« 「イーコマース:挑戦」 | トップページ | 耐震改修の必要と借地借家法28条の正当事由(肯定) »

2017年3月23日 (木)

自分の逮捕歴に係る検索結果につき、「忘れられる権利」等に基づく削除請求が否定された事例

東京高裁H28.7.12      

<事案>
インターネット上でYが提供する検索サービスにおいて、Xの氏名等を検索すると、検索結果としてXの逮捕歴(約5年前の児童買春行為)を含む内容のものが複数表示される⇒Xが、民事保全法23条2項の仮の地位を定める仮処分として、前記検索結果の削除(非表示)を命じる仮処分の申立て。
 
<Xの主張>
Xは、抗告審において、被保全権利を「更生を妨げられない利益を人格権の1内容ととらえ、人格権に基づく妨害排除請求権としての差止請求権」としたうえで、さらに、人格権の内容として、「忘れられない権利」「名誉権」及び「プライバシー権」を挙げた。
 
<判断>
①名誉権ないしプライバシー権に基づく表現行為(出版等)の差止請求の可否や、前科に係る事実の公表の可否及びその要件について判断したこれまでの判例を踏まえ
②現代社会におけるインターネット及びそれにおける検索サービスの社会的意義や重要性(表現の自由や知る権利の保護等)を考慮し、
一定の場合には、名誉権ないしプライバシー権に基づき、個人の情報に係る検索結果がインターネット上で容易に閲覧できないようにする措置(削除措置ないし非表示措置)をい講じるよう検索サービス提供者に対して請求できる

その判断に当たっては、削除等を求める事項の性質(公共の利害に関わるものであるか否か等)、公表の目的及びその社会的意義、差止めを求める者の社会的地位や影響力、公表により差止請求者に生じる損害発生の明白性、インターネットの情報公表ないし伝達手段としての性格や重要性、更にはj検索サービスの重要性等も総合考慮して決するのが相当。

①Xの逮捕歴は、その犯罪の性質から公共性があり、処罰を受けてからの期間等を考慮してもそれは失われていない
②検索結果を非表示とすると、同一ウェブページ内にある、本件と関係のない種々の事実や意見の閲覧も極めて困難となり、多数の者の表現の自由及び知る権利が侵害される
③削除しないことにより、Xに社会生活上又は私生活上の受忍限度を超える重大な支障が直ちに生じるとは認められない

被保全権利及び保全の必要性の疎明がないとして、原決定を取り消し仮処分命令の申立てを却下

①Xが主張した「忘れられる権利」については、それが法律で定められたものではなく、その要件及び効果も明確でない
②その実体は、人格権としての名誉権ないしプライバシー権に基づく侵害行為の差止請求と異ならない
⇒独立して判断する必要はない。
 
<解説>
●忘れられる権利について 
「忘れられる権利」は、平成26年5月13日付け欧州連合司法裁判所の先行判決により大きく注目を浴びるようになった。
~自己の所有不動産の競売に関する新聞公告が検索結果として表示されることについて、グーグル・インク等に対して、当該検索結果の削除を請求し、認容された。

平成28年4月に欧州議会本会議により可決されたEU一般データ保護規則(施行は平成30年5月)では、「忘れられる権利」が定められている。

グーグル・インクは、前記先行判決を受けて、EU域内のドメインに限って、検察結果からの削除要請を受け付けており、平成28年5月時点で削除に応じた割合は、URLの数ベースで約43パーセントと発表。

● 日本でも、大手プロバイダが、検索サービスにおける検索結果の削除について対応方針を検討。

● どのような場合に削除が認められるかは、
削除を求める情報の属性(公共性のある事項か、私人の住所等専ら私的な事項であるか(時の経過により公共性が失われる場合もある))
削除を求める者の属性(公職者か、あるいは社会的地位・影響力のある者か等)
削除を求める者が被る虞のある不利益の重大性等
も考慮。 

本件は、Xの逮捕歴に係る犯罪の性質から、削除請求が認められにくい事案の一つ。

判例時報2318

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
 

|

« 「イーコマース:挑戦」 | トップページ | 耐震改修の必要と借地借家法28条の正当事由(肯定) »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/65057340

この記事へのトラックバック一覧です: 自分の逮捕歴に係る検索結果につき、「忘れられる権利」等に基づく削除請求が否定された事例:

« 「イーコマース:挑戦」 | トップページ | 耐震改修の必要と借地借家法28条の正当事由(肯定) »