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2017年2月21日 (火)

地方公共団体の長の株式会社の代表取締役への責任追及を行わないことが、違法に財産の管理を怠る事実に該当しないとされた例

東京地裁H27.7.23      
 
<事案>
渋谷区が発行済み株式の全部を保有する株式会社で、渋谷区から使用料免除、転貸禁止等の条件で行政財産使用許可を受けて行政財産たる建物の一部を使用していたAが、同使用許可部分の一部を約3年弱の間法人Bに転貸したことに関し、渋谷区に本件専有部分に係る使用料相当額及び利息相当額(「本件返還金」(940万円))を支払ったことに関する住民訴訟の事案。 

渋谷区の住民であるXは、本件返還金の支払により渋谷区の有するあ株式の価値が下がり、渋谷区が損害を被っている
⇒渋谷区長(Y)はその損害を回復させるためAの代表取締役の地位にあったCに対し、会社法847条に基づき責任追及等の訴えを提起しなければならないのに、Yがこれを提起しないことは、違法に財産の管理を怠る事実に当たる。
⇒地方自治法242条の2第1項3号に基づき、当該怠る事実の違法確認を求めた。
 
<規定>
地方自治法 第242条の2(住民訴訟)

普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
・・・
 
<判断>

株主として株式会社に対し役員等の責任追及等の訴え提起の請求をしたり、当該株式会社のために自ら訴えを提起する場合、その実体的な要件である当該役員等の違法行為や当該株式会社の損害の存否自体が必ずしも明らかでない場合が多い⇒地方公共団体の長において提訴請求や責任追及等の訴え提起をしないことが違法な怠る事実に当たるというためには、少なくとも、客観的に見て当該役員等の違法行為、当該株式会社の損害、その他提訴請求や責任追及等の訴えの要件の存在を認定するに足りる証拠資料を入手し又は入手し得たことを要する
 
地方公共団体の長が証拠資料を入手し、又は入手し得たとしても、そのことにより直ちに責任追及等の訴えを提起すべき義務を負うと認めるのは相当ではなく、責任追及等の訴えをとるべき必要性やその実効性等諸般の事情を考慮して、訴えを提起しないとする判断が合理性を欠くものであり、その裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合に限り、責任追及等の訴えを提起しないことが違法な怠る事実に当たるというべき。

地方公共団体が有する株式の管理については、管理行為の具体的な内容を定める法令上の定めがない⇒地方自治法施行令171条から171条の7までの規定がある債権の管理と同列に解することはできない。


本件においては、Aによる本件行政財産使用許可の転貸禁止条項違反により渋谷区に本件専用部分に係る使用料相当額の損害が生じたという余地があり、同転貸禁止条件違反について代表取締役Cには善管注意義務違反が認められるところ、Yは、本件返還金の支払を受領するに当たってAから受けた報告等により、Aが本件返還金を支払ったことが客観的にみてCの善管注意義務違反によるものであることを認定するに足りる証拠資料を入手していた。
but
①本件返還金の支払によりAの株式の価値が減少したことを否定できないとしてもAの純資産額等からしてその程度はそれほど大きなものではない
渋谷区自身が本件返還金の支払を受領した
③渋谷区がAの株式を譲渡することを予定していない
④Cに対する責任追及等の訴えの実効性の有無及び程度が判然としないこと
⑤Bは本件専用部分を利用してAからの委託業務も行っていたのであり、転貸禁止条件に違反するというのはむしろ手続上の問題とみることもでき、この点につきCに悪意があったとか個人的な利得があったと認めるに足りる証拠はない

YがCに対する責任追及等の訴えを提起すべき必要性が高いなどということはできず、同訴えを提起しないとするYの判断が合理性を欠くものであると断ずることはできない

Cに対する責任追及等の訴えを提起しないことがYの裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないと解するのが相当であり、違法に財産の管理を怠る事実に該当するということはできない

判例時報2315

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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