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2017年4月26日 (水)

プログラム著作物の複製・翻案、ソースコードの「営業秘密」性(肯定)

知財高裁H28.4.27      
 
<事案>
一審原告(被控訴人)は、原告プログラム著作権等を有し、そのソースコードは原告の営業秘密であったところ、そのもと従業員であった一審被告(控訴人B)が、一審被告(控訴人A)に入社しで同様のプログラムを作成し、これを搭載した児童接触角計を製造、販売したことが、著作権侵害・不正競争行為等に当たるか否かが問題となった。

A事件およびB事件:
被控訴人が、
①控訴人の「接触角計算(液滴法)プログラム」は、控訴人Aが控訴人Bの担当の下に原告プログラムのうち「接触角計算(液滴法)プログラム」を複製又は翻案したものであって著作権違反に当たり、
②控訴人Bが、被控訴人の営業秘密である原告プログラムのソースコード(原告ソースコード)やアルゴリズム(原告アルゴリズム)を控訴人Aに不正に開示し、控訴人Aがこれを不正に取得したことは、不正競争防止法2条1項7号及び8号に該当する行為であり、
③控訴人らのこれらの行為は、被控訴人の法的利益を侵害する共同不法行為に該当する行為又は、
④控訴人Bの労働契約上の債務不履行に該当する行為

A事件では、控訴人A・Bに対し損害賠償を求め
B事件では、控訴人A・B・Cに対し、被告新バージョンの複製等の差止めを求め、廃棄、損害賠償等を求めた。

C事件は、
控訴人A・Cが、
①被控訴人のB事件の訴訟提起が不法行為に当たる、
②被控訴人がしたホームページにおける告知行為等は不正競争防止法2条1項15号に該当する
⇒被控訴人に損害賠償の支払を求めた。

<規定>
著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

著作権法 第114条(損害の額の推定等)
著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下この項において「著作権者等」という。)が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

第2条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

七 営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

八 その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

<原審>
A事件を一部認容し、B事件、C事件を棄却。 
 
<判断>   
著作権侵害及び不正競争防止法違反等を肯定し原判決を変更。 
 
●複製又は翻案の成否 
旧バージョンについて、
①そのプログラム構造の大部分が同一
②ほぼ同様の機能を有するものとして1対1に対応する各プログラム内のブロック構造において、機能的にも順番的にもほぼ1対1の対応関係が見られる
③これらの構造に基づくソースコードは、被告旧接触角計算(液滴法)プログラムは、原告接触角計算(液滴法)プログラムのうち本件対象部分と創作的な表現部分において同一性を有し、これに接する者が本件対象部分の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。
 
●原告ソースコードの営業秘密該当性 
肯定。
 
●その余の請求について 
旧バージョンについて、控訴人Bは、著作権侵害、不正競争防止法、不法行為、債務不履行に基づき、控訴人Aは、著作権侵害、不正競争防止法、不法行為に基づき、損害賠償責任を負う。
 
<解説>
●プログラムの著作物の著作権侵害 

「著作物の複製」:既存の著作物に依拠し、その創作的な表現部分の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為(著作権法2条1項15号)

「著作物の翻案」:既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁H13.6.28)。

既存の著作物に依拠して創作された著作物が、創作的な表現部分において同一性を有し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる場合には、複製又は翻案に該当する。

既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらない

◎ 
プログラムに著作物性があるといえるためには、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり、かつ、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れているものであることを要する。

プログラムの表現に選択の余地がないか、あるいは、選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性の表れる余地もなくなり、著作物性を有さない

プログラムの指令の手順自体~アイデアにすぎない
プログラムにおけるアルゴリズムは「解法」に当たり、
いずれもプログラムの著作権の対象として保護されない(知財高裁H18.12.26)。

プログラムは
①その性質上、表現する記号が制約され、
②言語体系が厳格であり、
③電子計算機を少しでも経済的、効率的に機能させようとすると、指令の組合せの選択が限定される
⇒プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。

プログラムの具体的記述が、表現上制約があるために誰が作成してもほぼ同一になるもの、ごく短いもの又はありふれたものである場合、作成者の個性が発揮されていないものとして、創作性なし。
指令の表現、指令の組合せ、指令の順序からなるプログラム全体に、他の表現を選択することができる余地があり、作成者の何らかの個性が表現された場合においては、創作性が認められる

●営業秘密に係る不正競争防止法に基づく請求 
不正競争防止法が保護の対象とする技術上又は営業上の情報は、不正競争防止法2条6項所定の要件を備える営業秘密であることを要する。
①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3つが必要。

経済産業省の営業秘密管理指針:
平成27年1月改訂で、
秘密管理性は、営業秘密保有企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる(=認識可能性が確保される)必要がある。

●その他 
共同不法行為の主張について、最高裁H23.12.8を引用し、
他人の著作物を翻案したものに該当しない著作物の利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなど特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではない

競合他社が存在するという著作権法114条1項ただし書の事情に係る主張について、主張立証責任を負うべき控訴人らが、競合他社の存在が控訴人の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被控訴人が販売することができないとする事情に当たることについて、具体的な主張立証をしていない⇒同項に基づく損害額を算定。

被控訴人が、著作権侵害を調査するために、被告製品を購入しプログラムの同一又は類似性を調査したこと等を認定し、調査費用を著作権侵害と相当因果関係のある損害と認定

判例時報2321

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