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2017年3月26日 (日)

脳梗塞に罹患した患者に対する医師の検査義務違反(肯定)

大阪地裁H28.3.8      
 
<事案>
脳梗塞に罹患した患者に対する医師の診断義務違反又は検査義務違反があるか否か、患者の適切な医療を受ける期待権が侵害されたか否かが問題となった事案。 

Xは、平成12年、16年の2度にわたって右脳梗塞を発症。
平成22年11月2日、路上で転倒し、Y病院に救急搬送
Y病院に入院中の11月13日午後3時20分頃、左脳梗塞を発症
同日(13日)午後6時57分、頭部CT検査を受け、事後的にみれば、同検査のCT画像には左側頭葉に脳梗塞のアーリーCTサイン(早期虚血性変化)とみられる低吸収域を呈する所見。
11月16日午前10時24分、頭部CT検査を受け、急性脳梗塞症と診断され、処方。
but
重度の失語症などの後遺症が残った。
 
<請求>
Xは、後遺症の原因は、Y病院の主治医であるA医師が、XのCT検査画像等から脳梗塞を診断し又はそのための検査を行うべき義務に違反したと主張し、Y病院に対し、
主位的に診療契約の債務不履行に基づき、
予備的に適切な診療行為を受ける期待権を侵害されたとして不法行為(医療法68条前段、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条)に基づき
各500万円の損害賠償請求訴訟。 
 
<規定>
医療法 第68条〔一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の準用〕
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条、第七十八条、第百五十八条及び第百六十四条並びに会社法第六百六十二条、第六百六十四条、第八百六十八条第一項、第八百七十一条、第八百七十四条(第一号に係る部分に限る。)、第八百七十五条及び第八百七十六条の規定は、医療法人について準用する。この場合において、同法第六百六十四条中「社員に分配する」とあるのは、「残余財産の帰属すべき者又は国庫に帰属させる」と読み替えるものとする。

一般社団法人法 第78条(代表者の行為についての損害賠償責任)
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
 
<争点>
①頭部CT撮影後、読影に約1時間を要したとして13日午後8時頃にはXは脳梗塞に罹患していると読影できたのに、これを誤り脳梗塞と診断しなかったか否か
②検査義務違反の有無
③検査をしていれば、Xの本件後遺症を回避又は軽減できた相当程度の可能性があるのか否か
④期待権の侵害 
 
<判断>
●争点①について 
11月13日午後8時の時点で、Xの症状及びCT画像から、Xに新たな脳梗塞が発症したと診断するのは困難であった⇒診療義務違反を否定。
 
●争点②について 
11月13日午後8時時点でのXの症状は新たな脳梗塞を発症したものとみても矛盾しないものであり、本件CT画像も、読影時点を基準にしてもアーリーCTサインと疑う余地のあるものであった
②一般に脳梗塞には、早期に脳梗塞か否かを鑑別するための対応が必要
③脳梗塞の発症を鑑別するための更なる検査としては、MRI検査の拡散強調画像(DWI)撮影又は造影CT検査を行うことが有効とされ、Y病院でこれらの検査を行うことは可能であったと認められ、それらの検査をすればXが脳梗塞を発症していたと診断することができた

A医師には検査をしなかった義務違反がある
 
●争点③について 
鑑定を引用しつつ、適切な薬を使用すれば、Xの神経症状が改善した可能性が高かった。⇒検査義務違反と後遺症との相当因果関係を肯定
 
●争点④について
期待権侵害(=患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に、医師が、患者に対して、適切な医療行為を受ける期待権の侵害を理由とする不法行為)が認められるためには、当該医療行為が著しく不適切なものであることが必要
②本件医療行為は著しく不適切と評価できない。


Xの請求を150万円の限度で認容

判例時報2318

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

 

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