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2017年3月16日 (木)

政務調査費の制度が設けられた後に、普通地方公共団体が地方議会の会派に補助金を交付することの可否

最高裁H28.6.28      
 
<事案>
平成14年から同18年までの間に、京都府が府議会の4つの会派に対し、会派運営費として補助金を交付

府内に主たる事務所を有する特定非営利活動法人であるXが、前記補助金の交付は違法であるから、四会派は府に対して補助金に相当する金員を不当利得として返還すべきであるのに、Y(京都府知事)がその返還請求を違法に怠っているなどとして、地自法242条の2第1項4号に基づき、四会派に対して不当利得の返還請求をするよう求める住民訴訟の事案。
 
<規定>
地方自治法 第242条の2(住民訴訟)
普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求

地方自治法 第232条の2(寄附又は補助)
普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
 
<判断>
普通地方公共団体は、平成12年改正により政務調査費の制度が設けられた後においても、地方議会の会派に対し、政務調査費の対象経費とされた「調査研究に資するため必要な経費」以外の経費を対象として、地方自治法232条の2に基づき、補助金を交付することができる

原判決のうち上告人敗訴部分を破棄し、その余の点について審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻した。 
 
<解説>
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の施行により、地方公共団体の自己決定権や自己責任が拡大し、その議会の担う役割がますます重要なものとなってきている
平成12年改正により設けられた政務調査費の制度は、議会の審議能力を強化し、議員の調査研究活動の基礎の充実を図るため、議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し、併せてその使途の透明性を確保しようとしたもの。

①従前、会派に交付されていた補助金のうち、「調査研究に資するため必要な経費」について、以後はこれを政務調査費という新たな法制度に基づいて交付することができるものとし、②その交付の対象、額等については条例で定めなければならないとするとともに、③その使途の透明性の確保のための定めを置いたところに意義がある。

平成12年改正の際、その余の経費に対する補助の可否については、これを禁止する旨の規定が設けられることはなく、立法過程においてそのようんな補助を禁止すべきものとする旨の特段の検討がされた形跡もうかがわれない。

平成12年改正後において、普通地方公共団体が、会派に対し、政務調査費の対象とされた「調査研究に資するため必要な経費」を交付するためには、政務調査費の交付の対象、額等について定めた条例に基づいて行う必要が生じ、従前のようにこれを地自法232条の2に基づく補助金として交付することは許容されなくなった
but
その余の経費については、これを対象とする補助金の交付が一律に禁止されたものとは解されないのであり、そのよな補助金交付の可否については、従前と同様に、当該補助金の交付が同法232条の2の要件を充たすか否かにより決せられるべき。

判例時報2317

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