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2017年6月17日 (土)

認知症の高齢者を養親とする養子縁組について、意思能力及び縁組意思が否定された事例。

名古屋高裁金沢支部H28.9.14      
 
<事案>
平成25年8月20日、亡A(大正9年生)を養親、Yを養子とする養子縁組届がYによって提出された(本件養子縁組)。AとYとの間に本件養子縁組以前からの親族関係はない。
本件は、Aの妹であるXが、本件養子縁組についてAの縁組意思の欠如等を主張して、Yに対し、本件養子縁組の無効確認を求めた事案。
 
<規定>
民法 第802条(縁組の無効) 
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

<原審>
Aにおいて、本件養子縁組当時においても養子縁組に必要な意思能力を有していたことが認められ、その届出意思がなかったとも認められない。
⇒Xの請求棄却。 
 
<判断>
養子縁組当時、Xに養子縁組にかかる意思能力及び縁組意思がなかったと認められる⇒原判決を取り消し、Xの請求を認容。 

①Aはかねてからその妻との関係で妄想がみられ、遅くとも平成23年8月頃から認知症の症状が現れていた。
②平成24年11月時点で、医師により年齢(92歳)相応の脳萎縮があって、見当識障害及び著しい記憶障害によりアルツハイマー型認知症に罹患し、後見相当の精神状態にあると診断。
③このような状態は、本件養子縁組の届出書の作成、届出がされた平成25年8月20日前後の時点において更に進行し、客観的な所見としては、著名な脳萎縮が認められたほか、長谷川式及びMMSEの数値は高度の認知症があることを示し、しかも、見当識障害及び記憶障害が著しく、尿失禁等の周辺症状もみられた。

本件養子縁組の届出書作成・届出がなされた当時、精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にあったということができるのであって、仮にAが本件養子縁組届出書に署名押印したとしても、これをもって直ちに縁組意思があったと推認することはできない。

Yは、平成24年11月以前からしばしばAを訪問し、その際にAの身の回りの世話をするなどして、それなりに親しくなっていたことは認められる。
but
①AとYは、本件養子縁組の届出がされるまで、本件養子縁組を周囲の関係者に対し公にしようとした様子は見受けられず、
②Yが養子となった後のAに対する扶養や祭祀承継等のあり方について、具体的な話し合いがされた形跡はなく、
③同居又はこれに類する生活を送ることについても同様であり、かつ、そのような生活が具体的に予定されていたものでもない

AとYとの間で、親子関係を創設するための真摯な協議はなく、少なくとも、Aについて、Yと親子関係を創設する意思があったとみるべき事情はない。

Aは本件養子縁組の届出後、入院先病院の医師や看護師に対し、Yと養子縁組をしたかのような発言をしていた事実が認められる。
but
このような発言は、Aとして、予期に反して入院が続いたことで帰宅願望を強めていたところ、YがAとの面会において同居を示唆するなどし、Aをして退院を期待させるようなことを述べたのを受けてなされたもの。
⇒これらの事情に加えて、当時のAの精神状態を考え併せると、Aの発言は、帰宅願望の文脈で理解され、Yが自分の面倒を見てくれるから退院させてほしいと医師や看護師に訴えることに主眼があったとみるのが相当で、本件養子縁組が有効に成立したことを前提にした発言と解するのは相当でない。 

本件養子縁組時のAの精神状態に照らして、AがYとの間で人為的に養子関係を創設し、扶養、相続、祭祀承継等の法的効果を生じさせることを認識するに足りる判断能力を備えていたとはいえず、かつ、その意思を有していたとも認められない。
⇒Aが、本件養子縁組当時、縁組意思がなかったと認めることができる⇒本件養子縁組は無効。
 
<解説>
民法802条1号は、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に縁組を無効とする旨定めているところ、「縁組をする意思」(縁組意思)の具体的内容について、最高裁は、「真に養親子関係の設定を欲する効果意思」と解している(最高裁昭和23.12.23)。
同号は、縁組当事者が意思能力を有しないにもかかわらず、縁組の届出をしたときにも適用があるものとされている(判例)。
半面、その意思能力ないし精神機能の程度としては、「格別高度な内容である必要はなく、親子という親族関係を人為的に設定することの意義を極く常識的に理解し得る程度であれば足りる」(東京高裁)とされている。

判例時報2327

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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