反政府政党の指導的立場にあったとまでは認められなくても難民該当性を肯定した事例
名古屋高裁H28.7.28
<事案>
ウガンダ共和国の国籍を有する外国人女性であるXは、平成20年7月に本邦に入国し、平成21年11月に、出入国管理及び難民認定法(「入管法」)61条の2第1項に基づき難民認定の申請⇒
平成23年1月に法務大臣から難民の認定をしない旨の処分、
法務大臣から権限委任を受けた名古屋入国管理局長から同法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の処分
名古屋入国管理局主任者からウガンダを送還先とする退去強制令書発布処分
⇒
Xは、自らはウガンダ政府から弾圧を受けている野党FDCの党員であり、ウガンダ出国前には親政府勢力から襲撃を受けるなどの迫害を受けており、前記各処分はXの難民該当性の判断を誤ってされた違法なものであるなどと主張し、その取消しを求めた。
<原審>
①Xは、ウガンダ政府等から迫害の対象として関心を抱かせるような指導的立場で政治活動を行っていたものとは認め難い
②Xの供述には、重要部分で変遷が認められる
③Xは、本邦への入国時に迫害を受けていることを申し立てておらず、難民認定申請をするまでにも相当期間が経過しているなど、行動に切迫性を欠いている
⇒難民該当性を否定。
<判断>
ウガンダの一般情勢等についても子細に検討し、
同国政府が、FDCの役職員や指導的立場にある者のみならず、集会や抗議活動に参加するFDC党員一般に対して、発砲、催涙ガスの発射、暴行、逮捕・拘留、集会の阻止などの行為を行っていることを認定
⇒
ウガンダの前記情勢では、指導的立場にあるとまでいえなくとも、XのようにFDC党員として実質的な活動をし、集会に参加して積極的に発言をしたり、動員役員としてFDC支援を募る有意な活動をしたりしていれば、迫害の恐れはあり、、実際に、Xは、親政府勢力から襲撃を受け、反政府活動を止めるように警告も受けている
⇒
難民該当性を肯定。
Xの供述の信用性について、
①複数の重要な事実について客観的裏付けがあり、
②難民該当性に関する中核的事実についての供述が具体的で一貫しており
③ウガンダの客観的情勢とも整合
⇒信用性を肯定。
<解説>
「難民」の要件である「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことが認められるためには、その者が主観的に迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているだけでなく、通常人がその者の立場に置かれた場合に迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要。
判例時報2328
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