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2017年3月25日 (土)

詐欺商法業者に用いられた銀行口座開設の手伝いの内職について、過失を認め、損害賠償責任を肯定した事例

東京地裁H28.3.23      
 
<事案>
原告Xは、詐欺商法を行う事業者Aが行った詐欺商法(いわゆるロト6詐欺)につき、Xが会員登録料や情報料として振り込みをした銀行口座の名義人であるY1~Y10に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。 
 
<争点>
①Y1らの内職における郵便物の転送や、Aへの本人確認書類の提出が、Aの詐欺商法への幇助行為にあたり、かつ過失があるか
②Y1らの幇助行為は共同不法行為を成立させるものか
③Xの振込みは、Aの不法行為に関与するものであり、不法原因給付を成立させるか
④Aの関係者の言動に基づくXの一連の振込み等が、過失相殺の対象となるか 
 
<判断>
●争点①について
①本件詐欺は、訴外Aらによる欺罔行為に基づいてXがY1ら口座に振り込むことにより成立であり、被告らの口座の存在は本件詐欺の成立に不可欠のもの
②Y1らの内職における郵便物の転送や本人確認書類のAへの提出や郵便物の転送等の行為について、本人確認書類等を第三者に提供することにより第三者によるY1ら名義の銀行口座開設手続を可能とさせ、送付された書類を転送することにより金融機関が第三者による口座開設を避けるため、名義人本人へキャッシュカードを郵送することを無意味なものとして、第三者がY1ら名義の口座を開設することを可能にさせる
本件詐欺の幇助行為に該当する。

Yらの過失について
①Y1らは、内職として郵便物の転送を行っており、Y1及びY3は郵便物が銀行口座に関するものであることに気付いて以降、転送を中止⇒Aによる銀行口座の開設行為を幇助しているという認識はなかった
but
②本人の押印を必要とする郵便物を転送していたことは、依頼者が自分の住所を使用できないことを意味し、転送の報酬が作業に比して相当高額
Y1らは、自らの行為が何らかの違法行為に使われている可能性が高いことを容易に知り得た
それにもかかわらず、報酬を得るために転送を続け、その結果としてY1ら名義の預金口座が開設され、それが本件詐欺の用に供された
⇒Y1らには過失がある

Y6及びY7について、
本人名義の本人確認書類により銀行口座が作成され、この口座がAの詐欺商法において用いられた
⇒Aの詐欺行為を幇助したことについて過失あり。

Y9については、
Y1らの内職の応募とは異なり、ある団体の設立にあたり、Aと関係性のあるBの強い要請に基づいて、その団体のための銀行口座を作成し最終的に通帳を送付
~Y9の通帳交付は、やや軽率なものとしても、過失にはあたらない。

●争点②について
Aによる本件詐欺は、Xの各振込みについて個々に見れば、各振込み毎に完結
個々の被告らの過失による幇助は、被告らの個々の口座が用いられた振込みの限度でAの行為と関連共同性を有するにとどまり、本件詐欺の全体について共同行為が成立するものと認めることはできない

●争点③について 
Xの振込みの不法性は、欺罔行為を行ったAの不法性と比較して「極めて弱い」
⇒Xの振込みは不法原因給付ではない。

●争点③について 
XのAの関係者の言動を漫然と受けいれた振込みを続けたことに関し、Xの過失は相当に大きいと評価せざるを得ない。
Y1の過失を考慮し5割を過失相殺。
Y2、Y3及びY8とXとの関係では、Xは消費者金融からの借入れまでして振り込んでいることからその過失は大きく、それに対してY2らの過失は相対的に小さい
⇒7割を過失相殺。
Y10及びY11に関しては口座作成の関与が不明⇒過失相殺できない。
 
<解説>
●争点①について
本人確認書類の扱いは、振り込め詐欺等の悪質詐欺商法が問題となっている社会情勢を踏まえて慎重にならなければならず
本件のように、何らかの違法行為に用いられる危険性を認識しうる場合には、第三者に本人確認書類を提供するか否かは慎重に判断されるべき

にもかかわらず第三者の求めに応じて提出してしまった場合には、過失が認められ得る。
尚、運転免許証の写しを渡した者の責任。
 
●争点②について 
本件判断の②の判断は事態適合的。
but
①どの銀行口座にどれだけの金額が振り込まれるのかは、詐欺商法を行う者の被害者への指示という偶然に左右される
②銀行口座名義者らの行為は詐欺商法の一環として行われ、口座が複数あることで、詐欺商法がより容易になっている
③口座名義人が直接的に被害者を加害するものではない
④詐欺商法を行う者が所在不明となること
⑤詐欺商法において複数の銀行口座が利用される場合には前記の特徴や機能がある

銀行口座名義人同士の共同不法行為の成否、関連共同性の有無、連帯の範囲に関して、判断基準を明確にしていく必要
 
●争点④について 
①Y1らは直接に加害行為を行っていない
②いずれの銀行口座に振り込まれるかは、Aに左右される
⇒Y1等の間で過失割合に差をもうけることは適切かが問題。

直接の詐欺商法を行ったのはAとしても、Y1らの行為はこの一環としてなされている
被害者と銀行口座提供者の過失相殺においても、事情によっては銀行口座提供者と詐欺商法を行った者との関連性に基づいて後者の故意が考慮されるべき場合もある

判例時報2318

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