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2017年5月 1日 (月)

地方公共団体が出資した会社の株主総会での議決権の行使は住民訴訟の対象とならないとされた事例

高知地裁H27.3.10      
 
<事案>
A社の株主総会において、株主であるB町の代表者であるYが、A社の財産を第三者に売却等する旨の議案を承認したことにつき、B町の住人であるXらが、その売却価額が不相当に安価であり、この議案を承認すべきではなかったのに、その承認をしたことにより、A社の財産的価値が減少し、B町に損害が生じたなどと主張して、地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき、B町の町長であるYに対し、2079万7343円及び遅延損害金の支払をYに求めるよう請求する住民訴訟。 
 
<規定>
地方自治法 第242条(住民監査請求) 
普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
 
<判断>
①住民訴訟の対象となる事項は、地方自治法242条1項に定める違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限定
②財務会計上の行為のうち「財産の管理」とは、当該財産としての財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財産管理行為がこれに該当。
株主の有する議決権は、株主が会社経営に参与し、あるいは、取締役等の行為を監督是正する権利である共益権の一種である上、本件議案に陥ったA社において木材の乾燥業を継続することは困難である一方、A社の保有する乾燥機を利用してきた業者にとってその使用を継続する必要があるため、乾燥業の受け皿となる林産組合が設立されたことを前提として、その林産組合にA社の有する固定資産を譲渡すべきかが、A社の経営上問題となったことから、A社の株主であるB町として、その経営上の判断の是非に賛否を明らかにすべく行使されたもの⇒この議決権の行使は、株式の財産的価値の維持・保全を図る財務的管理を直接の目的とするものであるとはいえず、財務会計上の行為であるとはいえない

Xらの訴えを却下

判例時報2322

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