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2017年5月 6日 (土)

地方公共団体が設置・管理する博物館の外国人(反捕鯨ジャーナリスト)に対する入館拒否が違法とされた事例

和歌山地裁H28.3.25      
 
<事案>
X(オーストラリア在住の反捕鯨ジャーナリスト)は、本件入管拒否が、
①Xの表現の自由等を侵害するもので法令上の根拠を欠き、
②思想良心に基づく不利益処遇及び外国人差別に該当する
⇒憲法14条、19条及び21条等に反するなどと主張し、
Yに対し、国賠法1条1項に基づく損害賠償として、慰謝料300万円等の支払を求めた。
 
<判断> 
●争点①について
①本件入管拒否が、憲法19条及び21条から導かれる情報摂取行為に対する制約の側面を有すると認め、国賠法上の違法性の判断にあたっても憲法上の価値を考慮すべきであることを前提に、条例上本件博物館が入管を拒否できる要件について、
単に管理の支障を生じる一般的・抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、具体的事情の下において、管理の支障を生じる相当の蓋然性がある場合に限ると解するのが相当。
②Xがテレビ局職員を伴ったり大型機材を所持したりしておらず、窓口職員が何らの質問等をすることなく即座にプラカードを提示して入館を拒否している⇒管理の支障を生じる相当の蓋然性までは認められない。 
 
●争点2について 
管理の支障を考慮したもので、思想や国籍などに基づくものではない。
 

①Xの情報摂取の目的が希薄であった
②Xの反捕鯨の考えの表明という主たる目的が達成されている
③本件入管拒否が管理の支障に着目してされたもので付随的な製薬
⇒慰謝料を10万円とし、弁護士費用と合わせて11万円の支払を命じた。
 
<解説>
本件は、主に憲法21条に関し、防御権ではなく、地自法上の住民でない者が地方公共団体の設置・管理する施設を使用するという請求権的側面が問題となった事案。 

集会の自由と公の施設の管理権との調整が問題となった事案である最高裁H7.3.7:
地自法244条2項及び3項等を参照し、憲法が集会の自由を保障する見地から、利益衡量を行い、利用を不許可とするには、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であるとした。

地自法 第244条(公の施設) 
普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

本件のXは、Yの住民ではなく、本件博物館は、表現行為を予定した場所ではない上、想定される管理権行使の態様も集会用の施設と異なる。

従前の情報摂取行為に関する判例のみならず、本件博物館の公的な役割及び展示物から得られる情報の価値等にも言及して、本件入管拒否が情報摂取行為の制約に当たることを判示。

市立図書館の司書が規則に違反して独断で図書を廃棄した事案である最高裁H17.7.14も、地方公共団体の設置した施設である図書館の役割や機能を、国賠法上の違法性の判断に反映させている。

本判決は、集会の自由と管理権が問題となった判例同様、条例上の管理権行使の要件を限定的に解釈する立場を採用し、入管拒否に管理の支障の相当の蓋然性を要求して、本件入管拒否に蓋然性は認められないとした。

判例時報2322

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