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2017年3月28日 (火)

フランス民法上の急速審理命令により不分割共同財産の管理人として指名されたピカソの相続人1人による著作権侵害の主張(肯定)

知財高裁H28.6.22      
 
<事案>
フランス共和国法人の著作権管理団体である原告協会、及び、亡パブロ・ピカソの子どもの1人である原告X1が、主催するオークション用に、原告協会の会員の作品やピカソ作品の写真を掲載したカタログを作成した被告に対し、著作権(複製権)侵害を理由に、不法行為に基づく損害賠償請求ないし悪意の場合の不当利得返還請求として、
①原告協会につき一部請求として8650万円及びこれに対する遅延損害金の支払を
②原告X1につき一部請求として850万円及びこれに対する遅延損害金の支払を、
それぞれ求めた事案。 
 
<原審>
原告らの請求につき、
原告協会について、4094万4350円の支払請求及びこれに対する附帯請求を
原告X1については、441万7000円の支払請求及びこれに対する附帯請求を認容
 
<争点>
①原告X1の原告適格の有無(フランス民法上認められている不分割共同財産制度の管理者として、パリ大審裁判所の急速審理命令によって、ピカソの著作権の管理者に指名された原告X1が、我が国において自己の名義で訴訟提起することの可否)
②フランスにおける著作権管理団体である原告協会に対する各会員の権利移転の有無(適用される準拠法のほか、入会時の一般規約において使用されている「apport」という用語の意義)
③ 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額(本件カタログ上、白黒以外の単色で印刷されている作品についての「モノクロ」該当性、証拠として提出されていないカタログへの掲載の認定の可否、事後的に作成された著作権管理料での損害額の認定の可否)
④利用許諾の有無(会員番号四の作品につき、被告への管理委託の有無)
⑤本件カタログへの写真掲載についての著作権法47条の「小冊子」該当性(観賞用の展示以外の目的での複製についての該当性)
⑥本件カタログへの写真掲載についての著作権法32条該当性(写真の掲載について、目的、方法等の点での公正な慣行への合致の有無、引用の目的の正当性)
⑦本件訴訟が権利濫用に該当するか(平成22年1月施行の著作権法改正により47条の2が新設された趣旨、譲渡の申出の際の複製が従前から適法であったことを確認されたものか)
 
<判断> 
●争点①
当事者適格の準拠法:
①手続法上の問題⇒法廷地である我が国の民訴法を準拠法をすべきであることを前提
②我が国の民訴法が、他人の権利や法律関係を訴訟で主張することを無制限に認めているわけではない
⇒訴訟担当の中でも、訴訟法自体が担当者の定めを規定している場合ではなく、担当者が実体法上の法律関係に基づいて、訴訟物の管理処分権等が認められる場合においては、法廷地法の視点から、当該者に管理処分権及び訴訟追行権限を認めてよいか否かという点を検討する上で、訴訟担当者と非担当者との関係を規律する当該実体法の内容を考慮すべき。

③本件は、訴訟担当者の訴訟追行権限が一定の実体法上の法律関係の存在を前提⇒当該法律関係の準拠実体法を参照することが求められる。
原告X1の訴訟追行権限は、フランス民法1873条の1に基づく権利不分割の合意を前提にした上で、管理者の選任について、フランス民法1873条の5第1項に規定する共同不分割権利者の合意が成立しなかったため、パリ大審裁判所の急速審理命令により、原告X1がピカソの相続人中の管理者として選任されたことに基づくもの。

①民訴法30条の選定当事者制度
②共有者の権利の内容(民法252条、249条)
③各共有者による共有物不分割の合意(民法256条1項ただし書)
④債権の合意による不可分(民法428条)
⑤相続財産の共有(民法898条)
⑥相続財産の保存に必要な処分についての相続財産管理人の選任(民法918条)などの条文等は、フランス民法に基づく権利不分割合意とその不分割財産の管理者に関する規定と同様の趣旨と解される

相続人間で不分割とすることを合意した財産のうち、準物権的な知的財産権について、裁判所により管理者に選任された相続人が、単独で訴訟を提起することは、我が国の法規とも合致
原告X1の訴訟追行権限を許容すべき合理的な必要性は、我が国の訴訟法の観点からも是認できる

外国裁判所の確定判決に関する効力(民訴法118条)という観点からも、
本件急速審理命令は、争訟性のある事件に関する判決には該当しない
⇒被告に対する送達(2号)及び相互保証(4号)の要件の具備は要しない。
 
●争点②
原告協会への入会に関して、著作権移転の原因となる債権行為については法の適用に関する通則法(「通則法」)7条により準拠法はフランス法
著作権の物権類似の支配関係の変動については、通則法13条により、準拠法は日本法

通則法 第7条(当事者による準拠法の選択) 
法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

通則法 第13条(物権及びその他の登記をすべき権利) 
動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。

原告協会への入会に関する一般規約の「apport」の意義について、団体への出資という形態をとっており、対外的には団体へ財産が移転するが、団体の加入者の間では内部的に条件や留保が付されている前提の文言として使用されていると解するのが相当。
会員から原告協会への著作権移転を認めた
 
●争点⑤
著作権法 第47条(美術の著作物等の展示に伴う複製)
美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。

本件カタログが
①本件オークションや下見会への参加の有無にかかわらず、被告の会員に配布するもの
②その主たる目的は、本件オークションにおける売買の対象作品を特定するとともに、作家名やロット番号以外からは直ちに認識できない作品の真贋、内容を通知し、配布を受けた者の入札への参加意思や入札額の決定に役立つようにする点にあり、観覧者のための著作物の解説又は紹介にない

著作権法47条にいう「小冊子」とは認められない
 
●争点⑥ 
著作権法 第32条(引用)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

①本件のカタログへの複製目的
②実際の本件カタログをみる限り、各頁に記載された写真の大きさが、ロット番号、作家名、作品名、予想落札価格、作品の情報等の記載の大きさを上回るものが多く、掲載された写真は、独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさといえ、前記の情報等の掲載に主眼が置かれているとは解し難い
③本件オークションでは、本件カタログの配布とは別に、出品された美術作品を確認できる下見会が行われており、前記の情報などと合わせて、美術作品の写真を本件カタログに記載された程度の大きさで掲載する合理的な必然性は見いだせない

社会通念上合理的な引用とは認められない

判例時報2318

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