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2017年2月19日 (日)

ソーシャルアプリケーションゲームと職務著作・映画の著作物

東京地裁H28.2.25      
 
<事案>
「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲームについて、職務著作の成否や「映画の著作物」該当性等が問題となった事例。

開発に関与した原告は、本件ゲームをインターネット上で配信する被告に対し、
①主位的に、原告は本件ゲームの共同著作者の一人であって、同ゲームの著作権を共有するから、同ゲームから発生した収益の一部の支払を受ける権利がある
②予備的に、仮に原告が本件ゲームの共同著作者の一人でないとしても、原被告間において報酬に関する合意があり、
仮に合意がないとしても、原告には商法512条に基づく報酬を受ける権利がある旨主張し、
著作権に基づく収益金分配請求権(主位的請求)ないし報酬合意等による報酬請求(予備的請求)をした。

被告:本件ゲームは、被告における職務著作であり、また、映画の著作物に該当
⇒いずれにしても被告に著作権が帰属するなどと主張。
 
<規定>
著作権法 第15条(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

著作権法 第29条 
映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。

著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
 
<判断>
●著作権法15条1項所定の職務著作 
本件ゲームの開発に関与していた時点では被告会社に雇用されておらず、同開発がほぼ終了した後に同社の取締役に就任
but
①原告は本件ゲームの開発期間中にはタイムカードで勤怠管理をされ、
②被告のオフィス内で被告の備品を用い、
③被告代表者の支持に従って開発しておいり、
④原被被告間において当然に報酬の合意があったとみるべきこと
⑤当初から原告が被告の取締役等に就任することが予定されていたこと等

原告は「法人等の業務に従事する者」である。
他の要件も満たす⇒職務著作の成立を肯定。
 
●著作権法29条1項所定の映画の著作物
①本件ゲームは、音声はないものの、利用者から人気の高い戦闘場面等において動画的な画像を多く用いており、「映画の効果に類似する視覚的効果」、すなわち「目の残像現象を利用して動きのある画像として見せる効果」がある
②著作権法2条3項所定の他の要件も満たす
映画の著作物に該当

①被告代表者が原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘し、原告もこれに応じて別の会社を退社した上で同ゲーム開発に関与
②被告代表者が新会社(被告)を設立した上で、原告や被告の従業員とともに本件ゲーム制作を行った
③本件ゲームが被告名義で配信され、原告が被告を退社した後も被告名義で運営されている

本件ゲームの製作に発意と責任を有する者は被告であり、被告が「映画製作者」

①「参加約束」については、「著作者が、映画製作に参加することとなった段階で、映画製作者に対し、映画製作への参加意思を表示し、映画製作者がこれを承認したこと」を意味する。
②原告は、映画製作者である被告の代表者から本件ゲーム開発に参加するよう勧誘され、これを了承して同ゲーム開発に協力してきた。
原告は被告に対して参加約束をした。

著作権法29条1項により、本件ゲームの著作権は映画製作者である被告に帰属することになる。
 
●原告が本件ゲーム開発に際して従事した作業時間や作業量からすれば、当然に当事者間で報酬合意があったとみるべき
⇒予備的請求のうち報酬合意に基づく請求を一部認容。 
 
<解説>
●著作権法15条の「法人等の業務に従事する者」について
最高裁H15.4.11:
法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、
法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、
法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかを、
業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべき。

●著作権法29条1項所定の映画の著作物について、
ゲームソフトが「映画の著作物」に該当するかについて、
先例が示した枠組み(=音声の有無にかかわらず、映像が動きをもって見えるという効果を生じさせることが「映画の著作物」たる必要的要件)を踏襲。
「映画製作者」は、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいうとされる(法2条1項10号)が、
より具体的には、法律上の権利義務が帰属する主体であって、経済的な収入・支出の主体となる者であるとされている。

判例時報2314

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