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2017年4月 3日 (月)

農地法5条1項の許可を受けた者の造成工事⇒隣接農地の所有者が排水障害⇒国賠請求(肯定)

広島高裁岡山支部H28.6.30       
 
<事案>
Xは、農地法3条に基づく許可を受けて、平成7年6月15日、X所有農地の一部を埋め立てて自宅を建築したが、その余は畑にした。

Aは、法3条に基づく許可を受けて、本件農地所有権を取得したが、Aと訴外B会社は、平成23年11月15日、Yの農業委員会に対し、法5条1項に基づき、本件農地を露天資材置場とするため、本件農地についてBの賃借権を設置することの許可を求める旨の申請⇒同委員会は、平成24年2月29日、本件賃借権設定を許可する旨の本件処分。

AとBは、本件申請に先立ち本件造成工事⇒X所有農地から本件農地への排水が著しく悪化し、農作物の生育不良。
⇒Xは、Yに対し、農業委員会は、本件処分をするに際し、同法施行規則33条4号該当性の審査を適切に行う職務上の法的義務を、Xに対して負っているにもかかわらず、この義務に違反して本件処分をした⇒国賠法1条1項に基づき、排水確保工事費用の賠償を求めた。
 
<規定> 
農地法 第3条(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。

農地法 第5条(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第四項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない
・・・・・

2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項の規定による告示に係る事業の用に供するため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとするとき、第一号イに掲げる農地又は採草放牧地につき農用地利用計画において指定された用途に供するためこれらの権利を取得しようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
・・・・
四 申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地又は採草放牧地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
 
<一審>
①法5条2項4号は、申請に係る農地を含めた地域全体の農地の振興を図る趣旨のもとに規定されたものという言うべきであり、周辺の農地の所有者等の個別的な利益を保護する趣旨を含むものではない
②本件処分が法5条2項4号の場合に該当しないとした委員会の判断に誤りがあったものとは認められない
⇒本件訴訟を棄却。
 
<判断>
法5条2項4号は、本件農地を農地以外のものにすることにより、隣接するX所有の農地が良好な排水等の営農条件に支障を受けないとする法的利益を個別的に保障する趣旨を含むと解される。
①本件申請を受けた委員会としては、本件造成工事が、周辺農地の営農条件に影響を及ぼしするものであることは、十分に認識することができた
その点に関する調査がされたとも認められない

職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分をしたというほかない⇒
過失肯定で、Xの請求を一部認容。
 
<解説>
判例上、国賠法1条1項にいう公務員の行為の「違法」とは、公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したことを言う(最高裁昭和60.11.21)。

本件では、農地法5条2項4号が周辺農地の所有者等の個別の利益を保護する趣旨であるか否かが問題。

判例時報2319

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