趣旨>
①原判決中X敗訴部分の取消し
②A親権者X指定
③養育費月額6万円
④慰謝料500万円の支払等
 
<Xの主張>
Aは主たる監護者であるXの下で安定した生活を送っているのに、
原判決は、
Yの提案する年間約100日面会交流を認めるとの主張について、その現実性、父母間を高頻度で行き来する8歳の長女への影響を考慮せず、Xが提案するY・A間の面会交流が少ないことをもって、Aの親権者をYと定めたもので、
現実に生きているAの福祉という観点に立たず、面会交流の回数のみから親権者の適格性を判断するという過ちを犯している。 
 
<判断>
●親権者指定の判断基準として、
①これまでの子の監護養育状況
子の現状や父母との関係
父母それぞれの監護能力や監護環境・監護に関する意欲
子の意思その他子の健全な生育に関する事情
を総合的に考慮して、子の利益の観点から判断すべき。

面会交流の頻度等に関しては、親権者を定めるにあたり総合的に考慮すべき事情の1つであるが、父母の離婚後の非監護者との面会交流だけで子の健全な生育や子の利益が確保されるわけではない
⇒①~④について総合的な観点から検討。

年間100日面会のYの主張に対しては、
X・Y宅は片道2時間半程離れており、現在小学校3年生のAが年間100回の面会交流のたびに両宅を往復するとすれば、身体への負担のほか、学校行事への参加、学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがある
⇒必ずしもAの健全な成育にとって利益になるとは限らない。

Xは、Y・A間の面会交流の頻度は当面月1回を想定しており、当初はこの程度で面会交流を再開することがAの健全な生育にとって不十分でAの利益を害するという証拠はない。

以上のほか、
Aの現在の監護養育状況にその健全な生育上問題なく、
Aの利益からみてAに転居・転校させて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情は見当たらず
Aの利益を最も優先して考慮すれば、その親権者をXと定めるのが相当

●Xによる長女Aを伴う別居に関しては、
①別居当時Aは満2歳4か月であり、業務が多忙なYにAの監護を委ねることは困難であり
②破綻的別居で予めAの監護について協議することは困難であった
③Xはそのころ8回にわたり面会交流の場を設け、更に電話による交流もさせていた
④平成22年9月26日以降は面会交流をさせなかったが、これは同月8日にYがXに対し、AとYが寺日番組で放映される旨、他のマスメディア関係者もこの問題を取り上げる旨等を記載したメールを送り、実際に同日Yがマスメディアに提供した面会交流時のAの映像が、目の部分にぼかしが入れられたものの、放映され、Xがこれに衝撃を受けたことによるもの(Xはマスメディアの取材やYによるAの撮影がないことを条件に同月26日の面会に応じたもの)

これらをもってAの利益の観点からみて、Xが親権者としてふさわしくないとは認め難い。 
 
<解説>
Xは離婚と親権者指定とを求めたが、面会交流に関しては、予備的にせよ附帯処分として申立てをしていない。
⇒本判決で面会交流の頻度方法等について判断していないのは、不告不理の原則から当然。 

判例時報2325

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