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2017年1月29日 (日)

離婚給付等契約公正証書に基づく離婚前の債権差押命令申立ての事案

東京高裁H28.1.7      
 
<事案>
A・B間の離婚給付等契約公正証書に基づき、離婚による慰謝料の未払分及び執行費用を請求債権として、債権者Aが債務者Bの有する預金債権等の差押えを求めた
⇒ 執行裁判所(原審)が却下⇒執行抗告

執行証書:
前文において
「夫Bと妻Aは、離婚することに合意し、離婚に伴う子の養育費、慰謝料、財産分与の支払について、以下のとおり合意した。」とし、
第2条に
「BはAに対し、離婚による慰謝料として金850万円の支払義務があることを認め、平成22年9月末日までに金400万円、平成28年5月末日までに金450万円を第1条1項に定める方法により支払う。」
 
<原審>
当該慰謝料請求権は離婚が成立した際に初めて発生
⇒請求が債権者の証明すべき事実の到来にかかる場合にあたり、執行文及び当該事実が到来したことを証する文書の謄本謄本が債務者に送達されたことが執行開始の要件になる(民執法29条)ところその証明がなされていない。
⇒申立を却下 
 
<判断>
本件執行証書は、AとBとが離婚することを合意すると共に、離婚による養育費、慰謝料、財産分与の支払を合意したもの。
協議離婚は届出を必要とする要式行為⇒その届出によって初めて離婚の効力を生ずる。
離婚に伴う慰謝料も、特段の事情がない限り、離婚の効力が発生するまで成立しない。
but
協議離婚の法的性質から、離婚当事者が離婚の成立より前の一定の時期を期限として離婚に伴う慰謝料請求権を発生させる合意をすることが法的に無効とされる理由はない
このような合意は、前記特段の事情に当たる

養育費及び財産分与の支払については、離婚の効力が発生した離婚成立月を式として支払うとするものと、具体的に定める期日または具体的に定めた期間に一定額を分割して支払うという内容のものがあるところ、後者の支払合意は、離婚の成立を要件としない支払義務を定めたものと解される。

①本件慰謝料支払条項で定める支払義務は、一定の期日までに一定額を分割して支払うとするもの。
②本件執行証書の前文で「離婚に伴う」慰謝料とか本件条項で「離婚による」慰謝料との記載があるものの、素直な文言解釈としては、離婚の成立を要件としない支払義務を定めたものと解するのが相当
原決定を取り消し、単純執行文により債権差押命令を発した
 
<解説>
本件決定は、執行証書の解釈認定権限について、債務名義の作成手続と執行手続が分離されている⇒債務名義の内容の解釈の資料は、当該債務名義ないし執行文に限られ、原則としてそれ以外の資料を参酌できないとしている。 

一般に離婚による慰謝料といわれるものは、離婚自体によって発生すると解されているが、その実質においては、協議離婚をせざるを得なくなった原因行為、すなわち婚姻破綻原因となった不法行為の総体により慰謝料を意味する場合も多い
協議離婚の届出以前においても、個別の不法行為を詳細に特定することなく慰謝料支払合意をし、それに基づく支払義務を発生させることに障害はないであろう。

養育費については、最高裁H9.4.10は、離婚前の子の監護費用について、離婚後の監護費用に関する民法771条、766条1項が類推適用されることを認めており、離婚成立が発生要件にならない場合を認めている。
⇒本件の離婚慰謝料と同様の問題が生じ得る。

公正証書の実務としては、慰謝料の給付条項自体は、本件執行証書のように一定時期に支払う旨の記載をし、執行文付与の際に事実上離婚届出の有無を確認し、戸籍謄本を提出させるいなどした上で、単純執行文を付与している。

判例時報2312

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