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2017年2月17日 (金)

ハンセン病患者の遺族による国賠請求(国の違法性を認定)

鳥取地裁H27.9.9       
 
<事案>
平成8年4月1日に廃止されたらい予防法11条の国立療養所に入所していなかったハンセン病元患者であるAの相続人Xが、国会議員、内閣、厚生大臣及び鳥取県知事は、平成8年まで非入所者及びその血族に対する偏見・差別を除去するために必要な行為をせず、また、これらの者は、非入所者及びその血族を援助する制度を創設・整備するために必要な行為をしなかったために、A及びXは精神的苦痛を受けたと主張
⇒Y1(国)びY2(県)に対し、国賠法に基づく損害賠償を請求。 
 
<主張>
国については、ハンセン病患者・元患者(A)及びその血族(X)に対する偏見・差別を除去する義務(偏見・差別除去義務)並びに非入所者及びその血族に対して在宅医療制度等の援助制度を創設・整備すべき義務(援助制度創設・整備義務)があるところ、
①国会議員の立法不作為
②内閣の法案不提出
③厚生大臣のらい予防法廃止前の隔離政策の不転換があり、
これらは偏見・差別除去義務違反及び援助制度創設・整備義務違反として国賠法上の違法行為に当たる。

県に対しては、
④国の負うべき損害賠償席についてにの国賠法3条1項にいう費用負担者としての責任を主張するほか、
⑤機関委任事務の一環としての隔離政策及び県自ら推進した「無らい県運動」により県がハンセン病患者に対する偏見・差別等を創出・助長・維持してきたとの主張を前提に、患者・元患者が地域社会で生活することは公衆衛生上問題ないことを一般に周知徹底すべき義務及び患者・元患者が適切な治療・介護を受けることができるための医療体制・福祉体制を整備した上でその情報を周知する義務、患者・元患者の血族(X)についてはさらに、血族に対する相談体制を整備・充実させるべき義務(いずれも条理上の義務)を怠ったと主張。
 
<判断>
●Aの国に対する主張について
①同隔離規定による隔離及び患者の意思に反して強制的に療養所に収容される可能性があったことは、対象となる患者にとって人生選択の、ひいては人格の形成・発展の可能性を著しく制約するものであり、
②このような規定とその運用がもたらす事態

それは単に居住・移転の自由の制限というにとどまらず、憲法13条に含意されるところの、人格権の直接的な制約にわたるものとも評価することができる。

同隔離規定による対象者の権利・自由の制約が憲法に適合的であるためには、らい予防法の目的(ハンセン病の伝染予防)自体に十分な合理性が備わっていることを前提に、当該目的達成の手段として隔離以外に適当な方法がなく、かつ、いったん感染した場合には適切な治療法が存在しないという事情が認められる必要がある。

遅くとも昭和35年以降、すべてのハンセン病患者との関係で、伝染予防のための隔離の必要不可欠性はまったく失われており、同隔離規定の違憲性は明白

国会議員が平成8年に至るまでらい予防法の隔離規定を廃止しなかったこと(偏見・差別除去義務に関連する主張)について:
国会議員の立法不作為について、遅くとも昭和40年以降平成8年に至るまで、国会議員が意見な規定であることが明白な同隔離規定を改廃する法律を制定することを怠ったことは、入所者のみならずAを含む非入所者との関係においても国賠法1条1項の適用上違法と評価されるべきであり、この点に関する国会議員の過失も認められる

厚生大臣の政策不転換の主張について:
①遅くとも昭和35年の時点で、厚生大臣は隔離政策の抜本的な変換をする必要があったのであり、少なくとも新たにハンセン病患者を収容することをやめると共に、すべての入所者に対し自由に退所できることを明らかにする相当な措置を採るべきであった
②厚生大臣は、隔離政策の一環として、療養所外でのハンセン病医療を妨げる制度的欠陥を取り除くための相当な措置を採るべきであった
③ハンセン病患者が一般社会で生活しても公衆衛生上問題とならないことを社会一般に認識可能な形で明らかにするなど、社会内の偏見・差別を除去するための相当な措置を採るべきであった

これらの措置を採ることなく、らい予防法6条、15条の下で隔離を継続し、また、ハンセン病が恐ろしい伝染病であり患者は隔離されるべき危険な存在であるとの社会認識を放置

厚生大臣の公権力たる職務行為に国賠法1条2項の違法性(偏見・差別除去義務違反)があったと認めるのが相当

厚生大臣の過失あり。

Aの相続人であるXは、平成14年1月28日ころに、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会との間で、国が非入所者との関係で隔離政策が違法であることを認めたものと評価することができる基本合意書に従った合意をしたことを認識したところ、それから3年以上経過した平成22年4月19日に本件訴訟を提起。

訴え提起時点で民法724条に基づく消滅時効期間は経過
国は消滅時効を援用する旨の意思表示。

国家賠償請求権は消滅時効により消滅。
 
●Xの国に対する主張について
Xは、少なくとも平成9年にAの診療録が開示されるまではAがハンセン病に罹患していたと認識するまでには至っておらず、らい予防法廃止以前においてAの罹患の事実を認識していなかった。

ハンセン病患者の子であるという認識のないXがハンセン病患者の子であることを隠しながら生活を送ることを強いられることにより生活上の様々な不利益を被ったということはできない(=具体的損害を認めることはできない)

判例時報2314

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