債務整理の対象となる債権に係る裁判外の和解が司法書士法3条1項7号に規定する額を超えるとされた事例
最高裁H28.6.27
<事案>
債務者らが認定司法書士(司法書士法法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士)に依頼した債務整理につき、当該司法書士が違法に裁判外の和解を行って報酬を受領した⇒不法行為による損害賠償を求めたもの。
<原審>
多重債務者の債務整理について、裁判外の和解が不成立となった場合に通常想定される訴訟は、貸金返還訴訟と過払金返還訴訟
⇒
貸金残債務があるときの貸金返還訴訟、又は過払金が発生しているときの過払金返還訴訟における「訴訟の目的の価額」であるところの「訴えで主張する利益」(民訴法8条)、すなわち、貸金債務の元本額又は過払債権の元本額が140万円(裁判所法33条1項1号)を超えない範囲が、多重債務者から債務整理を委任された認定司法書士の裁判外の和解における代理権の範囲。
⇒
Xらの請求を一部認容。
<判断>
債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない。
⇒
Y及びXらの各上告をいずれも棄却。
<解説>
●債務者に貸金残債務が存在する場面において、
A:債権額説かB:受益額説か
それと別個の論点として
C:個別説(「紛争の目的の価額」とは個別の債権ごとに算定した額)かD:総額説か
本判決は、債権額説(A)・個別説(C)を採用することを判示。
●法3条1項7号の代理権の範囲を超えた認定司法書士の債務整理行為は、弁護士法72条違反(非弁行為)に該当し公序良俗違反(民法90条違反)として無効
⇒
債務者は、前記認定司法書士に対して、その支払った報酬等の返還請求ができる(最高裁昭和38.6.13)。
判例時報2311
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