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2017年2月10日 (金)

他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権の可能性を認めた裁判例

大阪地裁H28.2.8      
 
<事案>
ある者(Z)がインターネットの掲示板にプロフィール画像として原告(X)の写真を使ってX本人になりすまし、様々な発言を掲示板に投稿⇒Xが権利を侵害されたとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任法)4条1項に基づき、インターネットサービスを提供した被告(Y)に対し、Zの氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求めた事案。 
 
<争点>
プロバイダー責任法4条1項1号にいう「権利が侵害されたことが明らかであるとき」に該当するか? 
 
<主張>
Xは、名誉権、プライバシー権または肖像権、アイデンティティ権を侵害されたと主張。 
 
<解説>
●なりすましによる権利侵害 
他人のパスワードを利用してアクセスしたり他人のアカウントを乗っ取ったりした場合には不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)に違反。
but
本件のようななりすましは不正アクセス禁止法違反にはならない

名誉権侵害の証明は容易でない
←つぶやきのようなコメントは社会的評価の低下の判断が難しく、しかも本人になりすまして行った発言が本人の名誉を損なうのはどのような場合なのかがはっきりしない。

プライバシー権侵害の場合も多くない
←元々本人が使っていたSNSを利用するため、新たに本人のプライバシー情報が明らかになることが少ない。
 
●アイデンティティ権 
Xの主張:
アイデンティティ権とは「他者との関係において人格的同一性を保持する利益をいい、社会生活における人格的生存に不可欠な権利であって、憲法13条後段の幸福追求権ないしは人格権から導き出される。」

裁判所:
なりすましによって本人以外の別人格が構成されて本人の言動であると他者に受け止められるほどに通用性を持ち、なりすまされた者が平穏な日常生活や社会生活を送ることが困難となるほどに精神的苦痛を受けたような場合には「他者との関係において人格的同一性を保持する利益」という意味でのアイデンティティ権が侵害されたということができる

人格的同一性を保持する権利としてアイデンティティ権を認めた。
vs.
アイデンティティ権の内容は自分に関する情報を利用されて勝手に自己に関するイメージを創出されないことを求めるに近く、それはプライバシー権または自己情報コントロール権でも対応できる
それでもあえてアイデンティティ権を創出するのであれば、それがなければ人格が維持できなくなるほどの侵害場面が存在しなければならないはず。

人格権に基づいて新たな権利を創出することは、名誉権やプライバシー権と同様、時に表現の自由と衝突する可能性がある。
たとえば、アイデンティティ権は著作権法が認める著作者人格権の同一性保持権(著作権法20条)に似ているが、同一性保持権はパロディ作品を認めないことがあり、表現の自由と対立関係に立つことがある。

判例時報2313

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