« 「継続と変化のバランス」 | トップページ | 「組織はコミュニティを動揺させる」 »

2017年2月 7日 (火)

新システムを開発・構築する業務委託契約での(契約上の付随義務としての)プロジェクトマネジメント義務違反(肯定)

東京地裁H28.4.28      
 
<事案>
本訴請求:
Y(ベンダー)との間でシステム開発に係る複数契約を締結したX(ユーザー)が、Yに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求、又は債務不履行解除に基づく原状回復請求として、18億113万4321円及びこれに対する遅延損害金(商事法定利率)の支払を請求

反訴請求:
Yが、Xに対し、前記システム開発に係る前記以外の契約に基づく委託料支払請求、又は商法512条に基づく相当報酬額支払請求として、2億3661万9422円及びこれに対する遅延損害金(商事法定利率)の請求
 
<規定> 
商法 第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる
 
<争点>
本訴請求:
①債務不履行に基づく損害賠償責任の有無
②本件各契約の債務不履行解除等の可否

反訴請求:
①未払委託料の有無
②商法512条に基づく相当報酬請求の可否 

債務不履行に基づく損害賠償請求について、Xが、
①本件システム開発において、Yは多数の不具合ないし瑕疵を発生させたとして契約上の債務の不完全履行を主張したほか、
②予備的に、契約上の付随義務違反としていわゆるプロジェクトマネジメント義務違反を主張。
 
<判断>

Yは、
システム開発の専門業者として、Xに対し、②本件提案書を提出し、③業務改革を早期に実現するためのアプローチ、組織、役割などについて体系化されたY独自の方法論、システムの企画から保守・運用までを8個のフェーズに分けたシステム開発工程、フェーズの目的及び主要成果物などの説明、また、④Yの業務改革プロジェクトの経験とノウハウを集約した化学産業向けシステム開発に適用するテンプレートの説明、⑤同テンプレートの想定業務プロセスに目標業務プロセスを合わせる形のシステム設計方法など説明した上で、Xとの間で本件基本契約を締結し、本件プロジェクトを遂行するための協働関係に入った。

Yは、自らが有する専門的知識と経験に基づき、本件システム開発に係る契約の付随義務として、本件システム開発に向けて有機的に組成された各個別契約書や本件提案書において自らが提示した開発手順や開発手法、作業工程等に従って自らなすべき作業を進めるとともに、それにとどまらず、本件プロジェクトのような、パッケージソフトを使用したERPシステム構築プロジェクトを遂行しそれを成功させる過程においてあり得る隘路やその突破方法に関する情報及びノウハウを有すべき者として、常に本件プロジェクト全体の進捗状況を把握し、開発作業を阻害する要因の発見に努め、これに適切に対処すべき義務を負う。

システム開発は開発業者と注文者とが協働して打ち合わせを重ね注文者の意向を踏まえながら進めるべきもの⇒Yは、注文者であるXの本件システム開発へのかかわりなどについても、適切に配慮し、パッケージソフトを使用したERPシステム構築プロジェクトについては初めての経験であって専門的知識を有しないXにおいて開発作業を阻害する要因が発生していることが窺われる場合には、そのような事態が本格化しないように予防し、本格化してしまった場合にはその対応策を積極的に提示する義務を負う。

具体的には、Yは、Xにおける意思決定が必要な事項や解決すべき必要がある懸案事項等の発生の徴候が認められた場合には、それが本格的なものとなる前に、その予防や回避について具体的にXに対して注意喚起をすべき。

懸案事項等が発生した場合は、それに対する具体的な対応策及びその実行期限を示し、対応がされない場合に生ずる支障、複数の選択肢から一つを選択すべき場合には、対応策の容易性などそれらの利害得失等を示した上で、必要な時期までにXにおいて対応することができるように導き、また、Xがシステム機能の追加や変更の要求等をした場合、当該要求が委託料や納入期限、他の機能の内容等に影響を及ぼすときにはXに対して適時にその利害得失等を具体的に説明し、要求の撤回、追加の委託料の負担や納入期限の延期等をも含め適切な判断をすることができるように配慮すべき


本件プロジェクトはそもそもSAPソフトウェアの導入に伴うXの業務改革プロジェクトで、フルオーダーメイドでソフトウェアを製作するのであれば、自社の業務フローを変えずにソフトウェアを業務フローに合わせることも可能であるところ、Xは、これを認識しつつも、敢て現行業務の標準化を推し進める契機とするために、既存ソフトウェアであるSAPソフトウェアを導入してXの既存業務フローを変える選択をし、いったんは確定した目標業務とシステム要件に基づく本件システムが構築された。しかし、Xは、X内部の現場ユーザーからの業務改革に対する強い反発を受けこれを抑えることができなくなったために、結局、Xにおいて本件プロジェクトを中止するという決断に至った。
このような経緯は、基本的にX内部の原因

結論として、本訴請求については、原告の請求額の3割相当が相当因果関係のある損害。 
 
<解説>
本判決は、いわゆるプロジェクトマネジメント義務を肯定。 
プロジェクトマネジメント義務は、本件のように債務不履行において問題とされているところ、契約に基づく債務不履行は当該具体の事案における契約当事者間の法律関係による⇒一般的抽象的に論じることができないものであり、具体的事案との見合いで論じる必要

本判決は、
①Yは、Xに対し、業務改革を早期に実現するためのアプローチなどについて体系化されたY独自の方法論や業務改革プロジェクトの経験とノウハウを集約したテンプレートを説明した上で、Xとの契約関係に入った。
②本件プロジェクトはそもそもパッケージソフトウェアを利用したXの業務改革プロジェクトであり、Xは、あえて現行業務の標準化を推し進める契機とするために、パッケージソフトウェアを利用したシステム構築を選択した
という前提事実の下で、Yが負うべき義務を措定し、債務不履行責任を一部肯定。

判例時報2313

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 「継続と変化のバランス」 | トップページ | 「組織はコミュニティを動揺させる」 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/64864620

この記事へのトラックバック一覧です: 新システムを開発・構築する業務委託契約での(契約上の付随義務としての)プロジェクトマネジメント義務違反(肯定):

« 「継続と変化のバランス」 | トップページ | 「組織はコミュニティを動揺させる」 »