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2017年3月 7日 (火)

評価基準を定めた行政庁である総務大臣を被告のために参加させる旨の原告の申立が認容された事例

大阪地裁H26.1.27      
 
<事案>
大阪府堺市に家屋を所有するXは、堺市長によって決定され固定資産課税台帳に登録された右家屋の平成21年度及び平成24年度の価格を不服として、堺市固定資産評価審査委員会に対し、それぞれ審査の申出
⇒平成21年度の価格については一部しか変更されず、平成24年度の価格については審査請求を棄却する旨の決定⇒Xが適法と考える価格を超える部分の取消しを求める取消訴訟を提起。

Xが、行訴法23条に基づき、被告であるYのために総務大臣を訴訟参加させることを申し立てた事案。 
 
<規定>
行政事件訴訟法 第23条(行政庁の訴訟参加)
裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければならない。
3 第一項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第四十五条第一項及び第二項の規定を準用する。
 
<判断>
①地方税法は、固定資産課税台帳に登録すべき固定資産の価格を算定するための評価基準を総務大臣が定めることとし(388条1項)、固定資産の価格を決定するに当たっては、市町村長は、総務大臣が定める右評価基準に従わなければならないことを規定(403条1項)
②右取消訴訟において、Yは、右評価基準には一般的合理性があることを前提として、これに従って決定された価格は適正な時価であると推認されると主張
but
Yは、評価基準の基礎となる調査、検討資料等を保有しておらず、当該調査、検討に関する詳細な事情を明らかにすることはできないとする。

右評価基準を定めた行政庁である総務大臣をYのために右取消訴訟に参加させることが必要。 
 
<解説>
行訴法23条に基づく参加の必要性の要件の判断は、裁判所の裁量に委ねられていると解されている。
その判断は、本条の趣旨・目的に即してされるべきであって、当該行政庁を参加させることにより、①攻撃防御に関する資料が豊富になり、②訴訟の実質化が図られ、その結果、③適正な審理裁判を実現できるかどうかが重要であるとされる。
具体的には、係争の処分等についての当該行政庁の有効な知識、経験、資料の提供を得ることが審理上必要で、かつその見込みがあるかどうかという観点から判断されるべきである等との指摘。

行訴法は、訴訟資料等の充実という観点から、23条の行政庁の訴訟参加以外にも、釈明処分の権限を裁判所に認めている(23条の2)。
同条が予定する資料等の提出に限られない行政庁の知識、経験等を踏まえた審理判断が必要となる場合もある。

行訴訟23条1項の規定により行政庁を訴訟に参加させる決定に対しては、不服申し立てが許されないとされており(最高裁H6.12.16)、本決定によって行政庁には当然に補助参加人に準じる地位が与えられることになる(行訴訟23条3項、民訴法45条1項、2項)。

判例時報2316

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