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2017年5月 3日 (水)

被保険車両の盗難を理由とした保険金の支払を求めた事案で、否定された事例

東京高裁H27.8.4      
 
<事案>
Xは、Yとの間で、協定保険価格355万円の自動車保険契約を締結していたが、その使用する自動車(イモビライザー装備車)が盗難にあった⇒車両保険金355万円の支払を求めた。 
 
<原審>
本件駐車場所に本件車両が置かれていたことを認めた上で
①レッカー移動など非自走式の窃取方法やスペアキーを利用する方法で本件車両を持ち去ったとは考え難いとしつつ、イモビライザーシステムを無効化すること自体が不可能ないし著しく困難であるとはいえず、イモビライザー装備車であっても相当数の盗難事例が存在⇒本件車両の盗難は可能。
②Xの収入が乏しいこと、Xにおいて本件車両の必要性は乏しいといった事情があったとしても、本件盗難を故意に生じさせたとまではいえない
⇒Xの請求を全部認容。 
 
<判断> 
X以外の者が本件車両を本件駐車場から持ち去ったことを認めることはできない⇒原判決を取り消してXの請求を棄却。 

本件駐車場所に本件車両が置かれていたことを認めた上で、
①本件駐車場は、三方を建物に囲まれ、片側一車線の国道に面するなどの周辺立地状況等⇒非自走式による本件車両の持ち去りは現実的に考え難い
②エンジンキー、スペアキーの利用を疑わせる具体的な事情は見当たらず、単なる抽象的な可能性にとどまる
③イモビライザー装備車のエンジンキー複製について、本件車両の持ち去りが判明した午前5時頃までに、本件車両からコンピュータを取り出して運び出し、明るいところで作業をする時間的余裕は全くなく、エンジンキーを複製することができる専門業者の関与をうかがわせる証拠も一切ない⇒エンジンキーを複製する方法による持ち去りの現実的可能性は極めて乏しい
④このほか本件車両の持ち去りの可能性を示す具体的な事実を認めるに足りる証拠はない
⑤Xが警察に盗難被害を届け出ている事実があったとしても、これをもって直ちに本件車両の盗難被害の事実を推認することはできない。

「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」を認めることはできない
 
<解説>
盗難を原因として保険金の支払を請求する者は、請求原因事実として、盗難の外形的事実である
「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び
「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」

を合理的な疑いを超える程度にまで主張立証しなければならない(最高裁H19.4.17等)。

被保険者の意思とは切り離された外形的な事故態様。 

単に盗難の可能性を示すだけでは足りず、その可能性がどの程度まで具体的に示しうるかについて検討することが必要。

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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