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2017年4月

2017年4月30日 (日)

国税の担保として提供された不動産の公売公告の取消訴訟係属中に売却決定⇒訴えの利益(肯定)

東京地裁H27.7.17      
 
<事案>
相続税の納税義務者であるXが、年賦延納の担保として自己の不動産を提供したが、分納期限までに分納税額を完納しなかった⇒延納許可を取り消された上、同不動産の差押えを受けてこれが公売に付された
⇒公売に付した財産の選択につき裁量権の逸脱又は濫用があるなどとして公売公告及び見積価額の公告の取消しを求めた事案。 

本件公売不動産については、平成14年2月までに前記相続税を担保するための抵当権が設定⇒平成18年4月に差押処分⇒平成24年9月に公売公告(本件公売公告)及び見積価額の公告がされた上、本件訴訟の係属中である平成26年9月に売却決定(本件売却決定)がされ、配当が実施。
本件公売不動産のうち土地一筆については、平成19年12月にXからAに売却され、平成25年7月にXからAに対する所有権移転登記手続。

Yは、本件公売公告は一連の公売手続の終了によりその目的を達成して法的効力を失っている⇒その取消しを求める訴えの利益が消滅していると主張
 
<規定>
行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
 
<判断>
本件公売公告の法的効果については、Y主張のとおり、その目的を達成して失われている。
but
売却決定がされた場合でも、国税の担保として提供された不動産の所有者及び滞納者には、公売公告を取り消すことによって「回復すべき法律上の利益」(行訴法9条1項参照)がある。

本件公売公告の取消しを求める訴えの利益は、なお失われていない。

所有者については、行訴法33条1項(取消判決等の効力)、税徴法135条1項(売却決定の取消しに伴う措置)等を根拠として、「売却決定がされるに至った場合でも、公売公告を取り消す旨の確定判決を得ることにより、その拘束力に従って売却決定を取り消し、差押不動産の所有権を買受人又は転得者から回復することを期待し得るという法的地位を有する」
滞納者については、行訴法33条1項等を根拠として、「売却決定及び配当がされるに至った場合でも、公売公告を取り消す旨の確定判決を得ることにより、その拘束力に従って売却決定及び配当を取り消し、改めに適法な手続の下における売却決定が行われてより高額な売却がされることを期待し得るという法的地位を有する」

「回復すべき法律上の利益」を有する
 
<解説>
最高裁は、処分の取消しを求める訴えの利益(広義)について、仮に当該処分の取消判決がされた場合に、拘束力(行訴法33条1項)の作用として不整合処分の取消義務が生ずる場合には、これを肯定する傾向。 

公売公告の違法性は、後行する売却決定に承継されるところ、一連の手続を構成する先行処分と後行処分との間に違法性の承継が認められる場合には、いずれの取消しを求めることもできると解する見解が有力。

担保不動産競売(民事執行)においては、売却許可決定により「自己の権利が害されることを主張するとき」に限り、同決定に対して執行抗告をすることができる(民執法188条、74条1項)ところ、
債務者兼所有者が同要件を充たすのは、売却自体が許されなかった場合(同法71条1号)又は当該瑕疵がなければより高額に売却された可能性がある場合であると解されている。

本判決の控訴審は、結論は同じであるが、
「回復すべき法律上の利益」の内容について、本判決とは異なり、所有者及び滞納者のいずれについても「改めて適法な公売公告の下に売却決定に至る一連の手続が行われることを期待し得る法的地位」であると解している

判例時報2322

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「知識労働者のマネジメント」

新興の経済と技術においてリーダーシップを維持する鍵は、知識専門家の社会的地位と彼らの価値の社会的受入れにありそうである。今日、しかしながら、資本が鍵となるリソースで資本家がボスであるという伝統的な考え方を維持しながら、ボーナスとストックオプションを与えることで知識労働者を買収して満足させ従業員に留まらせるという、どっちつかずの態度をとろうとしている。しかし、それは、機能するとしても、インターネット企業のように新興の産業が資本市場ブームを享受する限りでのみ機能する。

知識労働者のマネジメントは「マーケティングの仕事」である。そして、マーケティングでは「我々は何を求めるか?」という質問から始めない。「相手は何を求めるか?」「その価値は何か?」「その目的は何か?」「それは何を結果と考えるか?」から始める。知識労働者を動機付けるものはボランティアを動機付けるものである。ボランティアは、給料を得ないため、給料を得る従業員よりも、仕事からより満足を得なくてはならない。彼らは、何より、挑戦を必要とする。

ソース:The Daily Drucker 1 May.

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2017年4月29日 (土)

覚せい剤自己使用の事案で鑑定に付された尿が被告人の尿であるとは認められない⇒無罪

東京地裁立川支部H28.3.16      
 
<事案>
覚せい剤自己使用の事案について、検察官が被告人の尿から覚せい剤成分が検出されたことを証するものとして証拠請求をした鑑定書が、その鑑定対象となった尿につき被告人の尿であるとは認められず、関連性がないとして、証拠採用されず、他に被告人の身体に覚せい剤が摂取されたことを証する証拠もないとして、無罪が言い渡された事案。 
 
<解説>
①覚せい剤自己使用事案において、被告人が事実関係を争っても、被告人の尿の鑑定書により、被告人の体内に覚せい剤が摂取されたことは容易に立証される。
②尿鑑定書により被告人の体内に覚せい剤が摂取されたことが立証されれば、覚せい剤が厳しく取り締まられている禁制薬物であって、通常の社会生活の過程で体内に摂取されることはあり得ない⇒被告人は特段の事情のない限り、自己の意思で覚せい剤を摂取したものと推認される(高松高裁H8.10.8)。

尿鑑定書は最重要証拠。 
 
<判断>
●捜査手続上の瑕疵が指摘
①本件の強制採尿について、実際には関与していない警察官が、強制採尿の実施と尿の差押えを報告する内容の捜索差押調書を作成。その内容も実際の経過と異なる虚偽のもの。
②尿の鑑定嘱託が、地域課の警察官からの問い合わせを受けるまでされず、尿の差押えから20日後になってされたもの。
③鑑定嘱託された被告人の尿が入っているとされる採尿容器は、氏名、日付、指印欄のいずれもが白地の封かん紙により封かん。
④鑑定嘱託書について、原本と、記載内容は同じであるが、フォント等体制が異なる謄本が作成されている(この謄本に違法はないが、現在では、原本と同じ電子データを活用して印字するか、原本をコピー機で複写する方法で、謄本を作成することが多く、原本と謄本との体裁は異ならないものであることが多い)。
⑤本件の捜査手続には、複数の捜査関係者が関与しているが、採尿容器が白地の封かん紙で封かんされている経緯を説明できる捜査関係者が1人もいない。

上記①について、捜査の適法性の審査を欺く、重大な違法がある証拠。
上記②について、捜査の最も基本的な事項さえ踏襲されておらず、著しく信頼性の低い捜査と評されてもやむを得ない。

●強制採尿手続に関与した警察官らが、1人として、被告人の尿を入れた採尿容器の封かん紙が白地であったと供述していない。
⇒封かん紙に署名したとする被告人の供述を排斥することはできない。
⇒鑑定された尿が被告人の尿ではない疑いを払拭できない。

●仮に白地の封かん紙で封かんされたものであったとしても、その採尿容器が、外観自体から、被告人の尿が入れられたものであるといえるわけではない。
⇒他の検体と取り違えられたり、すり替えられたりした可能性がないといえなければ、鑑定に付された尿が被告人のものであるとの立証がされたとはいえない。
本件において、
①封かん紙に被疑者自ら署名等をさせるという、採尿手続に係る基本的な準則が、正当な理由なく遵守されていない
②準則を遵守できなかった事情を証する捜査報告書等も一切残されていない
③関与した捜査官が1人としてその事情を説明することができない

取り違えやすり替えの可能性を排除できたとはいえない。
鑑定に付された尿が被告人の尿であるとの証明はされたことにはならない
 
<解説>
採尿手続には、被疑者が封かん紙への氏名等の記入を拒否することもあろうから、封かん紙の氏名や指印欄に被疑者の署名や指印が得られない場合もあり得るが、その場合には、捜査官は、何故被疑者による署名や指印がないのかという経緯を説明する捜査報告書等を作成すべき。 

判例時報2321

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業務中断⇒研修生の歓送迎会参加⇒業務再開のため事業場に戻る際の交通事故と業務起因性

最高裁H28.7.8      
 
<事案>
株式会社A(「本件会社」)に勤務していた労働者であるBが交通事故により死亡したことに関し、その妻であるXが、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付金及び葬祭料の支給を請求⇒行橋労働基準監督署長から、Bの死亡は業務上の事由によるものに当たらないとして、これらを支給しない旨の決定(「本件決定」)⇒Y(国、被告・被控訴人・被上告人)を相手に、その取消しを求めた。
 
<原審>
本件歓送迎会は、中国人研修生との親睦を深めることを目的として、本件会社の従業員有志によって開催された私的な会合であり、Bがこれに途中から参加したことや本件歓送迎会に付随する送迎のためにBが任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められない
⇒本件事故によるBの死亡は、業務上の自由によるものとはいえない
⇒Xの請求を棄却 
 
<判断>
労働者が、業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後、当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に、研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことは、次の①~③など判示の事情の下においては、労災保険法1条、12条の8第2項の業務上の事由による災害に当たる。
①前記労働者が業務を一時中断して前記歓送迎会に途中から参加した後に事業場に戻ることになったのは、上司から歓送迎会への参加を打診された際に、業務に係る資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に断ったにもかかわらず、歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示されるなどしたためであった。
②前記歓送迎会は、事業主が事業との関連で親会社の中国における子会社から研修生を定期的に受け入れるに当たり、上司の発案により、研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであって、従業員及び研修生の全員が参加し、その費用が事業主の経費から支払われるなどしていた。
③前記労働者は、事業主の所有する自動車を運転して研修生をその住居まで送っているところ、研修生を送ることは、歓送迎会の開催に当たり、上司により行われることが予定されていたものであり、その経路は、事業場に戻る経路から大きく逸脱するものではなかった
⇒原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、Xの請求を認容。
 
<解説>
●業務災害に関する保険給付と業務起因性・業務遂行性
労災保険法に基づく業務災害に関する保険給付は、労働者の「業務上」の負傷、疾病、障害又は死亡に対して行われるもの(同法7条1項1号)であり、
本件で問題となる遺族補償給付及び葬祭料は、「労働者が業務上死亡した場合」に支給される(同法12条の8第2項、労基法79条、80条)。

「業務上」とはいえるためには、「業務」と負傷等との間に、業務に内在又は随伴する危険が現実化したと認められるような相当因果関係があること(業務起因性)を要する(最高裁昭和51.11.12)。

行政解釈:
「業務上」の判断につき、
①その負傷等の原因が「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」を条件として発生したこと(業務遂行性)が必要で、
②その上で、業務起因性が認められること(=業務又は業務行為を含めて「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」に伴う危険が現実化したものと経験則上認められること)を要する。
 
●業務遂行性の具体的類型と行政解釈・裁判例の動向 
◎休憩時間中の災害等 
事業場を離れて私用で外出⇒原則として事業主の支配下を離れているものとして、業務遂行性を否定。
but
残業中に夕食のため帰宅し会社へ戻る途中の交通事故につき当該外出を公用外出として業務遂行性を認めた事例
定期貨物便の運転手が運送途上食事のため停車し道路横断の途中で生じた交通事故につき食事行為を業務に付随する行為とみて業務遂行性を認めた事例
 
◎通勤途上の災害 
昭和48年の労災保険法改正により通勤災害に関する補償制度が整備
but
同改正の後においても、「業務の性質」を有するものは、業務災害の対象となり得る(同法7条2項)。
通勤途上の災害については、行政解釈上、一般的にはいまだ事業主の支配管理にあるとはいえない⇒原則として業務遂行性が否定。
but
業務遂行性を認めた行政解釈例として、
①突発事故のため休日出勤の呼出を受け現場へ赴く途中の事故
②深夜業のため自宅に夕食を取りに行く途上の事故
裁判例でも、労働者が通勤途上においてもなお事業主の支配下に置かれていたと認めるべき特別の事情がある場合に限り、業務上の事由に当たるとの立場を前提。
 
◎宴会その他の行事に出席中の災害 
宴会、懇親会、慰安旅行等に出席中の災害について、この種の催しの世話役等が自己の職務の一環として参加⇒一般に、業務遂行性を肯定。
それ以外の労働者の場合には、その催しの主催者、目的、内容(経過)、参加方法、運営方法、費用負担等について総合的に判断しなければならないとしても、特別の事情がない限り、業務遂行性がない。

従業員が会社の実施した忘年会に参加した後その会場玄関付近で事故に遭って負傷したことが業務上の災害に当たらないとした例(名古屋高裁金沢支部昭和58.9.21)
宴会等が終了した後の帰宅途中の災害が通勤災害(労働保険法7条1項2号)に該当するかについて、同条2項所定の「就業の場所」や「就業に関し」の要件との関係から、当該宴会等の業務性が前記の行政解釈に沿って検討され、その結果に応じて当該災害の通勤災害該当性が判断。
 
●本判決について 
次の3点から、業務遂行性(=本件会社の支配下にあったか否か)を実質的に検討し、肯定。
①Bが業務の途中で本件歓送迎会に参加して再び本件工場に戻ることになった経緯

Bは、E部長の意向等により本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するために本件工場に戻ることを余儀なくされた。
本件会社が、Bに対し、職務上、一連の行動をとることを要請

②本件歓送迎会について

・・・研修の目的を達成するために本件会社において企画された行事の一環と評価することができ、その事業活動に密接に関連して行われたものというべき。

③本件運転行為について
~送迎に至る経緯やその経路に照らし、本件会社から要請された一連の行動の範囲内のものであった。

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「心理的不安」

不安(経済的ではなく心理的な不安)は、産業状態全体に浸透する。それは、恐れを創り出し、それが未知で予想できないものへの恐れであることから、スケープゴートや犯人探しに導く。その仕事をコントロールする力の合理性と予測可能性への労働者の信頼を回復する場合のみ、我々は(産業的)企業の方針の有効性を期待できる。我々がそれほど早い達成を望むことができる分野は他にはない。全ての基本的な力(社会の客観的要請、企業の客観的要請、そして個人の客観的な必要と要請)は、(産業的)企業を機能する組織とする方向で働く。

ソース:The Daily Drucker 30 April.

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2017年4月28日 (金)

「事業倫理」

職業人の第1の責任は2500年前に、ギリシャの医師のヒポクラテスの誓いに明確に記された:「なによりも、知りながら害をなさない。」医師であれ、弁護士であれ、マネジャーであれ、顧客のために実際に善いことをすることを約束できる職業人はいない。彼女ができることは、試みることだけである。しかし、彼女は、知りながら害をなさないことは約束できる。そして顧客もまた、職業人が知りながら顧客に害をなさないことを信頼できなくてはならない。さもないと、彼は彼女を全く信用できない。そして「知りながら害をなさない」は職業人の倫理の基本的なルールであり、公的責任の倫理の基本的なルールである。

ソース:The Daily Drucker 29 April.

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2017年4月27日 (木)

公開買付け⇒全部取得条項付種類株式として全部取得する場合の会社法172条1項にいう「取得の価格」

最高裁H28.7.1      
 
<事案>
Xが、会社法172条1項に基づき、全部取得条項付種類株式の取得の価格(取得価格)の決定の申立てをした事案。 
 
<事実>
A社及びB社は、平成22年当時、大証JASDAQスタンダード市場に上場中のY社の総株主の議決権の70%以上を直接又は間接に有していた。

A社及びB社は、Y社の株式を両社で全部保有することなどを計画⇒
A社、B社ほか1社は、平成25年2月26日、買付予定数を180万1954株、買付期間を同月27日から同年4月10日まで(30営業日)、買付価格を1株につき12万3000円(本件買付価格)として、Y社発行の普通株式(本件株式)及びY社の新株予約権(本件株式等)の全部の公開買付け(本件公開買付け)を行う旨、
本件株式等の全部を取得できなかったときは、Y社において本件株式を全部取得条項付種類株式とした上でこれを本件買付価格と同額で取得する旨を公表。

Y社は、前記の公表に先立ち、
本件公開買付けに関する意思決定過程からA社及びB社と関係の深い取締役を排除し、両社との関係がないか、関係の薄い取締役3人の全員一致の決議に基づき意思決定をした。

法務アドバイザーであるC法律事務所から助言を受け、財務アドバイザーであるD証券会社から、本件株式の価値が1株につき12万3000円を下回る旨の記載のある株式価値算定書を受領するとともに、本件買付価格は妥当である旨の意見(いわゆるフェアネス・オピニオン)を得ていた。

有識者により構成される第三者委員会から、本件買付価格は妥当であると認められる上、株主等に対する情報開示の観点から特段不合理な点は認められないなどの理由により、本件公開買付けに対する応募を株主等に対して推奨する旨の意見を票ねいすることは相当である旨の答申を受け、同年2月26日、同答申のとおり本件公開買付けに対する意見を表明。

平成25年6月28日に開催されたY社の株主総会及び種類株主総会(本件総会)において、公開買付けにおいて公表された内容に沿った議案について決議がされ、同年8月2日、同決定に基づく定款変更の効力が生じ、Y社は、同日、全部取得条項付種類株式の全部を取得。

XらはY社の株主であった者であるが、本件総会に先立ち、前記決議に係る議案に反対する旨をY社に通知し、かつ、本件総会において、同議案に反対。
 
<規定>
会社法 第172条(裁判所に対する価格の決定の申立て)
前条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、同項の株主総会の日から二十日以内に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一 当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
 
<原々決定>
・・・その後の各種の株価指数が上昇傾向にあったことなどからすると、取得日までの市場全体の株かの動向を考慮した補正をするなどして本件株式の取得価格を算定すべきであり、本件買付価格を本件株式の取得価格として採用することはできない。
⇒Xらの申立てに係る本件株式の取得価格をいずれも1株につき本件買付価格を上回る1株当たり13万206円にすべきもの。
 
<原決定>
抗告許可の申立て
⇒裁判所の合理的な裁量の逸脱をいう部分について抗告を許可。
 
<判断>
Y社の論旨に沿って原決定を破棄し、原々決定を取り消して本件株式の取得価格を本件買付価格と同額の1株当たり12万3000円とした。

株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い、その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし、当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において、
独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど当該株主又は当該株式会社と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ、公開買付けに応募しなかった株主の保有する前記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額の取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により前記公開買付けが行われ、その後に当該株式会社が前記買付け等の価格と同額前全部取得条項付種類株式を取得した場合には、
前記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、
裁判所は、前記株式の取得価格を前記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当
である。
 
<解説>
●裁判例では、最高裁H21.5.29で田原裁判官が補足意見で示した整理に従い、
①MBOが行われなかったならば株主が享受し得る価値(客観的価値)と
②MBOの実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受してしかるべき部分(増加価値分配価格)
とを合算することにより株式価値を算定する一方で、

一連の取引が公正な手続により行われたかどうかを審理判断し、これが認められる場合には、裁判所が独自に算定した株式価値と一定以上の乖離がない限り、会社法172条1項にいう「取得の価格」として公開買付価格と同額を決定するものが多い。 
 
●本決定 
本件のような典型的なキャッシュ・アウト取引では、
①買収者と対象会社との交渉合意により全部取得条項付種類株式の取得の対価を含めて取引条件が決定され、②当該取引条件が株主や市場参加者向けに公表されて公開買付けが実施され、②その後の全部取得条項付種類株式の取得等の会社法上の行為も前記取引条件を前提として行われるという実務の実情

一般に公正と認められる手続を通じて前記取引条件が定められた場合において、同条件どおりにキャッシュ・アウト取引を行われたときは、裁判所は、公開買付価格をもってキャッシュ・アウト取引完了までの事情変更可能性を前提に多数株主と少数株主との利害が適切に調整された取引条件であるものと解し、これを参照した取得価格を決定するのが原則である旨の判断。
~少数株主の利益に配慮した実務上の運用が適切に行われた事案において当事者が自主的に定めた取引条件を尊重してきた下級審裁判例を是認するとともに、本決定の趣旨に沿った適切公正な企業再編等の促進を期待。

●2段階のキャッシュ・アウト取引では、
公開買付けにより総株主の議決権の9割以上を取得した場合には同法により新設された特別支配株主による株式等売渡請求制度
9割未満にとどまった場合には同法による改正後の株式併合制度を利用して株式を全部取得する運用
が実務上定着。 

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「社会的責任の倫理」

事業倫理とは何か?「それは詭弁である」と西洋哲学の歴史家は答えるであろう。詭弁は、統治者は、その責任故に、個人として彼らに適用される倫理規範の通常の要請とその王国に対する社会的責任のバランスをとらなくてはならないと主張する。しかし、これは一般人にとって何が倫理的かを決めるルールは、社会的責任ある人には、等しくは適用されないことを意味する。彼らにとっての倫理規範は、その代わりに、個人の良心の要請と地位の要請に関係する費用便益計算であり、統治者は、彼らの行動が他の人々に便益を与えると議論され得る場合には、倫理規範の要請から免除されることを意味する。

事業倫理の偉大なホラーストーリーは、詭弁家にとって、利他的な事業の殉難でないとしても、事業善行の例として現れる。1950年代後半の「電気装置謀議」において、数名の高い地位のGEの役員が刑務所に送られた。タービン等の重電設備のオーダーは、GE、Westinghouse、Allis Chalmers の3社の電気装置メーカーで分けられていたため、彼らは、独禁法違反の刑事的謀議の有罪となった。カルテルの目的は最弱で最も従属的な会社であるAllis Chalmers の保護であった。政府の行為がカルテルを壊すと、Allis Chalmers はタービン事業から撤退し、数千人を解雇しなくてはならなかった。

ソース:The Daily Drucker 28 April.

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2017年4月26日 (水)

プログラム著作物の複製・翻案、ソースコードの「営業秘密」性(肯定)

知財高裁H28.4.27      
 
<事案>
一審原告(被控訴人)は、原告プログラム著作権等を有し、そのソースコードは原告の営業秘密であったところ、そのもと従業員であった一審被告(控訴人B)が、一審被告(控訴人A)に入社しで同様のプログラムを作成し、これを搭載した児童接触角計を製造、販売したことが、著作権侵害・不正競争行為等に当たるか否かが問題となった。

A事件およびB事件:
被控訴人が、
①控訴人の「接触角計算(液滴法)プログラム」は、控訴人Aが控訴人Bの担当の下に原告プログラムのうち「接触角計算(液滴法)プログラム」を複製又は翻案したものであって著作権違反に当たり、
②控訴人Bが、被控訴人の営業秘密である原告プログラムのソースコード(原告ソースコード)やアルゴリズム(原告アルゴリズム)を控訴人Aに不正に開示し、控訴人Aがこれを不正に取得したことは、不正競争防止法2条1項7号及び8号に該当する行為であり、
③控訴人らのこれらの行為は、被控訴人の法的利益を侵害する共同不法行為に該当する行為又は、
④控訴人Bの労働契約上の債務不履行に該当する行為

A事件では、控訴人A・Bに対し損害賠償を求め
B事件では、控訴人A・B・Cに対し、被告新バージョンの複製等の差止めを求め、廃棄、損害賠償等を求めた。

C事件は、
控訴人A・Cが、
①被控訴人のB事件の訴訟提起が不法行為に当たる、
②被控訴人がしたホームページにおける告知行為等は不正競争防止法2条1項15号に該当する
⇒被控訴人に損害賠償の支払を求めた。

<規定>
著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

著作権法 第114条(損害の額の推定等)
著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下この項において「著作権者等」という。)が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

第2条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

七 営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

八 その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

<原審>
A事件を一部認容し、B事件、C事件を棄却。 
 
<判断>   
著作権侵害及び不正競争防止法違反等を肯定し原判決を変更。 
 
●複製又は翻案の成否 
旧バージョンについて、
①そのプログラム構造の大部分が同一
②ほぼ同様の機能を有するものとして1対1に対応する各プログラム内のブロック構造において、機能的にも順番的にもほぼ1対1の対応関係が見られる
③これらの構造に基づくソースコードは、被告旧接触角計算(液滴法)プログラムは、原告接触角計算(液滴法)プログラムのうち本件対象部分と創作的な表現部分において同一性を有し、これに接する者が本件対象部分の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。
 
●原告ソースコードの営業秘密該当性 
肯定。
 
●その余の請求について 
旧バージョンについて、控訴人Bは、著作権侵害、不正競争防止法、不法行為、債務不履行に基づき、控訴人Aは、著作権侵害、不正競争防止法、不法行為に基づき、損害賠償責任を負う。
 
<解説>
●プログラムの著作物の著作権侵害 

「著作物の複製」:既存の著作物に依拠し、その創作的な表現部分の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為(著作権法2条1項15号)

「著作物の翻案」:既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁H13.6.28)。

既存の著作物に依拠して創作された著作物が、創作的な表現部分において同一性を有し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる場合には、複製又は翻案に該当する。

既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらない

◎ 
プログラムに著作物性があるといえるためには、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり、かつ、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れているものであることを要する。

プログラムの表現に選択の余地がないか、あるいは、選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性の表れる余地もなくなり、著作物性を有さない

プログラムの指令の手順自体~アイデアにすぎない
プログラムにおけるアルゴリズムは「解法」に当たり、
いずれもプログラムの著作権の対象として保護されない(知財高裁H18.12.26)。

プログラムは
①その性質上、表現する記号が制約され、
②言語体系が厳格であり、
③電子計算機を少しでも経済的、効率的に機能させようとすると、指令の組合せの選択が限定される
⇒プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。

プログラムの具体的記述が、表現上制約があるために誰が作成してもほぼ同一になるもの、ごく短いもの又はありふれたものである場合、作成者の個性が発揮されていないものとして、創作性なし。
指令の表現、指令の組合せ、指令の順序からなるプログラム全体に、他の表現を選択することができる余地があり、作成者の何らかの個性が表現された場合においては、創作性が認められる

●営業秘密に係る不正競争防止法に基づく請求 
不正競争防止法が保護の対象とする技術上又は営業上の情報は、不正競争防止法2条6項所定の要件を備える営業秘密であることを要する。
①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3つが必要。

経済産業省の営業秘密管理指針:
平成27年1月改訂で、
秘密管理性は、営業秘密保有企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる(=認識可能性が確保される)必要がある。

●その他 
共同不法行為の主張について、最高裁H23.12.8を引用し、
他人の著作物を翻案したものに該当しない著作物の利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなど特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではない

競合他社が存在するという著作権法114条1項ただし書の事情に係る主張について、主張立証責任を負うべき控訴人らが、競合他社の存在が控訴人の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被控訴人が販売することができないとする事情に当たることについて、具体的な主張立証をしていない⇒同項に基づく損害額を算定。

被控訴人が、著作権侵害を調査するために、被告製品を購入しプログラムの同一又は類似性を調査したこと等を認定し、調査費用を著作権侵害と相当因果関係のある損害と認定

判例時報2321

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「事業倫理とは何か?」

西洋の倫理の伝統が常に依拠する基本原則は、王子と乞食、金持ちと貧民、強者と弱者に等しく妥当する、個人の行動についての唯一の倫理法典があるというものである。ユダヤ教の伝統における倫理規範は、創造者が神、自然、あるいは社会と呼ばれようと、全ての男と女は等しい被造物であるという断言である。唯一の倫理規範、一式の道徳のルール、1つの法典、同じルールが全ての人に等しく適用される個人の行動のルールがある。そしてこの基本原則を事業倫理は否定する。言い換えれば、事業倫理は、西洋の哲学者や神学者によって一般に使われてきた用語としての倫理規範ではない。事業倫理は何らかの理由で通常の倫理のルールが事業に適用されないことを想定する。それでは、事業倫理とは何か?

ソース:The Daily Drucker 27 April.

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2017年4月25日 (火)

東日本大震災の地震発生による避難に際しての小学校校長の義務違反⇒国賠請求(一部肯定)

仙台地裁H28.3.24      
 
<事案>
Y市に対し、Y市が設置、運営し災害時の避難場所に指定していた本件小学校に避難したA及びBを校舎の2階以上に避難誘導しなかったという本件校長の過失によってA及びBが本件小学校の体育館において津波に襲われて死亡し、また、本件小学校に避難した同校在籍の児童であるCを災害時児童引取責任者として登録されていなかったD(Cの同級生の親)に引渡し後の安全を確認せずに引き渡したという本件校長の過失によってCが本件小学校よりも海側の場所で津波に襲われて死亡した
⇒国賠法1条1項に基づく損害賠償請求等 
 
<判断> 
●本件校長は、教育委員会の補助機関として、本件小学校について防災対策業務を行い、災害に関する情報を迅速かつ適切に収集及び伝達し、当時の一般的な知見等に照らして避難者らの生命又は身体に対する有害な結果を予見し、その結果を回避するための適切な措置を採るべき法的義務(法的義務①)を有していた。

本件校長らが行った情報収集は明らかに不十分なものであったが、
本件校長らが入手し得た情報を前提としても、本件津波が本件体育館に到達するという結果を具体的に予見し得たとは認められない
過失を否定
 
●本件校長は、指定避難場所である本件小学校に避難した同校の児童を同校から移動させる際には、安全とされている避難場所から移動させても当該児童に危険がないかを確認し、危険を回避する適切な措置を採るべき注意義務を負っていた。

災害発生後に児童が同校に避難してきた場合には、たとえ一旦下校した児童であったとしても保護者の保護下にない状況であれば、児童の安全を確認できない限り、災害児童引取責任者以外の者に引き渡してはならない義務(法的義務②)を負っていた。 

①本件校長は、CがDに引き渡されるまでに、事前に想定されていた地震と同程度の地震が発生したことを認識し、少なくとも事前の想定と同規模の津波が到達するという結果の発生を予見することができた
②Cが自宅に戻るためには本件津波浸水予測図における津波浸水域を必ず通過しなければならないこと、わずか9歳のCが津波の危険を察知できず、不適切な行動を取る可能性も十分に考えられること

本件校長において、CをDに引き渡して自宅に帰宅させると、帰宅途中ないし帰宅後に本件津波に巻き込まれるという結果を具体的に予見できた

本件校長が、Cが本件津波に巻き込まれるおそれがあることを全く考慮しないまま、Cの担任教諭を通じてCを災害時児童引取責任者ではないDに引き渡したことにつき、前記法的義務②に違反した過失がある。

本件校長の前記過失とCの死亡との間に因果関係が認められることは明らか。

(本件事情の下)仮にCを体育館に留め置いたとしても生存し得たものと認められる⇒損害額については、Cを本件体育館に留め置いたとしてもCは死亡したとして当該事由を損害額の算定に当たって考慮することは相当ではなく、また、Cの死亡について日本スポーツ振興センターからX3に支給された特別弔慰金を損益相殺すべきではない。

X3の請求全額を認容。

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相続税申告を受任した税理士が物納にかかる助言指導をしなかったことについての債務不履行責任(肯定)

名古屋地裁H28.2.26      
 
<事案>
相続税の申告納付を受任した税理士法人が物納に係る助言指導をしなかったことについて債務不履行責任の成否が問題となった事件。 
Xは、相続税申告納付につき十分な説明をしなかった等の善管注意義務違反により、物納ができないと誤信し、物納できたD株を相続開始時の価額よりも低額で売却した差額の損害が生じた
⇒Yに対して債務不履行に基づき6974万9188円の損害賠償を請求
 
<争点>
準委任契約の成立時期、Yの負う注意義務の内容、違反の有無、因果関係の存否、損害額、過失相殺の成否
 
<判断>
EがX宅を訪問した平成20年1月15日に相続税申告の準委任契約が成立。
Yが関係法令、制度を適切に確認、調査の上、委任者において適正な納税を行い、かつ、最も利益となるように申告納付手続を行うべき注意義務、助言指導義務を負っている。 
平成20年8月のD株売却の時点では、納税の方法につき委任者に確認し、必要な助言指導すべき注意義務を負っていたところ、Eが何らの確認もせず、物納の検討を行わなかった注意義務違反がある。

同月のD株売却とYの注意義務違反との間の因果関係を肯定。
株価の差額相当の損害3441万円を認め、Xの過失3割を相殺。

請求を一部認容。

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「企業の欲と腐敗」

好況の時によく見せるのは簡単である。しかしまた、好況(私は4回か5回経験した)は、ペテン師をトップにする。1930年1月、若いジャーナリストとしての私の最初の仕事は、ヨーロッパ最大の最も誇り高かった保険会社のトップマネジメントの公判の担当であったが、彼は会社を計画的に私消し、それは全ての好況に続いて行われた。唯一の新しいことは、最後の好況が、帳簿のねつ造(四半期の数字の全面的な強調、株価、エグゼクティブは会社に大きな金融上の利害関係を持つべきという、善意であるが馬鹿げた信念、ストックオプション(私はこれを常にミスマネジメントへの開かれた誘いと考えた)等の強調)の誘惑を高めたことである。それ以外は変わりなかった。

ソース:The Daily Drucker 26 April.

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2017年4月24日 (月)

大腸内視鏡検査での診断上の過失(否定)

大阪地裁H28.5.17      
 
<事案>
大腸がんに罹患した患者につき、医師が、3年前の大腸内視鏡検査において発見されたポリープをがん化するポリープであると診断しなかったことに過誤があるか否かが問題となった事案。
 
<争点>
医師が、平成18年検査で、本件ポリープががん性のもの又はがん化の危険性の高いものであると認識できたか否か 
 
<判断>
①本件ポリープの大きさは5㎜以上10㎜未満程度であるところ、この程度の大きさをもってがん性のもの又はがん化の危険性の高いものとは判断できず、他の要素も考慮して切除等の当否を検討するのが相当
②本件ポリープの形状は担がん率の高い陥凹型には当たらず、その形状・色調は過形成性ポリープの特徴と概ね符号
③平成18年検査当時、Y病院には拡大内視鏡がなかったのでこれによる表面構造の検査は行われていないが、当時、拡大内視鏡のない病院もまだまだ多かった⇒本件ポリープの表面構造は本件ポリープのがん性又はがん化の危険性を判断する上での考慮要素とはならない
④平成9年検査は平成18年検査の9年も前のことであり重視する考慮要素ではない

医師が本件ポリープを過形成性ポリープ等の非腫瘍性のものであると認識判断したことは医学的にみて合理性がある

Yに責任はなく、Xの請求棄却。

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マンモトーム生検の局所麻酔で、患者の胸腔内まで麻酔針を貫通させ、肺を穿刺し気胸を発症⇒医師の過失を肯定

東京地裁H28.5.25      
 
<事案>
Xが、Yの開設するY病院において、エコーガイド下マンモトーム生検の局部麻酔を受けた後に左肺に気胸が生じた⇒前記局所麻酔によるものであり、Y病院の医師に麻酔針を漫然と胸腔内に進行させた手技上の注意義務違反ないし過失を主張。 
 
<判断>
①本件マンモトーム生検の局所麻酔において、超音波画像で麻酔針の針先が確実に描出できなかった可能性をもって、Xに生じた気胸が不可避であったものと断ずることはできない。
②本件マンモトーム生検の局所麻酔においてXの胸腔内まで麻酔針を貫通させ、肺を穿刺したことについて、Y病院の医師には、針先の十分な確認を怠って麻酔針を侵入させた手技上の注意義務違反ないし過失があったと推認せざるを得ない。
⇒33万円余の請求を認容。 

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「社会的責任についてのスローン」

「公的」責任は、アルフレッドスローンにとって、未熟より悪い。それは無責任であり、権限の奪取である。スローンと私が出席した会議で、主要な米国企業のCEOが、「我々は高等教育に責任がある」言った。「事業をしている我々は高等教育に対して権限があるか?」「持つべきか?」とスローンは尋ねた。「もちろん違う」が答えであった。「なら責任について話さないでおこう」とスローンは荒々しく言った。「あなたは大企業の上級役員で、第1のルールを知っている。権限と責任は一致し、お互いに釣り合わなくてはならない。権限を求めず、それを持つべきでなければ、責任について話すな。そして、責任を求めず、それを持つべきでなければ、権限について話すな。」

スローンはこれをマネジメント原則に基づかせる。しかし、もちろん、それは政治理論と政治史の最初のレッスンである。責任のない権限は不当であるが、権限のない責任も同じである。双方とも専制に導く。スローンは、その職業的なマネジャーについて大きな権限を求め、高度な責任を負う用意があった。しかし、その理由で、彼は、その専門的権能の分野に権限を限定し、それら以外の分野における責任の主張や受入れを拒否した。

ソース:The Daily Drucker 25 April.

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2017年4月23日 (日)

不貞行為を認定しその者からの婚姻費用分担請求につき、子らの養育費相当分に限って認めた事例

大阪高裁H28.3.17      
 
<事案>
Yは、XとYが別居に至った原因は、専らX(妻)の不貞によるもの⇒Xによる婚姻費用分担金の請求は権利濫用に当たる。
 
<規定>
民法 第760条(婚姻費用の分担) 
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
 
<原審>
XとYが再度同居した後、Xと別の男性乙(長女の習い事の先生)とのソーシャルネットワークサービス上の通信において、一定程度、相互に親近感を抱いていることをうかがわせる内容ものがあることが認められる。
but
このことをもって、Xと男性乙が不貞関係にあったとまではみることはできず、XとYが別居に至った原因が専らXの不貞によるものとみることはできない。
⇒Yに対し、婚姻費用の支払を命じた。 
 
<判断>
Xと男性甲との関係については、(Yとの別居中に)不貞関係があったからといって、直ちにXの婚姻費用分担請求が信義に反しあるいは権利濫用に当たるとは評価することはできない。 
but
(XとYとの再度同居後の)Xと男性乙との関係については、ソーシャルネットワークサービスを使い、単なる友人あるいは長女の習い事の先生との間の会話とは到底思われないやりとりをするような関係⇒これによれば不貞行為は十分確認される。

XのYに対する婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から、子らの養育費相当分に限って認められる。
 
<解説>
夫婦は、その資質、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法760条)。

婚姻関係の破綻そのものによって婚姻費用分担義務が軽減されると解した裁判例もある。
vs.
婚姻費用分担義務は、婚姻という法律関係から生じるもので、夫婦の円満な関係、協力関係の存在という事実関係から生じるものではないとする立場も有力。

破綻ないし別居について専ら又は主として責任がある者の分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地から許されない、あるいは軽減されるとするのが裁判例の大勢

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社会福祉法人の退任理事の、処分行政庁の行った仮理事選任処分の取消し訴訟を提起することの原告適格(肯定)

広島高裁H27.10.28      
 
<事案> 
本件社会福祉法人内部で理事同士の対立⇒後任理事が決まらないまま全ての理事が任期満了⇒理事が存在せず⇒処分行政庁が、社会福祉法39条の3に基づき、職権で、仮理事を選任する処分。

任期満了で退任した理事の1人(理事長)Xが、
本件仮理事選任処分の取消しを求めるとともに、
同処分前にXが仮理事選任申立てをしていたところ、その申立ての中で仮理事候補者に挙げていた者を仮理事に選任することの義務付け(行訴法3条6項2号)を求めた 
 
<規定>
行訴法 第3条(抗告訴訟)
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。

二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。

行訴法 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

民法 第654条(委任の終了後の処分)
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
 
<解説>
社会福祉法人の役員の任期は2年(社会福祉法人法36条2項(H28改正前))、同法39条の3は、利害関係人の請求又は職権による、所轄庁による仮理事選任を規定。 
 
<争点>
①本件選任処分の違法性
②訴訟要件に関し、Xが本件仮理事選任処分の取消訴訟を提起するに当たり原告適格(行訴法9条1項の「法律上の利益」)を有するか。
③任期満了で退任した理事Xが、仮理事船員を請求できる「利害関係人」に当たるか
 
<原審>
Xの訴えのうち、本件仮理事選任処分の取消訴訟が原告適格を欠く不適法な訴えであり、ひいては義務付訴訟の不適法になる⇒Xの訴えをいずれも却下。 
 
<判断>
取消訴訟及び義務付け訴訟のいずれもXの原告適格を認め(訴えの利益も肯定し)原判決を取り消して原審に差し戻した。

退任理事も、民法654条の類推適用により、急迫の事情があるときは、正式な仮理事ないし理事の選任がされるまでの間、理事として必要な処分をしなければならない義務を負っており、その義務を怠れば第三者から損害賠償を求められるおそれ⇒仮理事選任を請求することにつき法律上の利害関係を有する

処分行政庁はXからの仮理事選任請求に直接応答せず、職権で本件仮理事選任処分をしたが、この処分は選任請求と目的を同じくし、また、これを端緒にされたもの⇒Xからの仮理事選任請求に対する処分行政庁の応答の趣旨を含むと認めるのが相当選任請求をしたXは、本件仮理事選任処分の相手方ないしこれに準ずる地位にある

Xは、具体的な事実関係の下でその権利、利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがないという特別の事情がない限り、本件仮理事選任処分の取消しを求めるについて法律上の利益を有する

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「社会的責任」

少なくともその資本コストに匹敵する利益を出さない事業は無責任であり、それは社会のリソースを浪費する。経済的利益のパフォーマンスは、それなしでは、事業がいかなる他の責任も果たせず、良い雇用者、良い市民、良い隣人となり得ない、基礎である。しかし、教育的パフォーマンスが学校の唯一の責任であり、健康管理が病院の唯一の責任である以上に、経済的パフォーマンスは事業の唯一の責任ではない。

全ての組織はその従業員、環境、顧客及びそれが触れる人やものへの影響について責任を負わなくてはならない。それは社会的責任である。しかし、我々はまた、社会はますます、営利も非営利も同じく、主要な組織に、主要な社会的困難に取り組むことを期待することを知る。そして、良い意図は社会的に責任があるとは限らないため、我々は、警戒すべきである。組織にとって、その主要な仕事とミッションを履行する能力を妨げる責任を追求することはもちろん、それを引き受けること、あるいは能力のないのに行動することは無責任である。

ソース:The Daily Drucker 24 April.

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2017年4月22日 (土)

大阪市のアンケート調査への回答を拒否したことを理由とする戒告処分の取消しをを求めて提訴⇒訴訟の取下げ要求を拒否した市バス運転手を内勤に転任させた転任命令が取り消された事例

大阪高裁H27.6.18      
 
<事案>
Xは、Y(大阪市)に対し、Xが入れ墨に関するアンケート調査への回答を拒否したことを理由とする戒告処分の取消し及び慰謝料の支払を求めて提訴。
Xが、Yに対し、Y交通局長から前記訴訟の取下げを要求され、これを拒否⇒自動車部運輸課に命じられた(本件転任命令)⇒
①主位的に、同転任が裁量権の逸脱・濫用がある違法な処分であるとして、行訴法30条に基づき、その取消しを求め(本件取消請求)
②予備的に、本件転任命令が行政処分ではないとしても、違法な転任であり、確認の利益も認められるとして、行訴法4条に基づき、自動車部運輸課に勤務する義務のないことの確認を求め(本件無効確認請求)
③違法な転任命令により精神的苦痛による損害を被った⇒国賠法に基づき、損害賠償440万円及び遅延損害金の支払を求めた。
 
<規定>
行訴訟 第3条
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

行訴訟 第9条(原告適格)
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

行訴訟 第30条(裁量処分の取消し)
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
 
<争点>
①本件転任命令に処分性があるか
②本件取消請求に訴えの利益があるか
③本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか
④本件確認訴訟に訴えの利益があるか
⑤国賠法に基づく損害賠償請求権の存否・賠償額 
 
<判断>
●争点①②について 
①市営バスの運転業務は、公共交通機関として、時刻表どおり正確にバスを運行するなど習熟した技術を要する職務であるが、かかる職務から、運輸課の職務への転任は、これまで従事してきた職務により得られた経験や技能を活かすことが困難になる一方で、新たな知識等の習得が1から必要となる。
②Xは、20年以上バスの運転手の職種にあったことや、その年齢からすると、前記職務内容の変更は異動に伴い当然に甘受すべきであるとか事実上の不利益にとどまるものとはいえない。

本件転任命令は、処分の取消しにより回復される不利益を伴うものと認めるのが相当であり、Xには、本件転任命令の取消しを求めるにつき法律上の利益がある⇒本件取消請求には訴えの利益がある。
 
●争点③について 
本件転任命令は、Xが別件訴訟を提起したことを受けて、Xに対し、同訴訟を取り下げることを求めたが、Xが求めに応じなかったことを理由とするもので、Xが別件訴訟を取り下げるまでは従前の業務に従事させないという、Xが同訴訟を提起したことの対抗措置としてとられたもの。

公務遂行上の必要性が全くなく、Xの裁判を受ける権利を侵害する不当な意図・目的によるもの本件転任命令には、裁量権の逸脱・濫用があると認められ、違法⇒本件取消請求には理由がある。
 
●争点⑤について 
①国賠法上の違法行為に該当。
②本件転任命令の内容、同命令に至る経緯、特に職務上ないし人事上の必要性、合理性が特段みとめられない中で、別件訴訟を取り下げないというXの態度の起因して別件訴訟への対抗措置として本件転任命令が行われたこと、超過勤務手当の減額、Xの経緯等
⇒Xの精神的苦痛は大きい
⇒慰謝料は100万円を下らない。
 
<解説> 
公務員に対する転任命令について訴えの利益が問題となった最高裁昭和61.10.23:
市立中学校教諭に対する同一市内中学校への転任処分につき、身分、俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより勤務場所、勤務内容等において何らの不利益を伴うものではない⇒本案判決をした原判決を破棄して一審判決を取り消し、訴えを却下
(同事例では、地方公務員法49条にいう「不利益な処分」か否かが問題となったが、本件は、地方公営企業法39条1項により地方公務員法49条の適用が排除⇒行訴法上の訴えの利益の問題とされた。) 

判例時報2321

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「重要な昇進」

会社が必要な貢献を得るには、それらを行う人々に報いなければならない。人についての決定、特にその昇進は、組織が実際に信じ、求め、表すものを確認する。それらは、言葉より大きく語り、いかなる数字より明確なストーリーを語る。

決定的な昇進は、人の最初のもの(それは、彼女とそのキャリアにとって最も重要かもしれないが)ではない。マネジメントが小さな事前に選ばれたグループから選ばなくてはならない、トップへの最後のものでもない。決定的な昇進は明日のトップがそこから選ばれるグループへのものである。それは組織のピラミッドが突然狭くなる時の決定である。この時まで、大きな組織では、空位の地位は、40~50人から選ばれる。その上では、選択は3~4人から1人に狭まる。この時まで、人は通常、1つの分野か職務で働く。その上では、彼女はその事業で働く。

ソース:The Daily Drucker 23 April.

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2017年4月21日 (金)

「人についての良い審判者」

スローンは続けた「あなたは私が人についての良い審判者であるべきだと考えているが、実のところ、そのような人はいない。人についての判断を正しく、つまりゆっくりとする人と、人についての判断を誤り、職を失って後悔する人がいるだけだ。我々は、人についての良い審判者であるからではなく、念入りであることから、誤りをより少なくする。」

人についての判断は通常ゼネラルモーターズの経営委員会で激論を引き起こした。しかし、ある時、委員会全体はある候補者について合意するように見えた。彼は、この危機にすばらしく対処し、問題を美しく解決し、冷静に火を消した。その時、突然スローンが割って入った。「あなた達のスミス氏は非常に印象的な経歴を持っている」彼は言った。「しかし、彼が全てのこれらの危機にいかに取り組んでそのようにあざやかに切り抜けたのか説明して欲しい」それ以上、スミス氏については聞かれなかった。しかし、ある時、スローンは言った「あなた達はジョージができないことを全て知っている。彼がしてきたことはどうだ?彼は何ができる?」そして、スローンが説明を受けた時、彼は言う。「わかった。彼ははなばなしくないし、機敏でもないし、さえないように見える。しかし、彼は常に成し遂げてこなかったのか?」そして、ジョージは困難な時期に大きな部門で最も成功した総支配人となった。

ソース:The Daily Drucker 22 April.

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2017年4月20日 (木)

団体交渉の開催場所等について交渉過程が、団体交渉拒否の不当労働行為に当たるとされた事例

東京地裁H28.4.25      
 
<事案>
大阪市にあるAの店舗で勤務していたAの従業員は、大阪市に主たる事務所を有する労働組合であるyに加入していたところ、yは、Xに対し、前記従業員の労働条件等についての団体交渉を大阪市内で行いたい旨等を数次にわたって申し入れ⇒Xは、これらの申入れに対し、愛知県春日井市内(本店所在地)又は名古屋市内で団体交渉を行いたい等と回答⇒団体交渉は開催されず

yは、大阪労働委員会に対し、Xの前記対応によって大阪市内での団体交渉が行われなかったことにつき、Xが団体交渉拒否の不当労働行為(労組法7条2号)を行った旨の申立て⇒大阪府労委は、Xの前記対応は労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして、Xに対して救済命令⇒Xは、中央労働委員会に対し、前記救済命令につき再審査の申立て⇒同委員会は棄却する旨の命令⇒前記命令の取消しを求めた事案。
 
<規定>
労組法 第7条(不当労働行為)
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 
<判断>
労働委員会段階で行われた審問の結果等も踏まえ、Xとyとの間で行われた団体交渉の開催に向けてのやり取りを詳細に認定。

yが大阪市内で団体交渉を行うことを希望したことにつき、客観的な諸事情に照らせば必要性、合理性がある。

Xが愛知県春日井市内又は名古屋市内で団体交渉を行うことを希望したことについて、客観的な諸事情に照らせば一応の理由がある。
but
Xがyに対して事情を的確に説明することや、団体交渉の開催日等について変更を求めることをしなかったこと
Xは人事部の担当者が大阪市内に出向くことのできる日程や大阪市内で団体交渉を開催することについての検討をしていなかった
③yは大阪市内における団体交渉の開催場所として本件事務所を希望していたところ、Xには本件事務所以外を団体交渉の開催場所とすることについてyと協議する十分な機会が与えられていたとみることができる

Xがyに対して前記団体交渉の開催に向けてのやり取りの中でX側がyの呼出しに応じて本件事務所での団体交渉を行わなければならない法的根拠を示すよう求めたことは、これを見る者にXは本件事務所ひいては大阪市内での団体交渉の開催に任意に応じる意思はないことを表明したものと評価されてもやむを得ない
・・・・・結論として、Xの一連の対応は全体的にみて不誠実であったというべきであり、Xはかかる対応により、団体交渉をすることを正当な理由なくして拒んだものというべき。
 
<解説>
労組法7条は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと(同条2号)を使用者による不当労働行為として禁じる。
かかる正当な理由のない団体交渉拒否については、交渉の日時、場所、時間、人数等に関する正当でない理由を主張しての交渉拒否がこれに当たり得る旨が指摘(菅野)。

使用者が負うべき団体交渉義務の基本的な内容として、使用者には労働者の代表者として誠実に交渉に当たる義務がある。

判例時報2320

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「人の意思決定におけるスローン」

私がGMのトップ委員会の会議に出席した期間、会社は、資本投資、海外進出、自動車事業、付属品事業及び非自動車事業のバランス、組合との関係、財務構造等戦後の政策についての基本的意思決定をした。私は、すぐに、政策についての意思決定に費やされる時間に比べ、不釣り合いな時間が人についての意思決定に費やされることに気が付いた。ある時、委員会は、ラインについてまで、仕事とポジションの割当ての議論に何時間も費やした。部屋をでると、私は振り返って言った「スローンさん。あなたはどうしてこのような小さな仕事に4時間も費やせるのですか?」。彼は言った。「会社は、重要な意思決定を正しく行うことに対し、私に結構な給与を払っている。デイトンの機械工長の選任が間違っていれば、私たちの意思決定ははかないものである。彼はそれら(私たちの意思決定)をパフォーマンスに変える。そして、多くの時間をとることについては、馬鹿げたことだ。」「人の配置と彼を正しく配置するすることに4時間かけなければ、我々はその誤りの後始末に400時間かけることになる。そして、その時間を私はもたない。」彼は締めくくった。「人についての意思決定は唯一の真に重要ものである。あなたも誰もが、会社はより良い人々を持つことが出来ると考える。会社ができることは、人を正しく配置することであり、そうすれば、会社はパフォーマンスを得る。」

ソース:The Daily Drucker 21 April.

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2017年4月19日 (水)

イラストの複製・利用について著作権侵害を認めた事例

大阪地裁H27.9.10       
 
<事案>
イラストレーターであるXが、地域活性化イベントにおけるキャラクターのイラストを作成したY1及び同イラストに基づいて複数のイラストを使用して宣伝活動を行った同イベントの実行委員長Y2に対し、Y1による同イラストはX作成のイラストを無断で改変して作成したものであり、同イラストをガイドブック等に印刷して譲渡し、インターネット上にアップロードする等によりXの著作権(複製権又は本案権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害⇒複製等の差止め、損害賠償及び謝罪広告の掲載を求めた。 
 
<争点>
①Yらの具体的行為の態様
②Yらの故意・過失の有無等 
 
<判断>
●争点①について
①Yイラスト1は、首より下の部分はXイラストと異なるが、頭部の描画がXイラストとほぼ同一⇒原告イラストの本質的特徴を感得し得る
②Y1によるYイラストの作成経緯

Y1は、原告のホームページにアクセスし、Xイラストに依拠してYイラスト1を作成したと推認される
Xイラストを翻案したものであり、Y1は、Xの本案権、氏名表示権及び同一性保持権を侵害。 

その後使用されたY各イラストについても、使用された事実を認めるに足りる証拠がないもの及びブログに掲載された写真のうちXイラストの表現の本質的特徴が直接感得できないもの等を除いて、侵害の成立を認めた。

●Y1の過失 
実行委員会が同キャラクターをいわきフラオンパクのガイドブックに使用することを認識した時点で、他人のイラストに依拠してYイラスト1を作成したことをY2らに伝え、使用を中止するよう取り計らう注意義務があった⇒かかる義務に違反したY1には過失が認められる
⇒共同不法行為の成立を肯定。

Y各イラストのうち、Y1が関与したことを認めるに足りる証拠がないものについては、不法行為の成立を否定。

●Y2の過失 
Y2が準備段階においてY1と会議において同席しており、Yイラスト1をキャラクターとして利用するに際し、Y1に対してYイラスト1の作成経緯を確認し、他人のイラストに依拠していないかどうかを確認することは容易であったが、これを怠った。⇒過失を認定し、共同不法行為の成立を肯定

Y各イラストのうち、Y2が関与したことを認めるに足りる証拠がないものについては、不法行為の成立を否定。

●Yらに対する損害賠償請求を、YらによるY各イラストの使用態様を考慮しそれぞれ90万円の限度で認容。 

Y各イラストの内容及び使用態様がXの社会的声望名誉を毀損するものとは認められない謝罪広告の請求を棄却

①フラオンパクは今後も開催される見込みは低く、Yイラストが今後使用される可能性は低い
現在Y1が自身の管理するブログに掲載している写真からはXイラストの表現の本質的特徴を感得することもできない

差止請求を棄却
 
<解説> 
著作権を侵害して複製物を作成した者から発行の依頼等を受けて複製・譲渡等を行った他の者の過失 

多くを占める出版社や放送局に関する事例では、大量の出版物を発行する者等としての高度の注意義務が課される等としてこれを肯定した事例がほとんど。

カラオケ装置のリース業者について、相手方が当該著作権者との間で著作物使用契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負う(最高裁H13.3.2)。

受注者が制作した水彩画ポスターにより他人の写真の著作権を侵害した事例において、発注者である八坂神社の過失を認めた事例(東京地裁H20.3.13)。

原告サイトの解説文を、財団の研修会に参加した報告書の作成者が無断転載した事例において、NPO法人の責任を認めた東京地裁H21.2.19.

パンフレット製作会社にパンフレット製作を依頼したコーヒー販売会社が、パンフレットに使用される写真の著作権については調査義務まで負うものではなく、注意義務に違反するとはいえない(大阪地裁H17.12.8)。
 
●利用者の過失は基本的には諸般の事情を考慮して判断すべきものとされるが、出版社・発注元等に厳格責任を負わすべきとする立場。

①その者の行為による著作権侵害の拡大・拡散
②経済的利益の存在
③補償条項を設けることによって侵害物作成者に求償できる
④原告にとって被告側の内部関係をしることは困難であるから、事実上の過失推定を負わせるべき。
vs.
(1)従来出版の現場において個別にチェックを行うことや、制作に関与していないパンフレットの発注元が調査を行うことは実際上極めて困難であり過重な負担
(2)民法における注意義務の一般的基準としては、一般に①危険が生じる蓋然性、②危険が生じた場合の重大性、③予防措置を取ることに対するコストの3つを勘案するに比して、著作権法では、メディアの責任のような大上段な前提から出発する傾向にあり、十分な予防措置をとることに対する負担が考慮されていない。

判例時報2320

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商品(「エジソンのお箸」)の形態と不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」(否定)

知財高裁H28.7.27      
 
<事案>
控訴人が、被控訴人に対し、
①控訴人が販売する「エジソンのお箸」という商品名の練習用箸(原告商品)の形態は、控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの
②被控訴人が製造・販売する「デラックストレーニング箸」という商品名の箸(被告商品)は、前記原告商品の形態と同一の形態を備えている
⇒被控訴人による被告商品の販売は、原告商品と混同を生じさせる行為であり、不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当
⇒被告商品の製造・販売の差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償の一部としての100万円及び遅延損害金の支払を求めたもの。 
 
<規定>
不正競争防止法 第2条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
 
<判断>
商品の形態は、商標等とは異なり、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある

商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し「商品等表示」に該当するためには
①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、
②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)
を要する。

商品の形態が商品の技術的な機能及び効果を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来⇒「商品等表示」に該当しない。
商品の形態が商品の技術的な機能及び効用に由来するものであっても、他の形態を選択する余地がある場合は、当該商品の形態につき、前記の特別顕著性及び周知性が認められれば、「商品等表示」に該当し得る。

●本件の原告商品:
原告商品形態が、前記機能及び効用を実現するために他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来するものということはできない。
but
同種商品の中でありふれたものというべき⇒特別顕著性を認めることはできない。 
法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当しない。 

判例時報2320

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「継承の判断」

トップの継承の判断は、全てのその決定はギャンブルであるため、最も難しい。トップの地位におけるパフォーマンスの唯一のテストはトップのポジションでのパフォーマンスであり、そのための準備は非常に少ない。すべきでないことはかなり単純である。去っていくCEOのコピーを望まない。去っていくCEOが「ジョー(あるいはマリー)は30年前の私のようだ」と言えば、それはコピーであり、コピーは常に弱い。18年間ボスの側に仕え、彼や彼女の全ての望みを予想してきたが、1人で決断をしたことがない、忠実なアシスタントについて、疑い深くなる。概して、決断する意欲があり決断できる人は非常に長くはアシスタントの役職にない。神聖なプリンスも外す。10のうち9は、それはパフォーマンスが重要で評価され、間違え得る立場に置かれることを避けてきた人々である。それらは、パフォーマンスではなく、メディアイベント(報道をあてこんで仕組まれたイベント)である。

継承決定を扱う積極的な方法は何か? 課題を見る。この組織で、次の数年にかけて、最大の挑戦となるものは何か?そして、人々とそのパフォーマンスを見る。実証されたパフォーマンスと必要を合わせる。

ソース:The Daily Drucker 20 April.

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2017年4月18日 (火)

東日本大震災に伴う原発事故で、ドラッグストアの店舗閉店に伴い、3年分の営業損害が認められ、一定の損益相殺がされた事例

札幌地裁H28.3.18      
 
<事案>
東日本大震災に伴い、福島第一原発事故(平成23年3月11日)により、福島県内における5店舗の閉店等を余儀なくされた原告が、福島原発を設置、運転していた被告に対し、原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、事故から10年間の営業損害を含む合計約12億円の損害賠償を求める事案。

<事実>   
本件5店舗では、本件事故前の1年間で、合計約1億4000万円の営業利益があった。
原告の小売業全体の売上高は、本件事故前の平成22年5月期と比較して本件事故後に大きく増加。営業利益も本件事故後に大きく増加。
平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高の対前年比は112.2%であり、同時期の全国の売上高の前年比106.4%と比較して5.8%高くなっていた。

原告は、被告に対する直接請求の対象期間の後である平成23年9月1日から平成24年2月29日まで6か月間の休業損害合計約7077万円及びその後9年間分の逸失利益合計約10億円並びに違約金損害等を請求。
 
<被告の主張>
①原告の小売業全体における営業利益を基準に検討すれば、営業損害の賠償請求には理由がない
②仮に営業損害が認められるとしても、避難や転業をするため必要な準備期間は2年を大きく下回る
③本件事故後の福島県内の売上高の増加が本件事故とこれに伴う避難指示等によって生じた人口移動及び避難に付随する生活用品の需要の増加によるもの⇒損益相殺。 
 
<判断>
原告の事業の在り方等に照らし、本件事故から3年間の営業損害(約1年の休業損害とその後2年の逸失利益)を認め
避難者を対象とした自宅の被災状況に関するアンケート調査による地震や津波による避難者と本件事故による避難者の割合等を検討⇒本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分のうち更に37.5%について損益相殺。 
 
<解説>
●原子力損害賠償紛争審査会が原賠法18条に基づいて策定した「東京電力株式会社福島第1、第2原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(中間指針) 

条理上、債権者が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降は、被った損害の全てが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない(最高裁H21.1.19)。

本判決は、原告が既存店舗のスクラップアンドビルドを推進してきたことがうかがわれることなどに照らし、本件事故後3年間の営業損害を肯定。

●被害者が不法行為によって損害を被ると同時に、同一の原因によって利益を受ける場合には、損害と利益の間に同質性がある限り、公平の見地から、その利益の額を被害者が加害者に対して賠償を求める損害額から控除することによって損益相殺的な調整を図る必要がある(最高裁H5.3.24)。 

本判決:
原告の売上高及び営業利益は、本件事故後大きく増加しており、本件5店舗において失われた利益と原告の小売業全体において増加した売上との間に一定の重なりがあることが推認できる
⇒福島県内への避難者数、原告の福島県内の売上高と全国のそれとの対比、宮城県と福島県との比較、被災者へのアンケート調査等を総合して、限定的ながら一定の損益相殺を肯定

判例時報2320

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「配置の失敗」

人の決定において完璧な記録のようなものはない。成功するエグゼクティブは5つの基本的ルールに従う。

第1に、エグゼクティブは配置失敗の責任を受け入れなくてはならない。不実行者への非難は言い逃れである。エグゼクティブはその人の選任を誤った。

第2に、エグゼクティブは実行しない者を取り除く責任がある。無能で不十分な実行者が仕事に残れば、全ての人を困らせ組織全体の士気をくじく。

第3に、人が投入された仕事を実行しないことは、その人が会社が辞めさせるべき悪い労働者であることを意味しない。それは彼や彼女が間違った仕事についたことを意味するにすぎない。

第4に、エグゼクティブは全てのポジションについて人についての正しい判断をするよう努めなくてはならない。組織は、その個々の労働者の能力の範囲でのみ実行することができる。そのため、人についての判断は正しくなくてはならない。

第5に、新人は期待が明らかで助けが利用できる確立されたポジションにつかせるのが最善である。新たな重要な割当は主にその態度と習性が良く知られ、既に信頼を得ている人に託されるべきである。

ソース:The Daily Drucker 19 April.

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2017年4月17日 (月)

バスケットボール部顧問教諭からの体罰等⇒自殺⇒国賠請求

東京地裁H28.2.24      
 
<事案>
本件生徒の父、母及び兄であるXらが、本件教諭の暴行や威迫的言動等が不法行為に該当し、これらの不法行為と本件生徒の死亡(自殺)との間には相当因果関係が認められる⇒Y(市)に対し、国賠法1条1項に基づき、本件生徒の死亡によりXらが被った損害合計1億7468万1427円の賠償等を求めた。 
 
<争点>
①本件教諭の本件生徒に対する有形力の行使や言動等の不法行為該当性
②本件教諭の有形力の行使や言動等の行為と本件生徒の自殺との間の相当因果関係の有無
③寄与度による減額の可否及びその割合 
 
<判断>
本件暴行等を認定。 
本件教諭の本件生徒に対する本件暴行等は、その態様が極めて強度であり、本件生徒の自尊心を著しく傷つけ、著しい精神的苦痛をもたらす内容や態様のもの
⇒本件暴行等は、その有形力の行使のみならず言動等を含めて、教育上の指導として法的に許容される範囲を逸脱した一連一体の不法行為を構成。

①本件生徒が本件教諭から最も強度の暴行等を受けた日の夜に自殺を決意していた兆候とみられる行動をとった上で遺書を作成して自殺
②本件生徒が本件教諭による暴行等につき不安や恐怖及び苦悩や混乱を示す言動をしていた
本件暴行等と本件生徒の自殺には条件関係が優に認められる

本件暴行等がされた当時、いわゆる「指導死」の問題が広く社会問題化し、文部科学省によるリーフレットや生徒指導提要の配布等によって全国の高校等の教員に対しても注意喚起がされていたこと等⇒本件教諭には本件生徒が自殺することについて予見可能性があったと認められ、本件生徒の自殺と本件教諭の前記行為との間には相当因果関係が認められる。 
・・・・強度の身体的、精神的負荷に対して脆弱な面があったとみられることは否定し難く、本件生徒の自殺と言う結果の発生に本件生徒のそのような心因的要因が一定程度寄与したことは否定しがたい。
⇒本件生徒の自殺における本件教諭の前記行為の寄与度は7割と認められるとして、民法722条2項を類推適用し、本件生徒の死亡によりXらに生じた損害の認定額の7割についてXらの請求を認容
 
<規定>
学校教育法 第11条〔児童・生徒・学生の懲戒〕
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない
 
<解説>
体罰は一切の留保及び例外なくこれを禁止する学校教育法11条に違反するものであり(同条ただし書は児童、生徒及び学生に体罰を加えることはできないと定めており、文科省の生徒指導提要にも体罰の禁止が明記。)、それが運動部の活動における指導の際に行われたものであっても異なるものではなく、仮にいわゆる強豪校と称される学校の運動部において指導の過程で体罰が一定程度行われているという実情が事実上あったとしても、そのことによって体罰が法的に許容され得るものではないことを判示。

有形力の行為を伴わないものであっても、一定の事情の下では、教育上の指導として法的に許容される範囲を逸脱した威迫的、侮辱的な言動が体罰と相まって生徒の人格的利益等を侵害する違法な行為と評価されることも判示。

判例時報2320

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「確定した執行決定のある仲裁判断」と請求異議の訴え

東京地裁H28.7.13      
 
<事案>
XとA社との間には、平成20年4月4日付けの、XがAに対し、1億9600万円を貸し付ける内容の金銭消費貸借契約書。
XとYとの間には、同年8日付けの、XがYから1億9600万円を借りること等を内容とする借用契約書(「本件契約書」)。
本件契約書中には、本件契約書に関連して発生する紛争等について、ロシア連邦商工会議所付属国際商事仲裁裁判所がその仲裁規則に従って行う解決に委ねる旨の条項。
Yは、同月10日Xに、Xは同月16日A社い、それぞれ1億9600万円を送金。
本件契約書に定められた貸付債権の存否についてX・Y間に紛争
⇒仲裁裁判所は、XがYに貸付金1億9600万円を支払うこと等を内容とする仲裁判断⇒Yは、東京地裁に対し、本件仲裁裁判所に基づく執行決定を求める申立てをし、同裁判所は、これを許可する決定。即時抗告は棄却。

前記決定を得た本件仲裁判断に基づき強制執行をしようとしたYに対し、その強制執行の不許を求めてXが本件訴訟を提起。
 
<規定>
民事執行法 第35条(請求異議の訴え)
債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る
 
<原告の主張>
①本件契約書は偽造されたもので本件仲裁判断は仲裁合意に基づくものではない
②本件契約書は偽造されたもので、本件債権は不存在
③本件契約書による契約は通謀虚偽表示によって無効
④XはYに対して本件債権と同額の損害賠償請求権を有しているところ、同債権との相殺によって本件債権は消滅
⑤本件仲裁判断に基づく強制執行は権利の濫用に当たること
を異議事由として主張。
 
<判断>
主張①の異議事由について:

①民執法35条1項後段の「債務名義の成立について」の異議であると整理。
②同項後段の趣旨が、司法手続を経ない債務名義について、その成立を裁判手続で審査する必要性が高いという点にある
③仲裁判断は、取消しの裁判や執行決定手続において、仲裁判断の成立に関して裁判所の審理が予定されている

「確定した執行決定のある仲裁判断」は「裁判以外の債務名義」に当たらず、異議事由とすることができない。

主張②③⑤の異議事由について:

民執法35条2項の趣旨は、請求権の存在が確定判決により確定された以上その既判力の基準時以前の事情は既判力の効果として主張し得ないとする点にある、
②これは、既判力を有する債務名義に妥当し、仲裁判断も既判力を有する
③従前の解釈においても同項の適用が確定判決に限られていなかった

「確定した執行決定のある仲裁判断」が同項の「確定判決」に含まれ、その基準時を仲裁判断について既判力の生ずる仲裁判断時とし、仲裁判断がされる以前の事情を異議事由とすることはできない。

主張④の異議事由に関して、自働債権の発生が認められない。

⇒Xの請求棄却。
 
<解説>
仲裁合意:当事者が既発生又は将来生ずる一定の法律関係に関する民事上の紛争の解決を仲裁人に委ね、かつ、その判断(仲裁判断)に属する旨の合意(仲裁法2条1項)。 
仲裁合意に基づいてされた仲裁判断は、承認拒絶事由(同法45条2項各号)のない限り、既判力を有する(同法45条1項本文、2項柱書)。

当事者は、裁判所に対して仲裁判断の取消しの申立てをすることができ、取消事由のいずれかが認められると、仲裁判断が取り消される(同法44条)。
仲裁判断は既判力を有するものの、仲裁判断に基づく強制執行をするためには、裁判所に対して、債務者を被申立人として、執行決定を求める申立てをし、執行決定を得る必要(同法45条1項但し書き、46条)。
同申立てを受けた受けた裁判所は、承認拒絶事由のいずれかが認められて、同申立てを却下する場合を除いて執行決定をしなければならない(同条7項)。
承認拒絶事由は、基本的に取消事由と共通し、仲裁判断の効力に関するものと仲裁判断の手続的瑕疵に関するものがあるところ、執行決定手続では、これらの事由の審査が予定されているのみで、仲裁判断の内容に踏み込んだ実体的な審査は予定されていない
執行決定に対しては、即時抗告することができる(同条10項、44条8項)。

執行決定は、承認拒絶事由の不存在を確定するものであり、同決定の確定後は、仲裁判断の取消しの申立てをすることができない(同条2項後段)。
債権者は、このように執行決定手続を経た「確定した執行決定のある仲裁判断」を債務名義(民執法22条6号の2)として、強制執行をすることができる。
この債務名義は、仲裁判断と執行決定とが合体した複合的債務名義であると理解されている。

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「人々を選ぶための決定手順」

マーシャルは人の決定をするにあたって5つの単純な決定手順に従った。
第1に、マーシャルは注意深く割当を考えた。仕事の種類は長く続き得るが、仕事の割当は常に変わる。
第2に、マーシャルは、様々な適性の人々を見た。履歴書に記載されるような形式的な資格は出発点にすぎない。その欠如は候補者を失格とする。しかしながら、最も重要なことは、人と割当が適合することである。最高の適合を見つけるには、少なくとも3~5人の候補者を考えなくてはならない。
第3に、マーシャルは、各人が何をよくできたかを見るために、3~5人の候補者全員のパフォーマンス記録を見た。彼は、候補者の強みを探した。人ができないことは重要ではない。その代わりに、彼らができることに集中し、特定の割当にとってそれらが正しい強みかどうかを決めなくてはならない。パフォーマンスは強みに基づいてのみ築かれ得る。
第4に、マーシャルは候補者について、彼らと働いたことがある人と議論した。最良の情報はしばしば候補者の以前の上司や同僚との非公式な議論から得られる。
第5に、決定がされると、マーシャルは、被指名者に割当を理解させた。おそらく、このための最善の方法は、新人に成功するために何をしなければいけないかを注意深く考えさせ、90日間仕事に投入し、それを書かせることである。

ソース:The Daily Drucker 18 April.

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2017年4月16日 (日)

差押と消滅時効中断の効力

東京地裁H28.4.4      
 
<事案>
Xが不動産売買の仲介を依頼した宅地建物取引業保証協会(不動産保証協会)Yの社員であった築地建物取引業者(宅建業者)Aに交付した手付金等の返還請求債権(本件対象債権元本)を有するとして、Yに対し宅地建物取引業法64条の8第2項に基づきYが供託した弁済業務保証金につき弁済を受けることの認証を求めて訴えを提起

<事実>
Xは、Yの社員であったAとの間で平成10年12月から平成11年1月にかけて不動産売買契約の仲介を依頼し、手付金等の名目で計500万円をAに預けた。
XとAは、平成11年2月に前記各仲介契約を合意解約⇒Xは、同年9月、Aに対して、返済を受けた50万円を除く450万円の返済を請求。
さいたま地裁越谷支部は、平成13年1月31日、Aに450万円及び遅延損害金の支払を命じる判決。
Xは、同年2月、Yに認証の申出をしようとしたが、担当者より苦情解決の申出を行うよう指導⇒認証の申出ではなく、苦情解決の申出。

Xは、同年6月、さいたま地裁越谷支部に、前記判決に基づき、Aに対する450万円及びこれに対する遅延損害金合計50万円余円等を請求債権として債権差押命令を申し立てた。

同裁判所は、同年(平成13年)7月、前記判決に基づくXのAに対する返還請債権に基づき、
①AがYに対して有する弁済業務し保証分担金に係る供託金の取戻請求権、
②Aが金融機関に対して有する預金債権
を差押さえる旨の差押命令を発令

Aの廃業を受けて平成14年4月、Yは、Aと不動産取引をおこなったことにより生じた債権につき、法64条の8第1項に基づき弁済の権利を有する者は公告日から6か月以内に認証申出書をYに提出する旨及び法定認証申出書の提出がないときは、Aに係る弁済業務保証金分担金がAに返還される旨公告。
Xは、平成24年5月に法定認証申出書をYに提出
Yは、平成25年1月の本件訴訟の第1回口頭弁論期日において、Xに対し、XのAに対する本件対象債権につき10年の消滅時効を援用。
 
<規定>
民法 第155条
差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

民法 第157条(中断後の時効の進行)
中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める
 
<争点>
Xが差押債権の範囲を超える金額を請求債権として債権差押命令の申立てをした場合に、この申立てに基づく差押命令による時効中断の効力はいつまで継続し(換言すうrと、本件差押命令による時効中断効はいつ終了して新たな時効の進行が始まるのか)、もし中断が継続するとしてその効力はどの範囲まで及ぶのか。 
 
<判断>
●差押命令による時効中断効は時効の利益を受ける者に通知した後でなければ効力を生じない(民法155条)が、本件では、これがAに送達された平成13年7月25日に本件対象債権元本につき中断の効力が生じている
中断した時効は、その中断事由が終了したときから新たな進行を始める(民法157条1項)。

債権執行手続においては、
第三債務者から現実に取立てをしたとき等執行手続が終了した場合には中断事由が終了したとみられ、
執行の可能性が当初からなかったり差押命令の発令後になくなったりした場合は、その時点で中断事由が終了したとみるのが相当。

本件では、
金融機関を第三債務者とする部分については差押債権がなかったり少額にすぎなかった⇒執行の可能性がないとみる余地がある。
保証協会との関係ではな執行の可能性が存していた⇒差押命令による中断事由は終了しておらず、本件対象債権は中断したまま⇒時効が新たに進行を始めることはない

●時効中断の効力の及ぶ範囲:
債権者が差押債権の範囲を超える金額を請求債権として債権差押命令の申立てをし、債権差押命令がされた場合

差押債権の範囲ではなく、請求債権として表示された債権の全てについて、また遅延損害金についてもその請求債権として表示された元本から生ずるものであるから、その全てについて中断の効力が及ぶ
 
<解説>
宅建業者は、営業を開始するにあたり営業保証金の供託が必要(宅地建物取引業法25条)、宅建業者と取引した消費者が損害を被った場合は、この営業保証金から弁済を受けることができる。
営業保証金制度の代替的な制度として、宅建業者が営業保証金の供託に代えて、それよりかなり低額の弁済業務保証金分担金(法64条の9)を納付して保証協会の社員となれば営業保証金の供託を要しないとう弁済業務保証金制度が創設。

多くの宅建業者が結集し集団的保証をおこなうことで宅建業者の負担を軽減できるとともに、不動産取引に関する事故についてその損害を補償し取引の相手方を迅速に救済しうる。
but
取引の相手方が弁済業務保証金から弁済を受けようとする場合は、保証協会の認証を受ける必要がある。
保証協会による認証は、弁済業務保証金の還付を受ける権利の存在及びその額を確認し証明することをいう。
本判決は、Yによる認証の判断がされるまでに本件対象債権意係る認証申出書の提出がされた場合は苦情解決の申出をもって認証の申出と認め、認証申出期間が経過した後にされたものとは解さなかった

判例時報2320

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「人を選ぶ:例」

第二次大戦中に米軍の参謀長で、偉大なリーダーであったマーシャルは人々を正しい時に正しい場所に投入する最もすばらしい記録を持つ。彼は600人もの人を、失敗することなく、将官、師団の指揮官等に任命した。そして、これらの人々の誰もがかつて軍を指揮したことがなかった。討議では、マーシャルの補助者は「何某大佐は、人々の最高の訓練者ですが、上司とうまくやったことがありません。彼が国会で証言すれば、大失敗をやらかします。それほど無礼です。」と言う。マーシャルは尋ねる「仕事は何か?軍の訓練か?彼が訓練者として一流なら彼をつかせろ。あとは私の仕事だ。」その結果、彼は、非常に少ない誤りで、最小の時間で、1300万人の、世界最大の軍を作った。教訓は、強みに集中することである。

ソース:The Daily Drucker 17 April.

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2017年4月15日 (土)

道路法58条1項に基づく原因者負担金が共済約款上の「法律上の損害賠償責任」に含まれるとされた事例

東京高裁H27.6.24      
 
<事案>
A社が保有しその従業員Bの運転する貨物自動車が、首都高速道路走行中に横転し、けん引していたタンクセミトレーラーに積載していたガソリン等が炎上する事故が発生してコンクリート橋脚等の道路構造物が損傷⇒橋桁架け替え等の作業費用として、17億3883万3815円を要した。

首都高速道路を管理するC社は、A社に対し、道路整備特別措置法40条1項、道路法58条1項に基づき、原因者負担金の支払を求めたが、A社が道路整備特別措置法45条3項に基づく督促によっても本件負担金を納付しなかった

C社は、本件負担金の徴収権限を有するXに対し、本件負担金の徴収を申請。 
Xは、同条、道路法73条1項、2項に基づき、督促処分をしたが、A社による審査請求を棄却する裁決がされて抗告訴訟の提起もなく、督促処分は確定。

Xは、道路法73条3項、国税徴収法47条に基づき、本件負担金及び督促手数料を徴収するため、A社のYに対する共済契約に基づく共済金支払請求権を差し押さえ、取立訴訟を提起
 
<争点>
共済約款上の「法律上の損害賠償責任」に原因者負担金の負担責任が含まれるか? 
 
<判断>
①原因者負担金制度は、特定の者の行為が原因で生じた道路の損傷や汚損等がある場合、道路の本来の機能を迅速に回復させるとともに、工事等に要する費用を迅速に徴収して、一般納税者や一般道路利用者の負担を軽減する意味で公益に資するものであって、そのため行政上の強制執行を行うことまで可能とされている
損害保険契約は、被保険者等に生じた経済的損失ないし不利益を保険者ないし共済組合等がてん補することをその本質としており、原因者負担金を、損害の対象からあえて排除するとの意思を有していること解することは困難
③Yも含めて保険会社又は共済組合から道路管理者に対して、原因者負担金が支払われ続けている 

共済約款上の「法律上の損害賠償責任」に原因者負担金の負担責任が含まれる。 

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民訴法92条1項2号の「営業秘密」に当たるとして、訴訟記録閲覧等制限を認めた事例

東京高裁H27.9.14      
 
<事案>
Y社(メーカー)は、その従業員Xから退職勧奨の違法及びその後の現職場への配転命令の違法を利用として、現職場での就労義務の不存在確認及び損害賠償請求訴訟を提起⇒退職勧奨の違法性、配転命令の違法はいずれも認められないとして、Xの請求は棄却。 

Xは本案訴訟において、書証を提出。その中には、マル秘、社外秘、転送・コピー厳禁と注記されたY社の社内文書が含まれていた。

Y社は、それらの①各社内文書及び②特定の文書の証拠説明書の立証趣旨記載部分は不正競争防止法2条6項にいう「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」に該当し、民訴法92条1項2号の「営業秘密」に該当するとして、訴訟記録閲覧等制限申立てをした。
 
<規定>
民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。

二 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法第二条第六項に規定する営業秘密をいう。第百三十二条の二第一項第三号及び第二項において同じ。)が記載され、又は記録されていること。

不正競争防止法 第2条(定義)
6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
 
<原決定>
①各社内文書、②特定の文書の証拠説明書の立証趣旨部分は、いずれも不正競争防止法2条6項にいう「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」に該当しない⇒民訴法92条1項2号の「営業秘密」に該当しない⇒却下。
 
<判断> 
抗告を一部容れ、
(1)各社内文書、(2)特定の文書の証拠説明書の立証趣旨記載部分のうち、
(1)各社内文書について訴訟記録閲覧等制限申立てを却下した部分を取り消した。

(1)の本件社内文書について
①Y社の希望退職者の募集要項とその説明、部署の新設と職務内容、従業員の氏名を含む組織図・各部署の職務分掌、品質保証・品質教育業務等を内容とするものであり、品質の維持管理等を行う品質環境分野における人的体制や戦略に関わるもの
②Y社は、これらの情報について、マル秘、社外秘、転送・コピー厳禁等の表示を付して社外への公表を禁止
⇒これらの情報は、不正競合防止法2条6項の事業活動に有用な営業上の情報であって、Y社において、秘密として管理され、公然と知られていない
民訴法94条1項2号の「営業秘密」が記載されている。

(2)は、X作成の証拠説明書中の甲5号証の立証趣旨部分であり、新設された部署の名称や職務分掌等が簡潔に記載されているにすぎず、それ自体事業活動に有用なものとまでは認められない
⇒民訴法92条1項2号の「営業秘密」が記載されているものとは認められない。
 
<解説>
民訴法上の秘密保護の手続は、
①口頭弁論等の手続にかかる秘密保護措置(訴訟記録の閲覧等の制限)と
②文書提出命令等にかかる秘密保護措置 

営業秘密は、不正競争防止法2条6項に定める
①秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に②有用な技術上又は営業上の情報であって、③公然と知られていないものをいう

①秘密管理性、②有用性、③非公知性が要件。
ex.
製品の設計図、製法、研究資料、顧客名簿、販売マニュアルなどの情報
営業秘密は、訴訟記録中に記載・記録された情報が閲覧等されると秘密としての要件である非公知性を欠くことになり、営業秘密としてのの権利性がなくなる。
⇒これを回避するため、訴訟記録の閲覧等を制限。

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「人を惹きつけ保有する」

人の分野では純粋なマーケティング目標が求められる。「我々が必要とし求める種類の人々を魅了し保有するために我々の仕事はどうであるべきか?労働市場で利用できる供給は何か?それを惹きつけるために我々は何をすべきか?」マネジャー供給、開発及びパフォーマンスについて目標をたて、さらに非管理的要員における主要なグループについても目標をたてることは極めて望ましい。従業員のスキルと同じくその態度について目標が必要である。

産業の衰退の最初の兆候は適性があり有能で野心的な人々への魅力の喪失である。例えば、米国の鉄道は第二次大戦後に衰退が始まったわけではない。その時に明らかになり逆行できなくなっただけである。第一次大戦の頃に実際に衰退が始まった。第一次大戦前には、優秀な米国の工学学校の卒業生は鉄道のキャリアを求めた。第一次大戦終了から、理由が何であれ、鉄道はもはや若い工学卒業生や教育を受けた若者を惹きつけなかった。その結果、20年後鉄道が非常な困難に陥った時、新たな問題を処理できる適任者が、マネジメントに誰もいなかった。

ソース:The Daily Drucker 16 April.

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離婚事件の訴訟記録の閲覧等制限申立てが否定された事例

東京高裁H27.9.11      
 
<事案>
離婚及び親権者の指定を求める基本事件において、民訴法92条1項1号に基づき、訴訟記録の全部について閲覧等制限の申立て。

①Xが在京キー局の名物プロデューサーとして広く知られているとしても、あくまで一般の私人であって、私生活に関する秘密は広く保護されるべき
②第三者が本件訴訟記録を閲覧した場合に、世間から好奇の目にさらされるほか、担当番組の視聴率等に影響し、会社内での立場が危うくなること等によって、Xが社会生活を営むのに重大な支障を生ずる。
 
<規定>
民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。
一 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。
 
<原決定>
①基本事件の主張ないし証拠の記載が、人事訴訟における一般的な審理対象の域を出ず、当事者、関係者等の特定情報も含め「重大な秘密」に当たるということはできない。
すでに第三者が本件訴訟記録を閲覧している状況下において、Xが社会生活を営むのに著しい支障が生ずるおそれがあるとの疎明はない。
⇒申立てを却下。
 
<判断>
単に世間の関心が寄せられているかどうかによって、私生活上の秘密としての重要性が左右されるものとは考え難い。
勤務先での立場に影響が生じているとの疎明があったとはいえず、すでに報道機関による報道やインターネット上の記事の掲載等によって広く知れ渡っている本件において、第三者による基本事件訴訟記録の閲覧等を考慮することは相当

⇒Xの抗告を棄却。 
 
<解説>
私生活上の秘密についての判断において、すでに公開されているとされる情報に関して、

大阪地裁H11.8.30:
公開している内容については、もはや申立人の私生活上の秘密であるとはいえないことは明白であるところ、閲覧等の制限を求めている申立人が本訴被告から受けたとするわいせつ行為の核心部分はいずれも既に公開されている
⇒私生活上の秘密であるとはいえない。 
but
第三者が基本事件の訴訟記録を閲覧しているのみで、報道機関による報道等がない場合ににも、同様と考えるかどうか、その公然性に関しては慎重に検討すべき。

判例時報2320

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「私生活についての重大な秘密」にあたるとして、訴訟記録の閲覧等制限申立が認められた事例

東京高裁H27.4.6      
 
<争点>
Xが閲覧等の制限を求めて本件秘密記録部分(母の死体についての解剖結果報告書、母の死体の実況見分調書及びXの身体の状況についての写真撮影報告書)が民訴法92条1項1号にいう「私生活についての重大な秘密」にあたるか? 
 
<規定>
民訴法 第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)
次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる。

一 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。
 
<原決定>
①本件秘密記録部分について、本件暴行事件当時の報道等によりX及びその母が事件の被害者となった事実について公開されていた
②秘密記載部分自体が刑事事件の証拠として公開されていた

私生活についての重大は秘密にあたらないとして、Xの申立てを却下。
 
<判断>
「私生活についての重大な秘密」とは、単に私生活についての秘密として保護され、差止請求権や損害賠償請求権の根拠とされるというのみでは足らず、当事者の人格にかかわるような重要性を有する秘密であり、秘密の公開によってその社会生活が破壊されるような重大な秘密でなければならない。

①母に関する記録が公開された場合には、Xの母に対する愛慕崇敬の感情が著しく害され、心情の静謐が大きく乱されるものと認められる⇒母に関する記録はXの人格にかかわる秘密に当たる
Xの身体の状況についての写真撮影報告書が公開された場合には、肖像権が侵害されるにとどまらず、Xに対する社会的評価の低下を招き、名誉感情、羞恥心を含め、Xが自己の人格に対して有する感情が著しく害される⇒Xの人格にかかわる秘密に当たる
これらが公開された場合には、Xの人格について、容易には回復しがたい打撃を受け、社会生活が破壊され、Xが社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがある
 
<解説>
秘密保護のための閲覧等の制限においては、秘密記載部分を特定して申し立てなければならない(民訴法92条1項、同規則34条1項)。
秘密記載部分が公開されることで、秘密の保持を望む当事者が訴訟記録に記載されることを恐れて、十分な主張立証をすることができなくなり、敗訴の危険にさらされる⇒秘密保護のための閲覧等の制限規定。
but
閲覧等の制限は、憲法82条が保障する裁判の公開の重大な例外を構成⇒秘密の保護は必要最小限のものに限られる。

判例時報2320

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2017年4月14日 (金)

「人についての決定」

人についての決定は究極の、そしておそらく唯一の、組織のコントロールである。人は組織のパフォーマンス能力を決める。どの組織もそれが持つ人々以上にはできない。人的資源からの産出は実際に組織のパフォーマンスを決める。そして、それは、人についての基本的決定(=誰を雇用し誰を解雇し、人をどこに配置し、誰を昇進させるか)により決められる。これらの人事の決定の質は、単なる広報やレトリックではなく、組織が真剣に運営されるかどうか、そのミッション、価値及び目的が真実で人々にとって意味があるかどうかを決定する。

自分が人についての良い審判者だと信じることからスタートするエグゼクティブは最悪の決定に終わる。人の審判者であることは、人に与えられる力ではない。かかる判断において約1000人の実績を持つ者は、彼らは人の審判者ではないという、非常に単純な前提からスタートする。彼らは、診断的プロセスへのコミットメントから始める。医療教育者は最大の問題はよい目を持つ光り輝く若い医師だという。彼は、それだけに頼らず、診断を行う我慢強いプロセスを行うことを学ばなくてはならない。そうでないと、彼は人を殺す。エグゼクティブもまた、人についての洞察や知識ではなく、平凡で退屈で念入りな段階的なプロセスに依拠することを学ばなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 15 April.

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2017年4月13日 (木)

弁護士法23条照会への回答拒絶の弁護士会への不法行為(否定)

最高裁H28.10.18      
 
<事案> 
弁護士法23条の2第2項に基づく照会(23条照会)を郵便事業株式会社(本件会社) に対してした弁護士会であるXが、
本件会社を吸収合併したYに対し、
主位的に、本件会社が23条照会に対する報告を拒絶したことによりXの法律上保護される利益が侵害されたと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求め
予備的に、Yが23条照会に対する報告をする義務を負うことの確認を求めた
事案

Aの代理人弁護士は、Bに対する強制執行の準備のため、平成23年9月、所属弁護士会であるXに対し、B宛ての郵便物に係る転居届の提出の有無及び転居届記載の新住所(居所)等について本件会社に23条照会をすることを申し出⇒Xは23条照会⇒Yは、同年10月、これに対する報告を拒絶
 
<判断>
23条照会の制度は、弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたもの。
②23条照会を受けた公務所または公私の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告をすべきものと解される⇒23条照会をすることが上記の公務所または行使の団体の利害に重大な影響を及ぼし得る。
弁護士法23条の2は、上記制度の適正な運用を図るために、照会権限を弁護士会に付与し、個々の弁護士の申出が上記制度の趣旨に照らして適切であるか否かの判断を当該弁護士会に委ねている

弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適性な運用を図るためにすぎないのであって、23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されない。 

23条照会に対する報告を拒絶する行為が、23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはない
 
<解説>
本件については、Aも、Yに対する損害賠償を請求していたが、原審は、
①23条照会の制度は依頼者の私益を図るために設けられたものではなく、23条照会に対する報告がされることによって依頼者が受ける利益は、前k制度が適正に運用された結果もたらされる事実上の利益にすぎない
②本件拒絶が、Aの権利、利益等を害する目的でされたとは認められない。
侵害行為の態様(違法性の程度)との関係からみても、Aの管理又は法律上保護される利益が侵害されたということはできない

Aの請求を棄却。

これに対しては、上告棄却兼上告不受理決定。

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国民年金に係る保険料の滞納処分に関し、差押調書謄本の交付を欠く⇒配当処分が違法

東京地裁H28.2.16      
 
<判断>
差押調書謄本の交付は、差押処分の効力発生要件としては規定されず、差押処分を行うために経ることを要する手続とはされていない上、差押処分後の事情となるにとどまる⇒その瑕疵は、差押え処分の違法事由とはならない。
but
差押えのあった事実を滞納者に知らしめ、差押えに対する不服申立ての機会を与えるなどの重要な意義を有している
⇒その交付がなされないまま、後続処分である配当処分がなされた場合には、法令上求められる事前手続を欠いたまま配当処分が行われたことになる⇒配当処分の違法事由となる。

①国税通則法12条2項の推定の前提となる書類の発送の事実を証する発送記録の作成・備置は確実に行われることを要し、これを欠く場合に、他の証拠により書類の発送の事実を証明して前記推定を適用することは慎重な検討を要するものというべき
②前記推定の適用の可否を措いたとしても、法令上当然に作成されるべき発送記録が作成されておらず、又は適切に記録されていないことは、書類の発送の事実の存在を否定する事情となり得る
との理解を前提に、
(i)本件管理票は、書類の名称の記載が不正確で、宛先や発送の年月日が不分明⇒原告に対し差押調書謄本を発送した旨の発送記録と認める足る形式を備えているということはできない
(ii)本件管理票の記載内容の信用性に疑義

原告に対する差押調書謄本の交付の事実は認められず、本件配当処分は違法
同処分の取消請求を認容

判例時報2320

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「アルフレッドスローンのマネジメントスタイル」

米国企業のCEOで、GMでトップとしての長い在職期間中の Alfred P. Sloan, Jr.ほど尊敬され敬われてきた者はほとんどいない。多くのGMのマネジャー達は、彼の、親切、助力、アドバイスについての静かであるが断固とした行動、あるいは彼らが困難に巻き込まれた時の温かい同情のため、彼に深い個人的感謝を感じた。しかしながら、同時に、スローンは、GMのマネジメントグループ全体から距離を保った。
「客観的で公平であることはCEOの義務である。」とスローンは言い、彼のマネジメントスタイルを説明した。「絶対的に辛抱強く、その人を好きかどうかは言うまでもなく、その人がいかに仕事をするかに関心を払ってはならない。唯一の基準はパフォーマンスと性格でなくてはならない。そして、それは、友好関係や社会的関係と両立しない。会社の中で「友好関係」を持ち、同僚と「社会的関係」を持ち、あるいは、彼らと仕事以外を議論するCEOは、公平ではあり得ず、少なくとも、それは同様に有害であり、彼はそのよう(公平)には見られない。孤独、隔たり、そして堅苦しさは彼の気質に反するかもしれず、それらは私のものとも反してきたが、彼(CEO)の義務である。」

ソース:The Daily Drucker 14 April.

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2017年4月12日 (水)

違法なおとり捜査によるもの⇒再審開始

札幌地裁H28.3.3   
 
<主張>
新証拠によって、本件における捜査が違法なおとり捜査であることが明らかになった⇒確定判決が有罪認定に用いた各種証拠の証拠能力が否定されるべき⇒刑訴法435条6号所定の事由がある。 
 
<規定>
刑訴法 第435条〔再審請求の理由〕 
再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。
六 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。
 
<判断>
次のようなおとり捜査であったことを認定:
銃器対策部門の警察官Aは、日頃からCら捜査協力者に「何でもいいからけん銃を持ってこさせろ。」と指示していた。
CのいとこDは、Aの意を受け、ロシア人船員であった請求人に対し、「けん銃があれば欲しい中古車と交換してやる。」と持ち掛けた。
これに応じた請求人は、父の遺品である本件けん銃等を日本に持ち込んだ。
A及び銃器対策課は、捜査協力者からその情報を入手し、Cらを使って請求人に本件けん銃等を船外に持ち出させ、請求人が中古車と交換するつもりで本件けん銃等をCに渡そうとしたところを現行犯逮捕。 

本件おとり捜査には、令状主義の精神を潜脱し、没却するのと同等ともいえるほど重大な違法がある⇒本件おとり捜査によって得られた証拠は、将来の違法捜査抑止の観点からも、司法の廉潔性保持の観点からも、証拠能力を認めることは相当ではない
②少なくとも、現行犯逮捕によって得られた本件けん銃等の証拠物、それらの鑑定書及び逮捕時の状況に関する捜査報告書等は証拠排除されるべき
⇒請求人の自白を補強すべき証拠がないことになる⇒結局犯罪の証明がないことに帰する⇒刑訴法435条6号に基づいて再審開始。
 
<解説> 
●おとり捜査の適法・違法の判断 

A機会提供型B犯意誘発型に二分し、前者を適法、後者を違法とする傾向

最高裁H16.7.12:
「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われるものを対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである」と判示し、前記の二分論を一定程度受容しつつ、他の要素も考慮した上で、当該おとり捜査を適法と判断。

本決定:
本件おとり捜査について、「典型的な犯意を誘発するタイプのものと位置づけられるので、その適否を慎重に見極める必要がある」とした上で、
具体的に、働き掛けの誘引力の強さ、請求人の属性(武器の密輸商でないことなど)を検討し、
続いて、具体的状況における銃器犯罪摘発の緊急性、おとり捜査の必要性などについて検討を進め、
最高裁決定が示す判断の枠組みに沿って判断。

判例時報2319

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「リーダーであるチャーチル」

(ドラッカーの書籍である)経済人の終焉が明確に伝える30年代の最後の現実はリーダーシップの完全欠如である。政治の舞台には多彩な人々がいた。過去にないほど、多くの政治家が熱狂的に働いていたように見える。これらの政治家のいくらかはきちんとした人物であり、非常に有能な人もいた。しかし、双子の暗黒の君である、ヒトラーとスターリンを除き、彼らは情緒的で小粒な人であり、彼らがいないと凡人ですら目立った。「しかし、ウィンストンチャーチルがいた」と今日の読者は主張するだろう。確かに、全体主義の邪悪な力に対するヨーロッパの戦いにおけるリーダーとしてのチャーチルの出現は決定的な出来事であった。チャーチルの言葉を借りれば「運命の要」であった。

今日の読者は実際、チャーチルの重要性を過小評価しがちである。ダンケルクの撤退とフランスの陥落の後に、チャーチルが全ての場所の自由な人々のリーダーとなるまで、ヒトラーは明らかな無謬性をもって進んだ。チャーチルの後、幸いにもヒトラーは「外れ」、タイミングの感覚や敵の少しの動きも予測する超人的な能力を失った。30年代の洞察力のある計算者は40年代の野蛮で制御不能な突進者となった。65年経った今日、チャーチルがいなければ、米国がナチのヨーロッパ支配を受け入れたかも知れないことを理解することは難しい。チャーチルが与えたものは、まさに、ヨーロッパが必要としたもの・・道徳的権威、価値の確信、そして理性ある行動の正義への信頼・・であった。

ソース:The Daily Drucker 13 April.

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2017年4月11日 (火)

金融商品取引法167条3項違反の罪の教唆犯の成立(肯定)

東京高裁H27.9.25      
 
<事案>
証券会社の執行役員であった被告人が、同証券会社が公開買付者との間で締結した契約の締結の交渉または履行に関し、公開買付者が株券の公開買付けを行うとの事実を知り、同事実をAに伝えて、その公表前に同株券を買い付けるよう促すなどして教唆し、Aに公表前に株券を買い付ける金融商品取引法違反の犯罪を実行させたというインサイダー取引の事案。 
 
<規定>
金融商品取引法は
167条1項において、
公開買付者等関係者は、株券等の公開買付け等の実施または中止に関する事実を知った場合には、
公開買付け等の実施または中止に関する事実の公表がされた後でなければ当該株券等の買付けまたは売付け等をしてはならないと規定

同項3項において、
公開買付者等関係者から公開買付け等事実の伝達を受けた者(第一次情報受領者)も
公開買付け等事実の公表がなされた後でなければ当該株券等の買付けまたは売付け等をしてはならないと規定
197条の2において、それらの違反行為に対する罰則を規定
but
第一次情報受領者から公開買付け等事実の伝達を受けた者について株券等の買付けまたは売付け等を禁止する規定は置いていない。 

刑訴法 第313条〔弁論の分離・併合・再開〕
裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。
 
<検察官>
主位的訴因として、被告人には167条1項4号違反の罪の、Aには同条3項違反の罪の共同正犯
予備的訴因として、被告人にはAの同条3項違反の罪の教唆犯ないし幇助犯が成立すると主張。 
 
<原審>
主位的訴因の共謀が認められない。
予備的訴因に基づき、法167条3項違反の罪の教唆犯の成立を肯定。 
 
<弁護人>
①事実誤認
②訴訟手続の法令違反:
被告人はAに公開買付け等事実を伝達していないと主張⇒そうであるならAは第一次情報受領者ではなく、Aは不処罰となる可能性がある⇒両者に対する事件は分離すべきではなく、事件を分離して審理・判決した原審の訴訟手続に法令違反あり。
③法令適用の誤り:
法167条3項の罪の成立にあたっては、公開買付け等事実の伝達が構成要件上不可欠とされているのに、同法には伝達行為を処罰する規定なし⇒伝達行為は不可罰と解すべき。
 
<判断>
●争点②について 
①事件の併合・分離は裁判所の広範な裁量に委ねられている
②被告人・弁護人は共謀を争い、Aの弁護士人は起訴事実を認めて早期の審理終結を希望

Aを被告人の地位から可及的速やかに解放することを考慮すれば、Aに対する事件を分離した原裁判所の措置に裁量権の逸脱はない。
 
●争点③について 
(次の)原判決の説示は正当。
①金商法167条1項において、公開買付者等関係者が公開買付け等に関する事実を知って自ら取引を行うことは、一般投資家に比べて著しく有利になるもので極めて不公平であり、そのよな取引を放置すると証券市場の公正性と健全性が損なわれ、ひいては証券市場に対する一般投資家の信頼が失われる⇒禁止。
②公開買付者等関係者が公開買付け等事実を第三者に伝達し、脱法的に第三者に取引を行わせることもあるし、そうでないとしても、公開買付け等事実の伝達を受ける第三者は公開買付者等関係者と何らかの特別な関係にあると考えられる⇒そのような者が取引を行った場合にも証券市場の構成が害される⇒同法は、同条3項において、第一次情報受領者による取引も禁止。

同条3項の規制は、同条1項の規制を補完し、インサイダー取引規制の趣旨を徹底することを目的としたもの。
⇒同条3項違反の罪の教唆行為は十分可罰的
。 
 
<解説>
構成要件上予定されている行為について処罰規定がない場合に、その行為について刑法の共犯規定を適用できるか(必要的共犯の内の対向犯の問題)

最高裁昭和43.12.24:
弁護士法72条違反の非弁行為を依頼した者を同法違反の教唆者として処罰できるか?
ある犯罪が成立するについて当然予想され、むしろそのために欠くことができない関与行為について、これを処罰する規定がない以上、これを、関与を受けた側の可罰的な行為の教唆もしくは幇助として処罰することは、原則として、法の意図しないところと解すべき」

最高裁昭和51.3.18:
預金等に係る不当契約の取締に係る不当契約の取締に関する法律4条、2条1項2号違反事件において、いわゆる導入預金の融資を受ける第三者の共同正犯としての責任も否定。
43年最判の弁護士法72条違反の非弁行為の依頼者は、自らが弁護士法72条に規定する行為をしても処罰されない。
51年最判の事案も同じ。
but
金商法167条3項違反で情報伝達をすると予定されている公開買付者等関係者は、自ら株券等の買付けまたは売付け等をしたときは、同条1項各号違反として処罰される。

判例時報2319

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「偽者対真のリーダー」

しかし、これは後知恵である。ウィンストンチャーチルは「経済人の終焉」(ドラッカーの本)で取り上げられ大きな尊敬をもって扱われる。実際、私がその時に書いたものを今読むと、私はひそかにチャーチルが指導者として現れることを望んだのではと思う。私は、また、 多くの博識の同時代人(例えば、ワシントンでのフランクリンルーズベルトの多くの側近)が解放を期待した、偽のリーダーを信じなかった。しかし、1939年、チャーチルは、そうなったかもしれない人:70歳に近い力のない老人であり、気持ちを高ぶらせる弁舌にかかわらず(あるいは、おそらくそれ故に)聴衆を退屈させるカサンドラ(=トロイア王で、予言能力があったが信じる者がなかった。)であり、野にあっていかに堂々としようが、公職に不適格となり、2度失敗した人であった。フランスの陥落とダンケルクの退却により、「ミュンヘンの男」が一掃され職を追われた1940年でさえ、今日信じがたいことに、チャーチルは決して必然的な後継者ではなかった。

1940年のチャーチルの出現は、本が最初に出版されて1年以上後であり、「経済人の終焉」が祈り願った基本的なモラルと政治的価値の再言明であった。しかし、1939年に人ができたことは祈り願うことだけであった。現実はリーダーシップの不在であり、断言(affirmation)の不在であり、人と価値と正義の不在であった。

ソース:The Daily Drucker 12 April.

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2017年4月10日 (月)

「リーダーの4つの能力」

ほとんどの組織は天候に関係なく導くことができる者を必要とする。重要なのは彼や彼女が基本的能力に基づき働くことである。

第1の基本的能力として、私は聞くことのについての意欲、能力、自己訓練を挙げる。聞くことはスキルではない。それは訓練である。誰もがそれをできる。あなたがすべきことは口を閉じることだけである。

第2の本質的な能力は伝え、自分を理解してもらう意欲である。これは無限の忍耐を必要とする。

次に重要な能力は言いわけをしないことである。「これは動くべきだけ動かない。持ち帰って、作り直せ」と言う。

最後の基本的な能力は仕事に比べ自分がいかに重要でないかを理解する意欲である。リーダーは仕事に自分を従属させる。

有効なリーダーが自分の個性と特性を維持できるとき、完全に献身的であったとしても、仕事は彼らの後になる。彼らはまた、仕事の外に、人としての存在を持つ。さもないと、彼らは、大儀を進めるためと信じて、個人的な地位の増大に向けて物事を行う。彼らは、自己中心のひとりよがりとなる。そして、とりわけ、彼らは嫉妬深くなる。ウィンストンチャーチルの偉大な強さの1つは、彼が、最後に、若い政治家を押し進めたことである。

ソース:The Daily Drucker 11 April.

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2017年4月 9日 (日)

商標権に基づく権利行使が権利濫用に当たるとされた事例

東京地裁H28.6.30       
 
<事案>
X1は、亡Aの相続人であり、X2はX1が代表取締役を務める会社。
Xらは、亡Aの死後、極真会館において従前使用されていた極真関連の標章について商標登録出願をし、その商標権者となった。 

Xらが、YによるY各標章の使用がXらそれぞれに有する商標権を侵害していると主張し、Yに対し、それぞれ、
①商標法36条1項に基づき、Y各標章の使用の差止めを求めるとともに、
②不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた。
 
<争点>
①Xらの請求が権利濫用に該当するか
②損害の有無及び額 
 
<判断>
①Xらの本件各商標と類似するY標章が、亡Aの死亡当時から現在に至るまで、空手愛好家の間において極真会館又はその活動を表すものとして広くしられている
②極真会館の支部長が、亡Aの生前において、Y各標章を含む極真関連の標章を基本的に自由に使用していた
③Bが、亡Aの生前において、各種の空手大会で実績を残し、極真会館の支部長として極真空手の教授等を行っていた
④B及びYが、亡Aの死後、国内外で大規模に極真空手の教授等を行っている

Y各標章の周知性及び著名性の形成、維持及び拡大に対し、亡Aの生前においては、亡A及び同人から認可を受けたBを含む極真会館の支部長らの寄与があり、亡Aの死後においては、B及び同人が代表取締役を務めるYの大きな寄与があった。

Xらについて、X1が極真会館の館長ないし総裁たる地位を亡Aから承継したとはいえず、極真会館を称して極真空手の教授等を行う複数の団体の1つにすぎない。
Xらが、国内外においてB及びYが各標章を使用して大規模に極真空手の教授等を行っていたことを認識していたにもかかわらず、Xらが合理的な理由もなく、早期に本件各商標に係る商標登録出願を行わなかった。
XらのYに対する本件請求は権利濫用に該当
 
<解説>
商標権侵害訴訟においては、商標権の行使が権利濫用に該当するとの抗弁が提出されることが少なくない。 

最高裁H2.7.20(ポパイ事件):
客観的な公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の1つ
商標権に基づく権利行使であっても、客観的に公正な競業秩序を乱すものと認められる場合には、権利濫用として許されない

下級審裁判例において、商標権の行使が権利濫用であると認められた裁判例:
A:登録商標に商標権者独自の信用が化体しておらず、正当に標章が帰属すべき第三者が存在する場合
A①:権利取得過程に濫用がある場合
A②:権利行使段階での濫用がある場合
B:商標登録自体に問題がある場合
C:相手方の行為が正当に評価される場合
C①:相手方が正当に標章が帰属すべき第三者から許諾を得ている場合
C②:商標法上の抗弁が成立しそうな場合
D:商標権に対する実質的な侵害が存在しない場合
に分類

権利濫用の抗弁は、個々の事案によって権利の取得経過や取得意図・権利行使の態様、相手方の使用の態様等の事情を総合的に利益衡量することによって、妥当な結論を導く道具として有用であるとの指摘。

判例時報2319

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美容用フェイスマスクの形態と不正競争行為(否定)。

東京地裁H28.7.19      
 
<事案>
美容用フェイスマスク(X商品)を販売するXが、美容用フェイスマスクであるY商品を販売するYに対し、
①Y商品の形態が、周知の商品等表示であるX商品の形態と類似し、X商品と混同を生じさせる⇒その販売は不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たる
②Y商品がX商品を形態を模倣⇒その販売は同条1項3号の不正競争行為に当たる

法3条1項及び2項に基づきY商品の販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、法4条に基づく損害賠償金の支払を求めた。 
 
<規定>
不正競争防止法 第2条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
・・・
三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

4 この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

不正競争防止法 第3条(差止請求権)
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

不正競争防止法 第4条(損害賠償)
故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。
 
<判断>
●請求①について 
商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し、法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには、
①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有して(特別顕著性)、かつ、
②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用されるなどしたことにより、
③需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)
を要する。
X商品の形態はごくありふれたもので、客観的に他の同種商品と異なる顕著な特徴を有しているとはいえない

法2条1項1号の不正競争行為の成立を否定。
 
●請求②について 
当該商品の形態と他人の商品形態との相違がわずかで、全体からみれば些細な相違にとどまる場合には、実質的に同一の形態と評価される得るが、
他方で、相違の内容・程度、共通点と相違点のバランスが商品全体の形態に与える影響等に鑑み、相違が些細なものといえない場合には、実質的に同一の形態とはいえない。

同種の商品にしばしばみられるありふれた形態は、特段の資力や労働力を等価することなく作り出すことができる⇒法2条1項3号の保護対象となる「商品の形態」には当たらない

①X商品とY商品とに共通又は近似する形態がいずれもありふれた形態である一方、②X商品とY商品の特徴的な形態が大きく相違
⇒全体として、Y商品の形態がX商品の形態と実質的に同一とはいえないから「模倣」に当たらない。

需要者が通常の用法に従って使用するに際して内容器の形態を認識することはできない⇒内容器の形状は、「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の・・・内部の形状」(法2条4項)に当たらない⇒Xの主張を排斥。
 
<解説>
法2条1項3号が、「商品の形態」を保護する趣旨については、
模倣者が先行者において資金や労力を投下して商品化した商品について、その形態を殊更模倣した商品を自らの商品として市場に提供し、同じ市場において先行者と競争する行為事業者間の競争上不正な行為として位置づけるべきものとしたことにあるという理解が一般的。

判例時報2319

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「危機とリーダーシップ」

20世紀の最も成功したリーダーはウィンストンチャーチルであった。しかし、1928年から1940年のダンケルクにかけての12年間、彼は傍流で、ほとんど信用されなかった。なぜならチャーチルは必要なかったから。仕事は日常業務であり、いずれにしても日常業務と見られた。激変が起きた時、ありがたいことに、彼がいた。幸か不幸かどの組織でも予想できるのは危機である。それは常にやって来る。それが、リーダーに頼る時である。

組織のリーダーの最も重要な仕事は危機を予想することである。おそらく、それから目をそむけるのではなく、先手を打つことである。危機が襲うのを待つことは責任放棄である。組織を、嵐を予想し、嵐を切り抜け、実際嵐に先立てるようにしなくてはならない。激変を防ぐことはできないが、戦闘準備を整え、高い士気を持ち、いかに行動すべきかを知り、自らを信じ、お互いを信じる組織を作ることはできる。軍の訓練において、第1のルールは、兵士に将校への信頼を染み込ませることである。なぜなら、信頼がなければ、彼らは戦わない。

ソース:The Daily Drucker 10 April.

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2017年4月 8日 (土)

売買対象不動産で強盗殺人事件が発生したことを告知しなかった⇒不法行為(肯定)

神戸地裁H28.7.29       
 
<事案>
Xは、本件売買契約(平成26年7月29日、代金3300万円)後、本件不動産上で、平成18年8月31日に、Yの母親が強盗殺人の被害者となる事件が発生していたこと、その犯人が未だ検挙されていないことを認識。
⇒Yに対し、本件売買契約に際し、本件不動産上で本件事件をが発生したことを告知しなかった不法行為があると主張し、2300万円の損害賠償請求を提起。
 
<判断>
売買対象の不動産について強盗殺人事件が発生しているか否かという情報は、社会通念上、売買価額に相当の影響を与え、ひいては売買契約の成否・内容を左右するもの。
②Yは本件事件の被害者の子であるから、本件売買契約当時、本件事件の存在を十分承知していた

売主であるYは、本件売買契約を締結するに際し、買主であるXに対し、本件事故を告知する義務を負っていたとして、Yの不法行為責任を肯定。 

損害について、売買代金額と市場価額の差額である1575万円(+弁護士費用)。

Xが主張する得べかりし利益(転売利益)はその確実性が乏しいなどとして損害として認めず。
 
<解説>
取引不動産において自殺や強盗殺人があったことは、一般に「心理的瑕疵」と呼ばれ、「隠れたる瑕疵」があるとして瑕疵担保責任が認められたり、売主に契約上の告知義務違反を認め不法行為責任を認めた事例が相当数存在。 

判例時報2319

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看護師が行った留置針の穿刺行為⇒複合性局所疼痛症候群を発症

静岡地裁H28.3.24      
 
<事案>
Yの設立したA病院において、左前腕に点滴ルート確保のために抹消静脈留置針の穿刺を受けたXが、Yに対し、A病院の看護師が十分な注意を払わずに穿刺行為を行うなどの過失があったと主張し、その結果、複合性局所疼痛症候群(「CRPS」)を発症し、後遺障害を負った⇒不法行為又は債務不履行に基づき、7171万円余の損害賠償請求をした事案。
 
<判断> 
●本件穿刺行為の態様、Xの主訴、治療経過等を詳しく認定し、本件穿刺行為によりXの橈骨神経浅枝が傷害されたと認定、その原因は、B看護師が本件穿刺行為において深く穿刺しないようにする義務を怠ったから。 

●本件穿刺行為により後遺障害としてのCRPSが発症したのか? 
①Xは本件穿刺行為によってこれまで点滴ルート確保の際に感じたことのないような鋭い痛みを感じた
②B看護師はXが痛みを訴えた後に更に留置針を1ないし2㎜勧め、血液の漏出を来たし、少なくとも3㎜程度の大きさの瘤を生じさせ、その瘤を強く圧迫した
③Xは、その際も強い痛みを感じ、それ以降左腕の痛みやしびれを訴えるようになった
④複数の医師が、XのCRPSの原因は本件穿刺行為がトリガーになったと証言
⑤本件手術中にXの身体の左側に多少の圧迫等があったとしてもそれによってCRPSが発症したとまでいうことは困難
⇒Xは、本件穿刺行為によってCRPSに罹患したものと認めるのが相当
 

①Xの後遺症の程度は、「上肢の用を全廃したもの」といえる⇒後遺障害等級5級6級に該当。
②素因減額をするのは相当ではない。

6102万円余の損害賠償請求を認容。

判例時報2319

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「誠実さの欠如」

誠実さ(Integrity)は定義することは困難かもしれないが、誠実さの欠如は管理者的地位(managerial position)を不適格とするものとして重要である。人の強みより弱みに目を向ける者は管理者的地位に選任されるべきではない。常に人々ができないことを知り、彼らができることを見ない人は、組織の精神を傷つける。エグゼクティブは現実主義者であるあるべきであるが、皮肉屋ほど現実主義的でない者はいない。

①「何が正しいか?」より「誰が正しいか?」に関心がある人は選任されるべきではない。「誰が正しいか?」を尋ねれば、部下は、政治的に画策しないとしても、安全を求める。何より、部下は、間違ったことを見つけた時に、それを正すのではなく「隠そう」とする。②マネジメントは誠実さ(integrity)よりも知性(intelligence)が重要だと考える人を指名すべきではない。③強い部下を恐れることを示す人を昇進させるべきではない。④自分の仕事について高い基準を設定しない人をマネジメントの仕事につかせるべきではない。

ソース:The Daily Drucker 9 April.

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2017年4月 7日 (金)

遺留分減殺の意思表示が1042条前段所定の期間経過後になされたとされた事例

東京地裁H28.2.26      
 
<事案>
Xら及びYは、いずれも亡Aの相続人。
Xらが、亡Aが所有していた株式の生前贈与を受けたYに対し、遺留分減殺請求権を行使したと主張⇒Xら各自に対し、株式の引渡しなどを求めた。 

X1は、Yを含む亡Aの相続人を被告として、二度にわたり訴訟を提起。
第1次訴訟:Yは、亡AがB社に係る株式をYに贈与する内容の贈与契約を偽造したと主張し、B社に係る株式は、亡Aの遺産であることの確認を求めたが、裁判所は、X1の請求を否定。
第2次訴訟:X1は、Yが、C社、D社及びE社に係る株式につき、亡Aに無断で名義書換手続を行ったなどと主張し、株式が亡Aの遺産に属するとの確認を求めたが、裁判所はX1の請求を否定。
 
<規定>
民法 第1042条(減殺請求権の期間の制限)
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
 
<争点>
①Xらの遺留分減殺請求権について消滅時効の成否
②遺留分侵害額 
 
<判断> 
遺留分減殺請求権の消滅時効の起算点:
Xらは、Xらの遺留分減殺請求権の消滅時効の起算点につき、第1次訴訟の敗訴判決が確定した日と主張。
but
①Xらが、株式の贈与が虚偽であると信じたことについての裏付けとして指摘する各証拠の内容
②第1次訴訟における一審及び控訴審の各判決の内容
③Xらは、第1次訴訟の控訴審判決が言い渡されるまでの間に、亡Aの各財産につき価値を把握しうる状態にあった
③B社、C社、D社及びE社に係る各株式のうち、第1次訴訟において問題となっていたB社に係る株式の価値が相当程度の割合を占めていた

遅くとも、Xらが第1次訴訟の控訴審判決の主文及び判決理由を知った時期には、Xらが、贈与の存在及びこれが減殺できるものであることを知っていたことが推認され、同時期が前記消滅時効の起算点。 
Xらが遺留分減殺の意思表示を行った時期について、消滅時効の起算点から1年を経過した時期。

判例時報2319

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「リーダーシップは責任である」

私が出会った全ての有効なリーダー(一緒に働いたリーダーと観察しただけのリーダーの双方)は4つの単純なことを知っていた。①リーダーは部下を持つ者である。②人気はリーダーシップではない。リーダーシップは結果である。③リーダーは非常に目立ち、見本を示す。④リーダーシップは地位、特権、肩書あるいは金ではない。それは責任である。

私が高校の最終学年の時、すばらしい歴史の先生(彼自身は大怪我をした復員軍人であった)は私たちに、多くの第一次大戦についての歴史の本からいくつか選び、それらについてエッセイを書くよう言った。我々が、これらのエッセイをクラスで議論した時、1人の生徒が「これらの本は全て大戦は完全に軍が無能だった戦争だと言っている。それは何故か?」と言った。先生は、即座に答えた。「十分な数の将軍が殺されなかったからだ。彼らは後方にいて、他の人を戦わせ死なせた。」有効なリーダーは職務を委ねるが、委ねないことが1つあり、それが基準となる。彼らはそれをする。

ソース:The Daily Drucker 8 April.

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2017年4月 6日 (木)

「リーダーシップを強みに基づかせる」

人の事柄において、リーダーと平均の距離は一定である。リーダーシップのパフォーマンスが高ければ、平均も上昇する。有能なエグゼクティブは、1人のリーダーのパフォーマンスを上げることの方が集団全体のパフォーマンスを上げるよりも簡単であることを知る。彼女は、そのため、リーダーシップのポジションに、基準を設定し、パフォーマンスを出すポジションに、すぐれた、範を示す仕事をする強みを持つ人を投入する。これは、常に、人の強みにフォーカスし、強みの十分な展開を妨げない限り、弱みを無関係なものとして追いやることを要求する。
エグゼクティブの仕事は人を変えることではない。むしろ、聖書が天分の寓話で語るように、その仕事は、強みであれ、健康であれ、抱負であれ、個人の中にあるものを使うことにより、全体のパフォーマンス能力を増すことである。

ソース:The Daily Drucker 7 April.

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2017年4月 5日 (水)

無罪判決⇒警察官・検察官の違法を理由とする国賠請求・被告の虚偽供述を理由とする不法行為請求(いずれも否定)

東京地裁H27.1.30      
 
<事案>
医師法違反教唆被告事件で無罪判決を受けた医師X1が、医療法人社団X2とともに、
①自らの刑事責任を軽くするため虚偽の供述を繰り返したY1に対し不法行為責任に基づき、
②十分な捜査をせずにX1を逮捕するなど一連の捜査手続に違法があったとしてY2(東京都)に対し、
③十分な捜査をせずにX1を起訴したとしてY3(国)に対し、
国賠法1条1項に基づき
損害賠償請求(X1につき7600万円余、X2につき3億8600万円余)をした。 

起訴された公訴事実は
「X1が、
(1)平成19年8月16日頃、Y1に対し電話で入院中本件クリニックにおいて無資格医業を行うことを唆し、Y1にその旨決意させ、
(2)同月17日頃、本件クリニック事務員Aに対し電話でY1が入院中も事務員らが薬剤処方等を行うように言い、
(3)同月18日頃、Y1の妻Bに対しY1が入院中も事務員らに薬剤処方等を行わせればよい旨を言った上、これをAらに伝達させるなどし、
よって、Y1・Aら7名をして、共謀の上、Aらが医師でないのに、8月21日頃から9月7日頃までの間、8回にわたり、問診、薬剤処方等の医行為を行わせ、もって医師でないのに医業をなすことを教唆した」
というものであった。
 
<判断>
捜査段階における警察官の逮捕状請求・逮捕が国賠法上違法となるのは、各行為時において、捜査により現に収集した証拠資料、通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して、犯罪の嫌疑要件を充足すると判断することが不合理と認められる場合に限られる。
②本件における前記証拠資料を総合勘案して、本件被疑事実の直接証拠であったY1の供述に相応の信用性を認め、かつ、信用性を否定するに足りる証拠はない。

X1に犯罪の嫌疑要件を充足すると認めた警察官の判断は、不合理であったとは認められない

①検察官は公訴提起時において、検察官が現に収集した証拠資料、通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば、公訴の提起は違法性を欠く。
②本件における各公訴事実の直接証拠は、各供述のみであり、これらの供述と裏付け証拠に加え、信用性を減殺する証拠を含めて、前記証拠資料を総合勘案し、合理的な判断過程により有罪であると認められる嫌疑を認めることができないにもかかわらず、公訴提起がされた場合(各供述に信用性があると判断することが合理性を欠くと認められた場合)に限り本件起訴が国賠法上違法と評価される
③本件において、各公訴事実の直接証拠となる各供述に信用性があると判断することが合理性を欠くとまでは認められない
⇒本件起訴を違法と評価することはできない。

①Y1の不法行為の成立を認めるためには、その供述が虚偽であることが必要であり、これが虚偽であることの直接証拠はX1の供述のみであるところ、
②X1の供述の内容は捜査における取調べ、刑事事件における被告人質問、本事件における陳述書・当事者尋問を通じて概ね一貫しているが、直接裏付ける客観的証拠があるわけではなく、一部不自然さを否定できない部分を含んでいる
Y1らの捜査段階における各供述は信用性を決定的に否定するまでの客観的証拠はなく、公判審理の結果を考慮しても変わることはないというべき

刑事無罪判決によってもY1らの各供述が虚偽である可能性がうかがえるにとどまり虚偽であることまで認めることは困難
 
<解説>
●刑事裁判で無罪が確定した場合に、捜査、起訴など刑事司法手続の国賠法1条1項の違法性をどのように評価すべきか:
A:結果違法説
B:職務行為基準説 

判例(最高裁昭和53.10.20):
後に無罪が確定した場合でも、逮捕・勾留は、当該時点において、犯罪の嫌疑につき相当の理由があり必要性が認められる限り適法であり、
公訴提起後も、起訴や公訴追行時における各種証拠資料を総合勘案して合理的は判断過程により有罪であると認められる嫌疑があれば適法である。
~職務行為基準説。

職務行為基準説の下でも、公訴提起の違法性の具体的判断基準について
〇A:合理的理由欠如説(判例)
B:一見明白説
C:違法限定説

●虚偽供述をした被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求について、
刑事無罪判決から供述が虚偽の可能性はあるが、虚偽であると認めることは困難であるとして、不法行為の成立を否定したケース。 

民事訴訟における事実の認定判断は、自由心証主義が妥当するが、恣意的なものであってはならず、経験則に合致するものでなければならない。
but
本判決は、Y1らの供述の信用性を否定している刑事判決の事実認定とは対照的であるようにみえる。

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「リーダーの質」

基本的に自分自身にフォーカスするリーダーは誤導する。今世紀の3人の最もカリスマ的なリーダーは歴史におけるほとんどの他の3人組よりも人類により多くの苦しみを負わせた。ヒトラー、スターリンと毛沢東である。大事なのはリーダーのカリスマではない。リーダーシップは民衆扇動となり得る、人をひきつける人柄ではない。それは「親しくなり、人々に影響を及ぼす」ものではない・・それはおだてである。
リーダーシップは人の視野をより高くに引き上げることであり、人のパフォーマンスをより高い基準に引き上げることであり、(その人の)通常の枠を超えて人の人格を創るものである。組織の日々の実践において、行動と責任、高いパフォーマンス基準、並びに個人とその仕事への尊重の厳格な原則を確立するマネジメントの精神以上にかかるリーダーシップの基礎を用意するものはない。

ソース:The Daily Drucker 6 April.

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2017年4月 4日 (火)

歯科医師の説明義務違反を認めた事例

東京地裁H28.4.28      
 
<事案>
Yの開設する美容外科・歯科医院(Y医院)で差し歯治療を受けたXが、担当医師らの不適切な治療により歯肉炎や差し歯の脱落などが起こり、また、事前の説明がないまま天然歯を削られたなどと主張して、Yに対し、債務不履行に基づき損害賠償訴訟を提起。 
 
<判断>
Xの受診目的は、左上1番の差し歯が曲がったことの修補のみならず、全体の見た目をきれいにするためのものと認定。
Xの症状である右上2番ないし左上4番の歯肉炎や、右上2番ないし左上2番の差し歯の脱落等については、A医師や、B医師の治療に責任があると認めるに足りる証拠は存在しない⇒Yの責任を否定。

A医師が、天然歯である左上4番を削った点についての説明義務違反:
①審美目的の医療行為については、医学的必要性や緊急性が乏しく、患者の主観的願望を満足させるために行われるもの⇒医師は、患者に対して通常よりも丁寧に説明し、患者が当該医療を受けるか否かについて十分な情報を基に熟慮の上決断できるように配慮すべき義務を負う
~通常よりも厳格に評価するのが相当。
②左上4番は医学的には治療する必要のない天然歯であり、一度削ってしまえば二度と元に戻すことはできなくなることなどを丁寧に説明すべ義務を負っていた。
診療録には説明に関する記録なし
説明義務違反がある

説明義務違反と因果関係がある損害は30万円、弁護士費用3万円で、合計33万円の限度で請求を認容。
 
<解説>
最高裁H13.11.27:
医師の説明義務について、
「特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務がある。」

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「リーダーを選ぶ」

組織のリーダーを選ぶに当たって何を見るか?

第1に、私は候補者が何を行い、彼らの強みは何かを見る。人は、強みでのみ遂行でき、彼らはそれで何を行ったのか?
第2に、私は組織を見て、「現在の鍵となる挑戦は何か?」を尋ねる。
私は強みをニーズと合わせようとする。

そして私は誠実さ(integrity)を見る。リーダー、特に強いリーダーは、手本を示す。彼/彼女は、組織の人々、特に若い人々が、モデルにする人である。何年も前、私は非常に賢い年配の男性から学び、彼は巨大な世界的組織のトップであった。彼は70歳代後半で、正しい人々を世界中の正しい企業に送ることで有名であった。私は彼に「あなたは何を見るのか」と尋ね、彼は「私は常に、自分の息子をその人の下で働かせたいかを問う。彼が成功すれば、若者は彼を真似る。自分の息子にこのようになって欲しいか?」と言った。私は、これは究極の質問だと思う。

ソース:The Daily Drucker 5 April.

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2017年4月 3日 (月)

農地法5条1項の許可を受けた者の造成工事⇒隣接農地の所有者が排水障害⇒国賠請求(肯定)

広島高裁岡山支部H28.6.30       
 
<事案>
Xは、農地法3条に基づく許可を受けて、平成7年6月15日、X所有農地の一部を埋め立てて自宅を建築したが、その余は畑にした。

Aは、法3条に基づく許可を受けて、本件農地所有権を取得したが、Aと訴外B会社は、平成23年11月15日、Yの農業委員会に対し、法5条1項に基づき、本件農地を露天資材置場とするため、本件農地についてBの賃借権を設置することの許可を求める旨の申請⇒同委員会は、平成24年2月29日、本件賃借権設定を許可する旨の本件処分。

AとBは、本件申請に先立ち本件造成工事⇒X所有農地から本件農地への排水が著しく悪化し、農作物の生育不良。
⇒Xは、Yに対し、農業委員会は、本件処分をするに際し、同法施行規則33条4号該当性の審査を適切に行う職務上の法的義務を、Xに対して負っているにもかかわらず、この義務に違反して本件処分をした⇒国賠法1条1項に基づき、排水確保工事費用の賠償を求めた。
 
<規定> 
農地法 第3条(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。

農地法 第5条(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため四ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第四項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない
・・・・・

2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項の規定による告示に係る事業の用に供するため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとするとき、第一号イに掲げる農地又は採草放牧地につき農用地利用計画において指定された用途に供するためこれらの権利を取得しようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
・・・・
四 申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地又は採草放牧地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
 
<一審>
①法5条2項4号は、申請に係る農地を含めた地域全体の農地の振興を図る趣旨のもとに規定されたものという言うべきであり、周辺の農地の所有者等の個別的な利益を保護する趣旨を含むものではない
②本件処分が法5条2項4号の場合に該当しないとした委員会の判断に誤りがあったものとは認められない
⇒本件訴訟を棄却。
 
<判断>
法5条2項4号は、本件農地を農地以外のものにすることにより、隣接するX所有の農地が良好な排水等の営農条件に支障を受けないとする法的利益を個別的に保障する趣旨を含むと解される。
①本件申請を受けた委員会としては、本件造成工事が、周辺農地の営農条件に影響を及ぼしするものであることは、十分に認識することができた
その点に関する調査がされたとも認められない

職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分をしたというほかない⇒
過失肯定で、Xの請求を一部認容。
 
<解説>
判例上、国賠法1条1項にいう公務員の行為の「違法」とは、公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したことを言う(最高裁昭和60.11.21)。

本件では、農地法5条2項4号が周辺農地の所有者等の個別の利益を保護する趣旨であるか否かが問題。

判例時報2319

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「組織と個人」

組織における個人が人として成長するほど、組織は目的を果たすことができる。これは、マネジャー開発と今日の進歩したマネジャー教育への全ての我々の注意の下にある洞察である。組織が真剣さと誠実さ、目的と能力において成長するほど、個人は成長し人として進化する見通しがある。

ソース:The Daily Drucker 4 April.

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仲裁人の忌避事由に関する開示義務違反⇒仲裁裁判取消事由に該当するとされた事例

大阪高裁H28.6.28      
 
<事案>
Xらが、Xら及びYらとの間の仲裁判断につき、仲裁法44条1項4号、6号または8号の取消事由があるものと主張して、仲裁判断取消申立てをした事案。 
 
<事実>
Xら:アメリカ合衆国テキサス州に本店を置き、空調機器の販売等を目的とする会社
Yら:電気機器の製造・販売等を目的とする会社 
両者間には、YらがX1に空調機器を納入する旨の売買契約
その後Yらが同契約の解除の意思表示
⇒その適法性などをめぐって紛争。

平成23年6月16日、Yらは、Xらを相手方として、同契約の仲裁条項に基づき、Yらに契約上の義務違反がないことの確認等を求めて、日本商事仲裁協会(「JCAA」)に仲裁申立て。

Yらは、Aを仲裁人に選任
Xらは、所定の期間内に仲裁人の選任をしなかった⇒JCAAがYらに代わってBを仲裁人に選任
平成23年9月20日、A及びBは、長たる仲裁人としてCを選任。 

Cは、D法律事務所シンガポール・オフィスに所属する弁護士であるが、その仲裁人への選任に際してJCAAに公正中立表明書を提出。
この表明書には、
①D法律事務所の弁護士が、将来、本件仲裁に関係はしないもののクライアントの利益が本件仲裁の当事者またはその関連会社と利益相反する案件において、当該クライアントに助言しまたは当該クライアントを代理する可能性があること、
②C自身は、仲裁の係属中かかる職務に関与することも、かかる職務の情報を与えられることもない
などを記載した付属文書が添付。

本件仲裁手続きが開始された当時、
Y1と完全兄弟会社の関係にあるE社を被告とするクラスアクション事件がアメリカ合衆国で係属しており(「別件訴訟」)、別件訴訟においてE社の代理人を務めていたF弁護士は、Cが本件仲裁における仲裁人に選任された当時には別の法律事務所に所属していたが、遅くとも仲裁手続の係属中である平成25年2月20日以降、D法律事務所のサンフランシスコ・オフィスに所属(「本件利益相反事由」)。
Cは、この事実を開示することなく、平成26年8月11日に、Yらの主張を概ね認める内容の仲裁判断。
Xらは、これに対して、Cによる開示義務違反が仲裁法44条1項6号または8号所定の仲裁判断取消事由に該当すると主張し、仲裁判断取消しの申立。
 
<規定>
仲裁法 第18条(忌避の原因等)
当事者は、仲裁人に次に掲げる事由があるときは、当該仲裁人を忌避することができる。
二 仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき。

3 仲裁人への就任の依頼を受けてその交渉に応じようとする者は、当該依頼をした者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部を開示しなければならない。

4 仲裁人は、仲裁手続の進行中、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(既に開示したものを除く。)の全部を遅滞なく開示しなければならない。

仲裁法 第44条
当事者は、次に掲げる事由があるときは、裁判所に対し、仲裁判断の取消しの申立てをすることができる。

四 申立人が、仲裁手続において防御することが不可能であったこと。

六 仲裁廷の構成又は仲裁手続が、日本の法令(その法令の公の秩序に関しない規定に関する事項について当事者間に合意があるときは、当該合意)に違反するものであったこと。

八 仲裁判断の内容が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
 
<原決定>
本件利害相反事由は、Cの仲裁人としての公正性または独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(仲裁法18条4項、JCAA規則28条4項)に該当。
but
①別件訴訟は本件仲裁とは関連性のない事件であった
②C自身が別件訴訟に関する情報に接する機会はなかった

いまだCの仲裁人としての公正性または独立を疑うに足りる相当な理由がある(仲裁法18条1項2号)とまでは認められない。

①この事実の存在が仲裁判断の結論に影響を及ぼしたとは認められない
②本件付属文書についてXらが何ら異議を述べていなかった

開示義務違反が認められるとしても、その瑕疵は軽微なもの。

これが仲裁法44条1項6号に該当するとしても、仲裁判断を取り消すことは相当ではない。
 
<判断>
本件利益相反事実は、Cの仲裁人としての公正性または独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実(仲裁法18条4項、JCAA規則28条4項)にあたる
②Cが別件訴訟に関する情報を一切与えられておらず、本件利益相反事由を知らなかったとしても、特段の支障なく調査することが可能であった以上、開示義務違反の責任を免れない
本件付属文書は、将来生起する可能性のある抽象的、潜在的な利益相反を表明したものにすぎず、これをもって本件利益相反自由についての開示義務を果たしたものとはいえない
④本件利益相反自由は仲裁人の忌避事由に該当する可能性がないとはいえないもので、その不開示は重大な手続上の瑕疵にあたる

裁量棄却は相当でない。 
 
<解説> 
●仲裁法18条1項2号は、
「仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるとき」
仲裁人の忌避事由とし、これを受けて、
仲裁人は、「自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実の全部」について開示義務を負う(同条3項、4項)。
 
●国際仲裁の実務においてしばしば参照される国際法曹協会(IBA)のガイドラインによれば、
①仲裁人が所属する法律事務所が、当事者の関係会社との間で重大な商業上の関係を有することは、忌避事由に該当する放棄可能なレッドリストに、
②仲裁人が所属する法律事務所が、当事者の関係会社に対して、重大な商業上の関係を生じることなく役務を提供していることは、開示義務事由に該当するオレンジリストに該当。
同ガイドラインは、
仲裁人は利益相反の有無について合理的な調査の義務を負い、そうした調査を怠った場合には、利益相反事由を知らなかったことにより開示義務を免除されるものではないこと、
本件付属文書に類する事前通告や事前免除によっては、仲裁人の開示義務は免除されないこと
を定めている。

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2017年4月 2日 (日)

「パフォーマンスの精神」

道徳は、どのような意味であっても、熱心な勧め、説教あるいは良い意思であってはならない。それは実践でなくてはならない。

特に:
1.組織はパフォーマンスにフォーカスしなくてはならない。パフォーマンスの精神の第1の要請は、各人とグループにとっての、高いパフォーマンス基準である。
2.組織は問題ではなく機会にフォーカスしなくてはならない。
3.人々に影響する意思決定(=配置、賃金、昇進、降格及び解雇)は組織の価値と信念を表さなくてはならない。
4.最後に、人々についての意思決定において、マネジメントは、誠実さ(integrity)はマネジャーの絶対的な必要条件であり、持ち合わせていなくてはならない資質であり、あとで獲得することを期待できないものであることを示さなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 3 April.

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2017年4月 1日 (土)

建物の一部の無断転貸人の転借人に対する、共用部分を適切に維持管理して使用させる義務(肯定)

東京高裁H27.5.27      
 
<事案>
Yは、本件ビルの所有者であるAから本件建物の一部を賃借していた者であるが、Xとの間でAらの承諾を得ないで転貸借契約を締結。 
その後、本件ビルの配水管のうち共用部分が詰まったために、本件建物の厨房の床の排水口から汚水が逆流して厨房が汚水で溢れるという事故が2回発生。
⇒Xは、Yに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求等を求める。
 
<争点>
無断転貸の場合に当該転貸人が転借人に対し、共用部分を適切に維持管理して使用させる契約上の義務を負うか? 
 
<原審>
YがXに対し、本件建物部分の使用収益義務を負っているとしても、その範囲は、Xが本件転貸借契約が無断であることを知っていたから、Aらに対し適切な情報提供を行い、Aらからその対応を求める程度のものにすぎず、本件ビルの所有者でないYが、本件ビル全体の配管について、Xのために自ら配管を清掃する義務も権限もない。
⇒債務不履行責任を否定。
 
<判断>
転貸がされたからには転貸人において貸主としての義務が当然に発生
転貸人には排水管の共用部分を適切に維持管理して転借人に使用させる契約上の義務が発生
転貸人において共用部分の維持管理を自ら行うことができないという事情をもって、貸主としての義務を軽減させるものではない
⇒債務不履行責任を肯定。
 
<解説>
本判決は、無断転貸の場合でも、転貸人が転借人に対して共用部分の維持管理をすべき義務があると認めたもの。

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「責任ある労働者」

しかし、全ての人が自身を「マネジャー」と見、基本的に経営的責任(自分自身の仕事とワークグループの責任、組織全体のパフォーマンスと結果への貢献の責任、ワークコミュニティの社会的仕事についての責任)の完全な重責を引き受ける組織を作り導く仕事がある。
責任は、したがって、外部と内部の双方である。外部的には、それは、誰かあるいは団体への責任を意味し、特定のパフォーマンスについての責任を意味する。内部的には、それはコミットメントを意味する。責任ある労働者は特定の結果に責任があるだけでなく、これらの結果を生み出すのに必要なことを行う権限を持ち、最終的に、個人的な達成としてこれらの結果にコミットする。

ソース:The Daily Drucker 2 April.

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