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2017年5月 2日 (火)

関係会社ABと再生債務者との間の債権債務の相殺の可否(否定)

最高裁H28.7.8      
 
<事案>
再生手続開始の決定を受けた証券会社Xが、信託銀行Yとの間で基本契約(「本件基本契約」)を締結をして行っていた通貨オプション取引及び通貨スワップ取引(「本件取引」)が終了したとして、本件基本契約に基づき、Yに対し、清算金の支払等を求めた事案。

<事実>
本件基本契約におけるXの信用保証提供者であるA社が平成20年9月15日に米国連邦倒産法第11章の適用申請を行った⇒本件取引は終了し、XはYに対して本件基本契約に基づく清算金債権(「本件清算金債権」)を取得。
B社も、Xとの間で本件基本契約と同様の基本契約を締結して取引を行っていたところ、同取引は同日に終了し、B社はXに対して、同基本契約に基づき、本件清算金債権を上回る金額の清算金債権を取得。 
Yは、再生債権の届け出期間内に、B社のXに対する清算金債権を自働債権、XのYに対する本件清算金債権を受働債権として、対当額において相殺する旨の本件相殺をした。

Yの主張 Xの再生手続開始の決定後、Yと完全親会社を同じくする他の株式会社が再生債務者であるXに対して有する再生債権を自働債権、XがYに対して有する前記清算金の支払請求権を受働債権とする本件基本契約に基づく相殺をしたことにより、前記清算金の支払請求権が消滅したと主張。 
 
<争点>
再生債権者と再生債務者との間において債権債務の対立(=相互性)を欠く本件相殺が、民事再生法92条1項により認められる相殺に当たるか? 
 
<規定>
民事再生法 第92条(相殺権)
再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。
 
<原審>
本件相殺は、2当事者が互いに債務を負担する場合における相殺ではないが、
①Xの再生手続開始の時点で再生債権者が再生債務者に対して債務を負担しているときと同様の相殺の合理的期待が存在するものであると認められ
②再生債権者間の公平、平等を害するものであるとはいえない
⇒法92条により許容される。
⇒本件清算金債権は本件相殺によりその全額が消滅したとして、Xの請求を棄却。
 
<判断>
再生債務者に対して債務を負担する者が、当該債務に係る債権を受働債権とし、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は、これをすることができる旨の合意があらかじめされていた場合であっても、法92条1項によりすることができる相殺に該当しない。
⇒本件相殺も同項によりすることができる相殺に該当しない。
 
<解説>
再生債権につき再生手続開始後は原則として再生計画の定めるところによらなければ消滅させる行為を禁止(法85条)など、再生債権者間の公平、平等な取扱いを基本原則としている。
これに対し、「互いに」同種の債権を有する当事者間において、相殺の担保的機能に対する再生債権者の期待を保護することは、通常、再生債権についての再生債権者の公平、平等な扱いを基本原則とする再生手続の趣旨に反するものではない⇒法92条は、破産法等と同様の考え方の下に、再生債権者による相殺権を保障したもの。

法の相殺の禁止に関する規定は、再生債権者間の公平、平等を図ることを目的とする強行規定⇒これに反してされた相殺は合意に基づくものであっても無効であると解することで特に異論がない。

判例時報2322

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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