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2017年4月 5日 (水)

無罪判決⇒警察官・検察官の違法を理由とする国賠請求・被告の虚偽供述を理由とする不法行為請求(いずれも否定)

東京地裁H27.1.30      
 
<事案>
医師法違反教唆被告事件で無罪判決を受けた医師X1が、医療法人社団X2とともに、
①自らの刑事責任を軽くするため虚偽の供述を繰り返したY1に対し不法行為責任に基づき、
②十分な捜査をせずにX1を逮捕するなど一連の捜査手続に違法があったとしてY2(東京都)に対し、
③十分な捜査をせずにX1を起訴したとしてY3(国)に対し、
国賠法1条1項に基づき
損害賠償請求(X1につき7600万円余、X2につき3億8600万円余)をした。 

起訴された公訴事実は
「X1が、
(1)平成19年8月16日頃、Y1に対し電話で入院中本件クリニックにおいて無資格医業を行うことを唆し、Y1にその旨決意させ、
(2)同月17日頃、本件クリニック事務員Aに対し電話でY1が入院中も事務員らが薬剤処方等を行うように言い、
(3)同月18日頃、Y1の妻Bに対しY1が入院中も事務員らに薬剤処方等を行わせればよい旨を言った上、これをAらに伝達させるなどし、
よって、Y1・Aら7名をして、共謀の上、Aらが医師でないのに、8月21日頃から9月7日頃までの間、8回にわたり、問診、薬剤処方等の医行為を行わせ、もって医師でないのに医業をなすことを教唆した」
というものであった。
 
<判断>
捜査段階における警察官の逮捕状請求・逮捕が国賠法上違法となるのは、各行為時において、捜査により現に収集した証拠資料、通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して、犯罪の嫌疑要件を充足すると判断することが不合理と認められる場合に限られる。
②本件における前記証拠資料を総合勘案して、本件被疑事実の直接証拠であったY1の供述に相応の信用性を認め、かつ、信用性を否定するに足りる証拠はない。

X1に犯罪の嫌疑要件を充足すると認めた警察官の判断は、不合理であったとは認められない

①検察官は公訴提起時において、検察官が現に収集した証拠資料、通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば、公訴の提起は違法性を欠く。
②本件における各公訴事実の直接証拠は、各供述のみであり、これらの供述と裏付け証拠に加え、信用性を減殺する証拠を含めて、前記証拠資料を総合勘案し、合理的な判断過程により有罪であると認められる嫌疑を認めることができないにもかかわらず、公訴提起がされた場合(各供述に信用性があると判断することが合理性を欠くと認められた場合)に限り本件起訴が国賠法上違法と評価される
③本件において、各公訴事実の直接証拠となる各供述に信用性があると判断することが合理性を欠くとまでは認められない
⇒本件起訴を違法と評価することはできない。

①Y1の不法行為の成立を認めるためには、その供述が虚偽であることが必要であり、これが虚偽であることの直接証拠はX1の供述のみであるところ、
②X1の供述の内容は捜査における取調べ、刑事事件における被告人質問、本事件における陳述書・当事者尋問を通じて概ね一貫しているが、直接裏付ける客観的証拠があるわけではなく、一部不自然さを否定できない部分を含んでいる
Y1らの捜査段階における各供述は信用性を決定的に否定するまでの客観的証拠はなく、公判審理の結果を考慮しても変わることはないというべき

刑事無罪判決によってもY1らの各供述が虚偽である可能性がうかがえるにとどまり虚偽であることまで認めることは困難
 
<解説>
●刑事裁判で無罪が確定した場合に、捜査、起訴など刑事司法手続の国賠法1条1項の違法性をどのように評価すべきか:
A:結果違法説
B:職務行為基準説 

判例(最高裁昭和53.10.20):
後に無罪が確定した場合でも、逮捕・勾留は、当該時点において、犯罪の嫌疑につき相当の理由があり必要性が認められる限り適法であり、
公訴提起後も、起訴や公訴追行時における各種証拠資料を総合勘案して合理的は判断過程により有罪であると認められる嫌疑があれば適法である。
~職務行為基準説。

職務行為基準説の下でも、公訴提起の違法性の具体的判断基準について
〇A:合理的理由欠如説(判例)
B:一見明白説
C:違法限定説

●虚偽供述をした被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求について、
刑事無罪判決から供述が虚偽の可能性はあるが、虚偽であると認めることは困難であるとして、不法行為の成立を否定したケース。 

民事訴訟における事実の認定判断は、自由心証主義が妥当するが、恣意的なものであってはならず、経験則に合致するものでなければならない。
but
本判決は、Y1らの供述の信用性を否定している刑事判決の事実認定とは対照的であるようにみえる。

判例時報2319

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