« 「マネジメントは不可欠である」 | トップページ | 離婚訴訟で未成年者の親権者を非監護者であった父親とした事案 »

2017年1月 2日 (月)

笹子トンネル事件

横浜地裁H27.12.22      
 
<事案>
天井板が崩落し9名が死亡。
ワゴン車に乗って本件トンネルを通行中に本件事故により死亡した被害者5名の遺族であるXらが、土地工作物である本件トンネルの管理に瑕疵があったと主張⇒
本件トンネルを占有管理するY1(中日本高速道路㈱)に対して民法717条1項又は同法715条1項に基づき
本件トンネルの保全点検等の業務を受託していたY2(中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京㈱)に対しては民法715条1項に基づき、
連帯して本件事故による各損害額及びこれらに対する遅延損害金の支払を求めた。
 
<規定>
民法 第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

民法 第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 
<争点>
Y1及びY2の被用者らの過失の有無 
 
<判断>
予見可能性:
①(Y1及びY2の担当部署の被用者)としては、・・・35年という歳月の経過による本件トンネルの天頂部アンカーボルトに経年劣化が生じて荷重に対する引抜抵抗力を喪失する可能性も否定できない
適切な点検方法を設定し、これを実施しなければ本件トンネルの天頂部アンカーボルトの不具合(本件事故の原因となった引抜抵抗力の低下)を予見し得た
②当業者であれば、打音点検及び触診(特に打音点検)がアンカーボルトの不具合を発見する上で有効であるとの認識を有し、こうしたアンカーボルトの引抜抵抗力を把握するための点検方法が存在することを認識し得た

(同被用者らは、)本件点検の点検方法に係る協議の際、打音・触診といった目視以外の適切な点検方法を設定しなければ、本件トンネルの天頂部アンカーボルトの不具合を看過し、その結果、本件事故のような天井板の崩落事故が発生することを予見できた

結果回避可能性:
①本件点検において打音点検が実施されていれば、(本件事故後の緊急点検)同様の結果が得られた可能性が高く、同結果における不具合の数量は、異常な数値であって、引抜抵抗力の大小を正確に判定し得ないとしても、本件トンネルの異常性を認識するには十分。
②上記のような異常な数の天頂部アンカーボルトの変状が発見されれば、天井板の落下に繋がる可能性が高いことは明らか。

Y1は、担当部署による点検結果報告を受け、本件トンネルの安全を確保ないし確認できるまで、本件トンネルを通行止めにし、アンカーボルトの引抜抵抗力試験を実施するなどして、更なる調査、応急対策、補修・補強工事又は天井板の撤去工事等の抜本的な対策を開始することにより、少なくとも通行者が通行中に天井板が崩落するという本件事故の発生を回避することができた

・・・上記入念な方法を採用し、本件トンネルの天頂部アンカーボルトの不具合を発見し得る適切な点検実施計画を立案ないし設定すべき注意義務があったのにこれを怠り、触診はもとより打音点検を採用せず、双眼鏡による目視のみという方法を採用した過失があった。
 
<解説>
過失判断の手法として、打音検査によってXらの主張する具体的な崩落箇所についての引抜抵抗力喪失の判定に至らなくても、同検査を契機として通行止め、引抜抵抗力試験などの対策を開始することで本件事故の発生を回避することができた

予見可能性、結果回避可能性を肯定

札幌地裁H13.3.29:
被告である国が原告らの主張する瑕疵の1つを認めて争わなかった事案について、
原告らにより選択的に主張された責任原因の1つに基づく損害賠償請求権の成立が明らかになったにも拘らず、そのことを考慮せず、なお被告国の責任事態の解明のため、右以外の責任原因の有無をも審理、判断することは、民事訴訟としての実益を欠くものと言わざるを得ない。」

この点、本件では、本件事故についての損害賠償責任を認めていたY1の被用者の過失についても判断を示した。

判例時報2309

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 「マネジメントは不可欠である」 | トップページ | 離婚訴訟で未成年者の親権者を非監護者であった父親とした事案 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132655/64711178

この記事へのトラックバック一覧です: 笹子トンネル事件:

« 「マネジメントは不可欠である」 | トップページ | 離婚訴訟で未成年者の親権者を非監護者であった父親とした事案 »