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2017年5月12日 (金)

銀行の送金契約の債務不履行と通常損害・特別損害、損害算定

東京高裁H28.9.14      
 
<規定>
民訴法 第248条(損害額の認定)
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
 
<判断>
一審判決の損害額812万円余から162万円に変更する判決 

銀行の債務不履行により証券会社との間で株式の信用取引を行っていた者が指定銀行預金口座に追加保証金を入金することができず証券会社に強制決済され建玉を喪失

建玉喪失は送金契約における当事者とは別の当事者である証券会社との間の信用取引の約定に基づいて生じたもの⇒送金契約における債務不履行による通常損害ということはできない。

銀行からの送金が追加保証金として証券会社の指定銀行預金口座に入金することを目的とし、同日中に入金されない場合に証券会社に強制決済されるという事情は、建玉喪失を生じさせることにつき民法416条2項にいう特別事情に当たり、送金契約ないし本件債務不履行時に、銀行において前記事情を予見し、又は少なくとも予見することができたときには、債務不履行と建玉の喪失との間には、相当因果関係が認められる

銀行の債務不履行により証券会社との間で株式信用取引を行っていた者が指定銀行預金口座に追加保証金を入金することができず証券会社に強制決済され建玉を喪失した場合においける損害算定:
株式の信用取引における投資家の保有建玉決済は、変化する投資銘柄の株価を前提として、自らのポートフォリオや資産状況等を踏まえた一定の不確実性をもってする判断⇒強制決済がされなかった場合を仮定し、特定の投資家が決済したであろう時期を個別に立証することは、その性質上著しく困難
⇒民訴法248条にいう「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」に該当⇒裁判所において、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定すべきもの。

①Xが投機目的であった、②本件強制決済後に再開された信用取引において短期の売買がされている、③本件建玉の買玉の中には1年以上保有しているものもあった、④Xが追証を入金してまで本件建玉を維持しようとした目的は、本件建玉に生じた損失の回復にあった、⑤今後の市場の動向についてのX自身の判断に係っており、仮定の事実につき一定の法則的な認定をすることは困難、⑥各銘柄の株動向、市場全体の動向など、諸事情を勘案した上で、民訴法248条に基づき、本件強制決済に起因する逸失利益の額を認定

Xが、本件強制決済を回避して本件建玉を維持していた場合に回復し得たと認定できるのは、前記損失額812万円余の約2割である162万円と認めるのが相当。

<解説>
Y銀行:
本件振込依頼時にXから本件事情の説明を受けていたとしても、それだけでは、本件建玉が強制決済されることを抽象的に予見できたといえるにすぎず、本件建玉の内容など信用取引の具体的内容、その後の株式相場の動向、Xの投資行動の態様などその他の事情の予見可能性が認められるわけではなく、これらが予見できなければ、民法416条2項の損害賠償義務は認められるべきでないと反論。
but
本判決:
少なくとも、本件債務不履行が本件信用取引における建玉の強制決済という事態を招くことを知り、又は知ることができれば、これによる損害を銀行に負担させることを基礎付ける事情としては十分であり、これが衡平を欠くということはできず、Yが主張するような具体的事情まで民法416条2項にいう特別の事情に含めることは相当ではない。

一審も本判決も、民訴法248条によるべきとする点は同じ。
一審:
Xは本件建玉につき弁論終結時までに全体の損益をプラスマイナスゼロにする程度にまで持ち直すことは、現実に可能⇒本件強制決済による本件建玉の喪失に係る損害の額は、本件強制決済によって確定した損失812万円余と同額と認定するのが相当。
本判決:
Xが本件強制決済を回避して本件建玉を維持していた場合に回復し得たと認定できるのは、前記損失額の約2割である162万円と認めるのが相当。

損失を回復することができた確度(蓋然性・可能性)についての評価の違い

判例時報2323

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