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2017年4月18日 (火)

東日本大震災に伴う原発事故で、ドラッグストアの店舗閉店に伴い、3年分の営業損害が認められ、一定の損益相殺がされた事例

札幌地裁H28.3.18      
 
<事案>
東日本大震災に伴い、福島第一原発事故(平成23年3月11日)により、福島県内における5店舗の閉店等を余儀なくされた原告が、福島原発を設置、運転していた被告に対し、原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、事故から10年間の営業損害を含む合計約12億円の損害賠償を求める事案。

<事実>   
本件5店舗では、本件事故前の1年間で、合計約1億4000万円の営業利益があった。
原告の小売業全体の売上高は、本件事故前の平成22年5月期と比較して本件事故後に大きく増加。営業利益も本件事故後に大きく増加。
平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高の対前年比は112.2%であり、同時期の全国の売上高の前年比106.4%と比較して5.8%高くなっていた。

原告は、被告に対する直接請求の対象期間の後である平成23年9月1日から平成24年2月29日まで6か月間の休業損害合計約7077万円及びその後9年間分の逸失利益合計約10億円並びに違約金損害等を請求。
 
<被告の主張>
①原告の小売業全体における営業利益を基準に検討すれば、営業損害の賠償請求には理由がない
②仮に営業損害が認められるとしても、避難や転業をするため必要な準備期間は2年を大きく下回る
③本件事故後の福島県内の売上高の増加が本件事故とこれに伴う避難指示等によって生じた人口移動及び避難に付随する生活用品の需要の増加によるもの⇒損益相殺。 
 
<判断>
原告の事業の在り方等に照らし、本件事故から3年間の営業損害(約1年の休業損害とその後2年の逸失利益)を認め
避難者を対象とした自宅の被災状況に関するアンケート調査による地震や津波による避難者と本件事故による避難者の割合等を検討⇒本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分のうち更に37.5%について損益相殺。 
 
<解説>
●原子力損害賠償紛争審査会が原賠法18条に基づいて策定した「東京電力株式会社福島第1、第2原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(中間指針) 

条理上、債権者が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降は、被った損害の全てが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない(最高裁H21.1.19)。

本判決は、原告が既存店舗のスクラップアンドビルドを推進してきたことがうかがわれることなどに照らし、本件事故後3年間の営業損害を肯定。

●被害者が不法行為によって損害を被ると同時に、同一の原因によって利益を受ける場合には、損害と利益の間に同質性がある限り、公平の見地から、その利益の額を被害者が加害者に対して賠償を求める損害額から控除することによって損益相殺的な調整を図る必要がある(最高裁H5.3.24)。 

本判決:
原告の売上高及び営業利益は、本件事故後大きく増加しており、本件5店舗において失われた利益と原告の小売業全体において増加した売上との間に一定の重なりがあることが推認できる
⇒福島県内への避難者数、原告の福島県内の売上高と全国のそれとの対比、宮城県と福島県との比較、被災者へのアンケート調査等を総合して、限定的ながら一定の損益相殺を肯定

判例時報2320

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