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2017年2月28日 (火)

自筆証書遺言として有効か?

東京地裁H28.3.25      
 
<事案>
遺言者Aの孫にあたるXが、遺言者の法定相続人であるYらに対し、家庭裁判所において検認されたAの自筆証書遺言(本件遺言)が有効であることの確認を求めた事案。 

ステープラーで留められた2枚の書面(本件書面)と封筒(本件封筒)からなる。
①本件書面の文言上、日付と遺言者の署名はあるものの押印を欠いていたが、1枚目の裏面と2枚目の表面にまたがり遺言者の実印が押捺(契印)されていた
本件書面は無地の本件封筒に入れられ、その綴じ目には「〆」の文字と共に遺言者の実印と矛盾しない印が押捺
③家庭裁判所による検認時には封がされていない状態
 
<規定>
民法 第968条(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これにを押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
 
<解説>
民法968条1項が自筆証書遺言の方式として自書のほかに署名押印を要する趣旨について、
最高裁H1.2.16:
遺言全文の自書と相まって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書について作成者が署名しその下に押印することで文書の作成を完結させるという、我が国の慣行ないし法意識に照らして、文書の完成を担保するところにある。

最高裁H6.6.24:
遺言書本文に遺言者の押印を欠いていても、封筒の綴じ目にされた押印をもって民法所定の押印要件に欠けるところはない。

文書の完成を担保するとの趣旨を損なわない限り、押印の位置は必ずしも署名下であることを要しないとしたもの。

東京高裁H18.10.25:
遺言書本文に押印のない事案において、押印のある封筒と遺言書との一体性が認められない⇒民法所定の要件を満たさないとして遺言無効。
 
<判断>
検認当時において本件封筒に封がされていなかった本件遺言と本件封筒が一体のものであるとは認められない⇒これにより民法所定の押印の要件を満たすとはいえない。
 
1枚目の裏面と2枚目の表面にまたがり遺言者の実印が押捺(契印)されていた事実をもって、本件遺言は自筆証書遺言として有効であるとして、Xの請求を認容。 
①契印は、重要な書類を作成する場合において、その一体性を確保し、後日の差し替え等を防止するために行われる
契印が押捺されるのは、複数枚の書類を記入し終えた段階において、書類を綴じ合わせるのと同時に行われるのが一般的

Aは、本件書面を作成する最後に、その重要性を認識しながら、書面を完成させる目的で契印をしたと認めるのが相当であり、民法が自筆証書遺言に諸ン名押印を求める趣旨を損なうものではない。

民法968条1項所定の方式に欠けるところはなく、自筆証書遺言として有効。
 
<解説>
●本判決は、契印という形で押印がなされている以上、Aにおいて、本件遺言を完成させる意思を有していたことが十分に担保されていたと認められれば、民法所定の形式を満たすとの判断
 
最高裁H28.6.3:
花押を書くことは民法968条1項所定の要件を満たさない。
←我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるとう慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。

民法所定の要件を満たすためには、当事者が当該行為(花押)により文書を完成させる意思を有していたのみでは足らず、そのような慣行ないし法意識が存在することが必要

●遺言書有効確認訴訟 
遺言が有効であると主張する原告が、直接その遺言に基づく給付の訴えを提起して、遺言内容の実現を図ることが可能⇒確認の利益の有無が問題。
but
本件の場合、
①本件遺言は、相続人である被告1名の遺留分を侵害して原告に対し遺贈する内容
②本件遺言の有効無効が確定した後にその判断に従った遺産分割協議を行う意思を当事者らが有していた
⇒確認の利益の存在につき異論なし。

判例時報2315

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