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2017年6月18日 (日)

韓国法での相続分・法定相続分の確認請求

東京地裁H28.8.16      
 
<事案>
韓国籍を有している被相続人Aは昭和14年頃来日し、昭和20年に原告X1と婚姻し、日本において複数の事業を行い、平成21年8月に死亡。
Aには相続人として、配偶者X1のほか、合計7人の子がいる。 

法の適用に関する通則法38条は、相続は被相続人の本国法によるとしているところ、韓国民法は被相続人に子が数人ある場合、その相続分は平等であり、被相続人の配偶者の相続分は子の相続分に5割を加算した割合とされている。

X1の相続分は17分の3、子は17分の2となる。

X1は、Y1らを被告として、Aを被相続人とする相続において、通則法42条を適用して、韓国民法の配偶者の法定相続分の規定の適用が我が国の公の秩序又は善良の風俗に反するとして韓国民法の同規定の適用を排除し、日本民法の配偶者の遺留分割合を最低限の法定相続分として、妻X1の相続分を4分の1、その余の子の相続分を韓国民法に従って平等の割合すなわち28分の3とするべきであるとして、法定相続分割合の確認を求めた。 
 
<規定>
法の適用に関する通則法 第36条(相続) 
相続は、被相続人の本国法による。

法の適用に関する通則法 第42条(公序)
外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない。

民法 第899条
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

民法 第905条(相続分の取戻権)
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。
 
<被告主張>
請求の棄却を求めるとともに、
本案前の抗弁として:
遺産分割の前提となる具体的相続分の確認を求める訴えは確認の利益を欠くと解される(最高裁H12.2.24)のと同様に、法定相続分割合の確認を求める本件訴えは、確認の利益を欠き、不適法。 
 
<判断>
●本案前の抗弁について
法定相続分は、遺産分割の前提となるべき計算上の価値又は割合にすぎない具体的相続分と異なり、実体法上の権利であって、その割合に争いがある限り、その確認を求める訴えが直ちに確認の利益を欠くものであるとはいえない
but
法定相続分の確認は認められるが、相続財産を掲げて法定相続分の確認を求めることは許されない
⇒「亡Aを被相続人とする相続についての」法定相続分の確認請求として認容。
 
●本案請求について 
通則法42条にいう公序に反するときとは、外国法の規定の適用が日本の法秩序にとって容認し難い結果をもたらすような場合をいうと解される。

法定相続分及び遺留分の割合は各国ごとに配偶者及び子の権利の均衡に配慮して定められていることから、外国の規定が適用される場合には、遺留分割合が日本の民法の規定による遺留分割合を下回ることも当然に予想され、このような結果をもたらす外国法の規定が直ちに公序に反するものではなく、①被相続人Aと原告X1が日本に生活の基盤を有し、韓国との特段のつながりを有していないこと、②被相続人Aが日本で財産を築き、原告X1がこれに多大な貢献をしたこと、③原告X1の相続額など原告らの主張する事実を全て考慮しても、本件相続に韓国民法の法定相続分割合の規定を適用することが公序に反するということはできない
⇒原告の請求を棄却。

相続分の譲渡の対象となる相続分は、法定相続分ではなく具体的相続分である
⇒法定相続分の譲り受けにより法定相続分の加算を主張した原告の主張を排斥。
 
<解説> 
法定相続分の確認請求の訴えの適否 
法定相続分が権利性を有する⇒その確認請求は許される。
法定相続分が特別受益及び寄与分によって修正されて具体的相続分が形成される。

A:具体的相続分は法定相続分を修正した相続分であるが、具体的な相続分計算を待たずに相続財産に対する観念的な権利として実在し、これにしたがって相続財産が書く共同相続人に承継されるとして、民法899条にいう「相続分」を具体的相続分であると解する相続分説。

〇B:持戻計算は特別受益によって相続分を修正するのではなく、特別受益者が現実に相続分に対して持つ取得分に変更を加える操作に過ぎず、かつ具体的相続分の計算は遺産分割審判の審理とともに初めて明らかになるもので、算定された具体的相続分は、具体的権利ないし法的関係ではなく、単に分割の過程で設定される一種の分割基準であるとする分割分説

最高裁H12.2.24:
具体的相続分遺産分割審判手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、このような事件を離れてこれのみを別個独立に判決判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない

共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法。
~
遺産分割分説に立つことを明言。
具体的相続分の権利性を否定する分割分説は、法定相続分が権利性を有することを前提にしているものと思われる。
⇒法定相続分権利性を有する以上、その割合に争いがある場合には、確認請求訴訟が許されるのは当然。
 
●通則法42条の適用の可否
本判決は、通説・判例に従い、
通則法42条が適用されるのは、外国法の規定の適用が日本の法秩序にとって容認し難い結果をもたらすような場合をいうと判示。

外国法の適用の結果が公序に反するか否かは、
我が国法律の適用結果との差異の大きさ
事案の我が国との牽連性
の双方を総合的に考慮すべきものと解されている。
 
●相続分の譲渡 
原告X2は、訴外の相続人から相続分の譲渡を受けたことを前提として、同人の法定相続分割合を自己の法定相続分割合に加算して主張。
本判決は、相続分の譲渡において譲渡の対象となるのは、法定相続分ではなく具体的相続分とし、X2の相続分の譲受を認めない旨の判示。
but
法定相続分に権利性を肯定する以上譲渡性も肯定されるのではないか

判例時報2327

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