道路位置指定の取消処分申請についての裁判例
東京高裁H28.11.30
<事案>
昭和26年に原告土地を四棟の住宅敷地として利用するために、私道が開設され、東京都知事による道路位置指定処分がされた。
・・・・その後、昭和26年に開設された私道は廃止され(事実行為として廃止され)、原告土地全体を敷地として一等のマンションが建築された。
平成25年に至り、隣接土地の新所有者が、本件土地が建築基準法上の道路であることを前提として、建築確認を取得(接道義務は区道に接することで満たされるが、本件土地が建築基準法で定義される「道路」だとすると、二面で道路に接するため、各種建築規制が緩和される。)。
Xは、本件道路位置指定の取消しを申請⇒Yは、隣接土地やその地上建物所有権者・抵当権者等の承諾がないことを理由にXの申請を却下
⇒却下処分の取消し及び取消処分の義務付けを求めるのが本件訴訟。
<判断>
本件の事実関係(道が無くなった時に接道義務を満たさない土地の発生などのトラブルが生じておらず、道路位置指定の必要性は消滅した。)に即した判断。
本件の事実関係の下では、道が壊されて無くなった後の本件土地は、「道」も「これから築造しようとする道」も存在しない⇒建築基準法42条1項5号の「道路」に該当しない。
このような場合には、申請がなくても道路位置指定の取消処分をすべきであり、この点について処分行政庁に裁量の余地はなく、敷地所有者・隣地所有者等の同意も必要ではない。
最高裁昭和47.7.25:道路位置指定の取消処分をするには道路敷地所有者(本件ではXのほか隣接土地新所有者がこれに当たる。)の承諾が必要であるかの如く判示。
but
最高裁昭和47.7.25は、係争地に現実に「道」が存在し、道路位置指定の必要性が存続していた事案であって、これと事案を異にする本件には適用されないと判断。
国民に義務を課し又は権利を制限するには、法律、法律の委任に基づく政省令又は法律の委任に基づく条例によらなければならないと判断
⇒
前掲最高裁判決を根拠に地方自治法15条の規則により道路位置指定解除の要件を定めることができるというYの主張を排斥。
判例時報2325
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