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2017年6月30日 (金)

遺言能力欠如⇒公正証書遺言無効

東京地裁H28.8.25      
 
<事案>
亡Aの相続人であるXら(Aの前夫の子ら)が、Aの公正証書遺言による遺言における受遺者ないしその相続人であるYらに対し、Aの遺言能力の欠如を理由として、本件遺言が無効であることの確認を求めた事案。 
 
<判断>
本件遺言当時のAの遺言能力を否定。 
(1)Aに遺言をするに足る意思能力がなかった旨の意見を述べる医師の意見は、Aの経歴、診察経緯及びその内容等に照らし、少なくとも医学的観点から見た当時のAの精神状態の評価に関しては、疑問を差し挟むに足る証拠は見当たらない。

(2)Aが遺言能力を有していた旨の前記公証人の供述等は、
①その前提において医学的根拠がない部分があるなどその根拠に乏しい
②Aと公証人との面談時のやりとりにおいてAの能力に疑問を抱かせる点がある
⇒遺言能力を認めるに足りる的確な証拠であると評価できない。

(3)本件遺言当時のAが遺言能力を肯定するに足りるほどのコミュニケーション能力を有していたと認められない

(4)本件遺言当時のAは、Y夫婦に財産の全てを相続させたいとの意思を明示し、他の相続人に財産を分けない理由を自発的に述べていたが、それは、自分が置かれた現実の状況を理解・把握する能力を失っているAをY夫婦が誘導することによってされたものであるとみるのが相当

本件遺言当時のAは、医学的観点はもとより、法的観点から見ても、遺言能力を欠いていたと認めるのが相当。
 
<解説>
遺言能力についての規定
①遺言能力具備の要件として15歳に達することが求められる(民法961条)
行為能力に関する総則既定の適用が排除(同法962条)
遺言能力は遺言時に有することが求められる(同法963条)
but
遺言能力についての明確な定義規定なし。
遺言能力の意義については、前記年齢要件のほかは意思能力と同様に解した上で、
その有無の判断に際しては、
一般的な事理弁識能力があることについて医学的判断を前提としながら、
②それとは区別されるところの法的判断として、当該遺言内容について遺言者が理解していたか否かを検討すること
が一般的に是認されている。

裁判実務上、主として、
①遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
遺言内容それ自体の複雑性
遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯等といった諸事情が考慮されている。

今日、公正証書遺言でさえも裁判で無効とされることも珍しくないとされている。

判例時報2328

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