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2017年2月

2017年2月28日 (火)

自筆証書遺言として有効か?

東京地裁H28.3.25      
 
<事案>
遺言者Aの孫にあたるXが、遺言者の法定相続人であるYらに対し、家庭裁判所において検認されたAの自筆証書遺言(本件遺言)が有効であることの確認を求めた事案。 

ステープラーで留められた2枚の書面(本件書面)と封筒(本件封筒)からなる。
①本件書面の文言上、日付と遺言者の署名はあるものの押印を欠いていたが、1枚目の裏面と2枚目の表面にまたがり遺言者の実印が押捺(契印)されていた
本件書面は無地の本件封筒に入れられ、その綴じ目には「〆」の文字と共に遺言者の実印と矛盾しない印が押捺
③家庭裁判所による検認時には封がされていない状態
 
<規定>
民法 第968条(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これにを押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
 
<解説>
民法968条1項が自筆証書遺言の方式として自書のほかに署名押印を要する趣旨について、
最高裁H1.2.16:
遺言全文の自書と相まって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書について作成者が署名しその下に押印することで文書の作成を完結させるという、我が国の慣行ないし法意識に照らして、文書の完成を担保するところにある。

最高裁H6.6.24:
遺言書本文に遺言者の押印を欠いていても、封筒の綴じ目にされた押印をもって民法所定の押印要件に欠けるところはない。

文書の完成を担保するとの趣旨を損なわない限り、押印の位置は必ずしも署名下であることを要しないとしたもの。

東京高裁H18.10.25:
遺言書本文に押印のない事案において、押印のある封筒と遺言書との一体性が認められない⇒民法所定の要件を満たさないとして遺言無効。
 
<判断>
検認当時において本件封筒に封がされていなかった本件遺言と本件封筒が一体のものであるとは認められない⇒これにより民法所定の押印の要件を満たすとはいえない。
 
1枚目の裏面と2枚目の表面にまたがり遺言者の実印が押捺(契印)されていた事実をもって、本件遺言は自筆証書遺言として有効であるとして、Xの請求を認容。 
①契印は、重要な書類を作成する場合において、その一体性を確保し、後日の差し替え等を防止するために行われる
契印が押捺されるのは、複数枚の書類を記入し終えた段階において、書類を綴じ合わせるのと同時に行われるのが一般的

Aは、本件書面を作成する最後に、その重要性を認識しながら、書面を完成させる目的で契印をしたと認めるのが相当であり、民法が自筆証書遺言に諸ン名押印を求める趣旨を損なうものではない。

民法968条1項所定の方式に欠けるところはなく、自筆証書遺言として有効。
 
<解説>
●本判決は、契印という形で押印がなされている以上、Aにおいて、本件遺言を完成させる意思を有していたことが十分に担保されていたと認められれば、民法所定の形式を満たすとの判断
 
最高裁H28.6.3:
花押を書くことは民法968条1項所定の要件を満たさない。
←我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるとう慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。

民法所定の要件を満たすためには、当事者が当該行為(花押)により文書を完成させる意思を有していたのみでは足らず、そのような慣行ないし法意識が存在することが必要

●遺言書有効確認訴訟 
遺言が有効であると主張する原告が、直接その遺言に基づく給付の訴えを提起して、遺言内容の実現を図ることが可能⇒確認の利益の有無が問題。
but
本件の場合、
①本件遺言は、相続人である被告1名の遺留分を侵害して原告に対し遺贈する内容
②本件遺言の有効無効が確定した後にその判断に従った遺産分割協議を行う意思を当事者らが有していた
⇒確認の利益の存在につき異論なし。

判例時報2315

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「チェンジリーダー」

人は変化を管理することはできない。それに先立つことができるだけである。我々が生きているような激変の時代において、変化は普通のことである。確かに、それは困難で危険で、なによりも多大なハードワークを必要とする。しかし、変化の先頭に立つことを組織の仕事として見ない限り、組織は生き残らない。急な構造的変化の時代において、生き残るのは、チェンジリーダーだけである。チェンジリーダーは変化を機会と見る。チェンジリーダーは変化を捜し、いかに正しい変化を見つけるかを知り、いかにそれを、組織の内外の双方において、有効とするかを知る。未来を作ることは非常に危険であるが、それを試みないよりも危険ではない。それらの試みの相当な割合は成功しない。しかし、他のものは予想通り成功しない。

ソース:The Daily Drucker 1 March.

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「顧客が買うものを理解する」

事業目的と事業のミッションを把握するために必要な最後の質問は「顧客にとって何が価値か?」である。それは最も重要な質問かもしれない。しかし、それは最も尋ねられないものである。理由の1つはマネジャーは答えを知っていると思っていることである。価値は、彼らの事業において彼らが品質として定義するものである。しかし、これはほとんど常に、誤った定義である。顧客は製品を買わない。定義上、顧客は want(必要・欲求・欠乏)の満足を買う。彼は価値を買う。

例えば、10代の少女にとって、靴の価値はハイファッションである。それは「流行」でなくてはならない。価格は二次的なもので、耐久性は価値ではない。数年後そのその少女が若い母親になった時、ハイファッションは抑えられる。彼女は全く流行らないものは買わない。しかし、彼女が求めるのは耐久性、価格、心地よさ、フィット等である。10代にとって一番のお買い得品は年齢が少し上のその姉にとって価値がない。会社の異なる顧客が価値と考えるものは非常に複雑であり、それは顧客自身によってのみ答えられ得る。マネジメントは答えを推測しようとすべきですらない。それらを組織的に探求するにあたって常に顧客に行くべきである。

ソース:The Daily Drucker 29 February.

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2017年2月27日 (月)

老人性痴呆患者の長期ケアを目的とする精神病院での転倒事故に当たっての医師の責任

さいたま地裁H28.1.28      
 
<事案>
平成23年2月17日午後3時45分頃老人性痴呆患者の長期ケアを目的とする精神病院でAが転倒⇒Z医師が現場で視・聴診したところ、Aは左側頭部の痛みを訴えたが意識障害がなかったことから経過観察⇒午後5時20分頃意識レベルが低下し、呼吸状態が悪化⇒午後6時過ぎ救急車手配しE病院に搬送⇒頭部CTにより左硬膜下血腫、切迫脳ヘルニア状態であることが確認⇒回頭血腫除去術、外減圧術を行った結果一命は取り留めたが意識回復に至らず、平成24年8月、転院先のF病院で肺炎により死亡。
 
患者Aの遺族(妻及び長男、次男)のうち、原告妻X1と原告次男X2は、亡AはD病院の担当医師らの過失によって損害を受け、Aの死亡により原告らがその損害賠償請求権を法定分に従い相続⇒D病院の設置運営者である被告Yに対して、原告X1に対して1531万円余、原告X2に対して765万円余及び年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。

過失内容:
亡Aは転倒後、頭が痛いと訴えたのであり、被告病院のスタッフは、転倒の状況を見ておらずその危険性を判断することができなかった⇒被告病院の担当医師は、転倒の時点で直ちにCT、MRIによる客観的な検査をするよう対処すべきであったが、それを怠り転倒から二時間以上経過した午後6時4分に至ってようやく転送のための対処をした点に注意義務違反がある。
 
<判断>
原告が提出した文献に基づき「急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫」の違いについての、調査嘱託の結果によって「頭部の外傷時のCT検査について」ついての検討結果(見解)を示した上で、
①亡Aは、本件転倒時に、意識レベルの低下がなく、痛みを自ら訴えるなどしている⇒意識障害は見られなかった
患部に発赤や腫脹はない⇒頭蓋骨骨折が疑われる状況にあったということはできないし、現に頭蓋骨骨折は認められない
③本件転倒直後には顔色不良等の症状があったが間もなく回復し、嘔気もなかった⇒特にCT検査の適用となるような症状があったことも窺えない
④これらの症状は、同に血午後5時20分まで変化がなかった。

本件転倒により頭部を打撲したことが疑われるとしても、被告病院の担当医師に、本件転倒直後直ちにCT検査やMRI検査をすべき義務があったということはできない
⇒請求棄却。
 
<解説>
本件の患者は過去に交通外傷により脳j挫傷・水頭症手術・頭蓋骨半分のセラミック置換術を受けた既往があり、その30年後に歩行中転倒して再び頭部を打撲して硬膜下血腫との診断のもとに大学病院で水頭症手術を受けた認知症患者で、その患者が医療施設(病院)の機能回復訓練を行う場合で三度目の店頭によって頭部打撲。

議論の確信は、このような経歴を有する患者が、病院が医療として実施する機能回復(リハビリ)訓練の場所ないしは訓練中に転倒・頭部外傷を負った場合に、これを診断した病院の医師は、何をすべきか(あるいはさらに遡って転倒のおそれの)ある機能回復訓練を行うことの適否

転倒による頭部打撲(外傷)が起きた場合の一般論で、注意義務違反・責任の有無を論ずるのはいささか早計
E病院の転送が遅すぎたのではないなかとの問題。

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「事業の目的とミッションを定義する:顧客」

「誰が顧客か?」は事業目的と事業のミッションの定義において最初の重要な質問である。それは簡単ではなく、まして明らかな質問ではない。それにいかに答えられるかは、大きな基準において、いかに事業が自身を定義するかを決定する。製品とサービスの最終使用者である顧客は常に(1つの)顧客である。
ほとんどの事業は、少なくとも2つの顧客を持つ。販売があれば双方とも買わなくてはならない。ブランドのある消費者製品の製造者は常に、2つの顧客を持つ。主婦と雑貨商である。雑貨商がそのブランドの在庫を持たなければ、主婦に買いに走らせるのは良いことではない。逆に、主婦が買わなければ、雑貨商に商品を展示させ棚のスペースを割り当てさせるのは良くない。他方を満足させなければ、これらの顧客の一方だけを満足させてもパフォーマンスはない。、

ソース:The Daily Drucker 28 February.

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2017年2月26日 (日)

「事業目的とミッションの定義」

会社の事業が何かを知ることほど単純で明らかなものはないように見える。鉄鋼所は鉄を作り、鉄道は貨物と人を運ぶために列車を走らせる。保険会社は火災のリスクを引き受ける。銀行は金を貸す。実際は「我々の事業は何か?」はほとんど常に難しい質問であり、正解は通常明らかではない。

事業は会社の名前、地位あるいは定款によって定義されない。それは製品やサービスを購入する時に顧客が満足させる want(必要・欲求・欠乏)により定義される。顧客を満足させることは、全ての事業のミッションであり目的である。「我々の事業は何か?」という質問は、従って、事業を外から、顧客と市場の視点から見ることによってのみ、答えられ得る。何時であろうと、顧客が見て、考え、信じ、欲するものはマネジメントによって客観的事実として受け入れられ、販売員の報告、エンジニアのテスト、会計士の数字と同じく深刻に受け取られなくてはならない。そして、マネジメントは、その心を読もうとするのではなく顧客自身から答えを得るよう、意識的な努力をしなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 27 February.

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2017年2月25日 (土)

「3つの企業の次元をバランスさせる」

次の社会(next society)の企業のトップマネジメントの重要な仕事は、企業の3つの次元(①経済的組織、②人の組織、③ますます重要どなる社会的組織)をバランスさせることになる。企業の3つのモデルのそれぞれは過去半世紀に発展し、その1つを強調し他の2つを従属させた。ドイツの「社会的市場経済」のモデルは社会的次元を強調する。日本のモデルは人の次元を強調する。アメリカのモデルは経済的次元を強調する。

3つのいずれもそれ自体としては適当ではない。ドイツのモデルは経済的成功と社会的安定を達成したが、高い失業と危険な労働市場の硬直性という犠牲を伴う。日本のモデルは長年すばらしく成功したが、最初の深刻な挑戦でつまずいた。それは1990年代の日本のリセッションからの回復への重大な障害であった。株主主権もまた、もがくことになる。それは繁栄の時にのみ良く機能する好天モデルである。企業は、事業として繁栄する時にのみ、人と社会の機能を達成できる。しかし、今日、知識労働者は鍵となる従業員となり、会社もまた、成功するには好ましい雇用者となる必要がある。

ソース:The Daily Drucker 26 February.

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2017年2月24日 (金)

新車の売買の錆による瑕疵担保責任(肯定)

富山地裁H27.7.8      
 
<事案>
新車を購入したところ錆。
Yに対して、売買契約上の瑕疵担保責任に基づき車両代金と査定額の差額につき損害賠償請求
 
<争点>
①錆の瑕疵の該当性
②損害の発生の有無 
 
<判断>
自動車の部品の中には防錆加工をすることができないものがあり、鋼鉄を使用する製品であり、およそ錆の発生を防止することは不可能⇒新車に錆が生じていたことのみをもって直ちに瑕疵があるとはいえない。

Yが取り扱う自動車メーカーのウェブサイトの「品質への取り組み」の記載において錆のない自動車を提供することが必要である等の旨が発信されている
新車購入者が納入される車両の床下部分等に多量の錆が発生していることを予想しておらず、そのような錆が生じていないことが売買契約において予定されていた車両の品質。

本件自動車の錆の状態が通常の使用に問題がないとしても、予定されていた品質を欠くものとして瑕疵に当たるとし、瑕疵担保責任を肯定

損害については、その性質上その額を立証することが極めて困難⇒民訴法248条により車両の減価としての損害を5万円と認め、原判決を変更し、請求を一部認容。

判例時報2315

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「会社のガバナンス」

短期間のうちに我々は会社のガバナンスの問題に再び直面する。我々は、株主のような法的所有者と組織に富を生み出す力を与える人的資本の所有者、つまり知識労働者の双方を満足させるよう、組織とマネジメントの目的を再定義しなくてはならない。ますます、組織が生き残る能力は、知識労働者を生産的にすることにおける「比較優位」に依拠するようになる。そして、最高の知識労働者を惹きつけ確保する能力は第1の最も基本的な前提条件である。

金より知識が統治する時、資本主義は何を意味するか?知識労働者が真の資産である時「自由市場」は何を意味するか?知識労働者は売買され得ない。彼らは、合併や買収と共にはやってこない。知識労働者の出現は経済システムの構造と性質に基本的な変化を起こすことは確かである。

ソース:The Daily Drucker 25 February.

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2017年2月23日 (木)

検察官が刑事被告人の勾留先を捜索して弁護人との手紙等を押収したことは違法。裁判官による捜索差押許可状発付の違法性は否定。

大阪高裁H28.4.22      
 
<事案>
強盗、窃盗等の刑事事件で大阪拘置所に勾留されていたX1が、検察官が、罪証隠滅工作を行うおそれが高いとして、捜索差押許可状の発付を受けてX1の勾留先を捜索し弁護人であるX2との手紙等を押収

本件捜索差押許可状の請求及び執行をした検察官に故意または過失があったとして、X1は秘密交通権、秘匿権、防御権を侵害するとし、X2は弁護権を侵害するとして、Yに対し損害賠償を請求。 
 
<規定>
刑訴法 第218条〔令状による差押え・捜索・記録命令付捜索・検証・身体検査、通信回線接続記録の複写等〕
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
 
<一審>
令状発付裁判官の捜索差押許可状の発付は違法性が認められないが、検察官の捜索差押許可状の請求及び執行等は違法
⇒Yに対し、それぞれ55万円の支払を求める限度で認容。 
 
<判断>
一審判決は相当。 
 
<解説>
争訟の裁判と国賠責任について
最高裁昭和57.3.12は、
裁判官に違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、裁判官が違法または不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められるような特別の事情があることを必要とする。

本判決:
①裁判官が裁判を行うに当たっては、事実認定が、証拠を自由に取捨選択し、多様な経験則を適用することによって行われる、自由な心証に基づく純粋思惟作用であり、その判断は裁判官により異なり得る
法令の適用解釈についても、客観的な基準によって唯一絶対のものではなく、その判断は裁判官により異なり得る
③裁判官は、良心に従い独立して職権を行うものであり(憲法76条3項)、裁判官の独立を確保するためには、間接的であれ、その職権行使に影響を与えることは、できるだけ排除されなければならないとの要請が働く
④このことは、争訟の裁判と捜索差押許可状等の令状発付についての裁判とで異なることはない

令状発付の場面において、昭和57年最判がいう「裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められるような特別の事情」とは、裁判官が、与えられた裁量を著しく逸脱し、法が裁判官の職務の遂行上遵守すべきことを要求している基準に著しく違反する裁判をした場合を指すものと解すべきである。
すなわち、通常の裁判官が当時の資料、状況の下で合理的に判断すれば、到底捜索差押許可状を発付しなかったであろうと認められるのに、これを発付したような場合がこれに該当し、このような場合には、当該令状発付が国賠法上も違法と判断されるものと解するのが相当である。

判例時報2315

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「会社の正当性」

社会的力は、正当な力でなければ、持続できない。社会は個々のメンバーをまとめなければ機能しない。産業システムのメンバーが(今日欠いている)社会的地位と機能を与えられなければ、我々の社会は崩壊する。大衆は反乱を起こさない。彼らは、無気力に沈む。彼らは、社会的意味がなければ脅威と負担以外の何物でもない自由の責任から逃げる。我々には2つの選択肢だけがある。①機能する産業社会を作るか②無政府状態と圧制の中に自由が消えるのを見るかのいずれかである。

ソース:The Daily Drucker 24 February.

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2017年2月22日 (水)

情報公開訴訟で消費者庁が行った不開示決定が取り消された事例

東京地裁H28.1.14      
 
<事案>
情報公開訴訟で、不開示処分が取消訴訟で争われている事案。 

本件開示請求書:「消費者庁が保有する、2010年夏にAから預託法順守状況についての報告申し出があったにもかかわらず担当課長らに対してなされた処分の内容及び理由、経過等が分かる一切の文書」(「本件開示請求対象文書」)

処分行政庁である消費者庁長官は、本件開示請求対象文書は作成も取得もしておらず、これを保有していないとして、開示しない旨の決定(「本件原決定」) ⇒
異議申立て⇒情報公開・個人情報保護審査会は、答申上明記した「特定すべき文書」(「本件答申対象文書」)についての保有を認め、その開示を検討すべき旨を答申⇒処分行政庁は、本件開示請求対象文書が本件答申対象文書であると特定し、これに基づく特定の文書について、当該文書中の不開示情報該当部分を除く文書につき開示する決定(「本件決定」)
⇒原告は、本件決定における不開示部分の取消しを求めて本件訴えを提起⇒処分行政庁は、本件決定における不開示部分中、Aの社員氏名以外の部分ほかの特定部分(「本件追加開示部分」)を開示する旨の本件決定の変更(「本件変更決定」)。
 
<規定>
行政情報公開法 第五条(行政文書の開示義務)
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない
一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
・・・
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
・・・
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそ

行政情報公開法 第四条(開示請求の手続)
・・・
2行政機関の長は、開示請求書に形式上の不備があると認めるときは、開示請求をした者(以下「開示請求者」という。)に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。この場合において、行政機関の長は、開示請求者に対し、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。

行政手続法 第八条(理由の提示)
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
 
<争点>
①本件不開示文書に記載された情報が行政情報公開法(「法」)5条各号所定の不開示情報に該当するか
②本件不開示文書の部分開示義務の有無等
③本件決定における手続的違法(法4条2項違反、行政手続法8条違反) 
 
<判断>
●争点①
不開示情報該当性についての主張立証責任が被告行政側にあることを踏まえ、法5条6号該当性について、「同号の定める要件に該当する事情の有無によって客観的に判断されるべきものであって、同号の文言に照らしても、行政機関の長の裁量判断に委ねられていると解することはできない
⇒処分行政庁は、開示請求に係る行政文書の外形的事実等に加えて、国の機関等の行う事務又は事業の目的及び内容を明らかにした上で、当該行政文書を公にした場合に当該事務又は事業にいかなる影響(実質的な支障)が及ぶのかを主張立証すべき。

消費者庁の調査官が景表法に基づく措置命令に向けた本件での立入検査においてAから任意の提出を受けた文書の不開示について、「本件不開示文書を公にすることによって、消費者庁の事務(現在及び将来の景表法に基づく調査委事務)の適正な遂行について実質的な支障を及ぼす蓋然性を客観的に認めることはできず」、法5条6号の不開示情報には該当しない。

Aの役員の氏名、役職、報酬等の本件役員情報については、法5条1号該当性を認める不開示妥当を判断。

Aが監査法人からの質問事項に対して用意した回答内容が記載された不開示部分については、当該監査法人との関係において法5条2号イの定める不開示情報には該当しない。

●Aの役員が債務保証をしている関連法人に関する不開示部分につき、争点②にかかる判断において、
全証拠を精査しても、本件役員情報部分を除いた部分に不開示情報が記録されていることを認めるに足りる事実ないし証拠はない

本件決定のうち、前記部分の不開示部分の取消しを判示。 

●争点③について 
処分行政庁が本件原決定をすべて取り消して本件決定を行った⇒法4条2項には違反しない。
本件決定書において処分行政庁が本件答申対象文書を本件開示請求対象文書として特定した経緯を記載し、本件答申対象文書について不開示部分ごとに不開示理由を明記した表を添付。
本件決定書の記載内容をみた場合、行手法8条の趣旨に照らしても、処分行政庁が本件開示請求対象文書に含まれないと判断した文書や、存在していない文書について、逐一その理由を同条に基づき示すべき義務を負っていたということはできない。
⇒行手法8条に違反しない。
 
<解説>
争点①の判断理由として
本件不開示文書が、景表法違反被疑事件調査事務において入手された文書ではなく、措置命令を行うための景表法9条調査等事務である本件立入検査において入手されたもの⇒景表法違反被疑事件調査事務の遂行に具体的な影響が生じるとは直ちに考え難い
本件不開示文書の任意提出について、これをAが不提出とした場合に景表法16条、18条による拒否の場合の罰則の対象となる⇒景表法違反被疑事件調査事務における任意の協力と同視することはできない
消費者庁が本件措置命令の概要を公表していること
を指摘。

争点②の理由につき、
本件役員情報部分が本件不開示文書の本文の上段部分に記載されていることに鑑みればと、文書中の不開示情報の記載位置に着目。

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「政府の新たな課題」

新たな課題はより小さい政府よりも多くを要求する。それらは異なる形の政府を要求する。最大の脅威は人の居住環境への損害である。環境への関心の次が、民間軍の回帰の阻止とテロ鎮圧のための国境を越えた行動と組織への増大するニーズである。

小さいグループが効率的に巨大な国にも身代金を払わせることができるため、テロは大きな脅威である。核爆弾は容易に主要都市のロッカーや郵便受けに入り、遠隔操作で爆発でき、同様に何千人もの人を殺し、大都市の上水道を汚染させ、住むことができないようにするのに十分な炭疽菌の胞子を含む細菌爆弾も可能である。テロの脅威をコントロールするために必要なものは国を越えた行動である。必要な機関の構想はなお我々の先にあり、その開発には時間を要する。政府がそのような機関への従属とそれら(機関)の意思決定を受け入れるには、大惨事が必要かもしれない。

ソース:The Daily Drucker 23 February.

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2017年2月21日 (火)

地方公共団体の長の株式会社の代表取締役への責任追及を行わないことが、違法に財産の管理を怠る事実に該当しないとされた例

東京地裁H27.7.23      
 
<事案>
渋谷区が発行済み株式の全部を保有する株式会社で、渋谷区から使用料免除、転貸禁止等の条件で行政財産使用許可を受けて行政財産たる建物の一部を使用していたAが、同使用許可部分の一部を約3年弱の間法人Bに転貸したことに関し、渋谷区に本件専有部分に係る使用料相当額及び利息相当額(「本件返還金」(940万円))を支払ったことに関する住民訴訟の事案。 

渋谷区の住民であるXは、本件返還金の支払により渋谷区の有するあ株式の価値が下がり、渋谷区が損害を被っている
⇒渋谷区長(Y)はその損害を回復させるためAの代表取締役の地位にあったCに対し、会社法847条に基づき責任追及等の訴えを提起しなければならないのに、Yがこれを提起しないことは、違法に財産の管理を怠る事実に当たる。
⇒地方自治法242条の2第1項3号に基づき、当該怠る事実の違法確認を求めた。
 
<規定>
地方自治法 第242条の2(住民訴訟)

普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
・・・
 
<判断>

株主として株式会社に対し役員等の責任追及等の訴え提起の請求をしたり、当該株式会社のために自ら訴えを提起する場合、その実体的な要件である当該役員等の違法行為や当該株式会社の損害の存否自体が必ずしも明らかでない場合が多い⇒地方公共団体の長において提訴請求や責任追及等の訴え提起をしないことが違法な怠る事実に当たるというためには、少なくとも、客観的に見て当該役員等の違法行為、当該株式会社の損害、その他提訴請求や責任追及等の訴えの要件の存在を認定するに足りる証拠資料を入手し又は入手し得たことを要する
 
地方公共団体の長が証拠資料を入手し、又は入手し得たとしても、そのことにより直ちに責任追及等の訴えを提起すべき義務を負うと認めるのは相当ではなく、責任追及等の訴えをとるべき必要性やその実効性等諸般の事情を考慮して、訴えを提起しないとする判断が合理性を欠くものであり、その裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合に限り、責任追及等の訴えを提起しないことが違法な怠る事実に当たるというべき。

地方公共団体が有する株式の管理については、管理行為の具体的な内容を定める法令上の定めがない⇒地方自治法施行令171条から171条の7までの規定がある債権の管理と同列に解することはできない。


本件においては、Aによる本件行政財産使用許可の転貸禁止条項違反により渋谷区に本件専用部分に係る使用料相当額の損害が生じたという余地があり、同転貸禁止条件違反について代表取締役Cには善管注意義務違反が認められるところ、Yは、本件返還金の支払を受領するに当たってAから受けた報告等により、Aが本件返還金を支払ったことが客観的にみてCの善管注意義務違反によるものであることを認定するに足りる証拠資料を入手していた。
but
①本件返還金の支払によりAの株式の価値が減少したことを否定できないとしてもAの純資産額等からしてその程度はそれほど大きなものではない
渋谷区自身が本件返還金の支払を受領した
③渋谷区がAの株式を譲渡することを予定していない
④Cに対する責任追及等の訴えの実効性の有無及び程度が判然としないこと
⑤Bは本件専用部分を利用してAからの委託業務も行っていたのであり、転貸禁止条件に違反するというのはむしろ手続上の問題とみることもでき、この点につきCに悪意があったとか個人的な利得があったと認めるに足りる証拠はない

YがCに対する責任追及等の訴えを提起すべき必要性が高いなどということはできず、同訴えを提起しないとするYの判断が合理性を欠くものであると断ずることはできない

Cに対する責任追及等の訴えを提起しないことがYの裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないと解するのが相当であり、違法に財産の管理を怠る事実に該当するということはできない

判例時報2315

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「政府助成金国家」

第一次大戦まで、歴史的に、国の歳入の非常に少ない部分(おそらく5~6パーセント)を超えて人々から得ることができた政府はなかった。歳入が限られる中、民主主義であれロシア皇帝のような絶対君主制であれ、政府は極度の制約の下活動した。これらの制約は、政府が、社会的あるいは経済的機関として行動することを不可能にした。しかし、第一次大戦以来、より顕著には第二次大戦以来、予算編成プロセスは、事実上、全てに対してイエスと言うことを意味した。獲得できる歳入に経済的限界がないことを想定する、新たな分配において、政府は市民社会の主となり、それを形作ることができる。財布の力を通じて、政治家のイメージで社会を形作ることができる。最悪なことに、財政国家は政府助成国家となった。

政府助成国家はますます自由社会の土台をむしばむ。選ばれた代表は、有権者から巻き上げ、特別の利益集団を富ませてその票を買う。これは、市民権の概念の否定であり、そのようなものとして見られ始める。

ソース:The Daily Drucker 22 February.

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2017年2月20日 (月)

「中央計画の失敗」

新たなテクノロジーは、大いにマネジメントの範囲を広げる。多くの人々は、今日、平の構成員がマネジメントの仕事ができるようにならなくてはならないと考えた。そして、全てのレベルにおいて、マネジャーの責任と能力、その(選択的)リスクを選択する能力、経済的知識とスキル、マネジャーを管理し、労働者を管理し、労働する能力、意思決定の能力への要求は大きく増大する。

新たなテクノロジーは最大限の分権化を要求する。新たなテクノロジーの時代における社会は、中央計画により経済を動かすために、自治的な企業の自由なマネジメントを無くそうとすれば、惨めに消え去る。責任と意思決定をトップに集めようとする企業も同様である。それは、小さな、中心に集まった神経系により巨大な体をコントロールしようと試み、環境の急激な変化に適応できなかった、恐竜時代の爬虫類のように破滅する。

ソース:The Daily Drucker 21 February.

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2017年2月19日 (日)

過重な長時間労働⇒精神障害を発症し自殺⇒出向元・出向先・両社の代取への損害賠償請求

東京地裁H28.3.16    
 
<事案>
Aが出向先企業で過重な長時間労働に従事⇒精神障害を発症し自殺に追い込まれた⇒Aの雇用主(出向元企業:Y1)、出向先企業(Y2)ならびに両者の代表取締役を兼務する者(Y3)の三者に対しAの両親(X1及びX2)が安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を追及。 
 
<判断>
Y1、Y2、Y3の全てに責任を認め、過失相殺を否定。

在籍出向においては出向先と労働者との間、出向元と労働者との間に二重の労働契約が成立。
出向先は在籍出向による労働契約関係に基づき、
出向元(雇用主)は労働契約に基づき、
ともに出向労働者において業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないように注意する労働契約上の付随義務としての安全配慮義務を負う。

出向元については、雇用主が労働者に他の企業への出向を命じて、他の企業の事業に従事させている場合には、法は不可能を強いるものではない

出向先・労働者との出向に関する合意で定められた出向元の権限・責任、及び、労務提供・指揮監督関係の具体的実態等に照らし、出向元における予見可能性および回避可能性が肯定できる範囲で、同義務を負う

両者の代表を兼任するY3に対し、
出向先の代表者としては、
出向労働者の労働時間、業務の状況及び出向労働者の心身の健康状態を適切に把握して、労働時間が長時間に及ぶ等業務が過重であるときは、配置転換や人員体制を拡充する等の措置により、業務負担を軽減する措置をとる義務を負い、
出向元の代表者として、
出向労働者の長時間労働を知り得るようにし、長時間労働をしている出向者がいれば、その業務負担の軽減の措置をとることができる体制を整える義務がある。
 
<解説>

安全配慮義務を負う主体は労働契約の当事者に限られず、労働者を受け入れて指揮命令する者もまた同様の責任を負う。 
出向(在籍出向)中の労働者は、雇用元の企業(出向元)との雇用関係を維持したまま他企業(出向先)の指揮命令系統に属し業務に従事⇒出向先・出向元ともに出向労働者に対する安全配慮義務の主体となりうる
出向先と出向元がそれぞれ果たすべき義務の内容は出向実態に即して判断される。
形式上出向元は労働者を直接管理監督する立場にない⇒概して出向先より責任を認められにくい傾向がある。

本判決:
①出向先の労務管理を出向元の人事部が行い、
②出向元の代表者(Y3)が出向先の代表者も兼ねるという状況の下、Y3が出向元代表者としても出向先代表者としても労働者の出向先における就労状況を把握・管理できた
⇒予見・回避可能性を肯定。

●代表者個人の責任:
労働者に対する安全配慮義務の直接の負担者は、まずは雇用契約関係にある(もしくは労働者を支配管理下に置く)会社。
会社の代表者(代表取締役)は会社の職務執行全体に責任を負う立場⇒会社とともに責任(民法い709条や会社法429条の責任)を問われることがある

責任原因は適切な労働体制の構築を怠ったことに帰する
⇒必ずしも本件のように代表者が労働者の労務状況を直接把握できた場合に限定されない。

会社法 第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

判例時報2314

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ソーシャルアプリケーションゲームと職務著作・映画の著作物

東京地裁H28.2.25      
 
<事案>
「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲームについて、職務著作の成否や「映画の著作物」該当性等が問題となった事例。

開発に関与した原告は、本件ゲームをインターネット上で配信する被告に対し、
①主位的に、原告は本件ゲームの共同著作者の一人であって、同ゲームの著作権を共有するから、同ゲームから発生した収益の一部の支払を受ける権利がある
②予備的に、仮に原告が本件ゲームの共同著作者の一人でないとしても、原被告間において報酬に関する合意があり、
仮に合意がないとしても、原告には商法512条に基づく報酬を受ける権利がある旨主張し、
著作権に基づく収益金分配請求権(主位的請求)ないし報酬合意等による報酬請求(予備的請求)をした。

被告:本件ゲームは、被告における職務著作であり、また、映画の著作物に該当
⇒いずれにしても被告に著作権が帰属するなどと主張。
 
<規定>
著作権法 第15条(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

著作権法 第29条 
映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。

著作権法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
 
<判断>
●著作権法15条1項所定の職務著作 
本件ゲームの開発に関与していた時点では被告会社に雇用されておらず、同開発がほぼ終了した後に同社の取締役に就任
but
①原告は本件ゲームの開発期間中にはタイムカードで勤怠管理をされ、
②被告のオフィス内で被告の備品を用い、
③被告代表者の支持に従って開発しておいり、
④原被被告間において当然に報酬の合意があったとみるべきこと
⑤当初から原告が被告の取締役等に就任することが予定されていたこと等

原告は「法人等の業務に従事する者」である。
他の要件も満たす⇒職務著作の成立を肯定。
 
●著作権法29条1項所定の映画の著作物
①本件ゲームは、音声はないものの、利用者から人気の高い戦闘場面等において動画的な画像を多く用いており、「映画の効果に類似する視覚的効果」、すなわち「目の残像現象を利用して動きのある画像として見せる効果」がある
②著作権法2条3項所定の他の要件も満たす
映画の著作物に該当

①被告代表者が原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘し、原告もこれに応じて別の会社を退社した上で同ゲーム開発に関与
②被告代表者が新会社(被告)を設立した上で、原告や被告の従業員とともに本件ゲーム制作を行った
③本件ゲームが被告名義で配信され、原告が被告を退社した後も被告名義で運営されている

本件ゲームの製作に発意と責任を有する者は被告であり、被告が「映画製作者」

①「参加約束」については、「著作者が、映画製作に参加することとなった段階で、映画製作者に対し、映画製作への参加意思を表示し、映画製作者がこれを承認したこと」を意味する。
②原告は、映画製作者である被告の代表者から本件ゲーム開発に参加するよう勧誘され、これを了承して同ゲーム開発に協力してきた。
原告は被告に対して参加約束をした。

著作権法29条1項により、本件ゲームの著作権は映画製作者である被告に帰属することになる。
 
●原告が本件ゲーム開発に際して従事した作業時間や作業量からすれば、当然に当事者間で報酬合意があったとみるべき
⇒予備的請求のうち報酬合意に基づく請求を一部認容。 
 
<解説>
●著作権法15条の「法人等の業務に従事する者」について
最高裁H15.4.11:
法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、
法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、
法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかを、
業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべき。

●著作権法29条1項所定の映画の著作物について、
ゲームソフトが「映画の著作物」に該当するかについて、
先例が示した枠組み(=音声の有無にかかわらず、映像が動きをもって見えるという効果を生じさせることが「映画の著作物」たる必要的要件)を踏襲。
「映画製作者」は、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいうとされる(法2条1項10号)が、
より具体的には、法律上の権利義務が帰属する主体であって、経済的な収入・支出の主体となる者であるとされている。

判例時報2314

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「マネジメントと経済発展」

マネジメントは、経済的/社会的発展を創造する。経済的/社会的発展はマネジメントの結果である。過度な単純化としてではなく、「低開発国」はないと言うことができる。「低マネジメント」国があるだけである。日本は、140年前、全ての重要な基準において低開発国であった。しかし、非常に素早く、非常に有能で卓越したマネジメントを作り出した。

これは、マネジメントが第一の動力であり、発展は結果であることを意味する。経済発展における全ての我々の経験は、これを証明する。資本しかない時は、発展を達成できなかった。マネジメントエネルギーを発生させることができた数少ないケースにおいて、我々は、急速な発展を生み出した。発展は、言い換えれば、経済的富ではなく人のエネルギーの問題である。そして、人のエネルギーの産出と方向づけはマネジメントの仕事である。

ソース:The Daily Drucker 20 February.

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2017年2月18日 (土)

「民営化」

民営化は、社会の本来の民間組織である家族が負担できないため、政府に流れる課題のパフォーマンス、オペレーション、執行といった実際の「行動」のため、組織社会の他の非政府組織を利用する体系的な政策である。事業が民営化にとって特に適切なものであるのは、(それが)全ての社会的組織の中で、すぐれてイノベーションの機関であることである。全ての他の組織は、本来、変化を阻止し、少なくともそれを遅らせるよう創られた。それらは必要な場合に、最もいやいやながら、イノベーターになる。

事業は政府が主たる弱点をもつところで2つの優位性をもつ。事業は活動を捨てることができる。実際、市場で活動する場合、そうすることを強いられる。さらに、全ての組織の中で、事業は社会が消滅させることができる唯一のものである。事業の第2の強みは、全ての組織の中で、パフォーマンスのテストをもつことである。消費者は常に「その製品は明日の私のために何をするか?」と尋ねる。答えが「何もない」であれば、その製造者は惜しまれることなく消える。投資家も惜しまない。「民間企業」への最強の主張は利益の機能ではない。最強の主張は損失の機能である。それ故に、事業は、組織の中で、最も適合でき最も柔軟である。

ソース:The Daily Drucker 19 February.

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2017年2月17日 (金)

ハンセン病患者の遺族による国賠請求(国の違法性を認定)

鳥取地裁H27.9.9       
 
<事案>
平成8年4月1日に廃止されたらい予防法11条の国立療養所に入所していなかったハンセン病元患者であるAの相続人Xが、国会議員、内閣、厚生大臣及び鳥取県知事は、平成8年まで非入所者及びその血族に対する偏見・差別を除去するために必要な行為をせず、また、これらの者は、非入所者及びその血族を援助する制度を創設・整備するために必要な行為をしなかったために、A及びXは精神的苦痛を受けたと主張
⇒Y1(国)びY2(県)に対し、国賠法に基づく損害賠償を請求。 
 
<主張>
国については、ハンセン病患者・元患者(A)及びその血族(X)に対する偏見・差別を除去する義務(偏見・差別除去義務)並びに非入所者及びその血族に対して在宅医療制度等の援助制度を創設・整備すべき義務(援助制度創設・整備義務)があるところ、
①国会議員の立法不作為
②内閣の法案不提出
③厚生大臣のらい予防法廃止前の隔離政策の不転換があり、
これらは偏見・差別除去義務違反及び援助制度創設・整備義務違反として国賠法上の違法行為に当たる。

県に対しては、
④国の負うべき損害賠償席についてにの国賠法3条1項にいう費用負担者としての責任を主張するほか、
⑤機関委任事務の一環としての隔離政策及び県自ら推進した「無らい県運動」により県がハンセン病患者に対する偏見・差別等を創出・助長・維持してきたとの主張を前提に、患者・元患者が地域社会で生活することは公衆衛生上問題ないことを一般に周知徹底すべき義務及び患者・元患者が適切な治療・介護を受けることができるための医療体制・福祉体制を整備した上でその情報を周知する義務、患者・元患者の血族(X)についてはさらに、血族に対する相談体制を整備・充実させるべき義務(いずれも条理上の義務)を怠ったと主張。
 
<判断>
●Aの国に対する主張について
①同隔離規定による隔離及び患者の意思に反して強制的に療養所に収容される可能性があったことは、対象となる患者にとって人生選択の、ひいては人格の形成・発展の可能性を著しく制約するものであり、
②このような規定とその運用がもたらす事態

それは単に居住・移転の自由の制限というにとどまらず、憲法13条に含意されるところの、人格権の直接的な制約にわたるものとも評価することができる。

同隔離規定による対象者の権利・自由の制約が憲法に適合的であるためには、らい予防法の目的(ハンセン病の伝染予防)自体に十分な合理性が備わっていることを前提に、当該目的達成の手段として隔離以外に適当な方法がなく、かつ、いったん感染した場合には適切な治療法が存在しないという事情が認められる必要がある。

遅くとも昭和35年以降、すべてのハンセン病患者との関係で、伝染予防のための隔離の必要不可欠性はまったく失われており、同隔離規定の違憲性は明白

国会議員が平成8年に至るまでらい予防法の隔離規定を廃止しなかったこと(偏見・差別除去義務に関連する主張)について:
国会議員の立法不作為について、遅くとも昭和40年以降平成8年に至るまで、国会議員が意見な規定であることが明白な同隔離規定を改廃する法律を制定することを怠ったことは、入所者のみならずAを含む非入所者との関係においても国賠法1条1項の適用上違法と評価されるべきであり、この点に関する国会議員の過失も認められる

厚生大臣の政策不転換の主張について:
①遅くとも昭和35年の時点で、厚生大臣は隔離政策の抜本的な変換をする必要があったのであり、少なくとも新たにハンセン病患者を収容することをやめると共に、すべての入所者に対し自由に退所できることを明らかにする相当な措置を採るべきであった
②厚生大臣は、隔離政策の一環として、療養所外でのハンセン病医療を妨げる制度的欠陥を取り除くための相当な措置を採るべきであった
③ハンセン病患者が一般社会で生活しても公衆衛生上問題とならないことを社会一般に認識可能な形で明らかにするなど、社会内の偏見・差別を除去するための相当な措置を採るべきであった

これらの措置を採ることなく、らい予防法6条、15条の下で隔離を継続し、また、ハンセン病が恐ろしい伝染病であり患者は隔離されるべき危険な存在であるとの社会認識を放置

厚生大臣の公権力たる職務行為に国賠法1条2項の違法性(偏見・差別除去義務違反)があったと認めるのが相当

厚生大臣の過失あり。

Aの相続人であるXは、平成14年1月28日ころに、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会との間で、国が非入所者との関係で隔離政策が違法であることを認めたものと評価することができる基本合意書に従った合意をしたことを認識したところ、それから3年以上経過した平成22年4月19日に本件訴訟を提起。

訴え提起時点で民法724条に基づく消滅時効期間は経過
国は消滅時効を援用する旨の意思表示。

国家賠償請求権は消滅時効により消滅。
 
●Xの国に対する主張について
Xは、少なくとも平成9年にAの診療録が開示されるまではAがハンセン病に罹患していたと認識するまでには至っておらず、らい予防法廃止以前においてAの罹患の事実を認識していなかった。

ハンセン病患者の子であるという認識のないXがハンセン病患者の子であることを隠しながら生活を送ることを強いられることにより生活上の様々な不利益を被ったということはできない(=具体的損害を認めることはできない)

判例時報2314

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リハビリでの骨折⇒施設側の責任(否定)

名古屋高裁H28.8.4      
 
<事案>
Xの姉らは、平成23年4月頃から、自宅において、四肢の拘縮予防のため、パターニングと呼ばれるリハビリ運動をXにさせていたが、平成24年1月から、Yの施設において実施。 
Yの職員である看護師らは、平成24年2月、Yの施設において、Xの姉らの教示により、Xに対しリハビリ運動をさせた⇒Xの左足を伸ばす運動をさせた際、Xに肥大大腿骨警部の骨折が発生。

Xは、右骨折は、看護師がリハビリ運動の方法を誤ったことにより発生したと主張し、Yに対して、不法行為又は債務不履行により損害賠償を請求。
 
<一審>
本件骨折当時、Xの骨密度は非常に低いものであったと推認され、いかに慎重に注意深くリハビリ運動を実施したとしても、不可抗力的に骨折という結果が生じる可能性も十分認められる
⇒骨折という結果が生じたことから遡って直ちに看護師の外力の加え方に何らかの注意義務違反があったと推認することはできない。
⇒請求棄却。 
 
<判断>
手技の際に加える外力の点については、看護師が加えた外力が客観的には許容範囲を超えた外力を加えたものであったとは認められる。
but
①Xの姉らが、看護師に対して、Xの骨密度が極めて低い状態であることを伝えておらず
②これまでXの姉らが自宅において実施してきたリハビリ運動を依頼したのであるから、看護師らが家族が実施してきたリハビリ運動を実施するとしても、骨折が発生するなど危険性が高いものであるとは考えないのが通常

リハビリ運動を開始するに際して医師等の専門家の意見を聴取することなく、Xに対してリハビリ運動を開始したとしても、Xに対する配慮を欠く不法行為上あるいは契約上の注意義務違反があったとは認められない。
 
<解説>
注意義務違反の判断基準は、通常人の能力、技量等を基準として一般的・客観的に決定されなければならない。
医療機関や介護施設内の事故について、具体的な事故の予見可能性の判断としては、事故の原因・誘引の有無、内容、程度等を勘案して検討

これまでの裁判例上、患者等が突然特異な異常行動に出て転落したというような事例以外には、予見可能性が認められやすい傾向にある。

判例時報2314

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「政府の復活」

政府は特定の利益集団の猛攻撃に対し力を失い、統治する(=意思決定を行いそれを執行する)力を失った。環境保護、私的軍隊と国際テロの鎮圧、有効な軍備管理といった新たな課題は、より小さな政府よりより大きな政府を必要とする。それらは異なる形の政府を必要とする。

政府は、パフォーマンス能力を少し回復しなくてはならない。方向転換されなくてはならない。事業であれ、労働組合であれ、大学であれ、病院であれ、政府であれ、組織を転換するには、常に3つのステップを必要とする。

1.機能しないもの、機能しなかったもの、その有用性と貢献能力を失ったものの廃棄
2.機能するもの、結果を生み出すもの、組織のパフォーマンス能力を改善するものへの集中
3.半ば成功し、半ば失敗するものの分析

方向転換は機能しないものを廃棄し、機能するものをより多くすることを求める。

ソース:The Daily Drucker 18 February.

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2017年2月16日 (木)

プロ野球観戦中の観客にファウルボールが当たった事故と試合を主催した会社の安全配慮義務違反(肯定)

札幌高裁H28.5.20      
 
<事案>
Xが札幌ドームjにおいて、平成22年8月21日に行われたプロ野球の試合を観戦中、打者の打ったファウルボールがXの顔面に直撃して右眼球破裂等の傷害を負った⇒本件ドームには通常有すべき安全性を備えていなかった瑕疵があった、観客をファウルボールから保護するための安全設備の設置及び安全対策を怠ったなどと主張し、本件試合を主宰していたY1、本件ドームを管理していたY2、本件ドームを所有していたY3らに対し、不法行為又は国賠法に基づき、損害賠償を請求。 
 
<判断>
本件ドームの一塁側内野席には高さ約2.9メートルのフェンスが設置されていた⇒通常の観客を前提とした場合に、観客の安全性を確保するための相応の合理性を有しており、社会通念上プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。 

本件試合を主宰していたY1としては、野球を観戦する者に対し、ファウルボールが観客席に飛来する危険があること、危険性が高い席と低い席があること等を具体的に告知して席を選択する機会を保障するなど安全対策を講じるべき義務を負っていたと解するのが相当であるところ、Y1は右のような安全配慮義務を十分に尽くしていたとは認められない
⇒Y1の損害賠償責任を肯定。

Xにも打球の行方を見ていなかった過失があった⇒2割の過失相殺を認めた。
Y1に対する損害賠償請求を3357万円とし、Y2とY3に対する本訴請求を棄却。
 
<解説>
民法717条1項に言う工作物の「瑕疵」とは、工作物が通常有すべき安全性に関する性状又は設備を欠くことを言うと解するのが、通説・判例。 

最高裁昭和50.2.25が「安全配慮義務」の不履行が損害賠償責任の根拠となることを判断してい以来、この理論は定着し、雇用契約、請負契約、交通事故、医療事故などにその適用範囲が広がっているが、プロ野球観戦中の観客に対する安全配慮義務が問題となったのは本件が初めて。

判例時報2314

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「社会のための社会的目的」

我々は、既に、経済発展は常にそして必然的に最高の目標であるという信念を捨てた。そして、我々は経済的達成を最高の価値があるものとすることをやめ、多くの目標の1つにすぎないとし、社会生活の基礎としての経済活動を放棄した。社会的に建設的な分野における経済の放棄はさらに先に行く。西洋社会は人は基本的に経済的動物であり、その動機は経済的動機であり、その達成は経済的成功と経済的報酬にあるという信念を捨てた。

我々は人の性質と社会の目標と履行についての新たな概念に基づく自由で機能する社会を創り出さなくてはならない。社会生活の基本的な倫理的概念を発展させなくてはならない。それは、哲学的あるいは形而上学の分野にある。

ソース:The Daily Drucker 17 February.

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2017年2月15日 (水)

「利益の調和の必要」

経済目的は企業が社会的義務から解放されるべきことを意味しない。逆に、自らの利益を追求する行動において、自動的に、その社会的義務を履行するよう組織されるべきである。企業に基礎を置く個人社会は、個々の企業のマネジメントの善意や社会的意識とは関係なく、企業が、社会的安定と社会目標の達成に貢献する場合にのみ、機能し得る。

同時に、調和の要求は社会がその必要とその目的と企業の経済力の行使を制限する権限を捨てるべきであることを意味しない。逆に、組織と個人が行動する枠組みの設定は統治者の重要な役目である。しかし、社会は、社会的安定や社会的信念の名において、その代表的組織の存続と安定に反する施策を制定する誘惑がないよう、組織されなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 16 February.

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2017年2月14日 (火)

年金給付の受給権者が死亡した場合に、その配偶者が自己の名で未支給年金の支給を請求するための「その者と生計を同じくしていたもの」の要件の判断。

仙台高裁H28.5.13      
 
<事案>
老齢基礎年金及び老齢厚生年金を受給していた別居中の夫Aが死亡⇒妻であるXがその未支給年金の支給を申請⇒Aの死亡当時XがAと生計を同じくしていたとは認められないとの理由で不支給処分⇒Xがその処分の取消しを求めた。 
 
<国の主張>
生計同一要件に関する認定基準(「本件基準」)に照らし、
住所が住民票上異なり、現に起居を共にしていないXについては、「やむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること、定期的に音信、訪問が行われていることが認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにすると認められる」場合でなければ生計同一要件を充足しない。
 
<判断>
本件基準の合理性を肯定。 
本件基準自体が「これにより生計同一関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」を例外としていることを指摘し、
婚姻関係の破綻につき有責で自ら離婚請求することが許されないような配偶者が婚姻費用分担義務を履行せず、その強制執行も奏功しない間に死亡したといった場合を例に挙げ、
生計同一要件充足性の判断においては「現に消費生活上の家計を一つにしているか否か」という事実的要素のみによって判断すべきでなく、婚姻費用分担義務の存否その他の規範的要素を含めて判断すべき場合がある
X・A夫婦の婚姻関係の実態をより詳細に認定し、別居はやむを得ない事情によるもので、もしAの健康が回復していれば別居解消の可能性があった
⇒そのような事情の下では「定期的に音信、訪問があった」とはいえないとしても、本件基準の定める例外として生計同一性を認めることができる。

Xの請求を認容。
 
<解説>
●生計同一要件に関する認定基準:
受給権者の法律上の配偶者の住所が受給権者の住所と住民票上同一である場合には、れ以上の実質的審査を行うことなく生計同一性を認めるものとなっている。

十分な資力を有していない法律上の配偶者が遺族年金等の支給を認められない場合としては、受給権者が重婚的内縁関係を形成しその内縁配偶者からも遺族年金等の支給申請がなされている場合が典型例。

最高裁:
法律上の配偶者であっても、「その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みがないとき、すなわち事実上の離婚状態にある場合」には、もはや遺族年金を受けるべき「配偶者」に該当しない

「事実上の離婚状態」にあるか否かは、重婚的内縁関係の実態との相対的比較で決せられるのではなく、「(当該夫婦間に)婚姻関係を解消することについての合意があり、事実上の離婚に関する経済的給付も、事実上の離婚給付としての性格を有するものであるなど、双方の積極的な意思が合致して事実上の離婚状態を作り上げているということでなければならない。」との指摘

遺族給付受給資格における法律上の配偶者の地位を重視し、「事実上の離婚状態」と、いわゆる「婚姻関係の破綻」とを明確に区別。

●本件基準は生計同一要件に関する基準。
「別居解消の可能性がない」
「定期的な音信、訪問がない」
「現に経済的援助を受けていない」
ということから生計同一性を否定

受給権者による遺棄的な状況で別居を余儀なくされ、婚姻費用の支払も受けられていない法律上の配偶者は、自ら離婚を受け容れない限り、離婚給付も得られず、年金分割の請求もできず、その間に受給権者が死亡してしまうと遺族年金の支給も受けられないという事態に陥ることもあり得る。

本判決は、生計同一性の判断において事実的要素のみではなく規範的要素を含めて判断すべき場合があるとする。

判例時報2314

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「社会による救済」

信条としてのマルクス主義の崩壊は社会による救済についての信念の終わりを示す。何が次に現れるかは、知り得ず、望み祈ることができるだけである。ストイックな服従を超えるものはない?知識社会における人々のニーズと挑戦に向けた伝統的宗教の復活?米国での私が「牧歌的」と呼ぶキリスト教の教会(プロテスタント、カトリック、あるいは特定宗教に関係のない)の爆発的成長は前兆かもしれない。しかし、イスラム原理主義者の復活がそうかもしれない。今イスラム原理主義の世界に熱烈に奉じる世界のイスラム教徒の若者は、40年前であれば熱烈なマルクス主義者であった。あるいは新たな宗教が現れる?救い、自己再生、精神的成長、善及び徳、伝統的な言葉を使う「新人類」は、社会的目標や政治的処方よりも、再び、実存的なものと見られそうである。社会による救済についての信念の終焉は内面への転換を示す。それは、個人である人の新たな強調を可能にする。それは、個人の責任への回帰へと導くかもしれず、少なくとも我々はそれを望み得る。

ソース:The Daily Drucker 15 February.

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2017年2月13日 (月)

市が土地開発公社の取得した土地をその簿価に基づき正常価格の約1.35倍の価格で買い取る市長の判断の適法性(適法)

最高裁H28.6.27      
 
<事案>
大洲市が大洲市土地開発公社との間で土地の売買契約を締結し、これに基づき市長が売買代金の支出命令をしたところ、市の住民のXらが、前記売買契約の締結及び前記支出命令が違法であるなどとして、市の執行機関であるYを相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、前記売買契約の締結及び前記支出命令をした当時の市長の相続人らに対して不法行為に基づく損害賠償の請求をすることや本件公社等に対して不当利得返還の請求をすることを求める住民訴訟

平成16年8月26日:市⇒公社に対し、・・土地の先行取得を依頼。
同年9月29日:公社は、本件土地を含む保留地を1㎡6万3700円で取得。
市⇒公社に隣接地を1㎡当たり、約8万4700円での取得を依頼し、
平成16年12月7日、本件隣接地取得契約締結。
本件隣接地の平成16年2月7日時点の正常価格は、1㎡当たり6万6700円。

平成19年8月14日、本件土地を1㎡7万2400円で購入。
同日時点での正常価格は1㎡5万3500円。

不動産鑑定士による鑑定によれば、本件土地及び本件隣接地における平成16年12月7日から平成19年8月14日までの間の地価変動率は、マイナス10.7%。
 
<規定>
地方自治法 第2条〔地方公共団体の法人格、事務、自治行政の基本原則〕
⑭地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない

地方財政法 第4条(予算の執行等)
地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない

<一審・原審>
本件売買契約のうち本件隣接地に係る部分に財務会計法規上の違法はない。

同契約のうち本件土地に係る部分につき、
①本件土地の取得価格がその正常価格の約1.35倍に及んでいること
②前記取得価格は、市が不動産鑑定や近隣の土地の分譲価格等との比較を行わず、本件公社の所有する保留地の簿価に基づいて算定された1㎡当たりの金額に本件土地の面積を乗じて決定したものにとどまること等

市が本件土地の取得のために支出した費用のうち本件土地の正常価格の1.15倍を超える部分は、地方公共団体の財政の適正確保の見地から合理性、妥当性を欠くものであり、これを私法上無効としなければ法の趣旨を没却する結果となる特段の事情は認められないものの、市長の裁量を逸脱、濫用したものとして、地方自治法2条14項や地方財政法4条1項に違反する財務会計行為として違法

一部認容。
 
<判断>
市が既に取得していた隣接地と一体のものとして事業の用に供するため、土地開発公社の取得した土地をその簿価に基づき正常価格の約1.35倍の価格で買い取る売買契約を締結した市長の判断は、
前記隣接地の取得価格は、近隣土地の分譲価格等を参考にした定められたものであり、相応の合理性を有するものであったこと、
前記売買契約に係る土地の1㎡当たりの取得価格を下回るものであり、これを地価変動率で前記売買契約締結当時のものに引き直した価格をも下回るものであったこと等の判示の事情

その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるとはいえない。 
 
<解説> 

本件隣接地及び本件土地の必要性の有無やその取得価格が不当に高額であるか否か等を踏まえ、
①本件売買契約又はこのうち本件隣接地に係る部分の先行行為である本件隣接地取得契約が私法上無効であるか否か
②仮に①の点が認められないとしても、本件売買契約が財務会計法規上の義務に違反して違法に締結されたものであるか否か
が問題。
 

最高裁(昭和62.5.19、H16.1.15)によれば、
地方公共団体の締結した契約が私法上無効であるか否かが争われる場合、
①まず、当該契約が法令又はその趣旨に反するか否か(契約の違法)を検討し、この点が認められることを前提として、
これを無効としなければ法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情があるか否か(特段の事情の存在)を検討するとの立場。 

広域連合が土地を賃借する契約につき賃料額が私的鑑定において適正とされた賃料額より高額であることを理由として当該契約が違法でありその賃料の約定が無効であるとした原審の判断に違法があるとした最高裁H25.3.28:
前記①の契約の違法として、契約の対価の適否の観点から地方自治法2条14項、地方財政法4条1項違反が問題とされた場合については、契約の対価が鑑定評価等において適正とされた価格を超えたことをもって、直ちに契約の締結を違法とするのではなく、契約の対価に係る地方公共団体の長の判断に諸般の事情を相互考慮した上での裁量権の逸脱・濫用が認められるかどうかを検討すべきとの立場。

本件の場合、
当該契約の締結については、当該不動産を買い取る目的やその必要性、契約の締結に至る経緯、契約の内容に影響を及ぼす社会的、経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており、当該契約に定められた買取価格が鑑定評価等において適正とされた正常価格を超える場合であっても、前記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお、地方公共団体の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当該契約に定められた買取価格をもって直ちに当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し違法となるものではないと解することになる。
以上の点は、当該契約の締結が財務会計行為に先行する原因行為に当たり、これが私法上無効になるか否かが問題となる場合についても同様であると解される。
 

原審は、本件売買契約の締結について、その取得価格と正常価格との較差の程度や取得価格の決定方法等に着目し、
本件隣接地の取得に関する部分には財務会計法規上の違法がないとする一方で、本件土地の取得に関する部分には財務会計法規上の違法があると判断。
vs.

①そもそも本件隣接地の取得価格は、本件公社による前記保留地の分譲価格や近隣2か所の件基準値の標準価格等を参考にして定められた相応の合理性を有するもの(原審も、本件隣接地の取得価格が市長の裁量権を逸脱・濫用するものとは認めていない。)ところ、
本件隣接地と一体として利用される本件土地の取得価格は、このような本件隣接地の取得価格を下回るだけでなく、これを本件鑑定で示された地価変動率により本件売買契約当時のものに引き直した価格をも下回っている
その価格自体から特に高額であるとはいえないと考えられる。

②そもそも正常価格(=不動産鑑定評価基準総論では「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価格を表示する適正な価格」)は、個人の主観的事情や特別な事情(例えば、取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものであること等)を捨象した客観的な経済価値として判定されるものであり、本件土地の正常価格は、前市長が本件土地の取得価格を決定する際の考慮事情となる本件土地を取得する目的や本件売買契約の締結に至る経緯等は考慮せずに算出されたものであること、本件土地の取得価格と正常価格との較差(約1.35倍)も本件隣接地の取得価格と正常価格との較差(約1.27倍)と比較して顕著な相違があるとはいえない
⇒この点から直ちに前市長の裁量権の逸脱・濫用を認めることもできない。

③本件土地の取得価格の決定方法も、不動産鑑定等や近隣土地の分譲価格等の比較が行われていない点で、取引の実例価格等を必ずしも考慮していない面があることは否定できないが、当該取得価格の算定基礎とされた前記保留地の平成19年度期末簿価は、本件土地を含む前記保留地の取得に要した経費等を積算したもので一定の算定根拠を有するものであり、これを基礎として算定された当該取得価格が前記①のとおり本件隣接地の取得価格等を下回るものであったことからすと、前市長が前記簿価に基づいて本件土地の取得価格を決定したことが明らかに合理性を欠くとはいえない

原審が本件土地の取得価格やその決定方法等に関して指摘した点は、いずれも本件公社との間で本件売買契約を締結した前市長の判断に裁量権の逸脱・濫用があることを理由付けるものとはいえないと考えられる。

判例時報2314

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2017年2月12日 (日)

客観的事実(これだけでは不十分)+自白供述で殺人犯と認定した事例

宇都宮地裁H28.4.8    

<事案>
殺人等被告事件 

被告人の供述:
公判では全面否認
捜査段階から起訴後の公判前整理手続までの間は、全面否認、第三者による犯行であるという否認、自白などの間を変遷。
検察官は、捜査段階での自白調書の任意性・信用性立証のために、取調状況の録音録画を証拠申請

<判断>
自白以外の証拠に基づく判断⇒客観的にみて被告人の犯人性を強く疑わせる事実が認められる。
ex.
被害者の遺体から採取された獣毛のDNAが被告人の飼い猫と同種
被告人車両が遺体発見日の未明に自宅から茨城県(発見場所)方面に向かい数時間後に自宅に戻るという記録がある。
but
これら客観的事実のみでは被告人が犯人とするには合理的疑いが残る。 

自白調書の任意性を肯定した後、
信用性についても、
①自白の内容が客観的事実(遺体及び遺棄現場の客観的状況や死亡推定時刻)と矛盾しない
②捜査官の予測しない供述(死体遺棄の帰りに道に迷い高速道路に乗った)で補充捜査により裏付けが得られるものがあるなど、供述内容が不合理でない
③取調状況の録音録画(殺人容疑で逮捕前の別件勾留中のものも含む。)などからわかる供述態度や供述経過
⇒信用性を肯定。

前記客観的事実及び自白調書を併せると、被告人が犯人であることに合理的疑いは生じない⇒被告人を有罪認定

<解説>
①取調状況の録画について、すべてが録音録画されたわけではない(特に、別件勾留中における最初の自白の場面の録音録画はない。)。
②録音録画がされた取調べだけで数十時間⇒裁判員裁判においてその全部を公判で再生するのは非現実的⇒双方が選択した十数時間だけが公判で取り調べられた

判例時報2313

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労働条件の変更に対する労働者の同意の有無の判断

最高裁H28.2.19      
 
<事案>
Aの職員であったXらが、AとYとの合併によりXらに係る労働契約上の地位を承継したYに対し、退職金の支払を求めた事案。 

Xらの主張する退職金額:Aの合併当時の職員退職給与規程における退職金の支給基準に基づくもの。
Yは、個別の合意又は労働協約の締結により、本件合併に伴い定められた退職給与規程における退職金の支給基準に変更されたと主張。
 
<争点>
①本件基準変更に対する管理職Xらの同意の有無
②Xらのうち、本件同意書に署名押印をしていない4名(いずれもAの職員組合の組合員)については、前記の署名押印がされたのと同じ日に本件基準変更を内容とする労働協約書が作成されており、労働協約の締結による本件基準変更の効力発生の有無
③平成16年合併時にも、同合併後の新労働条件(退職金額の計算において自己都合退職の係数を用いるとするものなど)に関する書面にXら全員が署名をしたことをもって、退職金の支給基準の変更に対するXらの同意があったか否か
   
<規定>
労働契約法 第8条(労働契約の内容の変更)
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
 
第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
 
労働契約法 第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

労働契約法 第12条(就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
 
<原審>
①管理職Xらは本件退職金一覧表の提示を受けて、本件合併後にYに残った場合の当面の退職金額とその計算方法を具体的に知ったものであり、本件同意書の内容を理解した上でこれに署名押印をした。
⇒本件同意書への署名押印により本件基準変更に同意したものということができる。
②労働協約の締結による本件基準変更の効力発生、③平成16年基準変更に対するXらの同意についても肯定。 
 
<判断>
①②③のいずれについても原審の判断は是認できない
⇒原判決を破棄し、差し戻し。 
 
<解説>
●合意原則
労働契約においても、民法の一般原則に従い、その締結及び契約内容の変更は契約当事者である労働者と使用者との合意によってされるという合意原則が妥当。
but
就業規則の最低基準効(労働契約法12条)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めるものは、その部分について無効

就業規則に定められている労働条件を変更したい使用者は、その変更に対する労働者の同意を得るに際して、就業規則の変更も併せて行う必要。 

労働条件の変更に対する労働者の同意が得られない場合には、合意による労働条件の変更は生じない。

使用者が一方的に定めることのできる就業規則の変更による労働条件の変更の効力発生の有無(=労働契約法10条に定められている就業規則の変更の要件を満たすか否か)が問題。

本判決:
労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意により変更することができるものであり、このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者に不利益に変更する場合であっても、その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではないと解される。
~労働条件の変更についても合意原則が適用されることを示す。

●労働者の同意の有無の判断方法 
賃金や退職金について労働者に不利益をもたらす内容の意思表示について

最高裁昭和48.1.19:
労働者が退職金債権を放棄する意思表示につき、当該意思表示が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することを要する

最高裁H2.11.26は、賃金債権を合意により相殺する場合に労働者の意思表示について同様の判断。

労働者は、労働契約の性質上当然に、使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれている上、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界がある。

賃金や退職金といった重要な労働条件を自らの不利益に変更する場合であっても、使用者から求められれば、その変更に同意する旨の書面に署名押印をするなどの行為をせざるを得なくなる状況に置かれることも少なくない。

本判決:
このような労働契約関係に特有なものである労働者の立場等に鑑みて、同意書への署名押印をするなど当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、これをもって直ちに労働者の同意があったものとみることは相当ではなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきであるとして、

「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、・・・・当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」としたものと解される。

前記の観点から労働者の同意の有無につき判断する際に、具体的にどのような要素を考慮すべきかについて、
当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度労働者により当該行為(=当該変更を受け入れる旨の労働者の行為のこと。本件では、本件同意書への署名押印がこれに当たる。)がされるに至った経緯及びその態様当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等」という考慮要素を挙げている。

判例時報2313

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事業報告・監査報告の欠缺⇒株主総会決議取消し(肯定)

東京地裁H27.10.28      
 
<事案>
Yの株主であるXが、Yの平成25年6月19日に開催された定時株主総会においてされた各決議について、本件各決議を行った本件株主総会について招集手続の法令違反、決議の方法の法令若しくは定款違反又は著しい不公正が認められると主張⇒会社法831条1項1号に基づき取消しを求めた。 
 
<規定>
会社法 第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)
次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき
・・・・
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる
 
<判断>
法定備置書類の本店への備置き(会社法442条1項1号)や株主によるその閲覧、謄本の交付(同条3項)は、株主の株主総会招集手続の一環であり、その懈怠は原則として決議取消原因に当たる。

本件株主総会への準備を目的とした定時株主総会の招集通知に際して提供されるべき事業報告が欠けていたことは(他方、計算書類の一部である個別注記が欠けていた点については、事後的に株主に送付されたことをもって追完を認めた。)、また、計算書類の附属明細書の閲覧、謄本の交付要求が拒絶され、法定備置書類の備置きの不備があったことについて、本件株主総会の招集手続における瑕疵に当たる

決算に関する監査報告書の記載は、株主が決算を承認するか否かを判断するに当たって重要な参考資料となるところ、第35期の決算に関して作成された監査報告書には、現在の会社の対応では監査不能である旨が記載されているのみであり、実質的には監査報告の提供があったとは言い難い

⇒第35期の計算書類の承認に関する株主の実質的な準備は不能であったというべきであり、本件株主総会の招集手続における瑕疵は重大
⇒本件決議は取り消されるべき。
 
<解説>
本判決は、株主総会の招集に際する株主への事業報告及び監査報告の提供並びに事業報告及び監査報告書の本店への備置きに関する不備を理由として、株主総会決議が取り消された事案。 

計算書類等の備置き定時株主総会の招集手続の一環とみて、その違反は決議取消原因に当たると解するのが多数説。

判例時報2313

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「自由の本質」

自由は楽しみではない。それは個人の幸せと同じではなく、安全や平和や前進でもない。それは責任ある選択である。自由は権利というより義務である。真の自由は何かからの自由ではなく、免許(license)である。何かをするかしないか、ある方法でするか別の方法でするか、ある信念を持つか反対の信念を持つかを選択する自由である。それは「楽しみ」ではなく、社会の行動と同様に個人的行動を決定し、双方の決定に責任を持つ、最も重い重荷である。

ソース:The Daily Drucker 13 February.

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2017年2月11日 (土)

標章の使用差止等請求の権利濫用(肯定)、不正競争防止法2条1項1号、2号の類似性

東京地裁H27.11.13      
 
<事案>
化粧品の製造販売業等を営むXが、通信機器等の輸入・販売業を営むYに対し、
①Yの使用する「DHC-DS」等の標章はXの商標「DHC-DS」と同一又は類似であるなどと主張して、商標法36条1項及び2項に基づき、前記標章の使用差止等を求めるとともに
②Yの使用する「DHC-DS」等の商標表示はXの著名ないし周知な商標等表示である「DHC」等に類似するなどと主張して、不正競争防止法2条1項1号及び2号、同法3条1項及び2項に基づき、「DHC-DS」等の表示の使用差止等を求めた事案。

Yは、
前記①の請求に対しては権利の濫用の抗弁を主張し、
前記②の請求に対しては不正競争防止法2条1項1号及び2号の類似性をいずれも否認。
 
<規定>
商標法 第36条(差止請求権)
商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

不正競争防止法 第3条(差止請求権)
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

不正競争防止法 第2条(定義)
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
 
<判断>
●商標権
①台湾DHCはその設立から30年近くを経た会社であり、諸外国で「DHC」の商標権を取得している上、バッテリーテスター等について相当な販売実績を有している。
②Yは従前、台湾DHCから輸入したバッテリーテスター等に「DHC JAPAN」との標章を付していたが、Xから当該標章の使用中止要請を受けて交渉する中で、Xの利益に一定程度の配慮をして「DHC-DS」という標章に変更した。
③XはYの使用する標章をめぐって交渉を積み重ねている中で、Yが譲歩を示して、当初Xから商標権の侵害であるとして使用の中止を求められた「DHC-JAPAN」を「DHC-DS」という標章に変更してこれを使用していることを十分認識しながら、Yとの交渉が条件が折り合わずに暗礁に乗り上げたとみるや、自らの標章につき不使用取消審判を受けているにもかかわらず、あえてYの使用していた「DHC-DS」の文字につき、指定役務にわざわざバッテリーテスターを含めた上で、商標として出願し、その登録を得ると、直ちにこれをYに対して行使した。
④Xは化粧品、健康食品、アパレル等の商品を販売する会社であって、バッテリーテスター等の製造・販売を行ったことはなく、ましてやバッテリーテスター等の製造・販売に当たって「DHC-DS」との商標を使用する具体的な意思があったともうかがわれない

Xが「DHC-DSの商標権に基づいてYの「DHC-DS」の使用を差し止めることは、権利の濫用に当たり許されない
 
●不正競争防止法
◎不正競争防止法2条1項1号の類似性判断
取引きの実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、呼称又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(最高裁昭和58.10.7)の基準を引用。
①Xの「DHC」との表示とYの「DHC-DS」との表示を比較すると、外観及び呼称においては共通する部分もあるものの、全体として異なるものと言わざるを得ない。
②観念についてみても、前記各表示はいずれも造語であると認められ、何らの観念も生じない
③Xの宣伝活動は化粧品、健康食品、アパレル等の分野に限られていて、バッテリーテスター等の製造・販売事業を行っていない
④他方で、台湾DHCはその設立から30年近くを経た会社であり、諸外国で「DHC」の商標権を取得している上、バッテリーテスター等について相当な販売実績を有している。
⑤他にも「DHC」の商標につき商標権を取得している会社は複数あって、少なくとも「DHC-DS」等から観念される営業主体はXだけに限られない

不正競争防止法2条1項1号にいう類似性があるとまではいえない
 
◎不正競争防止法2条1項2号の類似性判断 
同項1号におけるそれとは基本的には同様であるが、両規定の趣旨に鑑み、同項1号においては、混同が発生する可能性があるか否かが重視されるべきであるのに対し、同項2号にあっては、著名な商品等表示とそれを有する著名な事業主と1対1の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているような表示か否か、すなわち、容易に著名な商品等表示を早期させるほど類似しているような表示か否かを検討すべきものと解するのが相当である。

仮にXの「DHC」との表示に著名性が認められるとしても、Yの「DHC-DS」において、容易にXの「DHC」との表示を想起させるほどこれに類似しているとまでいうことは困難
Xの請求をいずれも棄却
 
<解説>
●商標権の行使と権利の濫用
最高裁H2.7.20(POPEYE商標事件):
漫画の主人公の観念、呼称を生じさせる登録商標の商標登録出願当時、既にその主人公の名称が漫画から想起される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれていた場合において、右主人公の名称の文字のみから成る標章が右漫画の著作権者の許諾に基づいて商品に付されているなど判示の事情の下においては、右登録商標の商標権者が右標章につき登録商標の商標権の侵害を主張することは、権利の濫用として許されない。

●不正競争防止法2条1項1号、2号の類似性判断
不正競争防止法2条1項1号の類似性判断につき、最高裁昭和58.10.7は、
取引きの実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、呼称又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準とする旨を判示。

不正競争防止法2条1項2号の類似性判断について、
学説上
基本的には同項1号における判断基準と同様としつつも、
同項2号の保護目的がただ乗り(フリーライド)、希釈化(ダイリューション)、汚染(ポリューション)等の防止にある

その類似性については、著名な商品等表示とそれを有する著名な事業主との1対1の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているような表示か否か、すなわち、容易に著名な商品等表示を想起させるほど類似しているような表示か否かで判断すべきものとの説が有力。

判例時報2313

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自動車事故工学鑑定の意見書(私的鑑定)の信用性を排斥した事案

松山地裁今治支部H28.2.9      
 
<事案>
Xが、自動車同士の交通事故により 頚椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負った⇒Y車の運転者であるY1及びY車の保有者であるY2に対し、損害賠償の連帯支払を求めた事案。
 
<争点>
①事故態様及び過失割合
②事故によるXの受傷の有無、程度、入通院の必要性、症状固定時期、既往症
③損害 
 
<意見書等>
Y側(A意見書):
(ア)頚椎捻挫が頭部の生理的前屈限界に達しない頭頚部の可動では受傷が生じないこと(いわゆる無傷限界値の存在)、あるいは、日常生活や通常の自動車走行において体験する加速度程度では受傷が生じないことを前提として、本件事故から推測されるXの頭部の前屈度をこれと比較する手法、及び
(イ)Y車の損傷状況からY車の有効衝突速度を推定する手法の2つを根幹とした。 

X側:
自動車事故工学鑑定の意見書(B意見書)
東京三弁護士会交通事故処理委員会むち打ち症特別研究部会の論考(「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」)等
 
<判断>
本件事故の態様、本件事故前後のXの通院経過、医師の診断
Xが本件事故により頚椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負ったことを推認させる事情

この推認を妨げる事情であるYらの自動車事故工学鑑定の意見書(A鑑定)について、その信用性を否定。
①B意見書及び東京三弁護士会論文等の指摘⇒前記(ア)の手法によってXの受傷を直ちに否定するのは相当ではない。
②(イ)の手法についても、本件事故の態様を踏まえ、車体の変形量から有効衝突速度を推定する手法に疑問。
③A意見書と異なる衝突速度を推定するB意見書が不合理であるともいえない。

Xは本件事故により頚椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を負った
 
<解説>
主として物損事故の態様が争われる場合の自動車事故工学鑑定の意見書については、近時の裁判実務でも、その採否について慎重な意見。 

判例時報2313

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労災認定で認められた高次脳機能障害が否定された事案

さいたま地裁熊谷支部H28.3.14      
 
<事案>
原告が軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害に罹患⇒被告に対し、自賠法3条、民法709条に基づき損害賠償請求。
被告が、原告の高次脳機能障害の発症を否認するとともに、別件の交通事故による後遺障害が影響しているとして素因減額を主張。
 
<争点>
①本件事故により原告が軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発症したか否か。
②本件事故の前に発生受傷した別の交通事故による既往症についての素因減額の可否。 
 
<判断>
本件事故前後の原告の医療機関における治療経過や各種検査結果等を詳細に認定した上、WHO(世界保健機関)が平成16年(2004年)に示した軽度外傷性脳損傷の診断基準及びこれを受けて自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会が平成23年3月4日に発表した「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)」と題する報告書において整理確認された医学的知見を当てはめ、

①原告には本件事故直後の意識障害がない
脳の器質的損傷を裏付ける画像所見がない
原告の症状の経過

原告について、本件事故により、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害を発症したと認めることはできない。

本件事故の前に発生受傷した別の交通事故による既往症を考慮し、本件事故により発生した原告の損害の3割を素因減額。

判例時報2313

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「傍観者の役割」

傍観者は自らの物語を持たない。彼らは舞台の上にいるが、演技の一部ではない。彼らは観客でもない。劇とその役者の運命は観客に依拠するが、傍観者の反応は、自分自身以外に影響しない。劇場の消防員のように、舞台脇に待機し、傍観者は、役者も観客も気付かないものを見る。とりわけ、彼は役者や観客が見るのとは異なって見る。傍観者は、反射するが、それは鏡というよりプリズムであり、屈折させる。

自分で見て考えることは非常に立派である。しかし「屋根からのおかしな眺めを叫んで、人々に衝撃を与えることは、そうではない。」(この)忠告はよくされるが、私はほとんど気に留めなかった。

ソース:The Daily Drucker 12 February.

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2017年2月10日 (金)

他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権の可能性を認めた裁判例

大阪地裁H28.2.8      
 
<事案>
ある者(Z)がインターネットの掲示板にプロフィール画像として原告(X)の写真を使ってX本人になりすまし、様々な発言を掲示板に投稿⇒Xが権利を侵害されたとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任法)4条1項に基づき、インターネットサービスを提供した被告(Y)に対し、Zの氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求めた事案。 
 
<争点>
プロバイダー責任法4条1項1号にいう「権利が侵害されたことが明らかであるとき」に該当するか? 
 
<主張>
Xは、名誉権、プライバシー権または肖像権、アイデンティティ権を侵害されたと主張。 
 
<解説>
●なりすましによる権利侵害 
他人のパスワードを利用してアクセスしたり他人のアカウントを乗っ取ったりした場合には不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)に違反。
but
本件のようななりすましは不正アクセス禁止法違反にはならない

名誉権侵害の証明は容易でない
←つぶやきのようなコメントは社会的評価の低下の判断が難しく、しかも本人になりすまして行った発言が本人の名誉を損なうのはどのような場合なのかがはっきりしない。

プライバシー権侵害の場合も多くない
←元々本人が使っていたSNSを利用するため、新たに本人のプライバシー情報が明らかになることが少ない。
 
●アイデンティティ権 
Xの主張:
アイデンティティ権とは「他者との関係において人格的同一性を保持する利益をいい、社会生活における人格的生存に不可欠な権利であって、憲法13条後段の幸福追求権ないしは人格権から導き出される。」

裁判所:
なりすましによって本人以外の別人格が構成されて本人の言動であると他者に受け止められるほどに通用性を持ち、なりすまされた者が平穏な日常生活や社会生活を送ることが困難となるほどに精神的苦痛を受けたような場合には「他者との関係において人格的同一性を保持する利益」という意味でのアイデンティティ権が侵害されたということができる

人格的同一性を保持する権利としてアイデンティティ権を認めた。
vs.
アイデンティティ権の内容は自分に関する情報を利用されて勝手に自己に関するイメージを創出されないことを求めるに近く、それはプライバシー権または自己情報コントロール権でも対応できる
それでもあえてアイデンティティ権を創出するのであれば、それがなければ人格が維持できなくなるほどの侵害場面が存在しなければならないはず。

人格権に基づいて新たな権利を創出することは、名誉権やプライバシー権と同様、時に表現の自由と衝突する可能性がある。
たとえば、アイデンティティ権は著作権法が認める著作者人格権の同一性保持権(著作権法20条)に似ているが、同一性保持権はパロディ作品を認めないことがあり、表現の自由と対立関係に立つことがある。

判例時報2313

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アメリカ合衆国イリノイ州の裁判所の養育費についての判決の日本での執行判決(肯定)

東京地裁H28.1.29      
 
<事案>
Xが離婚した元の夫であるYに対し、アメリカ合衆国イリノイ州の裁判所からXとYとの間の子であるAの養育費の支払を命ずる確定判決を得た
民執法24条に基づき、本件外国判決についての執行判決を求める事案。 
 
<規定>
民執法 第24条(外国裁判所の判決の執行判決)
外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない
3 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
4 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。

民訴法 第118条(外国裁判所の確定判決の効力)
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
 
<判断>
本件外国判決は、Yが納税申告書を提出しないために、Yの収入に関し、Yが一切納税をしていないとの不利益な事実推定をした上で養育費を算定

制裁や抑止の目的で実際負担すべき養育費より多額の支払を命じたものではない。 

①外国判決の当否は調査の対象とはならない(民執法24条2項)
②本件外国判決が定める養育費の負担の内容は、日本の法律の定める内容と大きく隔たっているということはできない

XとY及びAがいずれも日本国籍を有し、かつ、常居所地を現在日本に置いているだけでは、養育費の支払いを認める外国判決が特別の事情がない限り日本のおける公の秩序に反するとはいえない
⇒本件外国判決の内容が「日本における公の秩序」に反しない
 
<解説>
いわゆる懲罰的損害賠償の制度については、外国判決のうち、補償的な損害賠償等に加えて、見せしめと制裁のために懲罰的損害賠償として金員の支払を命じた部分については、我が国の公序に反するから、その効力を有しない(最高裁H9.7.11)。 

支払を命ぜられる養育費の額だけでは、その内容が日本における公の秩序に反しないとする判断がされるのが一般

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事故で全損した福祉車両の代車料相当の損害賠償(肯定)

東京地裁H28.2.5      
 
<事案>
信号待ちのため停車中の車両への追突事故によりクレーン・スロープ等が装備された福祉車両が全損⇒車両の時価相当額のほか買替えまでの55日分の代車料41万円等を請求。
 
<判断>
●本件事故前の状況:
①原告は、体幹機能障害により起立位を保つことが困難であるとして身体障害者2級の認定を受け、電動車いすを使用
②原告の配偶者は、原告との間の子(幼児)の監護養育、原告の通院・外出等の送迎のため、自動車を使用する必要があった

③原告は、女性である配偶者が一人で電動車いすを昇降することができるように、クレーンやスロープ等が装備された福祉車両(本件車両)を購入し、配偶者がこれを原告の通院、買物等の日常生活において使用してきた。
本件事故により、本件車両が全損。

原告は、ディーラーから、電動車いすを乗せることができる車内空間があり、かつ、女性一人で電動車いすを昇降できるクレーンやスロープ等が装備された福祉車両を月額20万円で借り受けた。
これを配偶者が原告の通院や、常時介護を要する原告や幼児を同伴しての買物等の日常生活で使用。
買換車両は、福祉車両で注文生産⇒注文から納車まで2か月近くを要した。


原告には、主張の55日間の期間につき代車使用の必要性があった
代車の車種についても、ディーラーには本件代車以外に適当な車両がなかったその選択の必要性、相当性あり。 
⇒41万円全額について損害と認めた。
 
<解説>
代車料:車両が損傷して、その修理や買換えのために車両を使用できなかった場合に、有償で他の車両を貸借するのに要した費用。
これが損害として認められるためには、①実際に代車を使用したことのほか、②代車を使用する必要性があることを求めるのが実務。 

被害者量が営業車両⇒代車の使用は不可欠であるとしてその必要性を認められることが多い。
マイカーとして使用⇒裁判例や保険実務はこれを認めるのに消極的との指摘。
ex.主婦が代車を使用した事案において、その使用目的(買物、習い事、孫の送迎)や使用頻度等から、代車使用の必要性を否定した裁判例。

代車のグレード:
通常、代車は事故車両と必ずしも同一である必要はなく、事故車両の用途に照らし、それに相応する車両であればよい。

代車使用の期限の相当性:
代車は、現実に修理や買換えに要した期間のうち相当な期間に限り認められるところ、修理や買換えに必要かつ相当な期間は、損傷の部位・程度や事故車両の車種等により異なるものの、一般論としていえば、修理の場合は概ね2週間程度、買換えの場合は概ね1か月程度と感がられる。

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「マネジメントにおける人的要素」

マネジメントの役割は、人々が共同のパフォーマンスができるようにし、彼らの強みを有効にし、弱みを無関係にすることである。これは組織に関する全てであり、マネジメントが重要で決定的な要因である理由である。

マネジメントはコミュニケーションと個人の責任に依拠して作られなくてはならない。全てのメンバーは彼らが達成しようとするものを考え、仲間がその目標を知り理解するようする必要がある。全員が、彼らが他人に責任を負うものを考え、その他人がそれを理解するようにしなくてはならない。全員は、次に、他人から必要とするものを考え、彼らが期待されているものを知るようにしなくてはならない。
マネジメントは、企業とそのメンバーのそれぞれが、ニーズと機会が変わるのに従い、成長し進化できるようにしなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 11 February.

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2017年2月 9日 (木)

銀行の誤送金による債務不履行と(それによる建玉喪失との間の)相当因果関係(肯定)

東京地裁H28.1.26      
 
<事案>
Xは、A証券会社との間で、株式の信用取引を行っていた。
Yは銀行。

Yは、誤って本件指定口座とは口座番号の異なる別の口座に振込通知をし、同日中に本件指定口座への270万円の送金手続を行わなかった。

A証券は、同月31日、前日までにXが本件追証相当額を本件指定口座に入金しなかった⇒本件建玉を強制決済⇒XはYに対し、本件債務不履行に基づく損害賠償として、957万7300円及び遅延損害金の支払を求めた。 
 
<規定>
民法 第416条(損害賠償の範囲)
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
 
<判断>
●相当因果関係の有無 
XがYの従業員らに対し、送金の目的が追加証拠金を送金することにあり、当日中に入金ができない場合には強制決済がされる旨を説明し、Yの従業員が当日中の送金が可能である旨を述べた

Xの送金依頼の目的が証券会社に指定口座に入金を目的としたものであり、当日中に入金されない場合には強制決済がされるという民法416条2項の特別事情のYが認識し、又は少なくとも認識することができた

本件債務不履行と本件建玉の喪失との間の相当因果関係を肯定。

●本件債務不履行により原告に生じた損害額の認定
株式の信用取引における建玉が財産的な価値を有するところ、その損害としての金銭の評価について、本件強制決済がなかった場合にXがいかなる時期まで本件建玉を保有していたかが判断における要素となる。

株式の信用取引における投資家の判断の一定の不確実性をもってする個々人の判断
Xが決済したであろう時期を立証することが民訴法248条の定める「損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」に当たる

口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて、①Xの強制決済回避の意図や ②本件建玉の保有期間及び③保有期間内に各建玉が現実に持ち直したことなどを認定。

本件強制決済によって確定した損失に想到する金額を本件強制決済によって生じた損害と認定し、Xの請求を812万2943円の限度で一部認容。

判例時報2313

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「現代の組織は動揺体(Destabilizer)でなくてはならない」

社会、コミュニティ及び家族はすべて保守的な制度である。それらは安定を保ち、変化を阻止、あるいは少なくとも遅らせようとする。しかし、我々はまた、理論、価値及び人類の精神の全ての産物は古くなり、堅くなり、陳腐化し、苦悩となることを知る。

しかし、トーマスジェファーソンが薦めた全ての世代の「変革」は解決ではない。我々は、「変革」は達成と新たな夜明けではないことを知る。それは、老年期の衰退、アイデアと組織の破綻、自己再生の失敗の結果である。政府であれ、大学であれ、事業であれ、労働組合であれ、軍隊であれ、組織が継続性を維持する唯一の方法は、組織に体系的な組織化されたイノベーションを組み込むことである。組織、システム及び方針は、製品、プロセス及びサービスと同じく、自身(の役割)より長く残る。それらは、目的を達成する時、そして、目的達成に失敗する時に、そうなる。イノベーションと企業家精神は、経済においてと同じく社会において必要であり、事業においてと同じく公的組織にも必要である。現代の組織は動揺体でなくてはならない。それは、イノベーションのため組織化されなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 10 February.

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2017年2月 8日 (水)

「組織はコミュニティを動揺させる」

現在の組織はコミュニティにおいて活動しなくてはならない。その結果はコミュニティにある。しかし、組織はコミュニティに沈みあるいはコミュニティに従属することはできない。その「文化」はコミュニティを越えなくてはならない。地元のコミュニティが雇用を依拠する会社が、工場を閉鎖し、あるいは何年もかけて技能を学んだ白髪まじりの模型制作者をコンピューターシミュレーションを知る25歳の「切れ者」に変える。その変化の全てはコミュニティをひっくり返す。その全ては「アンフェア」ととられ、動揺させる。

組織の文化を決めるのは、仕事が行われるコミュニティではなく、仕事の性質である。各組織の価値システムはその仕事により決定される。全ての病院、全ての学校、全ての事業はそれが行っていることは、つまるところ、コミュニティの他の全てが依拠する重要な貢献であると信じなくてはならない。その仕事を上手く行うために、同じ方法で組織されマネジメントされなくてはならない。組織の文化がコミュニティの価値と衝突すれば、組織の文化が勝つ。そうでなければ、組織はその社会的貢献をすることができない。

ソース:The Daily Drucker 9 February.

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2017年2月 7日 (火)

新システムを開発・構築する業務委託契約での(契約上の付随義務としての)プロジェクトマネジメント義務違反(肯定)

東京地裁H28.4.28      
 
<事案>
本訴請求:
Y(ベンダー)との間でシステム開発に係る複数契約を締結したX(ユーザー)が、Yに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求、又は債務不履行解除に基づく原状回復請求として、18億113万4321円及びこれに対する遅延損害金(商事法定利率)の支払を請求

反訴請求:
Yが、Xに対し、前記システム開発に係る前記以外の契約に基づく委託料支払請求、又は商法512条に基づく相当報酬額支払請求として、2億3661万9422円及びこれに対する遅延損害金(商事法定利率)の請求
 
<規定> 
商法 第512条(報酬請求権)
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる
 
<争点>
本訴請求:
①債務不履行に基づく損害賠償責任の有無
②本件各契約の債務不履行解除等の可否

反訴請求:
①未払委託料の有無
②商法512条に基づく相当報酬請求の可否 

債務不履行に基づく損害賠償請求について、Xが、
①本件システム開発において、Yは多数の不具合ないし瑕疵を発生させたとして契約上の債務の不完全履行を主張したほか、
②予備的に、契約上の付随義務違反としていわゆるプロジェクトマネジメント義務違反を主張。
 
<判断>

Yは、
システム開発の専門業者として、Xに対し、②本件提案書を提出し、③業務改革を早期に実現するためのアプローチ、組織、役割などについて体系化されたY独自の方法論、システムの企画から保守・運用までを8個のフェーズに分けたシステム開発工程、フェーズの目的及び主要成果物などの説明、また、④Yの業務改革プロジェクトの経験とノウハウを集約した化学産業向けシステム開発に適用するテンプレートの説明、⑤同テンプレートの想定業務プロセスに目標業務プロセスを合わせる形のシステム設計方法など説明した上で、Xとの間で本件基本契約を締結し、本件プロジェクトを遂行するための協働関係に入った。

Yは、自らが有する専門的知識と経験に基づき、本件システム開発に係る契約の付随義務として、本件システム開発に向けて有機的に組成された各個別契約書や本件提案書において自らが提示した開発手順や開発手法、作業工程等に従って自らなすべき作業を進めるとともに、それにとどまらず、本件プロジェクトのような、パッケージソフトを使用したERPシステム構築プロジェクトを遂行しそれを成功させる過程においてあり得る隘路やその突破方法に関する情報及びノウハウを有すべき者として、常に本件プロジェクト全体の進捗状況を把握し、開発作業を阻害する要因の発見に努め、これに適切に対処すべき義務を負う。

システム開発は開発業者と注文者とが協働して打ち合わせを重ね注文者の意向を踏まえながら進めるべきもの⇒Yは、注文者であるXの本件システム開発へのかかわりなどについても、適切に配慮し、パッケージソフトを使用したERPシステム構築プロジェクトについては初めての経験であって専門的知識を有しないXにおいて開発作業を阻害する要因が発生していることが窺われる場合には、そのような事態が本格化しないように予防し、本格化してしまった場合にはその対応策を積極的に提示する義務を負う。

具体的には、Yは、Xにおける意思決定が必要な事項や解決すべき必要がある懸案事項等の発生の徴候が認められた場合には、それが本格的なものとなる前に、その予防や回避について具体的にXに対して注意喚起をすべき。

懸案事項等が発生した場合は、それに対する具体的な対応策及びその実行期限を示し、対応がされない場合に生ずる支障、複数の選択肢から一つを選択すべき場合には、対応策の容易性などそれらの利害得失等を示した上で、必要な時期までにXにおいて対応することができるように導き、また、Xがシステム機能の追加や変更の要求等をした場合、当該要求が委託料や納入期限、他の機能の内容等に影響を及ぼすときにはXに対して適時にその利害得失等を具体的に説明し、要求の撤回、追加の委託料の負担や納入期限の延期等をも含め適切な判断をすることができるように配慮すべき


本件プロジェクトはそもそもSAPソフトウェアの導入に伴うXの業務改革プロジェクトで、フルオーダーメイドでソフトウェアを製作するのであれば、自社の業務フローを変えずにソフトウェアを業務フローに合わせることも可能であるところ、Xは、これを認識しつつも、敢て現行業務の標準化を推し進める契機とするために、既存ソフトウェアであるSAPソフトウェアを導入してXの既存業務フローを変える選択をし、いったんは確定した目標業務とシステム要件に基づく本件システムが構築された。しかし、Xは、X内部の現場ユーザーからの業務改革に対する強い反発を受けこれを抑えることができなくなったために、結局、Xにおいて本件プロジェクトを中止するという決断に至った。
このような経緯は、基本的にX内部の原因

結論として、本訴請求については、原告の請求額の3割相当が相当因果関係のある損害。 
 
<解説>
本判決は、いわゆるプロジェクトマネジメント義務を肯定。 
プロジェクトマネジメント義務は、本件のように債務不履行において問題とされているところ、契約に基づく債務不履行は当該具体の事案における契約当事者間の法律関係による⇒一般的抽象的に論じることができないものであり、具体的事案との見合いで論じる必要

本判決は、
①Yは、Xに対し、業務改革を早期に実現するためのアプローチなどについて体系化されたY独自の方法論や業務改革プロジェクトの経験とノウハウを集約したテンプレートを説明した上で、Xとの契約関係に入った。
②本件プロジェクトはそもそもパッケージソフトウェアを利用したXの業務改革プロジェクトであり、Xは、あえて現行業務の標準化を推し進める契機とするために、パッケージソフトウェアを利用したシステム構築を選択した
という前提事実の下で、Yが負うべき義務を措定し、債務不履行責任を一部肯定。

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「継続と変化のバランス」

組織がチェンジリーダーとして組織されるほど、それは内部的にも外部的にも、継続性を確立し、急速な変化と継続をバランスさせる必要がある。1つの方法は、変化において(継続的な関係の基礎である)パートナーシップを組むことである。変化と継続のバランスは情報についての継続的作業を要請する。乏しいあるいは信用できない情報ほど、継続性を崩壊し関係を損なうものはない。いかなる企業にとっても、変化において(それが最も小さなものであっても)「誰がこれを知らされる必要があるか」を尋ねることが、ルーティンとならなくてはならない。これは、より多くの企業が、実際には同じ場所で働くことなく一緒に働く人々、つまり新たな情報技術を使う人々をあてにするようになるほど、より重要になる。特に、そのミッション、価値、パフォーマンスと結果の定義といった、企業の基礎に関し継続性の必要がある。

最後に、変化と継続のバランスは給与、功労の認定、報酬に組み込まれなくてはならない。我々は、同様に、例えば継続的改善を行う人々を組織にとって価値あるものと考え、純粋なイノベーターと同じく功労を認められ報われる価値があるものと考えることで、組織は継続に報いなくてはならないことを学ばなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 8 February.

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2017年2月 6日 (月)

死亡保険金受取人(=破産者)が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属

最高裁H28.4.28      
 
<事案>
保険契約者兼被保険者である者が、第三者のための生命保険契約を締結していたところ、その保険金受取人につき破産手続開始の決定がされた後に保険事故(=被保険者の死亡)が発生した場合の死亡保険金(請求権)が破産者たる保険金受取人とその破産財団のいずれに帰属するかが争われた事案。

平成24年3月、Y1とA(Y1の配偶者)について破産手続開始決定。
Y1(破産者)は、平成24年5月上旬、死亡共済金及び死亡保険金の各請求手続をして、同月下旬に合計2400万円を受け取り、このうち1000万円(「本件金員」)を費消し、同年9月、残金1400万円をX1の預り金口座に振込送金。
本件金員のうち800万円は、同年6月からY1の代理人となった弁護士であるY2の助言に基づいて費消された。
 
<請求>
X1・X2(破産管財人)が、
①本件保険金等請求権がY1又はAの各破産財団に属するにもかかわらず、Y1が本件金員を費消したことは、Y1において本件金員を法律上の原因なくして利得するもの。
②Y2にはY1が本件金員を費消したことにつき弁護士として注意義務違反がある。

Y1に対しては不当利得返還請求に基づき、
Y2に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、
X1において800万円及び遅延損害金等の連帯支払を、X2において200万円及び遅延損害金等の連帯支払を求めるもの。

反訴:
Y1が、本件保険金等請求権がY1の破産財団に属しないにもかかわらず、X1が法律上の原因なくその一部である1400万円を利得していると主張⇒X1に対し、不当利得返還請求権に基づき、1400万円及び遅延損害金の支払を求めるもの。
 
<規定>
破産法 第34条(破産財団の範囲) 
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
.2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
 
<原審>
本件保険金等請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、本件各破産財団に属する。

①Y1が本件金員を費消したことは、Y1において本件金員を法律上の減員なくして利得するもの
②Y1が本件金員のうち800万円を費消したことについて、Y2に弁護士としての注意義務違反が認められる

X1・X2の本訴請求のうちY1に対する請求を認容するとともにY2に対する請求を一部認容。
 
<判断>
上告審として受理した上、Y1・X2の上告を棄却。 
 
<解説> 
●保険契約の成立後、保険事故が発生する前に保険金受取人について破産手続開始の決定⇒当該保険契約に基づく保険金請求権が破産法34条2項にいう「将来の請求権」として、破産財団に属するか?

A:保険契約成立説:
保険契約の成立とともに保険事故等保険契約の定める保険金支払事由の発生を停止条件とする債権(抽象的保険金請求権)が発生し、これが破産法34条2項にいう「将来の請求権」に該当
破産手続開始の決定前に保険契約が成立していれば、破産者たる保険金受取人の有する保険金請求権はその破産財団に属する

B:保険事故発生説:
b1:そもそも抽象的保険金請求権の発生を認めないか、又は、
b2:そのような請求権の発生自体は認めても、破産法34条2項にいう「将来の請求権」には該当しない
⇒保険事故の発生により具体化した保険金請求権は、その保険事故が破産手続開始の決定前に発生していない限り、破産者たる保険金受取人の自由財産(新得財産)になる。

通説・執行実務:
本件契約の成立とともに抽象的保険金請求権が発生し、同請求件は処分可能であり、かつ、差押えの対象にもなる

最高裁昭和40.2.2:
第三者のための保険契約の死亡保険金請求権について、保険契約の効力の発生と同時に保険金受取人が自己の固有の権利として原始的に取得し、保険契約者兼被保険者の遺産より離脱しているものと解している。

抽象的保険金請求権の発生それ自体は肯定

抽象的保険請求権の破産財団帰属性を肯定した上で、個々の破産事件において財団放棄又は自由財産の拡張等の判断をする際の考慮事情の中に、保険契約の性質、内容、保険金額、保険金請求権の具体化の可能性等といったものを含めるといった破産手続の運用によって対応するのが理論的にも無理がなく、実務的にも相当。
 
●損害保険に係る保険金請求権(なお、損害保険の1つである責任保険(保険法17条2項)の保険給付請求権は、同法22条3項で原則として差押禁止とされている⇒破産財団帰属性は問題とならない。)について: 
損害保険の場合にも抽象的な保険金請求権が発生することを認めている。
but
被保険者について破産手続が開始された後に第三者の不法行為により保険事故が発生した場合に、破産管財人において保険金請求権が破産財団に帰属することを前提に保険金の支払を受けてしまうと、保険会社が破産者たる前記被保険者の前記第三者に対する損害賠償請求権(=本来、上記被保険者の新得財産に当たるもの)に代位できてしまう(同法25条)という問題。

判例時報2313

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「教育された人」

Magister Lude(1949)として英語で出版された1943年の小説で、ヘルマンヘッセはヒューマニストが欲する世界とその失敗を予想した。その本は、すばらしい孤立の生活を送り、偉大な伝統、その学問と美に捧げる、知識人、芸術家、そしてヒューマニストの兄弟を描いた。しかし、主人公で最も秀でた兄弟の長は、結局、よごれた、低俗で、荒れた、不和で引き裂かれた、守銭奴の現実に戻ると決めた。世界と関係をもたなければ、彼の価値は黄銅鉱(fool's gold)(金に見誤られるもの)であった。

ポスト資本主義社会は、それ以前の社会よりも、教育された人々を必要とし、過去の偉大な遺産へのアクセスは本質的な要素でなくてはならない。しかし、一般教育は人をして現実を理解し、支配できるようにしなくてはならない。

ソース:The Daily Drucker 7 February.

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2017年2月 5日 (日)

建築基準法86条の2第1項に基づく認定処分の瑕疵が、処分後の措置により治癒されたとされた事例

東京地裁H28.2.16       
 
<事案>
八王子市長がA団地管理組合に対し、建築基準法86条1項に基づく一団地の認定された旨公告された区域内に所在するA団地について、法86条の2第1項に基づく認定処分⇒区域内に居住する近隣住民であるXらがその取消しを求めた。 
 
<規制>
建築基準法の各種制限は、原則として敷地単位に適用。
but
法86条1項は、一団地内に総合的設計によって建築される二以上の構えをなす建築物を建築する場合等において、特定行政庁がその各建築物を建築する場合等において、特定行政庁がその各建築物の位置・構造が安全・防火・衛生上支障がないと認めるもの(「一団地認定」)については、容積率等の制限に係る規定の適用については、当該建築物は同一敷地内にあるとみなすとしている。

法86条の2第1項は、区域内で建築物を立て替える場合などには、当該建築物の位置・構造が他の建築物の位置・構造との関係において安全・防火・衛生上支障がない旨の特定行政庁の認定(「同一敷地内建築物認定」)を受けることを要するとしており、
建築基準法施行規則10条の16第2項2号は、同一敷地内建築物認定の申請をしようとする者は、区域内の他の地権者に対する建築物の計画に関する説明のために講じた措置を記載した書面(「説明措置記載書面」)を特定行政庁に提出するものとしている。
 
<判断>
①本件規定は、同一敷地内建築物認定を得て新たな建築行為が他の地権者の知らないうちに行われると、それらの者の将来の建築行為に対する規制に影響が及び、権利が侵害される結果になりかねない⇒事前の説明措置によりかかる事態を未然に防止する趣旨
説明措置は、少なくとも区域内の他の地権者の大半に説明内容が伝わり得るような形態であることを要するとし、A管理組合の提出書面をもって本件規程所定の書面とは評価できない。
③本件規定の前記趣旨⇒特定行政庁は、同一敷地内建築物認定をするに当たり、提出書面の記載内容から法の趣旨にかなった説明措置が実施されたかを審査しなければならないと解すべき。

本件認定処分には瑕疵があったとみる余地がある。

行政処分に瑕疵がある場合であっても、その後に当該処分の要件が満たされたときには当該瑕疵が治癒する場合がある(最高裁)ところ、法律が慎重な判断を求めて詳細な手続的要件を定めていたにもかかわらず、これを無視して行政処分がされた場合にその瑕疵の治癒が認められるとはいえないところであって(最高裁)、瑕疵の治癒が認められるかどうかは、①処分内容の趣旨・内容、②瑕疵の程度、③事後的にされた措置の内容、④瑕疵が関係者に与えた影響⑤その他諸般の事情を考慮して判断すべき。

当初の説明措置が最も利害関係が強いと思われる隣接地権者に対してなされたこと、②本件認定処分後に法の趣旨に沿った説明措置が追加されたこと、③説明措置は他の地権者に同意権を与えたものではない上、④他の地権者がその予想を超える不利益を受けないことなどの本件事情
本件認定処分に瑕疵があったとみる余地があるとしても、これが治癒されたものと解するのが相当
 
<解説>
行政処分につき処分時に処分要件を欠く瑕疵がある場合は違法として取り消されるのが原則。
処分後の事情により処分要件が具備され、処分を取り消しても同一の処分が繰り返されることが予想されるときは、行政経済や法的安定性の見地から瑕疵の治癒を認めるべき場合があると解されている。
(もっとも、瑕疵の治癒は、法律による行政の原理から安易に認めるべきではないとされる。) 

本判決は、その引用する最高裁判決の判示内容等から、瑕疵の治癒に係る考慮要素を括り出し、これを本件について検討した結果、処分要件の趣旨・内容に照らして瑕疵は軽微であって事後的に処分要件を具備しており、関係者への影響も大きくない本件認定処分に瑕疵があったとみてもそれは治癒されている旨判断。

敷地所有者の承諾を欠く建築基準法上の道路位置指定処分につき瑕疵の治癒を認めた例(裁判例)あり。

判例時報2313

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「国境を超える会社」

今日国際事業を行うほとんどの会社はなお、伝統的な多国籍のものとして組織される。しかし、国境を超える会社への転換は始まり、それは素早く動いている。製品やサービスは同じであるかもしれないが、構造は根本的に異なる。国境を超える会社においては、世界という1つの経済的ユニットがあるだけである。販売、サービス、広報、法律問題はローカルである。しかし、部品、機械、プランニング、リサーチ、ファイナンス、マーケティング、価格設定及びマネジメントは世界市場を考えて行われる。例えば、米国のある主導的なエンジニアリング会社は、世界中の43工場全てのための1つの重要な部品を、ベルギーのアントワープの外の1工場で製造している。世界全体のための製品開発を3箇所で行い、品質管理を4箇所で行っている。この会社にとって、国境は関係のないものとなった。

国境を超える会社は完全に国の政府の支配を超えるわけではない。それは適応しなければならない。しかし、これらの適応は、世界市場と技術のために決定される方針と実行に対して例外である。成功する国境を超える会社は自らを、切り離された、無国籍のものと見る。この自己認識は、国境を超えるトップマネジメントという、数十年前には考えられなかったものによって明らかにされる。

ソース:The Daily Drucker 6 February.

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2017年2月 4日 (土)

特殊詐欺の受け子の詐欺の故意・共謀の認定

①東京高裁H27.6.11
②松江地裁H28.1.20 

■①事件 
 
<争点>
詐欺の故意及び共謀の成否 
 
<一審>
ワイシャツにネクタイ姿で、上司から言われてきたタナカですなどと偽名を名乗ってうそを言い、被害者から「200万円」と大きく書かれた偽券入りの信用金庫の封筒を手渡しで受け取って上着ポケットに入れ、何も説明することなくすぐさま立ち去ろうとした。

被告人は、遅くとも前記封筒を受領しようとした時点で、詐欺の故意があったと優に認定できる。 

①被告人が、1日当たり5ないし10万円の報酬の約束で、氏名不詳者の指示に従って行動することとし、偽券を受領する際に詐欺の故意があったのに氏名不詳者の指示に従い続けて、現金受取役とう詐欺の成否を握る極めて重要な役割を果たした
②被告人のとった行動は、氏名不詳の架け子が、被害者に伝えていた現金の受取場所、受取役の名前、立場と合致するもの

被告人に詐欺の具体的な手口について認識がなかったとしても、遅くとも、詐欺の故意が生じた時点において、被告人と指示役や架け子の氏名不詳者らとの間に順次共謀が成立したものと認められる。
 
<判断>
被告人は、被害者から封筒を示された時点で、それが現金詐欺であると認識したと優に推認でき、氏名不詳者は、被告人が相手方から荷物を受け取るにあたり、場合によっては現金詐欺であることを察知する事態となることは了解しており、被告人が現金詐欺と認識した時点で、被告人と氏名不詳者との間に本件詐欺についての暗黙の意思の連絡があったといえる。

遅くとも封筒を受領しようとした時点で詐欺の故意及び共謀が成立したと認定した原判決に事実誤認なし
 
<解説>
●組織的詐欺における共謀の成立と故意との関係 
来日して郵便物を受け取った外国人である被告人が、覚せい剤密輸入の共謀共同正犯に問われた事案で最高裁H25.4.16:
被告人が覚せい剤が隠匿されている可能性を認識しながら貨物受取の依頼と引き受けがされたという事実関係の下では、特段の事情がない限り、故意だけでなく共謀も認定できる
犯罪組織関係者から日本に入国して輸入貨物を受け取ることを依頼されたという事実関係の下では、特段の事情がない限り、覚せい剤輸入の故意だけではなく共謀をも認定するのが相当

「特段の事情」の例として、犯罪組織側は事情を知らない者を道具として覚せい剤を受け取らせようとしたが、その受取役の者がたまたま覚せい剤を輸入することを察知したような場合。
 
●本件のように、指示役が犯行の詳細を知らない受け子を(道具のように)利用する態様の組織的詐欺事件の場合
行為者本人の犯罪遂行に向けての意思(故意)と共同行為者間での意思の連絡が、時期的に別個に発生することもあり、本件のような事案では、受け子がオレオレ詐欺の指示を仰がない限り、両者の間の意思の連絡と受け子の故意とは別個の機会に発生することができるとする見解。

実際上、多くの場合、指示役には、受け子がオレオレ詐欺だと知っていても構わないという未必的な共同正犯の故意があり、この場合、指示役の受け子に対する指示は、受け子に詐欺の故意が生じたことを条件とする条件付きの共同正犯の意思の連絡の面がある考えられるとする。
 
■②事件 
 
<事案>
被告人が氏名不詳者らと共謀の上、当時87歳の被害者に対して、名義貸しに係るトラブル解決のために示談金を支払えば、トラブルが解決し示談金も返還されるなどとうそを言い、受け子である被告人が被害者から1550万円をだましとったという事案。 
被告人は、金額はともかく、被害者から受領した紙袋内に現金が入っていると認識していた。
 
<争点>
受け子である被告人に詐欺の故意があったと認められるか 
 
<判断>
詐欺組織に属するFが被告人に対し、依頼関係の詳細を明示しないまま、正当な会社業務であるとの前提で、なし崩し的に依頼を承諾させていた。
(1)多額の経費をかけて現地に赴き、高齢者から現金を受け取り、その際、偽名を用いながら装いはスーツで整えていたという外形的な側面
被告人の詐欺の故意及び共謀を推認させる。

(2)
①現金と荷物の受取だけで経費をかけて松江まで出向くのは不自然であるが、Fから、更に人に会う必要が生じる可能性があると言われたことから、送金等によらず自分が出向く方法が選択されても不自然ではないと考えるに至った経緯に不自然不合理はない
②Fの被告人に対する依頼内容が変遷した点、連絡用の携帯電話を指定された点についても、被告人の述べる経緯には一応の筋が通っている
③偽名を用いて本件預り証と交換に現金を受領した点についても、Fから、後日正式なものを送付した後に廃棄する、迷惑はかけない、被害者から受領する現金の趣旨についても、悪いことはしていないなどと言われ、最終的に、犯罪にかかわるものではないと考えたからこそ本件預り証の作成に応じたという経緯を推認されるという見方も十分可能。
④被告人は、前科があるのに、本件預り証に指紋を残し、その後宿泊したホテルの宿泊者カードに、偽名を記載したとはいえ被告人の旧住所や現在の携帯電話番号を記載し、指紋も残すなどしている。

前記(1)の事実が直ちに、被告人に対し、正当な取引に基づくものではなく何らかの犯罪に関係するものであるとの認識を生じさせたとはいえない

被告人は、被害者から紙袋を受け取るまでの間に、何らかの犯罪に荷担していると未必的にも認識していたとは証拠上認められない
 
<解説> 
●オレオレ詐欺等における受け子の「故意」の認定
裁判実務では
①受け子が被害者から受領する物が現金であることを、受領時点で(未必的にせよ)認識していたと認定できるか
②認定できるとして、種々の間接事実を総合して、前記現金受領が詐欺を含む違法行為に基づくものであると(未必的にせよ)認識していたと推認できるか
が問題となり、
それぞれを推認させる間接事実の主張立証、推認を妨げる被告人の弁解内容の信用性等を検討するという判断手法が採られる場合が多い。

東京地裁H26.12.25:
①受け子が、共犯者(架け子)が被害者をだます電話をかけた際に告げたのと同じ偽の肩書き及び氏名を名乗り、あらかじめ用意した現金預り証を被害者に交付して現金入りの紙袋を受領
⇒受け子は被害者から預かる物が現金であると認識していた。
②あらかじめ氏名不詳者から、スーツを着用し、偽名を用いて会社員を装うことを指示されていた
⇒自分の行うのが虚偽を述べて現金を受領する行為であり、それが何らかの詐欺行為により現金をだまし取るものであると認識していたと強く推認できる
③被告人(受け子)の弁解が不合理
⇒詐欺の故意及び共謀を認定

①のレベルについて、
氏名不詳者が被害者に対して、わざわざ、来訪者(被告人)には書類である旨告げた上で現金を渡すよう指示⇒被告人(受け子)に荷物の中味が現金であることを悟られないようにして持ち逃げを防ぐため、本件詐欺の筋書きを知らせないまま道具として利用した可能性を払拭できない⇒被告人は前記被害者から預かる物が現金であると認識していたとは認められないとして、詐欺の故意を否定。
(東京高裁H23.8.9)

●本件について、
①被告人が、知人からの指示をうけたとはいえ、相当な経費や手間をかけた上、偽名を用いるなどして、面識もない高齢の被害者から、相当額の現金が入っていると認識しながら荷物を受け取ったという事実関係は、本判決の評価以上に本件詐欺の故意を強く推認させるものと見得るのではないか
②そのことに照らせば、被告人の公判供述の信用性やその他の間接事実の評価についても更なる検討のよちがあったのではないか
との異論も想定できる。

判例時報2312

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「若者人口の縮小」

先進国で、次の社会(next society)での支配的な要因(=高齢者の急速な増大と若者の急速な減少)はほとんどの人が留意し始めたにすぎないものである。若者の減少は、ローマ帝国末期以来の出来事であることだけが理由だとしても、高齢者の増大より大きな激変をもたらす。各先進国だけでなく、中国やブラジルでも、今日の出生率は、人口維持水準である、出産可能年齢の女性1人当たり2.2人をかなり下回る。政治的には、これは、全ての豊かな国において、移民が重要な(そして不和を生じる)問題となることを意味する。それは、全ての伝統的な政治的調整に影響する。

経済的に、若者人口の衰退は根本的な方法で市場を変える。家族形成の成長は先進世界における全ての国内市場の推進力であったが、若者の大規模な移民によってテコ入れされなければ、家族形成の率は着実に落ちる。

ソース:The Daily Drucker 5 February.

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2017年2月 3日 (金)

「知識と技術」

知識の探求は、その教授(teaching)と同じく、伝統的に適用から引き離されてきた。両方とも科目により組織され、知識自体の論理に従う。大学の学部と学科、学位、専門は、高度教育の全体組織であり、科目にフォーカスされてきた。それらは「市場」や「最終用途」よりも「製品」に基づき、組織の専門家の言葉を使ってきた。今日、我々はますます、知識とその探求を、科目の領域よりも適用の領域に組織する。あらゆる場所で、学際的作業が成長した。

これは知識の意味における、自己目的からリソース、つまり結果のための手段へのシフトの現れである。現代社会の中心的エネルギーとしての知識は、要するに、適用において、そして仕事に投入される時に存在する。仕事は、しかしながら、学問分野によって限定され得ない。最終結果は必然的に業際的となる。

ソース:The Daily Drucker 4 February.

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2017年2月 2日 (木)

刑法207条(同時傷害の特例)の法意

最高裁H28.3.24      
 
<事案> 
共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死において、同時傷害の特例を定めた刑法207条の適用の可否が問題となった事案。 
先行する第一暴行と後行する第二暴行が共謀なく行われ、その結果被害者が急性硬膜下血腫に基づく急性脳腫脹のために死亡。
第一暴行及び第二暴行は、そのいずれもが死因となった急性硬膜下血腫の傷害を発生させることが可能なものであるが、同傷害が第一暴行と第二暴行のいずれによって生じたのかは不明
検察官は、第一暴行の関与者と第二暴行の関与者の全員について、刑法207条を前提に傷害致死罪が成立すると主張。
 
<規定>
刑法 第207条(同時傷害の特例)
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
 
<一審>
仮に第一暴行で既に被害者の急性硬膜下血腫の傷害が発生していたとしても、第二暴行は、同傷害をさらに悪化させたと推認できる
⇒いずれにしても、被害者の死亡との間に因果関係が認められることとなる
⇒死亡させた結果について、責任を負うべき者がいなくなる不都合を回避するための特例である同時傷害致死罪の規定(刑法207条)を適用する前提に欠けることとなるとしてその適用を否定

第二暴行の関与者のみに傷害致死罪を認定
第一暴行の関与者には傷害罪を認定
 
<原審>
検察官の控訴を容れ、刑法207条の適用要件である第一暴行と第二暴行の機会の同一性等に関する審理を求めて、事件を第一審に差し戻した。 
 
<判断>
同時障害の特例を定めた刑法207条について、2人以上が暴行を加えた事案においては、生じた結果の原因となった暴行を特定することが困難な場合が多い
共犯関係が立証されない場合であっても、例外的に共犯の例によることとしている。

検察官が、
各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること、及び
各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと(=同一の機会に行われたものであること)
の証明をした場合、
各行為者において、自己の関与した暴行が傷害を生じさせていないことを立証しない限り、傷害についての責任を免れない

共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死の事案において、刑法207条適用の前提となる前記のような事実関係が証明された場合には、いずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定されるときであっても、各行為者について同条の適用は妨げられない
⇒上告を棄却。
 
<解説>
●刑法207条の法的性質論
A:法律上因果関係を推定する規定
B:挙証責任を転換する規定
C:挙証責任の転換とともに一種の法律上の擬制を用いたもの(通説)
挙証責任の転換ないしは因果関係の推定などといった例外的な規定
⇒厳格に適用すべき。

●刑法207条と傷害致死罪への適用
A:肯定説
B:否定説 

● 一審判決
vs.
①暴行と死亡との間の因果関係を直ちに問題としている点で、暴行と傷害との間の因果関係が不明である場合の規定である刑法207条の規定内容と相容れない
②その立場を貫けば、本件で死亡の結果が発生しなかった場合であっても、第二暴行が傷害を悪化させている以上、同条の適用を否定しなければ整合しない
③第一暴行の程度がいかに激しくても、第二暴行と死亡との間に因果関係が認められれば、第一暴行については傷害罪にとどまることになる 


本件と同様の二人以上による傷害事犯において、先行者の暴行後に共謀加担した者は、共謀加担以前に生じていたい傷害結果についてはその責任を負わないとした最高裁H24.11.6

承継的共同正犯の問題として、因果関係がないことが明らかな傷害結果について帰責性を否定したものであり、
因果関係の有無が不明な傷害結果について立証の責任を被告人に負わせることにより帰責性を肯定する同時傷害の特例とは、問題状況が異なる。 

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「マネジメント革命」

1881年、米国人のFrederick Winslow Taylor(1856~1915)は、初めて知識を、作業の研究、作業の分析そして作業のエンジニアリングに適用した。これは、「生産性革命」に導いた。生産性革命は自らの成功の犠牲となった。今後、重要なのは、非肉体労働者の生産性である。そして、それは知識を知識に適用することを要請する。

しかし、今日また、知識は、①いかなる新たな知識が必要とされるか、②それは可能か、そして③知識を有効にするには何がなされるべきかを定義するため、体系的かつ意図的に適用される。それは、言い換えれば、「体系的イノベーション」に適用される。この知識のダイナミクスにおける第3の変化は「マネジメント革命」と呼ぶことができる。既存の知識が結果を出すためにいかに最適に適用され得るかを見つけるための知識の供給は、我々が「マネジメント」によって意味するものである。

ソース:The Daily Drucker 3 February.

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2017年2月 1日 (水)

神社の宮司もパワハラ、神職の労働者性(肯定)

福岡地裁H27.11.11      
 
<事案>
Y1神社の神職(権禰宜)であったXが、同神社の宮司であるY2からパワハラを受け、違法に解雇された

Yらに対して慰謝料を、
Y1神社に対して地位確認、賃金、残業代、付加金等の支払を求めた。 
 
<争点>
①パワハラの有無
②Xの労働者性の有無
③Y1神社によるXの解職の有効性の有無
④付加金を命じることの要否等 
 
<判断>
●争点① 
Y2は、Xを2回にわたり坊主頭にさせたほか、
平成25年6月から同年8月までの間に、Xを指導するに当たり、多数回の暴行を加え、
机を叩き、胸ぐらをつかんだりしながら、「ぶん殴りたい」「お前根性焼きしようか」「給料泥棒」「腐ったみかん」などの暴言を浴びせた。

指導方法として許容し得る範囲を著しく逸脱しており、かかる行為はY1神社の職務を行うにつきされたもの

Yらに対し連帯して100万円の慰謝料の支払を命じた。
 
●争点② 
労働省(当時)労働基準局長は昭和27年2月5日、「宗教法人又は宗教団体の事業又は事務所に対する労働基準法の適用について」と題する通達(「本件通達」)を発している。
そこで、「宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職者等で修業中の者、信者であって何等の給与を受けず奉仕する者等は労働基準法上の労働者ではない」としている。

本判決:
本件通達二(イ)に規定される者に該当するのは
①「宗教上の儀式、布教等に従事する者」又は「僧職者等で修業中の者」であって、かつ
②「何等の給与を受けず奉仕する者」
に限られると限定的に解するのが相当。

Xは、Y1神社において神職として宗教上の儀式等に従事しており、その活動には一人前になるための修行の側面があるとはいえ、Y1神社から、毎月、基本給及び奉務手当等の俸給の支給を受けている

Xは、Y1神社の指揮監督の下、Y1神社に対して労務を提供し、Y1神社はXに対し当該労務提供の対価として賃金を毎月支払っていたことになる

Xは、労基法及び労働契約法上の労働者に当たる
 
●争点③ 
Y1神社は、解職理由として
①笛、神楽歌、衣紋等の神職として必要な教養を習得する意欲に乏しく、神社に奉仕する神職としての自覚が認められない
②Y1神社の再三の指導、教育にもかかわらず、改心の見込みがなく、神職としての適格を欠くことを挙げる。
vs.
本件解職通知が発せられた時点において、
①Xが備えていた笛、神楽歌及び衣紋等の神職としての教養レベルが、Y1神社に勤務する神職としておよそ不適格であるという程度にまで低いものであったとまでは認めることはできない
②Xがこれらの教養についての学習意欲をおよそ有していなかったともいえない

Y1神社のXに対する解職通知は無効
Y1に対し、これまでの残業代やバックペイの支払を命じた。
 
●争点④
①本件通達は、その文言だけをみれば、宗教上の儀式に従事する者や修行中の僧職者等について、一律に労基法上の労働者とは異なる取扱いをするとの解釈も全くあり得ないとはいえないこと
②Y1神社は、労働基準監督署の調査において、神職に適用される就業規則を定める必要はない旨の指摘を受け、その後、神職を雇用保険の被保険者としない扱いを認められるようになった

Y1神社が割増賃金を支払わなかったことにも一定の理由があった。

付加金の支払については、これを否定
 
<解説>

厚労省の平成24年1月30日の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」:
パワハラを「同じ職場で働く者に対して、職場上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義。 

肯定の裁判例と否定の裁判例

セクハラ・パワハラについて:松村満美子「労働におけるコンプライアンス・・・その現状と今後の課題」法律のひろば67・3・18以下
 

神社の神職を労働契約法上、労基法上の労働者と認定。 
これまで、研修医や社内弁護士について労働者性を肯定。
職務の内容や質、量において使用者の基本的な指揮命令のものにあって労務を提供し報酬を得ていれば「労働者」といえる
 
●本件は、残業代426万円余の不払いを認めながら付加金の支払を否定した極めて珍しい事例。 

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「現実に向かう」

今日の新たな現実は左派の想定にも右派の想定にも合わない。それらは「全ての人が知るもの」と整合しない。それらは、全ての人が、政治的信条に関係なく、現実であると信じるものとも異なる。「実際にあるもの」は、右派と左派が「そうあるべき」と信じるものとは、全く異なる。今日の最大で最も危険な激動は(政府、事業のトップマネジメント、あるいは組合の指導者を問わず)意思決定者の思い違いと現実との衝突から起きる。

しかし激動の時期は新たな現実を理解し、受け入れ、開発する人々にとって、最大の機会でもある。そのため、1つの不変の主題は、個々の企業の意思決定者が現実を直視し、「全ての人が知る」ものの誘惑、(明日の有害な妄信となる)昨日の確信の誘惑に屈しないことである。よって、激動の時期のマネジメントは、新たな現実に立ち向かうことを意味する。それは、数年前に意味があった主張や想定ではなく、「世界は実際にどうであるか」という質問から始めることを意味する。

ソース:The Daily Drucker 2 February.

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