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2017年4月22日 (土)

大阪市のアンケート調査への回答を拒否したことを理由とする戒告処分の取消しをを求めて提訴⇒訴訟の取下げ要求を拒否した市バス運転手を内勤に転任させた転任命令が取り消された事例

大阪高裁H27.6.18      
 
<事案>
Xは、Y(大阪市)に対し、Xが入れ墨に関するアンケート調査への回答を拒否したことを理由とする戒告処分の取消し及び慰謝料の支払を求めて提訴。
Xが、Yに対し、Y交通局長から前記訴訟の取下げを要求され、これを拒否⇒自動車部運輸課に命じられた(本件転任命令)⇒
①主位的に、同転任が裁量権の逸脱・濫用がある違法な処分であるとして、行訴法30条に基づき、その取消しを求め(本件取消請求)
②予備的に、本件転任命令が行政処分ではないとしても、違法な転任であり、確認の利益も認められるとして、行訴法4条に基づき、自動車部運輸課に勤務する義務のないことの確認を求め(本件無効確認請求)
③違法な転任命令により精神的苦痛による損害を被った⇒国賠法に基づき、損害賠償440万円及び遅延損害金の支払を求めた。
 
<規定>
行訴訟 第3条
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

行訴訟 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

行訴訟 第30条(裁量処分の取消し)
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
 
<争点>
①本件転任命令に処分性があるか
②本件取消請求に訴えの利益があるか
③本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか
④本件確認訴訟に訴えの利益があるか
⑤国賠法に基づく損害賠償請求権の存否・賠償額 
 
<判断>
●争点①②について 
①市営バスの運転業務は、公共交通機関として、時刻表どおり正確にバスを運行するなど習熟した技術を要する職務であるが、かかる職務から、運輸課の職務への転任は、これまで従事してきた職務により得られた経験や技能を活かすことが困難になる一方で、新たな知識等の習得が1から必要となる。
②Xは、20年以上バスの運転手の職種にあったことや、その年齢からすると、前記職務内容の変更は異動に伴い当然に甘受すべきであるとか事実上の不利益にとどまるものとはいえない。

本件転任命令は、処分の取消しにより回復される不利益を伴うものと認めるのが相当であり、Xには、本件転任命令の取消しを求めるにつき法律上の利益がある⇒本件取消請求には訴えの利益がある。
 
●争点③について 
本件転任命令は、Xが別件訴訟を提起したことを受けて、Xに対し、同訴訟を取り下げることを求めたが、Xが求めに応じなかったことを理由とするもので、Xが別件訴訟を取り下げるまでは従前の業務に従事させないという、Xが同訴訟を提起したことの対抗措置としてとられたもの。

公務遂行上の必要性が全くなく、Xの裁判を受ける権利を侵害する不当な意図・目的によるもの本件転任命令には、裁量権の逸脱・濫用があると認められ、違法⇒本件取消請求には理由がある。
 
●争点⑤について 
①国賠法上の違法行為に該当。
②本件転任命令の内容、同命令に至る経緯、特に職務上ないし人事上の必要性、合理性が特段みとめられない中で、別件訴訟を取り下げないというXの態度の起因して別件訴訟への対抗措置として本件転任命令が行われたこと、超過勤務手当の減額、Xの経緯等
⇒Xの精神的苦痛は大きい
⇒慰謝料は100万円を下らない。
 
<解説> 
公務員に対する転任命令について訴えの利益が問題となった最高裁昭和61.10.23:
市立中学校教諭に対する同一市内中学校への転任処分につき、身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより勤務場所、勤務内容等において何らの不利益を伴うものではない⇒本案判決をした原判決を破棄して一審判決を取り消し、訴えを却下
(同事例では、地方公務員法49条にいう「不利益な処分」か否かが問題となったが、本件は、地方公営企業法39条1項により地方公務員法49条の適用が排除⇒行訴法上の訴えの利益の問題とされた。) 

判例時報2321

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