弁護士賠償責任保険契約における免責条項の適用が否定された事案
東京地裁H28.1.27
<事案>
弁護士Xは、Bの訴訟代理人として、C有限会社に対し貸金3億円余の返還等を請求する訴訟⇒1審判決は、1億円の金銭の授受を認め、一部認容。
Cが控訴。
控訴審では、Dが本件貸金債権の譲渡を受けたと主張し、独立当事者参加をし、Bに対して前記1億円の貸金債権等を有することの確認、Cに対して前記1億円等の支払を請求。
Cは、本件貸金債権の存在を否認するとともに、予備的に、CがDに対して有するを自働債権とする相殺を主張。
⇒
控訴審:
Bの1億円の貸付、BのDに対する本件貸金の譲渡、Dの相殺を認め、Bの請求、Dの請求を棄却。
Eは、前記3億円余のうち、1億円は自ら、残額はFが出捐し、Bは形式的な貸主であり、実質的な前記訴訟の委任者はE、Fであったこと、Xが本件貸金債権の譲渡契約書等の作成に関与したこと等を主張
⇒Xに対して債務不履行、不法行為に基づき内金として2000万円の損害賠償を請求。
控訴審は5000万円の損害賠償請求を認容。
<争点>
①本件保険契約上Yのてん補責任の有無
②本件免責条項の適用の可否
<判断>
●争点①について
別件の損害賠償請求そしょうにおいてXの5000万円の損害賠償責任を認める判決が確定しており、同判決が不当であるとしてXのてん補責任を否定することは許されない。
●争点②について
「他人に損害を与えるべきことを予見しながら行った行為」:
故意免責とは別の行為を意味し、他人に損害を与えるべきことを予測し、かつ、これを回避すべき措置を講じないという消極的な意思作用に基づく行為を指す。
予測は現実に認識した場合に限らず、損害を与える蓋然性が高いことを認識していることを含む。
本件では、
①Xが本件貸金債権の立証が困難であり、その存否自体が不確定であると考えていたこと、
②BのDに対する本件貸金債権の譲渡契約書等の作成は、XがBらからDの債権担保のためであると聞いていたこと
等の事情
⇒Xが損害の発生又は損害を与える蓋然性が高いことを認識していたとはいえない。
⇒本件免責条項の適用を否定し、請求を認容。
判例時報2323
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