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2017年4月16日 (日)

差押と消滅時効中断の効力

東京地裁H28.4.4      
 
<事案>
Xが不動産売買の仲介を依頼した宅地建物取引業保証協会(不動産保証協会)Yの社員であった築地建物取引業者(宅建業者)Aに交付した手付金等の返還請求債権(本件対象債権元本)を有するとして、Yに対し宅地建物取引業法64条の8第2項に基づきYが供託した弁済業務保証金につき弁済を受けることの認証を求めて訴えを提起

<事実>
Xは、Yの社員であったAとの間で平成10年12月から平成11年1月にかけて不動産売買契約の仲介を依頼し、手付金等の名目で計500万円をAに預けた。
XとAは、平成11年2月に前記各仲介契約を合意解約⇒Xは、同年9月、Aに対して、返済を受けた50万円を除く450万円の返済を請求。
さいたま地裁越谷支部は、平成13年1月31日、Aに450万円及び遅延損害金の支払を命じる判決。
Xは、同年2月、Yに認証の申出をしようとしたが、担当者より苦情解決の申出を行うよう指導⇒認証の申出ではなく、苦情解決の申出。

Xは、同年6月、さいたま地裁越谷支部に、前記判決に基づき、Aに対する450万円及びこれに対する遅延損害金合計50万円余円等を請求債権として債権差押命令を申し立てた。

同裁判所は、同年(平成13年)7月、前記判決に基づくXのAに対する返還請債権に基づき、
①AがYに対して有する弁済業務し保証分担金に係る供託金の取戻請求権、
②Aが金融機関に対して有する預金債権
を差押さえる旨の差押命令を発令

Aの廃業を受けて平成14年4月、Yは、Aと不動産取引をおこなったことにより生じた債権につき、法64条の8第1項に基づき弁済の権利を有する者は公告日から6か月以内に認証申出書をYに提出する旨及び法定認証申出書の提出がないときは、Aに係る弁済業務保証金分担金がAに返還される旨公告。
Xは、平成24年5月に法定認証申出書をYに提出
Yは、平成25年1月の本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、Xに対し、XのAに対する本件対象債権につき10年の消滅時効を援用。
 
<規定>
民法 第155条
差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

民法 第157条(中断後の時効の進行)
中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める
 
<争点>
Xが差押債権の範囲を超える金額を請求債権として債権差押命令の申立てをした場合に、この申立てに基づく差押命令による時効中断の効力はいつまで継続し(換言すうrと、本件差押命令による時効中断効はいつ終了して新たな時効の進行が始まるのか)、もし中断が継続するとしてその効力はどの範囲まで及ぶのか。 
 
<判断>
●差押命令による時効中断効は時効の利益を受ける者に通知した後でなければ効力を生じない(民法155条)が、本件では、これがAに送達された平成13年7月25日に本件対象債権元本につき中断の効力が生じている
中断した時効は、その中断事由が終了したときから新たな進行を始める(民法157条1項)。

債権執行手続においては、
第三債務者から現実に取立てをしたとき等執行手続が終了した場合には中断事由が終了したとみられ、
執行の可能性が当初からなかったり差押命令の発令後になくなったりした場合は、その時点で中断事由が終了したとみるのが相当。

本件では、
金融機関を第三債務者とする部分については差押債権がなかったり少額にすぎなかった⇒執行の可能性がないとみる余地がある。
保証協会との関係ではな執行の可能性が存していた⇒差押命令による中断事由は終了しておらず、本件対象債権は中断したまま⇒時効が新たに進行を始めることはない

●時効中断の効力の及ぶ範囲:
債権者が差押債権の範囲を超える金額を請求債権として債権差押命令の申立てをし、債権差押命令がされた場合

差押債権の範囲ではなく、請求債権として表示された債権の全てについて、また遅延損害金についてもその請求債権として表示された元本から生ずるものであるから、その全てについて中断の効力が及ぶ
 
<解説>
宅建業者は、営業を開始するにあたり営業保証金の供託が必要(宅地建物取引業法25条)、宅建業者と取引した消費者が損害を被った場合は、この営業保証金から弁済を受けることができる。
営業保証金制度の代替的な制度として、宅建業者が営業保証金の供託に代えて、それよりかなり低額の弁済業務保証金分担金(法64条の9)を納付して保証協会の社員となれば営業保証金の供託を要しないとう弁済業務保証金制度が創設。

多くの宅建業者が結集し集団的保証をおこなうことで宅建業者の負担を軽減できるとともに、不動産取引に関する事故についてその損害を補償し取引の相手方を迅速に救済しうる。
but
取引の相手方が弁済業務保証金から弁済を受けようとする場合は、保証協会の認証を受ける必要がある。
保証協会による認証は、弁済業務保証金の還付を受ける権利の存在及びその額を確認し証明することをいう。
本判決は、Yによる認証の判断がされるまでに本件対象債権意係る認証申出書の提出がされた場合は苦情解決の申出をもって認証の申出と認め、認証申出期間が経過した後にされたものとは解さなかった

判例時報2320

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