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2017年4月15日 (土)

民訴法92条1項2号の「営業秘密」に当たるとして、訴訟記録閲覧等制限を認めた事例

東京高裁H27.9.14      
 
<事案>
Y社(メーカー)は、その従業員Xから退職勧奨の違法及びその後の現職場への配転命令の違法を利用として、現職場での就労義務の不存在確認及び損害賠償請求訴訟を提起⇒退職勧奨の違法性、配転命令の違法はいずれも認められないとして、Xの請求は棄却。 

Xは本案訴訟において、書証を提出。その中には、マル秘、社外秘、転送・コピー厳禁と注記されたY社の社内文書が含まれていた。

Y社は、それらの①各社内文書及び②特定の文書の証拠説明書の立証趣旨記載部分は不正競争防止法2条6項にいう「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」に該当し、民訴法92条1項2号の「営業秘密」に該当するとして、訴訟記録閲覧等制限申立てをした。
 
<規定>
民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。

二 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法第二条第六項に規定する営業秘密をいう。第百三十二条の二第一項第三号及び第二項において同じ。)が記載され、又は記録されていること。

不正競争防止法 第2条(定義)
6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
 
<原決定>
①各社内文書、②特定の文書の証拠説明書の立証趣旨部分は、いずれも不正競争防止法2条6項にいう「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」に該当しない⇒民訴法92条1項2号の「営業秘密」に該当しない⇒却下。
 
<判断> 
抗告を一部容れ、
(1)各社内文書、(2)特定の文書の証拠説明書の立証趣旨記載部分のうち、
(1)各社内文書について訴訟記録閲覧等制限申立てを却下した部分を取り消した。

(1)の本件社内文書について
①Y社の希望退職者の募集要項とその説明、部署の新設と職務内容、従業員の氏名を含む組織図・各部署の職務分掌、品質保証・品質教育業務等を内容とするものであり、品質の維持管理等を行う品質環境分野における人的体制や戦略に関わるもの
②Y社は、これらの情報について、マル秘、社外秘、転送・コピー厳禁等の表示を付して社外への公表を禁止
⇒これらの情報は、不正競合防止法2条6項の事業活動に有用な営業上の情報であって、Y社において、秘密として管理され、公然と知られていない
民訴法94条1項2号の「営業秘密」が記載されている。

(2)は、X作成の証拠説明書中の甲5号証の立証趣旨部分であり、新設された部署の名称や職務分掌等が簡潔に記載されているにすぎず、それ自体事業活動に有用なものとまでは認められない
⇒民訴法92条1項2号の「営業秘密」が記載されているものとは認められない。
 
<解説>
民訴法上の秘密保護の手続は、
①口頭弁論等の手続にかかる秘密保護措置(訴訟記録の閲覧等の制限)と
②文書提出命令等にかかる秘密保護措置 

営業秘密は、不正競争防止法2条6項に定める
①秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に②有用な技術上又は営業上の情報であって、③公然と知られていないものをいう

①秘密管理性、②有用性、③非公知性が要件。
ex.
製品の設計図、製法、研究資料、顧客名簿、販売マニュアルなどの情報
営業秘密は、訴訟記録中に記載・記録された情報が閲覧等されると秘密としての要件である非公知性を欠くことになり、営業秘密としてのの権利性がなくなる。
⇒これを回避するため、訴訟記録の閲覧等を制限。

判例時報2320

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