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2017年3月11日 (土)

不動産の処分禁止の仮処分に対する保全異議が認められた事例

前橋地裁H28.4.25      
 
<事案>
不動産について、債権者が申し立て、発令された処分禁止の仮処分について、債務者が保全異議を申し立てた事案 。
債権者は、本件不動産について、債務者に対する所有権に基づく所有権移転登記手続請求権を有すると主張し、処分禁止の仮処分を申し立て、同申立ては認容された(基本事件)。
その後、債権者は、債務者に対し、本件不動産につき、所有権に基づく所有権移転登記手続を求める訴訟を提起し(本案事件)、本案事件係属中に、仮に債権者が所有権を喪失したとしても、債務者に対する物権変動的登記手続請求権を有する旨の予備的請求を追加

本案係属中に、債務者から、基本事件について、保全異議の申立てがなされた(本件)。

本件不動産を所有していたAは、平成26年3月、債務者との間で、本件不動産について、委託者をA、受託者を債務者、受益者をBとする信託譲渡の合意(本件合意)をし(債務者は、本件合意は、信託契約ではなく、売買契約であると主張)、本件合意に基づき、本件不動産について、従前の受託者であったCから債務者に対する所有権移転登記及び信託内容に係る登記がなされた。
その後、A及びBは、平成26年11月、債務者を解任して債権者を受託者として選任する旨合意し、債権者が受託者に就任。平成28年1月には、債権者を解任して債務者を受託者として選任する旨合意し、債務者が受託者に就任
 
<問題点>
本件合意が売買契約である場合はもとより、信託契約であったとしても、平成28年1月になされた受託者変更により、債権者は所有権を喪失⇒所有権に基づく主張は維持できなくなる。 
⇒債権者は、本案事件において予備的請求を追加するとともに、本件においても同旨の主張を行い、基本事件に係る決定が維持されるべき旨を主張した。
保全異議審において、申立ての趣旨の変更を伴わない被保全権利及び保全の必要性についての主張の変更は、請求の基礎の同一性が認められるかぎり許されるとするのが一般)

この場合においては、所有権は、A→債務者→債権者→債務者と移転したことになるが、所有権移転登記はAから債務者に移転したままであって、いわゆる中間省略登記がなされた場合と類似の状態。
このような事案で、物権変動的登記手続請求権を保全するために処分禁止の仮処分を発令すべきかが問題。
 
<規定>
民事保全法 第58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力) 
第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。
2 前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
 
<判断>
中間省略登記が現在の実態的権利関係に合致している場合には、その抹消を求める中間者において正当な利益を有することが必要(最高裁)
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これと類似の関係にある本件について、登記名義を中間者的立場にある債権者に移転すべき事情の主張及び疎明がない。 
抗告審で、債権者は、本件不動産の賃借人に対し、債権者が受託者としての地位を有する期間の賃料請求を行うために所有権移転登記を得る必要がある旨主張したが、排斥。
 
処分禁止の仮処分の効力は、当該仮処分の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限について、抵触の限度においてこれを対抗することができないとすることにある
仮に債権者が物権変動的登記手続請求権を有するとしても、所有権者がこれを処分することを妨げることはできない
原決定後に仮処分に反して転得者が表れたとしても、債権者はいわゆる前々主に過ぎず、登記の欠缺を主張する正当な利益を有することにはならない
前記転得者は、債権者に対し、その登記及び仮処分の有無にかかわらず所有権取得を主張できる。 

民保法58条2項との関係においても、転得者が現れた場合に債権者が対抗要件に立たない⇒処分禁止の仮処分によって権利保全が図られる関係にない⇒保全の必要性の疎明なし。
 
●基本事件に係る決定後の事由に基づく保全異議の当否についても問題となったが、保全取消事由を保全異議手続において主張することは許される(通説)として、本決定も同旨の判断。 

判例時報2316

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