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2017年4月17日 (月)

「確定した執行決定のある仲裁判断」と請求異議の訴え

東京地裁H28.7.13      
 
<事案>
XとA社との間には、平成20年4月4日付けの、XがAに対し、1億9600万円を貸し付ける内容の金銭消費貸借契約書。
XとYとの間には、同年8日付けの、XがYから1億9600万円を借りること等を内容とする借用契約書(「本件契約書」)。
本件契約書中には、本件契約書に関連して発生する紛争等について、ロシア連邦商工会議所付属国際商事仲裁裁判所がその仲裁規則に従って行う解決に委ねる旨の条項。
Yは、同月10日Xに、Xは同月16日A社い、それぞれ1億9600万円を送金。
本件契約書に定められた貸付債権の存否についてX・Y間に紛争
⇒仲裁裁判所は、XがYに貸付金1億9600万円を支払うこと等を内容とする仲裁判断⇒Yは、東京地裁に対し、本件仲裁裁判所に基づく執行決定を求める申立てをし、同裁判所は、これを許可する決定。即時抗告は棄却。

前記決定を得た本件仲裁判断に基づき強制執行をしようとしたYに対し、その強制執行の不許を求めてXが本件訴訟を提起。
 
<規定>
民事執行法 第35条(請求異議の訴え)
債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る
 
<原告の主張>
①本件契約書は偽造されたもので本件仲裁判断は仲裁合意に基づくものではない
②本件契約書は偽造されたもので、本件債権は不存在
③本件契約書による契約は通謀虚偽表示によって無効
④XはYに対して本件債権と同額の損害賠償請求権を有しているところ、同債権との相殺によって本件債権は消滅
⑤本件仲裁判断に基づく強制執行は権利の濫用に当たること
を異議事由として主張。
 
<判断>
主張①の異議事由について:

①民執法35条1項後段の「債務名義の成立について」の異議であると整理。
②同項後段の趣旨が、司法手続を経ない債務名義について、その成立を裁判手続で審査する必要性が高いという点にある
③仲裁判断は、取消しの裁判や執行決定手続において、仲裁判断の成立に関して裁判所の審理が予定されている

「確定した執行決定のある仲裁判断」は「裁判以外の債務名義」に当たらず、異議事由とすることができない。

主張②③⑤の異議事由について:

民執法35条2項の趣旨は、請求権の存在が確定判決により確定された以上その既判力の基準時以前の事情は既判力の効果として主張し得ないとする点にある、
②これは、既判力を有する債務名義に妥当し、仲裁判断も既判力を有する
③従前の解釈においても同項の適用が確定判決に限られていなかった

「確定した執行決定のある仲裁判断」が同項の「確定判決」に含まれ、その基準時を仲裁判断について既判力の生ずる仲裁判断時とし、仲裁判断がされる以前の事情を異議事由とすることはできない。

主張④の異議事由に関して、自働債権の発生が認められない。

⇒Xの請求棄却。
 
<解説>
仲裁合意:当事者が既発生又は将来生ずる一定の法律関係に関する民事上の紛争の解決を仲裁人に委ね、かつ、その判断(仲裁判断)に属する旨の合意(仲裁法2条1項)。 
仲裁合意に基づいてされた仲裁判断は、承認拒絶事由(同法45条2項各号)のない限り、既判力を有する(同法45条1項本文、2項柱書)。

当事者は、裁判所に対して仲裁判断の取消しの申立てをすることができ、取消事由のいずれかが認められると、仲裁判断が取り消される(同法44条)。
仲裁判断は既判力を有するものの、仲裁判断に基づく強制執行をするためには、裁判所に対して、債務者を被申立人として、執行決定を求める申立てをし、執行決定を得る必要(同法45条1項但し書き、46条)。
同申立てを受けた受けた裁判所は、承認拒絶事由のいずれかが認められて、同申立てを却下する場合を除いて執行決定をしなければならない(同条7項)。
承認拒絶事由は、基本的に取消事由と共通し、仲裁判断の効力に関するものと仲裁判断の手続的瑕疵に関するものがあるところ、執行決定手続では、これらの事由の審査が予定されているのみで、仲裁判断の内容に踏み込んだ実体的な審査は予定されていない
執行決定に対しては、即時抗告することができる(同条10項、44条8項)。

執行決定は、承認拒絶事由の不存在を確定するものであり、同決定の確定後は、仲裁判断の取消しの申立てをすることができない(同条2項後段)。
債権者は、このように執行決定手続を経た「確定した執行決定のある仲裁判断」を債務名義(民執法22条6号の2)として、強制執行をすることができる。
この債務名義は、仲裁判断と執行決定とが合体した複合的債務名義であると理解されている。

判例時報2320

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