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2017年3月26日 (日)

暴力団組長の出資法の上限を超える利息の受領が不法行為とされ、上位組織の長の使用者責任が肯定された事例

大阪地裁H28.5.27      
 
<事案>
指定暴力団A組の二次組織であるB組の長であったY1が、訴外Cに対して出資法の上限金利を超える利息の約定を伴う金銭の各貸付けを行うに当たり、その各債務についてXに連帯保証させた上、Xに対しても出資法の上限金利を超える利息の約定を伴う貸付けを行い、その後、指定暴力団の威力を示して前記各契約に基づきXから利息を受領し、又はその支払を要求
⇒Xに対する不法行為に当たるとし、

Y1に対しては民法709条に基づき、
A組の組長であるY2に対しては暴対法31条の2又は民法715条1項に基づき、
XがY1に対して返済した金員相当額の損害賠償を請求。
 
<規定>
民法 第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

民法 第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

(威力利用資金獲得行為に係る損害賠償責任)
第三十一条の二   指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一   当該代表者等が当該代表者等以外の当該指定暴力団の指定暴力団員が行う威力利用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得ることがないとき。
二   当該威力利用資金獲得行為が、当該指定暴力団の指定暴力団員以外の者が専ら自己の利益を図る目的で当該指定暴力団員に対し強要したことによって行われたものであり、かつ、当該威力利用資金獲得行為が行われたことにつき当該代表者等に過失がないとき。

<判断>
●CとY1との各消費貸借契約、XとY1との各連帯保証契約及びXとY1との消費貸借契約の各締結の事実と、XがY1に対して支払った利息の合計額を認定。 

出資法が、同法の上限を超える利息の契約をしたり、同法が定める割合を超える受領したり、その支払を要求した者に対し、刑事罰をもって臨んでいる趣旨

同法の上限を超える利息の契約自体が公序良俗に反するものとして無効であるとの評価を受けるべきであるのみならず、
同契約に基づいて利息を受領したり、支払を要求するといった行為は、その行為の悪性が著しいということができ、これによって第三者に損害を与えた場合には、当該行為自体が違法なものとなる。

本件において、
CとY1との各消費貸借契約及びXとY1との消費貸借の利息の約定は月1割(1日当たり約0.35%)とう出資法の上限を超えるもの

①前記利息の約定は公序良俗に反して無効であり、
②Y1がXから受領した利息の額は借入れ元本を大幅に上回るもので、Y1が利息を受領することによってXに損害を与えたことは明らか

Y1がXから出資法の上限を超える利息を受領した行為は、Xに対する違法な行為として不法行為を構成
 
●Y2の使用者責任について
暴力団の共通した性格が、その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得行為を行わせて利益獲得を追及することにある
②暴力団の組員は擬制的血縁関係に基づく全人格的包括的な服従統制下に置かれている
③A組はY2を頂点とするピラミッド型の階層的組織を形成しており、Y1が組長を務めるB組はA組の二次組織(直系団体)であった
A組下部組織に対して威力を利用して資金獲得活動をすることを容認する一方、その末端組織の構成員に至るまで、A組の総本部の指揮命令に従うものとされている
⑤ Y1は組員から毎月上納金を受け取っており、B組も毎月上納金を納めていた

A組はB組を服従統制下に置き、B組に対し、威力を利用して資金獲得活動を行って利益を追求することを容認して、そこから生じる収益を上納金という形でA組に取り込むという体制を構築。

Y2はA1にその直接間接の指揮監督の下に置き、A組の威力を利用して資金獲得活動に係る業務に従事させていたとして、Y2とY1は使用者と被用者の関係にあった。

貸金業法に違反して無登録で貸金業を営んだり、出資法に違反する高金利の貸付を行ったりすることは、暴力団の資金獲得行為、いわゆるシノギ行為の代表的な例⇒出資法に違反する高金利の貸付けや、その利息の受領やその支払の要求はB組の資金獲得行為の一環。

前記利息を受領した行為は、A組の威力を利用して行う資金獲得活動に係る事業の執行について行われたものといえる。 
Y2は、Y1の前記行為について、使用者責任を負う

●Xに生じた損害およびその額 
Y1からXに対して貸付けとして金員が交付されることによってXが得た利益は不法原因給付によって生じたもの

同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象としてXの損害額から控除することは民法708条の趣旨に反するものとして許されない

XがY1に対し弁済した全額が原告に生じた損害
 
<解説>
暴力団の組長の使用者責任については、最高裁H16.11.12がこれを肯定。 

判例時報2318

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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