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2017年3月24日 (金)

耐震改修の必要と借地借家法28条の正当事由(肯定)

東京地裁H28.3.18       
 
<事案>
建物賃貸借契約における賃貸人Xが、賃借人Yに対し、借地借家法28条に定める正当の事由があるとして、同契約の更新を拒絶する旨の通知をし、所定の賃貸借期間の満了をもって同契約が終了したと主張して、終了による目的物請求権に基づき、建物の明渡しを求めるとともに、賃貸借期間の満了日の翌日から同建物部分の明渡済みまでの賃料相当損害金の支払を求めた事案。 
Xは、正当事由を補完する財産上の給付として、2160万円、又は、裁判所が相当と認める額の支払を申し出ていた。

更新拒絶の通知の内容:
Xは、東京都の「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」(平成23年4月1日施行。以下「本件条例」という。)に基づいて、緊急輸送道路沿道建築物に該当する本件建物につき耐震診断を実施した。その診断の結果、本件建物は
現行の構造耐震指標を著しく下回る値の箇所が多く見られ、基準値を大幅に下回る建築物であると判明した。Xは、大地震の発生に備え、人命第一と考え、本件建物を解体することとし、よって、Yに対し、更新拒絶の通知をした。
 
<規定>
借地借家法 第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 
<争点>
正当事由の判断にあたり、本件条例に基づく耐震診断の結果、耐震性に問題ありと診断された本件建物につき、診断機関から立替えを強く推奨された場合に、これらの事情をどの程度考慮すべきか。 
 
<判断>
①Yの営業する本件建物部分に係る店舗は、長年の営業により、地元に根付き、幅広い年齢層の顧客が来店⇒Yにおける本件建物部分を使用する必要性は高い。
②本件建物の耐震性には問題があり、かつ、補強工事によって対応することも合理性を欠き、かつ現実的でない。
③本件建物部分における営業は、Yの顧客に対しても危険な面があり、Xは、本件建物につき、自らが使用する必要性はないとしても、建物の所有者及び賃貸人として、耐震性に問題のある建物をそのまま放置し、賃貸することは問題である。
Xにおいて、本件建物を取り壊そうとすることについては正当な理由がある

④立退料なくして正当事由が具備されるということはできない。

裁判所の相当と認める立退料を支払わせることにより、Xの更新拒絶には、正当事由が具備される。
立退料の金額は3000万円とすることが相当。
 
<解説>
従来の裁判例においても、除却や建替えの必要性・緊急性及び立退料の提供等を考慮しつつ、同条の枠組みに従った総合的な判断がなされている。 

判例時報2318

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