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2017年2月 6日 (月)

死亡保険金受取人(=破産者)が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属

最高裁H28.4.28      
 
<事案>
保険契約者兼被保険者である者が、第三者のための生命保険契約を締結していたところ、その保険金受取人につき破産手続開始の決定がされた後に保険事故(=被保険者の死亡)が発生した場合の死亡保険金(請求権)が破産者たる保険金受取人とその破産財団のいずれに帰属するかが争われた事案。

平成24年3月、Y1とA(Y1の配偶者)について破産手続開始決定。
Y1(破産者)は、平成24年5月上旬、死亡共済金及び死亡保険金の各請求手続をして、同月下旬に合計2400万円を受け取り、このうち1000万円(「本件金員」)を費消し、同年9月、残金1400万円をX1の預り金口座に振込送金。
本件金員のうち800万円は、同年6月からY1の代理人となった弁護士であるY2の助言に基づいて費消された。
 
<請求>
X1・X2(破産管財人)が、
①本件保険金等請求権がY1又はAの各破産財団に属するにもかかわらず、Y1が本件金員を費消したことは、Y1において本件金員を法律上の原因なくして利得するもの。
②Y2にはY1が本件金員を費消したことにつき弁護士として注意義務違反がある。

Y1に対しては不当利得返還請求に基づき、
Y2に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、
X1において800万円及び遅延損害金等の連帯支払を、X2において200万円及び遅延損害金等の連帯支払を求めるもの。

反訴:
Y1が、本件保険金等請求権がY1の破産財団に属しないにもかかわらず、X1が法律上の原因なくその一部である1400万円を利得していると主張⇒X1に対し、不当利得返還請求権に基づき、1400万円及び遅延損害金の支払を求めるもの。
 
<規定>
破産法 第34条(破産財団の範囲) 
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
.2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
 
<原審>
本件保険金等請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、本件各破産財団に属する。

①Y1が本件金員を費消したことは、Y1において本件金員を法律上の減員なくして利得するもの
②Y1が本件金員のうち800万円を費消したことについて、Y2に弁護士としての注意義務違反が認められる

X1・X2の本訴請求のうちY1に対する請求を認容するとともにY2に対する請求を一部認容。
 
<判断>
上告審として受理した上、Y1・X2の上告を棄却。 
 
<解説> 
●保険契約の成立後、保険事故が発生する前に保険金受取人について破産手続開始の決定⇒当該保険契約に基づく保険金請求権が破産法34条2項にいう「将来の請求権」として、破産財団に属するか?

A:保険契約成立説:
保険契約の成立とともに保険事故等保険契約の定める保険金支払事由の発生を停止条件とする債権(抽象的保険金請求権)が発生し、これが破産法34条2項にいう「将来の請求権」に該当
破産手続開始の決定前に保険契約が成立していれば、破産者たる保険金受取人の有する保険金請求権はその破産財団に属する

B:保険事故発生説:
b1:そもそも抽象的保険金請求権の発生を認めないか、又は、
b2:そのような請求権の発生自体は認めても、破産法34条2項にいう「将来の請求権」には該当しない
⇒保険事故の発生により具体化した保険金請求権は、その保険事故が破産手続開始の決定前に発生していない限り、破産者たる保険金受取人の自由財産(新得財産)になる。

通説・執行実務:
本件契約の成立とともに抽象的保険金請求権が発生し、同請求件は処分可能であり、かつ、差押えの対象にもなる

最高裁昭和40.2.2:
第三者のための保険契約の死亡保険金請求権について、保険契約の効力の発生と同時に保険金受取人が自己の固有の権利として原始的に取得し、保険契約者兼被保険者の遺産より離脱しているものと解している。

抽象的保険金請求権の発生それ自体は肯定

抽象的保険請求権の破産財団帰属性を肯定した上で、個々の破産事件において財団放棄又は自由財産の拡張等の判断をする際の考慮事情の中に、保険契約の性質、内容、保険金額、保険金請求権の具体化の可能性等といったものを含めるといった破産手続の運用によって対応するのが理論的にも無理がなく、実務的にも相当。
 
●損害保険に係る保険金請求権(なお、損害保険の1つである責任保険(保険法17条2項)の保険給付請求権は、同法22条3項で原則として差押禁止とされている⇒破産財団帰属性は問題とならない。)について: 
損害保険の場合にも抽象的な保険金請求権が発生することを認めている。
but
被保険者について破産手続が開始された後に第三者の不法行為により保険事故が発生した場合に、破産管財人において保険金請求権が破産財団に帰属することを前提に保険金の支払を受けてしまうと、保険会社が破産者たる前記被保険者の前記第三者に対する損害賠償請求権(=本来、上記被保険者の新得財産に当たるもの)に代位できてしまう(同法25条)という問題。

判例時報2313

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